スレッタ・マーキュリー（水星の魔女）とは【徹底解説・考察まとめ】

スレッタ・マーキュリーの概要

スレッタ・マーキュリーとは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の登場人物で、アスティカシア高等専門学園に編入してきた少女。
物心ついた頃から水星圏で育つ。水星圏から持ち込んだMS（モビルスーツ／作品世界で戦争の主役となっている人型機動兵器）ガンダム・エアリアルの操縦には熟達しており、編入初日にグエル・ジェタークと決闘してその専用機を撃破するという大金星を挙げる。これにより彼の婚約者だったミオリネ・レンブランの新たな婚約者となるも、もともとこれを意図していなかったこと、自身も女性であることから大いに困惑する。

同作「PROLOGUE」に登場し、ガンダム・ルブリスを起動してベネリットグループのMSを撃墜したエリクト・サマヤとは別人である。

スレッタ・マーキュリーのプロフィール・人物像

所属：アスティカシア高等専門学園
学科：パイロット科
学年：2年生

CV：市ノ瀬加那

『ガンダムシリーズ』の中でも珍しい女性主人公。テレビ版に限れば唯一の女性主人公である。
いくつかの採掘衛星があるだけで、国家と呼べるほどの組織力も経済力も無い水星圏で育ったため、地球圏で見るもの全てが珍しくてたまらないお上りさん。同年代との交流もほとんど経験が無く、若干コミュ障の傾向がある。水星圏では宇宙食のようなものしか食べてこなかったらしく、トマトのことも「初めて見た」と語っている。

一方で頑固なところもあり、自分が正しいと感じたことは譲ろうとしない。特に水星圏から持ち込んだ愛機ガンダム・エアリアルについてはその傾向が強く、「自分たちは誰にも負けない」と主張している。
意図せずして婚約者となってしまったミオリネに対しては、水星圏に同性愛の分化が無かったこともあって戸惑いが先に立っている状態。それでも地球圏に来て初めての友人ということもあって懐いている。

スレッタ・マーキュリーの搭乗した兵器・MS（モビルスーツ）

ガンダム・エアリアル

水星圏から持ち込んだMS。GUNDビット（ガンドビット）という特殊なシステムを搭載しており、攻防一体の活躍が可能。
公式HPで公開されている小説『ゆりかごの星』では自我があるかのように描かれているが、実際にどうなのかは不明。

スレッタ・マーキュリーの来歴・活躍

水星圏の日々

出生に関しては謎が多いが、4歳になる頃には水星圏で暮らすようになっていた。政治力の無い水星圏の人々は、ベネリットグループを敵に回したくない一心で曰く付きの機体と共にやってきたマーキュリー親子を忌避するも、母の根回しによってかどうにか居住権を確保する。
周囲に同年代の人間がいない中、ガンダム・エアリアル（以下エアリアル／ガンダム・ルブリスの改修機である可能性が高い）のコックピットを遊び場に成長。映像記録の中でしか知らない学校や地球圏の生活に夢馳せるようになる。

16歳になった折り、母から「地球圏のアスティカシア高等専門学園に通う」という話を唐突に押し付けられ、これを快諾。初めての学校生活、初めての同年代との交流への期待に胸躍らせる。母は「スレッタとエアリアルを利用したベネリットグループへの復讐」を画策していたが、これにスレッタが気付くことはなく、ただ「学校で勉強して教師になり、水星圏に学校を作り、また多くの人に水星圏に来てもらってかつての賑やかな雰囲気を取り戻したい」と考えていた。

水星から来た“魔女”

アスティカシア高等専門学園への編入初日、ミオリネという少女と出会う。彼女はヴァナディース機関のラボへの襲撃を主導したデリング・レンブランの娘だったが、当人同士はこれを意識することなく知り合い、親しくなる。
アスティカシア高等専門学園には、デリングが定めた「決闘」というルールがあった。これは“生徒同士の揉め事をMSによる決闘によって解決する”というもので、ミオリネはこのルールによって自分の婚約者となったグエル・ジェタークという少年のアプローチに辟易としていた。しかしグエルの方は「レンブラン家の権力が手に入る」とミオリネとの関係を進めることに乗り気で、彼女をむりやり従わせようとしていた。

