ミオリネ・レンブラン（水星の魔女）の徹底解説・考察まとめ

ミオリネ・レンブランの概要

ミオリネ・レンブランとは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の登場人物で、ベネリットグループ総帥デリング・レンブランの娘。
デリングの横暴によって勝手に決まってしまった上級生グエル・ジェタークとの婚約に嫌気が差し、この境遇から逃れるため地球への密航を計画していた。その際に編入生のスレッタ・マーキュリーと出会い、密航を邪魔されたと憤慨。謝罪しようとやってきたスレッタとグエルが揉め事になった末に決闘することとなり、これに「ミオリネの婚約者の座」が賭けられていたため勝者のスレッタが自身の新しい婚約者となる。

スレッタがこれに「そんなの聞いてない、私は女です」と困惑する一方、自身は「勝手に決められるよりはマシ」とこれを受け入れる。女性同士であることは「地球圏では全然アリ」と特に気にしておらず、困惑するスレッタを「水星圏はお堅いのね」と揶揄していた。

ミオリネ・レンブランのプロフィール・人物像

所属：アスティカシア高等専門学園
学科：経営戦略科
学年：2年生

CV：Lynn

気位が高く、言動は刺々しいが、スレッタが地球圏の文化や校内の風習に不慣れなのを察すると詳しく教えるなど根っこのところは親切で優しい少女。母親とは死別しており、スレッタが自身の母との関係について自慢気に語った際は不機嫌そうな様子を見せた。
自分の運命を誰かに委ねることを嫌い、自分の手でそれを切り開くことを望み、その想いが高じて無茶をする傾向がある。ノーマルスーツ（一般的な宇宙服）での地球への脱出を計画したこともあれば、スレッタの愛機であるガンダム・エアリアルを勝手に持ち出して決闘に臨んだこともある。優秀な生徒ではあるが、経営戦略科ということもあってMS（モビルスーツ／作品世界で戦争の主役となっている人型機動兵器）の操縦技術は拙い。

地球圏では同性同士の結婚や交際が一般化しており、スレッタが自身の新たな婚約者となった際も「グエルよりはマシ」という思いもあってあっさりと受け入れている。その手の文化が無い水星圏育ちのスレッタが呆然としながら「私は女ですけど」と言った際は、「水星はお堅いのね」と言い返している。
植物を栽培する趣味があり、自分で作ったトマトをスレッタに振る舞っている。

ミオリネ・レンブランの来歴・活躍

グエルとの婚約と地球への脱走

ベネリットグループ総裁デリング・レンブランの娘として生まれ、不自由は無くも窮屈な生活を送る。母とは死別しており、「母親と自分をつなぐもの」を求めていた節がある。地球や大型コロニー以外では珍しい植物栽培の趣味もこれに起因している。
アスティカシア高等専門学園に入学し、経営戦略家の生徒として優秀な成績を収める。入学したばかりの頃は、ベネリットグループの御三家の1つであるグラスレー・ディフェンス・システムズのCEOの養子であるシャディク・ゼネリと積極的に交流しつつ、経営学について意見を交わしていた。シャディクは学生ながらグラスレー・ディフェンス・システムズの経営にも参加する才人で、ミオリネとは経営者としての手腕を互いに認め合っていった。

ある時、デリングがアスティカシア高等専門学園に「決闘」という新たなルールを設ける。これは“生徒同士の揉め事をMSによる決闘で解決する”もので、学園内最強のMSパイロットであることを示す「ホルダー」の称号を持つ者にはミオリネとの婚約者という立場が与えられることとなっていた。決闘を重ねてホルダーの地位を手に入れたベネリットグループ内の有力会社であるジェターク・ヘビー・マシーナリーの御曹司グエル・ジェタークは、「いずれ自分が継ぐ会社をさらに発展させ、ベネリットグループで伸し上がるチャンス」だと考え、ミオリネにしつこく迫るようになる。

デリングの横暴にも、グエルの乱暴なアプローチにも嫌気が差したミオリネは、地球への脱走を計画。密かに運び屋と接触し、彼らの手を借りて宇宙にあるアスティカシア高等専門学園から地球まで逃げようとする。
しかしノーマルスーツに身を包み、運び屋とのランデブーポイントに向かう際、たまたまこの日編入することになっていたスレッタ・マーキュリーに発見され“救助という名の余計なお節介”を焼かれてしまう。これにより脱出計画は失敗に終わり、アスティカシア高等専門学園に連れ戻される。

