グエル・ジェターク（水星の魔女）とは【徹底解説・考察まとめ】

グエル・ジェタークの概要

グエル・ジェタークとは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の登場人物で、アスティカシア高等専門学園パイロット科の3年生にしてトップエース。
人型機動兵器MS（モビルスーツ）産業の有力会社ジェターク・ヘビー・マシーナリーの御曹司として生まれ、何1つ不自由無く育ち、アスティカシア高等専門学園に入学。この学園には、学長のデリングが定めた「決闘」というルールがあった。これは“生徒同士の揉め事をMSでの模擬戦によって解決する”というもので、その中でも最高の成績を修めた者には「ホルダー」の称号とデリングの娘であるミオリネ・レンブランの婚約者の座が与えられることとなっていた。

生まれ持った才能と、ジェターク・ヘビー・マシーナリーの技術の粋を集めた高性能機の組み合わせにより、首尾よくホルダーの地位を手に入れたジェタークは、「レンブラン家とのコネクションができれば、自分がいずれ出世する役に立つ」と考える。一方のミオリネは自分の運命を他人に勝手に決められることを嫌がり、グエルから逃げたい一心で学園からの脱走までをも企てるようになる。
ミオリネを我が物とするべく強引なアプローチを繰り返す中、彼女と偶然知り合った編入生のスレッタ・マーキュリーからそれを咎められ、売り言葉に買い言葉で決闘を申し込む。これに敗れたことで「ミオリネの婚約者」と「ホルダー」という2つの立場と名誉を同時に失い、その運命が大きく変わっていく。

グエル・ジェタークのプロフィール・人物像

所属：アスティカシア高等専門学園
学科：パイロット科
学年：3年生

CV：阿座上洋平

不遜にして尊大、自信家にして野心家、自分の力と権力を絶対の物と信じて疑わない傲慢な性格。これは普段の振る舞いにも表れており、ミオリネがあくまで自分から逃げようとしているのを知るとDV紛いのことまでして彼女を引き留めようとしている。
一方で計算高いところもあり、親の権力や自分の将来の立身出世を考えて立ち回る狡猾な一面も見せている。

アスティカシア高等専門学園には、生徒同士のトラブルを「互いにMSに乗った上での決闘」という形で処理する風習があり、グエルはこの決闘の運営を担う決闘委員会の筆頭の立場である。これが有力な学生によるサークルのようなものなのか、学園に認められたものなのかは不明。
MSの操縦に関しては学園内でも屈指の実力者で、初見の武器を前にしても一撃でやられたりするのでなければすぐさま対策を考える対応力を持つ。接近戦を得意としており、敵の攻撃をかわしながら肉薄して近接兵装での一撃を見舞うのが定番の戦術である。

グエル・ジェタークの搭乗した兵器・MS（モビルスーツ）

グエル・ジェターク専用ディランザ

ジェターク・ヘビー・マシーナリーが開発したモビルスーツ。重装甲と、それを感じさせない機動力が売り。拡張性が高く、個人の趣味や戦術に合わせた専用機が複数存在している。
グエルの機体もこのタイプで、全体的に出力や走行を強化した上で機体色を赤味がかった紫色に変更。さらに兵装に十字状のビームランスを追加し、ブレードアンテナには真っ白な羽飾りのようなものをつけている。

グエル・ジェタークの来歴・活躍

強欲の剛腕御曹司

ジェターク・ヘビー・マシーナリーの社長ヴィム・ジェタークの息子として、何1つ不自由のない生活を送る。文武両面で才覚を発揮する一方、その恵まれた生まれと才能により次第に傲慢な気質を見せ始め、「自分の想い通りにならないことを受け入れず、力づくで従わせる」という我がままで尊大な少年へと成長する。

アスティカシア高等専門学園に入学してパイロットとして頭角を表し、3年生になった頃に1つ年下のミオリネ・レンブランとの婚約が決まる。これは親が勝手に決めたものではあったが、ミオリネはジェターク・ヘビー・マシーナリーも所属するベネリットグループの総帥デリング・レンブランの娘であり、「レンブラン家とのコネクションができるのであれば、自分がいずれ出世する役に立つ」と考えてこれを受け入れる。
一方のミオリネは自分の運命を他人に勝手に決められることを嫌がり、グエルから逃げたい一心で学園からの脱走までをも企てる。さすがのグエルもこれには呆れ、「自分の妻であることをしっかり教育させておく必要がある」と考え、執拗なアプローチを繰り返す。