これを見兼ねて止めに入った結果、売り言葉に買い言葉でグエルと決闘することになる。エアリアルを駆って圧勝するも、この決闘に「ミオリネの婚約者の座」が賭けられていたため、自身が新たな“ミオリネの婚約者”になってしまう。
困惑する中、突如現れた保安部によって拘束され、独房へと叩き込まれる。彼らが言うには「エアリアルは禁止されている技術が用いられている」とのことで、なんのことだか分からないスレッタは突然罪人扱いされたことに打ちひしがれる。

学園屈指のMSパイロットであるエラン・ケレスは、エアリアルとスレッタに興味を持ち、彼女と話をするために独房をこっそり訪れて差し入れを渡す。これを食べながら泣き伏していると、突如ミオリネが独房に現れ、彼女の自由とスレッタの解放が賭けられた決闘をするよう告げる。ミオリネはデリングに直談判し、父が自ら決めた決闘というシステムを使って、自分とスレッタを救うための交渉をまとめてくれたのだ。
その決闘の相手となったのはグエルだった。一度勝った相手だと安堵するスレッタだったが、父のヴィムから「会社の信用のためにも必ず勝て」と厳命されたグエルは、本人も望まぬ卑劣な策略を用いることを強いられていた。「自分1人の力では勝てないというのか」と屈辱に身を震わせるグエルは、しかしミオリネの協力も得てスレッタが策略を打ち破ると、このまま策に従っているだけでは負けると判断。全てをかなぐり捨てて自分の腕だけで彼女に挑む。決闘には勝利するものの、グエルが見せた本気に驚嘆したスレッタはそれを素直に称賛。誰からもその実力を軽んじられる中、“全力を尽くしてなお勝てなかった強敵”であるスレッタだけは自分の力を認めてくれたことに感動したグエルは、彼女に「結婚してほしい」と告げる。

突然のことにスレッタは「嫌です」と返して逃げ出すも、グエルにとってもこの告白は無意識に出てしまったものらしく、後になって「俺がお前に惚れるはずがないだろ」と言葉の上では否定しつつ、“スレッタが勝ったらミオリネに無体を働いたことを謝る”という決闘の際に交わした約束をきっちり守って彼女に謝罪する。

地球寮への編入

地球圏では、スペーシアンこと宇宙出身者であるスペーシアンたちからの、アーシアンこと地球出身者への差別が根深い問題として存在していた。全寮制のアスティカシア高等専門学園でもそれは変わらず、地球寮に住まうアーシアンの生徒たちはスペーシアンの生徒たちから有象無象の悪意と嘲笑を受けていた。
ようやく落ち着いて授業を受け始めたスレッタだったが、MSの実習授業で協力してくれるパートナーが見つからずに困窮。見兼ねたミオリネやエランが助け船を出すも、「編入性のくせに調子に乗っている」と妬んだスペーシアンの女生徒たちの妨害で授業中にMSトラブルが発生。経験はおろか想像もしていなかった同年代からの嫌がらせにショックを受けて泣き出してしまう。

これを眺めて笑う犯人の女生徒たちを見掛けたチュチュが彼女たちに殴りかかり、慌てて止めようとしたスレッタも巻き込まれる。“水星から来た田舎者”としてスペーシアンたちからも若干距離を置かれていたスレッタは、この1件で地球寮の生徒たちから友人として受け入れられ、彼らの勧めで地球寮に入寮することとなった。

エランとの擦れ違いと衝突

地球寮に入ってしばらくした頃、スレッタはエランから「自分のMSは整備中だから、決闘場の点検作業に付き合ってほしい、君のエアリアルを使わせてほしい」との連絡を受ける。自分に優しくしてくれるエランのことを気に掛けるようになっていたスレッタと地球寮での友人たちは、「これはデートのお誘いなのではないか」と盛り上がる。
しかしエランの目的は、点検の口実でスレッタを呼び出し、“エアリアルがガンダムかどうか”を確かめることにあった。ペイル・テクノロジーズは、密かにGUNDアーム関連の研究開発を進めていたが、これを起動した際に生じるパイロットへの致命的な反動“データストーム”の問題は未だクリアできず、この技術的難題をクリアするために様々な強化処置を施した「強化人士」を作成していた。エランはこの4人目の実験体で、GUNDアーム搭載機、つまりはガンダムの操縦のために体のあちこちを切り刻まれ、劇薬を投与される絶望と諦観の日々を続けていたのである。