新たな婚約者

ミオリネが自分との婚約を嫌ってアスティカシア高等専門学園を逃げ出そうとしていたことを知ったグエルは、「自分は優し過ぎた」と言って彼女を強引に物にしようと迫る。ここに居合わせた、事情はよく分からないながらどうやら余計なことをしてしまったらしいと察して謝りに来たスレッタは、グエルの横暴をなんとか止めようと割って入る。その後売り言葉に買い言葉で、スレッタとグエルは決闘することとなる。
自分の運命を他人に決められることを嫌うミオリネは、スレッタの持ち込んだMSガンダム・エアリアル（以下エアリアル）に勝手に乗り込んでグエルとの決闘に臨むも、まったく歯が立たずに追い詰められる。ここにスレッタが駆け付け、「エアリアルを返してください」とミオリネを強引にパイロットシートから下ろし、操縦を変わる。刹那エアリアルに搭載された特殊システムGUNDビットが起動し、グエルのMSをあっさりと撃破する。

この決闘には「ミオリネの婚約者の座」が賭けられていたため、スレッタが自身の新たな婚約者となってしまう。「私は女ですけど」とスレッタが呆然とする一方、ミオリネは「地球圏では全然アリ」だと言ってこれを受け入れ、彼女を新たな花婿（候補）として認める。
しかし、ここでエアリアルが禁止されている技術を用いられて作られた機体であるとの指摘があり、駆けつけた保安部によってスレッタは捕縛。彼女は退学、エアリアルは解体処分されることとなってしまう。「自分には関係が無い」と地球への脱走計画を独自に進めていくミオリネだったが、なんでもかんでも1人で決めて押し付けてくるデリングへの反発と、自分のために戦ってくれたスレッタを見捨てていくことの罪悪感によって引き返し、スレッタたちの処分を決するベネリットグループの査問会に乗り込む。

彼女自身の力でその座を勝ち得たのだから、スレッタを私の婚約者として認めて解放しろと迫るミオリネ。「どうしてもダメだというなら、デリング自身が定めた決闘によって決着をつけよう」と主張するミオリネに、「エアリアルに使われている技術を自分たちも手に入れたい」と考える有力幹部たちが同調したことから、デリングもその提案を受け入れる。自身の自由とスレッタの運命を賭けた決闘に、ミオリネは他ならぬスレッタを代理人に選ぶ。「自由になりたい、母の故郷である地球に行きたい」との想いを抱えるミオリネは、「この学園で学生として普通に生活したい、友達をたくさん作りたい」との夢を持つスレッタと協力していく約束を交わし、互いの目的のために力を合わせようと誓い合う。
決闘の相手は、初日からの因縁を抱えるグエルが務めることとなる。グエルは父親のヴィム・ジェタークから新型MSと「なんとしても勝て」との厳命を預けられ、そのために望まぬ策力を用いてスレッタを苦戦させる。学園での決闘は、個人同士だけでなく組織力も含めた総合力で競われるものであり、決闘委員会はグエルの策略を止めようとしなかった。このためミオリネは作業用のポッドで飛び出してスレッタを援護し、彼女の勝利に貢献する。一時的なものとはいえ、グエルとの婚約が正式に解消されたことに、ミオリネはデリングへの悪態を口にしながら勝利に酔い痴れる。

スレッタを巡る交流

かくして改めて地球に向かう計画を練る自由を得たミオリネだったが、彼女の暫定的な婚約者となったスレッタは、「学園最強のMSパイロットを2度までも倒した人物」として良くも悪くも目立つ立場となり、様々なトラブルに巻き込まれる。あくまで彼女に婚約者としての立場を堅持してもらわないと困るミオリネは、何かにつけては彼女に手を貸すようになっていった。
「MSの実習教育でパートナーになってくれる者がいない」とおろおろしていたところを見掛けた時は、ペイル社お抱えのMSパイロットエラン・ケレスが助け船を出そうとしたところに割って入り、自身がパートナーになることをスレッタに承諾させている。

