機甲界ガリアン(Panzer World Galient)のネタバレ解説・考察まとめ

『機甲界ガリアン』とは、日本テレビ系列で1984年10月から1985年3月まで放送されたSFロボットアニメである。騎士や城塞といった西洋の中世的風景に、巨大ロボットという異質な存在が闊歩する独特の世界観が特徴である。亡国の王子が仇敵に打ち勝つ貴種流離譚を描きつつ、やがて宇宙規模の冒険に発展する非常に壮大なストーリーが展開された。監督を高橋良輔が務め、キャラクターデザインに塩山紀生、メカニックデザインに大河原邦男、音楽に冬木透と、『太陽の牙ダグラム』を手掛けたスタッフが集結している。

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マーダル

『鉄の紋章』版マーダル

CV:小林修
アーストの大地に現れた大英雄。古の伝説に登場する「機甲兵」の存在を信じ探し求めていた。物語冒頭にてついに「邪神兵」を発見したのを皮切りに数多の機甲兵を手に入れ、戦乱の続くアースト統一に動き出す。それから十数年の間に覇道を突き進みながらも3人の養子「ハイ・シャルタット」「ジョルディ」「チュルル」を育て上げる。アースト平定を目前にし、我が子の立派な成長に眼を細めるが、同時に機甲兵を蘇らせた自分へ天罰が下る日が近いことを予感していた。その予感は当たり、手塩にかけて育て上げた長男ハイに背後からサーベルで刺し貫かれる。「機甲兵を地に戻せ」との遺言をハイに残して息絶えるが、皮肉にもその遺言はハイではなくジョルディによって実行されることになる。

征服王「マーダル」として配役されているが、その人格や風貌、主人公「ジョルディ」との関係などは、むしろテレビ版での「アズベス」に近い。出自としても純粋なアースト人である。CVと作中のナレーションもテレビ版と同様にアズベス役の小林修にが担当している。

ジョルディ

『鉄の紋章』版ジョルディ

CV:菊池正美
本作の主人公でマーダルの次男。養父であるマーダルを尊敬しており、その覇道に付き従う勇猛な戦士として育った。戦においては専用の赤い「人馬兵」を駆る。次男ゆえその性格はおおらかで柔軟な思考の持ち主。末端の兵士に酒を振る舞うべく雨の中を出掛けるなど、その性根は優しくマーダルの臣下の中でも評判が高い。マーダルも自分に似て器の大きいジョルディに目をかけている。ハイによるマーダル暗殺をチュルルと共に目撃し、絶体絶命の危機に陥る。しかし突如放たれた閃光の中に吸い込まれていき、「鉄巨人」の依り代に選ばれる。襲い来るかつての戦友達を容赦なく斬り倒し、ついに兄ハイの駆る「邪神兵」と対決する。ついに邪神兵を撃ち倒した後、鉄巨人から解放されチュルルと共に無人となった大地に全裸で放逐される。

作中では主人公である以外、テレビ版からかけ離れた設定が施された。年齢が引き上げられ赤髪の勇猛そうな青年に変更、声変わりさせるためCVも菊池正美に変更された。自らの意思で冒険する場面は皆無で、マーダルの命令に忠実に行動する。さらに鉄巨人の意思に呑み込まれ、先ほどまで戦友だったマーダル軍の機甲兵を容赦なく屠った。

