機甲界ガリアン(Panzer World Galient)のネタバレ解説・考察まとめ

『機甲界ガリアン』とは、日本テレビ系列で1984年10月から1985年3月まで放送されたSFロボットアニメである。騎士や城塞といった西洋の中世的風景に、巨大ロボットという異質な存在が闊歩する独特の世界観が特徴である。亡国の王子が仇敵に打ち勝つ貴種流離譚を描きつつ、やがて宇宙規模の冒険に発展する非常に壮大なストーリーが展開された。監督を高橋良輔が務め、キャラクターデザインに塩山紀生、メカニックデザインに大河原邦男、音楽に冬木透と、『太陽の牙ダグラム』を手掛けたスタッフが集結している。

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鳥一族

OVA『鉄の紋章』に登場した惑星アーストの原住民族。マーダルと最後まで敵対していた。深い谷を住処とする上昇気流を巧みに扱い、芦や布で作った翼で自在に空を飛ぶ生活を送っている。大半の者が風習として鳥を模した頭巾を被っている。火薬を扱う技術を持ち、火砲で機甲兵に立ち向かう。非力ながらもマーダルに抵抗しており、テレビ版の「白い谷」に相当する勢力として描かれた。

『機甲界ガリアン』の登場兵器・メカニック

機甲兵

機甲兵が発掘されている場面

主にマーダル軍が多用する有人ロボット兵器。多くが12メートル前後で人馬や半魚人、鳥人など神話的なフォルムのものが多い。ガリアン以外の機甲兵はほぼマーダルの発掘現場から出土した発掘兵器である。作中の中世アーストにおいては対抗手段に乏しくあまりにも強力で、マーダル軍躍進の原動力となった。2万年以上前の古代アースト文明は機甲兵を使って戦争を繰り返し、滅亡寸前にまで至っていたとされる。一方武装は剣や槍、斧など原始的な格闘武器が主であり、出土した時点で装甲上に装飾があるなど、元来戦闘には不必要な趣味性が散見される。このため古代アースト人は大量破壊兵器等を使わない「趣」を重視した戦争を行なっていたと推察できる。その後「跳空間転移技術」が確立され、古代アースト人が外宇宙に旅立つようになると、破滅の種になるとして全ての機甲兵は地中深く埋葬された。それを発掘して再起動させたのが作中で活躍する機甲兵である。大変耐久性が高く、2万年以上土中にあっても掘り出されたその場で起動し立ち上がる。『デュアルマガジン』誌に掲載された裏設定として、「静粒子(スタティコン)」と呼ばれる特殊な粒子を使った「静粒子ジェネレーター」で駆動し、装甲は静粒子を帯びると硬化する「バイオニウム」と呼ばれる素材を用い柔軟性と硬度を両立している、とされる。作中では主にマーダル軍が運用し、その強力無比な戦闘力を存分に発揮してマーダルの覇道に多大なる貢献をした。

鉄巨人 ガリアン

鉄巨人ガリアン

「世に悪がはびこる時、伝説の鉄巨人が現れ、世の闇を打ち払わん」と伝説に謳われた「伝説の鉄巨人(パンツァー・ブレード)」。本作の主役にあたる機甲兵で、白い谷の奥深くで眠っていたところを、ジョジョとチュルルに発見された。その際にヒルムカが催眠学習を施したため、ジョジョはガリアンを自在に操れるようになる。その後、白い谷を襲撃していたマーダル軍の機甲兵を蹴散らし圧倒的な戦闘能力を見せつけた。やがてガリアンとジョジョは反マーダルの旗印となり、マーダルが差し向ける機甲兵と壮絶な戦いを繰り広げることになる。

土中へ無造作に埋葬されていた他の機甲兵と異なり、発見時はメンテナンス設備が完備された「ドーム」においてモスボール(動態保存)されていた。これは機甲兵や他の兵器が封印を解かれ悪用された際の保険として、何者かに温存されたためと思われる。このことが長い年月をかけて鉄巨人の伝説に変化していったようだ。

他の機甲兵を建造したのとは別の勢力が設計したという裏設定が存在し、技術的に他の機甲兵と異なる点が散見される。操縦席には「全天周囲モニター」を備えており、微細な6角形のモニターが無数に集まって球形にコクピットを覆っている。これにより死角の無い360度の視界を確保している。操縦桿はケーブルで基部とつながっており、腕の動きをそのままトレースする仕組みになっている。動力は「静粒子ジェネレーター」を上半身と下半身にそれぞれ1基、計2基搭載している。そのため他の機甲兵を凌駕する圧倒的な大出力を実現している。その弊害として「バイオニウム」を装甲に使えなくなり、「ガリオネット」という素材で代用している。このガリオネットは強靱だが無敵では無く、作中では蓄積したダメージで機体性能が徐々に低下する描写がある。その他にも足裏に装備された「ダッシュホイール」による高速滑走や、「飛装型」と呼ばれる高速飛行形態への変形など、他の機甲兵ではほとんど見られない特徴を備える。

他の機甲兵にふんだんに見られる神話的シルエットや意匠をこらした装甲を持たない。これはガリアンを建造した勢力が、当時の「趣」や「暗黙の了解」を無視して手段を選ばす単騎で戦い抜くことを念頭に設計したためと思われる。当初武装が「ガリアンソード」のみであった点や「自動的に土中に没して機体を隠匿する」独特な機能からも、身軽なゲリラ戦術を想定していたと推察できる。