衝撃の敗北と栄光の陥落

学園からの脱走を企てた際、ミオリネは編入生のスレッタ・マーキュリーという同年代の少女と偶然知り合っていた。自ら教育してやろうとミオリネの下に向かった際、グエルの横暴を目の当たりにしたスレッタからそれを咎められ、売り言葉に買い言葉で決闘を行うこととなる。
絶対的な勝利の確信を持って専用ディランザを駆るも、スレッタは自ら持ち込んだガンダム・エアリアル（以下エアリアル）でそれを圧倒。手も足も出ないまま敗北を喫する。この決闘には「ミオリネの婚約者の座」が賭けられており、勝者となったスレッタにそれを譲ることとなる。結果として、グエルは「ミオリネの婚約者」という立場だけでなく「ホルダー」の称号までも失う。

直後、エアリアルが禁止技術を用いた機体であることが明らかとなり、スレッタとの決闘は無効となる。それでも完膚無きまで徹底的な敗北を喫した衝撃は計り知れず、素直に「ミオリネの婚約者」と「ホルダー」の地位を受け取る気になれず、むりやり従わせようと強引に迫った際に壊したミオリネの温室の片付けを手伝うよう自身の取り巻きに命じる。自身は父のヴィムに呼び出され、「ジェターク・ヘビー・マシーナリーの名に泥を塗る気か」との叱責を浴びることとなった。
その後スレッタとの再戦の機会を与えられるも、ヴィムからは勝利を厳命され、そのために「自動操縦装置を搭載した新型MSダリルバルデにただ乗り込む」という行為を強いられる。さらに異母弟ラウダや学園での取り巻きたちが父に命じられて卑劣な策略を実行し、スレッタを苦戦させるも、「俺の力では勝てないと思われているのか」と悔しさに身を震わせる。

しかしミオリネのサポートで策略を打ち破ったスレッタが反撃に転じると、「ワンパターンな自動操縦では勝てない」と判断して自ら操縦桿を握る。本気を出したその力はスレッタをも驚嘆させるも惜敗し、だかにい MSを降りて対面してからスレッタに「あなたはとても強かった」と称賛される。屈辱でしか無かった一連の事件の中、全力を尽くしてなお及ばなかった彼女だけが自分の力を認めてくれたことに感激し、その場でプロポーズする。これはグエルからしても無意識に出た言葉であるらしく、勢いよく断られた後に「勘違いするな」、「俺がお前に惚れるわけがないだろう」と彼女に釘を刺している。

転変と成長

スレッタに2度目の敗北を喫したことで、改めてホルダーの地位を失う。同時にジェターク社のエースパイロットとしての特権も、新たな乗機として与えられたはずのダリルバルデまでも取り上げられ、ラウダから「これ以上父を怒らせない方がいい」と忠告される。己の矜持を支えていたものを1度に失いつつ、「決闘のルールは守られるべきだ」として事前にスレッタが要求した“ミオリネへの謝罪”をきっちりと実行した。
それからしばらくして、エラン・ケレスという生徒がスレッタを決闘場の点検に連れ出したという話を聞いて大いに焦る。エランは御三家の1つであるペイル・テクロノジーズの後援を受けた生徒で、学園内では自身に匹敵する腕前を持つ凄腕のMSパイロットだった。内心スレッタのことが気になって仕方がないグエルは、「エランに抜け駆けされるのでは」と慌てて決闘場に向かう。

しかし何があったのか、そこでスレッタは呆然と立ち尽くしながら泣き顔を浮かべており、咄嗟に「エランに何かされたのだ」と判断したグエルは激高。エランに食って掛かると、彼は「決闘でケリをつけよう」と言い出し、怒りのままにこれを了承する。ダリルバルデは無く、専用のディランザも修理が終わっていない中、ラウダのディランザをむりやり借りつけて出撃。「自分が勝ったら2度とスレッタに近づくな」という条件の下、猛然とエランの新型MSに襲い掛かる。
元ホルダーとしての実力を存分に発揮して肉薄するも、機体の性能差はいかんともしがたく、頭に血が上っていたせいもあってエランの戦術に踊らされるまま敗北。「学園最強のパイロット」の肩書きにも、ジェターク家の内部における評価にも、致命的な傷を負うこととなった。結果ヴィムからの援助を打ち切られ、ジェターク寮も追い出されてしまい、学園内の森林地域でキャンプ生活を送ることを余儀なくされる。