ハイ・シャルタット

『鉄の紋章』版ハイ・シャルタット

CV:速水奨
マーダルが育て上げた養子の長男。翼の生えた銀色の「飛甲兵」で戦場を駆ける。大変優秀でマーダルが名代とするほどの信頼を得ている。しかし性急で武功を焦る傾向があり、その苛烈な性格は密かに臣下の不興を買っている。おおらかで器の大きく、妹「チュルル」に懐かれているジョルディと比較され、劣等感を感じていた。さらに敬愛する父マーダルを背後から刺殺するという幻覚を見るようになり、徐々に精神の均衡を失っていく。鳥一族との戦いでは降伏してきた彼らの族長「オデビ」を問答無用に惨殺することで混乱を招く。これにより結果的に多数の鳥一族は脱出に成功した。終盤でついに「邪神兵」が封じられている館に押し入り、マーダルを手にかけるとそのまま邪神兵に乗り込む。マーダル殺しを目撃したジョルディや、その場に居合わせたチュルルと「ヒルムカ」に襲いかかる。しかし突如現れた「鉄巨人」に行く手を遮られ、激闘の末に敗死する。皮肉にもマーダルの「全ての機甲兵を地に戻せ」との遺言は、託されたハイではなくジョルディが成し遂げることとなる。

マーダルに養育され心酔している点や、性急で余裕のない性格、さらに外見などもっともテレビ版の原形を保っているキャラクターである。しかしマーダルを手にかける末期の行動は、殉死したテレビ版とは真逆となっている。

チュルル

『鉄の紋章』版チュルル

CV:渕崎ゆり子
マーダルが溺愛する養女で末っ子。マーダルを「お父様」と呼び慕い、ふたりの兄も敬愛しているが、よりおおらかで優しいジョルディに懐いている。上品な中にも幼さゆえの奔放さを見せる。酔った家臣「ヨダ」に、嫁ぐとしたらふたりの兄のうちどちらがいいかといじられ、ジョルディの隣にいたチュルルは赤面していた。しかしその姿がハイをさらに鬱屈させていることには気が付いていないようだった。ハイが邪神兵に乗り込みジョルディを襲うところに出くわし、驚く暇もなく吹き飛ばされる。そのまま転落死するかと思われた時、一条の閃光に包まれて姿を消す。戦いが終わり全ての人や機甲兵が消え去った時、再び姿を現し、ジョルディと共に無人の野に全裸で放逐される。

主人公を慕うヒロインとしてはテレビ版と共通だが、容姿や年齢、出自や立場は大幅に変更されている。『機甲界ガリアン 公式Web』の紹介では、「血の繋がらない兄達のいずれかと結婚する宿命をもつ」とあるが、作中では酔っ払いの放言以外でそのような話は出てこない。

ヨダ

ヨダ

CV:宮内幸平
マーダルの臣下で白髪の老人。凱旋の祝宴で酔っ払い、床を転げ回る醜態をさらした挙げ句、チュルルに絡む。「嫁ぐとしたらふたりの兄のうちどちらがいいか」などという無神経な発言は宴の席を凍りつかせ、いたたまれなくなったハイはその場を去る。『鉄の紋章』作中では貴重な、名前が設定されたキャラクターである。

ヒルムカ

『鉄の紋章』版ヒルムカ

CV:平野文
マーダルに最後まで抵抗していた「鳥一族」の戦士で、族長の補佐をしていた女性。惨殺された族長にかわって指揮をとり、反撃と同時に女子供を脱出させる。その時ジョルディに命を救われた。その後邪神兵の復活とマーダル暗殺の現場に居合わせる。族長の敵であるハイに矢を射かけるも狙いを外す。空中に放り出されたジョルディを救おうとするも、礫弾に翼をもがれて墜落する。レンガ敷路の上に叩き付けられて砂煙が上がる描写があるが生死は不明。

容姿についてはほとんど変更されていないが、ヒルムカも作中役割が大幅に変更されている。テレビ版では物語の重要なキーパーソンとして大活躍し無類のタフネスを誇ったが、『鉄の紋章』では抵抗虚しく住処を追われ、一矢報いることも叶わず墜落して退場するという、不遇なキャラクターになっている。

オデビ

オデビ

CV:大木民夫
鳥一族の族長。戦いを長引かせることをよしとせず、降伏して自らの命と引き換えに一族の安全を保証するように訴えた。しかしその声はハイに遮られ惨殺されてしまう。結局鳥一族は住処に火を放って落ち延びることになる。

『機甲界ガリアン』の用語

マーダル軍

マーダル軍

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