初期唯一の武装である「ガリアンソード」は左袖に収納されている。引き抜いた時点では分割された刀身がワイヤーで数珠つなぎになった「蛇腹状態」から、刀身がひとつに合体することで長剣が完成する。その切れ味は凄まじく、機甲兵の装甲を紙のように切り裂く。この変形は戦闘中に自在に行なうことができる。作中では蛇腹状態で敵に巻き付けチェーンソーの要領で切断した後に長剣に変形させて剣撃を振るったり、逆に鍔迫り合いの最中に蛇腹状態にして敵の体勢を崩したりなど、柔軟な戦法がとられた。

第2話から登場。チュルルが鍛冶屋のシュラブから聞いた与太話を真に受けジョジョを白い谷の奥深くに連れ出す。その先で危険生物や浮き石などの障害物をかき分けた先で発見した。ヒルムカがジョジョに睡眠学習を施したため、彼は最初からガリアンを自在に操ることができた。マーダル軍との戦いをくぐり抜けるも次第に満身創痍になり、ついに第9話で強化改造を受け、「ガリアン重装改」に生まれ変わる。

ちなみに「鉄巨人」の英訳が「PANZER BLADE(パンツァー・ブレード、Panzerはドイツ語)」とされているが、第12話でランベルとスラーゼンがそれぞれ「パンツァー・ブレード」という単語を機甲兵の操縦者に対する総称のように使うセリフがある。これが脚本上の誤用なのか裏設定なのかは不明。

ガリアン飛装型

ガリアン飛装型

ガリアンが変形した高速飛行形態。前屈の体勢から両腕の関節を縮めて両翼とし、腰部の垂直尾翼と臀部のスラスターを展開、背面から展開したフェアリングに180度回転した頭部を収納することで完成する。1.25Gの推力からマッハ1.6の最高速度を叩き出し、飛行能力が持ち味のウィンガルと同等の機動性を発揮する。空中でも自在に変形可能で、崖から転落するも落下中に変形して地面への激突を回避する場面がある。弱点は「飛装型」形態では戦闘能力が無いことである。第8話ではそれまでの戦闘で蓄積したダメージもあり、飛行中に3機のウィンガル相手に撃墜寸前まで追い込まれた。

ガリアン重装改

重装砲を構えるガリアン重装改

第10話において満身創痍になり性能の低下したガリアンを、「ドーム」で修復と共に強化改造した姿。主に追加武装による火力強化が施された。さらに分離・合体機能が追加され、上半身が「ガリアン飛装改」、下半身が「ガリアン自走改」となって二手に分かれるようになった。「飛装型」への変形も引き続き可能。その戦闘力はローダンの部下に「今まで4倍」と言わしめた。

大型防楯「ガリアンシールド」が装備され防御力が向上している。後端に射出式のアンカーが内蔵されており、地面に突き刺して銃座にする。打突武器としても応用できる。

背面に追加されたビーム砲「飛装砲」は機甲兵を瞬時に蜂の巣にする威力と速射性を発揮する。

長砲身の2連装大口径ビーム砲「重装砲」はエネルギーをガリアンの右脛部にあるコネクターから直接供給しており、無尽蔵の連射が可能。携行して射撃する他にガリアンシールドと組み合わせて銃座とし、機甲兵の大軍を寄せ付けない圧倒的な面制圧力を発揮する。さらに「自走改」の主砲ともなるなど、ガリアンの大幅な火力アップは主にこの重装砲によって達成されている。

ガリアン飛装改

ガリアン飛装改

ガリアン重装改の上半身が分離した飛行形態。脚部を分離したことにより重量と空気抵抗を軽減したことで、機動性は飛装型を大幅に上回る。推力も2.25Gに引き上げられ、最高速度はマッハ2.4に達する。背面の「飛装砲」を使用することで、ウィンガルを圧倒する空戦能力を手に入れた。反面着陸脚を装備していないので、単体での着陸は不可能。ガリアン自走改と再合体できなければ胴体着陸するしかなくなる。作中ウィンガルを相手に互角以上の空中戦を繰り広げたが、最終回で母フェリアのもとに急ぐジョジョに乗り捨てられ、鉄の塔の壁面に激突して爆発炎上し失われた。

ガリアン自走改

ガリアン自走改

ガリアン重装改の下半身が分離した自走砲形態。膝が逆関節になり、ガリアンシールドと重装砲を組み合わせて前面に合体し、左脛側面から専用の操縦席がせり出して完成する。格闘能力こそないものの、ガリアン重装改から引き継いだ重装砲の火力、そしてダッシュホイールによる高速滑走がそのまま使用できるため、地上戦においては非常に強力な戦闘力を誇る。作中では主にウィンドウが操縦を担当し、持ち前の器用さで性能を十全に引き出していた。

人馬兵 プロマキス

人馬兵プロマキス

マーダル軍の人馬型機甲兵。ギリシャ神話の「ケンタウロス」のように上半身が人型で下半身が馬の姿をしている。出土数が多いためマーダル軍の主力を担い、二足歩行を上回る速力と巡航性能は、マーダル軍の快進撃を支える原動力となった。その走行性能を支えるためか、脛部に排気口があり高温の排気ガスが炎として噴き出す。反面装甲は軽量化のためか薄く、ガリアンに一刀両断されるシーンが散見された。さらに弩の直撃で装甲がへこむシーンもあった。

武装は専用のランスとシールドの組み合わせが多く、ランスの柄を引き抜いた「砕鋼杖(ピッケル)」や、両刃の斧で殴りかかる場面もあった。固定武装としては腹部にビーム砲を備えるが、大口径の割に威力が低く、城門の大扉を破壊するのに何発も撃ち込んだり、レンガ造りの一般家屋が被弾しても持ちこたえていたりする場面があった。

作中全編に渡って登場し、竿立ちになって脚部から炎を上げる幻想的なシーンは、ある意味主役機体のガリアンよりも本作の世界観を体現していた。

mynlsurf93
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@mynlsurf93

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