株式会社ガンダム

スレッタとエランは少しずつ距離を縮めていくも、ある時を境にエランは学園に顔を出さなくなる。これを案じるスレッタに頼まれ、御三家の面々も顔を出すインキュベーション・パーティーに彼女と共に参加。このパーティーは起業家たちの新企画の発表と、それに対する出資を募る経済的な活動のための催しになっていた。
会場でプロスペラと出会い、先の審問会で助けてもらったことに礼を言われるも、「父の庇護下にあるのに反発しているようではまだまだ子供」と揶揄される。この時、スレッタは御三家から「エアリアルがガンダムである新たな証拠が見つかった」と大々的に指摘され、同機の廃棄処分の決定が進んでいくのをただ眺めるしかできないという憂き目に遭っていた。これを見たミオリネは、スレッタを助けるために「ガンダムだとしてもエアリアルが優秀な機体であることは事実、克服すべき技術的問題があるのだとしても乗り越えてみせる」と豪語してガンダムを専門的に扱う新会社の設立を宣言する。

しかしまだ学生でしかない彼女に出資する者は1人もおらず、ミオリネの「株式会社ガンダム」はいきなり暗礁に乗り上げる。スレッタのためにプライドをかなぐり捨てると、ミオリネは会場にいたデリングに頭を下げ、「あなたの信用を貸してほしい」と頼み込む。これにデリングは「ガンダムの呪いはお前が考えているより遥かに重い」と釘を刺しつつ出資し、これを見た会場の資産家たちも「デリングが出資したということはそれなりに信用できそうだ」と後に続く。会社を興すのに必要なだけの資金を集めることに成功したミオリネは、再びスレッタとエアリアルを救うことに成功する。
その後メカニック科のニカ・ナナウラやパイロット科のチュアチュリー・パンランチら地球寮の生徒を強引に社員として雇い、会社発足のための準備を進めていくが、「ガンダムでどうやって儲けを出していくのか」という点に悩む。エアリアル自体が強力な機体であり、普通に考えれば兵器としての販売がベストな選択ではあった。しかしGUNDフォーマットは未完成の技術で量産は不可能らしく、さらに多くが戦災孤児である地球寮の生徒たちは兵器の販売に否定的な反応を見せる。会社をまとめていくためのより良い方針を探す中、ミオリネはGUNDがもともと医療技術であることを知り、これに目を付ける。

「GUNDを利用した医療技術の研究と販売」という方針は地球寮の生徒たちにも受け入れられ、諸々の準備も整い、株式会社ガンダムは企業としての第一歩を踏み出すかと思われた。しかし異性としても経営者としてもミオリネを欲し、ベネリットグループ全体の成長のためにもエアリアルを自分の下に確保したいと考えたシャディクにより、「学生が起業する際、新会社で扱う技術は完全に安全性が確認されたものでなければならない」という新たな校則が設けられ、株式会社ガンダムはいきなり解散の危機に陥る。ミオリネはこれに激怒し、新校則の撤回を賭けてシャディクに決闘を申し込む。
6対6の集団戦となったこの決闘では、「シャディクは誰も信用していないから、最後は自分で決着を付けようとする」という読みが当たり、その瞬間を狙ったチュチュの狙撃が命中したことでミオリネ側が勝利。約束通り新校則は撤回され、株式会社ガンダムは正式に発足する。敗北を素直に認めるシャディクだったが、それを直接伝えに来た際に「自分の手で君を守りたかった」とようやく本心を打ち明ける。互いの立場も関係も変わってしまった今になって思いを打ち明けられたミオリネは、「今さらよ」と小さく毒を吐いた。

デリング抹殺計画

株式会社ガンダムは少しずつまともな会社らしい形で回り始め、ミオリネたちは仕事に忙殺される。最大の出資者であるデリングに会社の経営状況について報告せざるを得ないミオリネは、これにより仕事上のものではあっても父と交流する機会に恵まれ、その経営者としての手腕と成果は成果で真っ当に認めようとする姿勢を見て、一心に嫌うばかりだった彼の評価を若干改める。
ミオリネが大人の世界に触れて成長していく一方、スレッタたち学園の仲間との間には微妙な擦れ違いが生じ始める。これによりスレッタは「自分は本当にミオリネの役に立てているのか、もう彼女にとって不要な存在なのではないか」と悩み始め、盤石だった2人の絆に影が落ち始める。