シャディクの暗躍

その後一応授業には顔を出しつつ、それが終わればキャンプで眠るという日々を送る。直接手を出されることこそなかったものの、グエルに恨みを持つ生徒たちがここぞと集まり、食事中に水をかけられるなどの仕返しを受ける。これにひたすら耐える中、かつて決闘委員会で共に過ごしたシャディク・ゼネリが訪ねてくる。
シャディクはベネリットグループの御三家の1つであるグラスレー・ディフェンス・システムズのCEOの養子で、MSの操縦だけでなく経営者としても破格の才能を持つ人物だった。彼は腕の立つパイロットを必要としているらしく、「ウチの寮に来い」と誘われるも、グエルは「俺との決闘を避けた腰抜けに情けをかけられる謂れはない」とこれを拒絶。シャディクは「お前にならミオリネを任せられると思った」と意味深な言葉を残し、気が変わったら連絡するよう言い残して引き下がっていった。

その後シャディクとミオリネは新会社の発足を巡って6対6の決闘を行うこととなり、足らない分のパイロットを確保するためスレッタと仲間たちは学園内を奔走。そのタイミングでスレッタと再会し、彼女から手を貸してもらえないかと頼まれるが、ヴィムから「決闘するな」と言い含められていたこともあってこれを断る。自身も家族を敬愛するスレッタは、グエルが父の言葉を守ろうとする気持ちはよく分かると言い残し、すんなりと引き下がる。
しかしグエルの父への想いはヴィムに届かず、彼の判断で「学校からの退学」と「ジェターク・ヘビー・マシーナリー」の子会社への出向が一方的に命じられる。

駆け出し社員ボブ

「退学させる」というヴィムの言葉についに耐えられなくなり、父の命令に反抗することを決意。アスティカシア高等専門学園を離れて輸送船の整備会社に就職し、「ボブ」という偽名を使って駆け出し社員として働くこととなる。
真面目な仕事振りで少しずつ評価されるようになるも、この頃ベネリットグループでは改めてデリングを抹殺する計画が進んでいた。その決行日、たまたま現場となるコロニーの近くを輸送船で移動していたグエルは、「フォルドの夜明け」を名乗る武装組織に乗船をジャックされてしまう。

彼らの持ち込んだMSがジェターク社の正規品であることから、「ただのテロリストに用意できるはずがない、何か強力なバックがいる」と見抜くも、ただの整備会社の新人社員でしかないグエルにそれ以上のことはできなかった。フォルドの夜明けはグエルたちの輸送船をカモフラージュにして目標のコロニーに近づき、ジェターク社のMSで出撃。自社の製品が恐るべきテロ攻撃に使われようとしている様を歯痒い思いで見守り続ける。
やがてコロニーへの攻撃が始まると、ベネリットグループも激しい反撃を行う。敵機が自分の乗る船に急接近するのを見たグエルは、「このままでは船ごと撃墜される」と判断し、自分自身と仕事仲間の命を守るためにフォルドの夜明けのMSを奪って脱出。必死に「自分はグエル・ジェタークだ」と呼びかけるも、回線が通じずに“テロリストの機体”だと認識されたまま猛然と追撃される。

自身の操縦技術を尽くして逃げ回るも、いつまでもは避け切れずに被弾し、「このままでは殺される」と感じたグエルは、もう1度スレッタに会いたい一心で反撃。弾を撃ち尽くして接近戦を挑む敵の狙いを完璧に読み切り、どうにか自分を猛追していたMSを撃破する。そして同時に、このMSに乗っていたのが父のヴィムであることを知る。
致命傷を負ったヴィムは、朦朧とする意識の中でグエルに「どこに行っていたんだ、心配したんだぞ」と言い残して機体の爆発に飲み込まれる。自らの手で父を殺してしまったグエルは絶叫し、「人質として使える」と判断したフォルドの夜明けのオルコットに回収されて地球へと拉致されていった。

喪失と再起