修理と整備の終わったエアリアルを受け取りに地方コロニーのプラント・クエタに向かった際、スレッタが電話で「自分は株式会社ガンダムの仲間たちから不要な存在だと思われているかもしれない」との相談を自身の母にしているのを偶然聞いて、「アンタのお陰で逃げるのではなく前に進むことができた、私から逃げないで」と本音を打ち明ける。これによりスレッタと和解し、会社の仲間たちと共にこれからも一緒にがんばろうと誓い合う。
しかしこの時、プラント・クエタにはデリングも来訪しており、彼の暗殺を目論む地球のテロリストグループ「フォルドの夜明け」のMS部隊がコロニーを急襲。ミオリネたちやデリングのいるCブロックが外部から切り離されてしまう。

なんとかデリングと合流するも、直後にテロリストの攻撃による爆発に巻き込まれる。デリングに庇われるも、代わりに深手を負った彼を見て「自分を嫌っているはずの父がどうして」と驚く。この時、デリングはうわごとのように「“生き残った方が必ず娘を守る”と妻と約束した」と繰り返しており、父が父なりに本気で自分を愛してくれていたことに気付いて衝撃を受ける。
和解も、家族としての会話もしないまま死なせるわけにはいかないと応急処置を施したデリングと共にプラント・クエタを逃げ惑うが、ついにテロリストに追い詰められて銃口を突きつけられる。その刹那、エアリアルに乗ったスレッタが駆け付けるも、「ミオリネが危ない」と見た彼女は“エアリアルの掌でテロリストを叩き潰す”という凶行に走る。目の前で人間がミンチになる瞬間を目撃してしまったミオリネは、「助けに来たよ」と誇らしげに笑うスレッタに、「人殺し」との言葉を投げかけるのだった。

デリングの思惑

プラント・クエタへの襲撃事件から2週間。事件はベネリットグループによって隠蔽され、株式会社ガンダムは営業停止を命じられていた。デリングはなんとか一命を取り留めるも意識は戻らず、ミオリネはあれからずっと彼に付き添っていた。
そんなところにプロスペラが現れ、彼女がカスレッタを送り出したことを察したミオリネは「実の娘になんてことをさせるのか」と毒づく。プロスペラはそれを意に介さず、「デリングの志を継いでほしい」と言って、クワイエット・ゼロという謎の計画のデータをミオリネに見せてくる。

クワイエット・ゼロとは、高度に圧縮された情報の奔流であるデータストームを利用して人間の相互理解を促進させ、この世から戦争を無くすという計画だった。その実効性に半信半疑だったミオリネだが、これがもともと自分の母であるノートレット・レンブランが考えたプランだということ、父もプロスペラもその実現のために動いていると知って考えを改める。
しかし久々に学園に帰り、スレッタに「人殺し」呼ばわりしたことを謝ったミオリネは、彼女が「母がやれといったことだから気にしていない」と笑顔を浮かべるのを見て「スレッタは完全にプロスペラの言いなりになっている」と驚愕。彼女に詰め寄り、実の娘に何をしているのかと罵倒する。プロスペラはミオリネの怒りを軽く受け流すと、「人殺しの輪の中にいるのはあなたも同じ」と言って、デリングがかつてヴァナディース機関の研究員に向けて行った虐殺行為と、自身がそこで夫と恩師と仲間たちを失ったことを告げる。絶句するミオリネに、プロスペラは「罪から逃れたいのならベネリットグループの総裁になり、クワイエット・ゼロを実行しろ」と冷然と命じる。

スレッタとの別離

アーシアンのテロリストたちが学園をMSで襲撃した事件が発生し、一連の事態を受けたベネリットグループは次期総裁を選出することを決定。スレッタのためにプロスペラの要求を受け入れることを決意したミオリネは、「グエルをホルダーに復帰させて自分との婚約を復活させ、ジェターク社を後ろ盾につけて総裁選に打って出る」ことを決意する。
そのために「少し早い誕生祝いだと思って」とお願いする形で、スレッタにグエルとの決闘を承諾させる。グエルもまた、一連の事件の影響で傾いたジェターク社の立て直しのために、ミオリネの計画に加担することを承知する。

決闘が始まると、エアリアルは突如動かなくなり、この隙を逃さなかったグエルが勝利する。エアリアルが急に機能を停止したのは、ミオリネの工作によるものだった。総裁選に勝利すると同時にスレッタをプロスペラから引き離すことを考えたミオリネは、自分がプロスペラにさらに近づいていくことになると察して、スレッタとの関係を白紙に戻そうとも考えていたのだった。傷つけないよう、それらの事情については伏せたまま別れを告げられ、スレッタは動揺し慟哭する。

ミオリネ・レンブランの関連人物・キャラクター

スレッタ・マーキュリー