そんな彼にとって、スレッタは「ガンダムのパイロットということは自分と同じ強化人士かもしれない、苦しみを共有できる仲間かもしれない」という期待を抱かせる存在だった。しかしエアリアルを調べた彼は、この機体自体にデータストームを抑える機能が備わっていることを知って衝撃を受ける。自分たちの相性を占いたい一心で「誕生日を教えてほしい」と乞うスレッタに、エランは「自分には誕生日などない、君は鬱陶しい」と辛辣な言葉を投げかけ、彼女を涙ぐませる。
ここに2人のデートの噂を聞いたグエルが駆け付け、スレッタが泣いているのを見て激高。食って掛かるグエルに、新型MSガンダム・ファラクト（以下ファラクト）の試運転を命じられていたエランが決闘でケリをつけることを提案し、2人は戦うこととなる。性能の劣る機体で善戦するグエルだったが、結局はエランの技術と戦術、ファラクトの性能の前に敗北。勝者の権利として、エランはスレッタに決闘を申し込む。

なぜエランが急に態度を変えたのか分からないスレッタは、なんとか彼と和解しようと「誕生日が分からないなら、今日をあなたの誕生日にしよう」と提案。彼女との決闘を経て、エランは自分にもかつて誕生日を祝ってくれる家族がいたことを、生誕を祝福されるのは喜ばしいことなのだと思い出す。
勝者の権利として、「エランのことをもっと知りたい」と望んだスレッタは、彼と2人で出かけることになる。しかしペイル・テクノロジーズの重鎮たちは、「役目を果たせない強化人士に価値は無い」と判断してエランを処分してしまう。エランがどんな目に遭っているかも知らないまま、待ち合わせの時間になかなか現れない彼を、スレッタは鼻歌混じりに待ち続けるのだった。

株式会社ガンダム

学校に顔を出さなくなったエランを案じる中、“御三家の関係者も顔を出す”というインキュベーション・パーティーの話を聞き、「エランに会えるかもしれない」とミオリネと共にこれに参加する。そこでエランと再会するも、彼が“編入以来何度も会っていたエラン”ではなく“ペイル社の重要人物で、多くの影武者を自分の顔に整形してガンダムの実験に使い潰してきたオリジナルのエラン”であることには気付かなかった。
この時、御三家の重鎮たちは「エアリアルがガンダムである新たな証拠が見つかった」とパーティー会場で宣言。驚くスレッタの前で改めてエアリアルを廃棄処分する決定を進めていくも、これはミオリネが「ガンダムだとしてもエアリアルが優秀なMSであることは変わらない、技術的危険性があるとしても解決してみせる」と言い切ってそのための新会社を設立したことで事無きを得る。

その後パーティー会場で出会ったプロスペラに「エアリアルはガンダムではないよね」と改めて確認するが、彼女はあっさりとこれを否定。母親に騙されていたことを知って唖然とする。後にこれについて「どうして教えてくれなかったのか」と尋ねるが、ガンダムに用いられているGUNDフォーマットは世界から危険視されている技術であること、それゆえに他人に知られればどんな事態を招くか分からなかったという説明で納得している。
ミオリネは「ガンダムでどうやって儲けを出していくか」について考え、様々な人に話を聞いた末に、GUND技術が本来目指していた“医療技術への転用”を提案。スレッタはもちろん、ニカやチュチュなどむりやり社員にされた地球寮の生徒たちもこれに賛同し、もろもろの準備も整い、株式会社ガンダムは第一歩を踏み出すかに思われた。

しかし、ベネリットグループが御三家の1つグラスレー・ディフェンス・システムズのCEOの養子であるシャディク・ゼネリが、「学生が起業する際、新会社で扱う技術は完全に安全性が確認されたものでなければならない」という新たな校則を設けたことにより、株式会社ガンダムはいきなり解散の危機に見舞われる。ミオリネはこの校則を撤回させるためにシャディクに決闘を申し込み、6対6の集団戦が行われることとなった。
地球寮で満足にMSを動かせるのはチュチュくらいで、スレッタはなんとかパイロットを確保しようと学園内のツテを頼る。偶然出会ったグエルにも声をかけるも、彼は父のヴィムから決闘しないよう命じられており、それを理由に断られる。自身も家族を敬愛するスレッタは、父の言葉を守ろうとするグエルの気持ちはよく分かると伝えて、すんなりと引き下がる。

シャディクとその仲間たちとの決闘では、チュチュや地球寮から集めた素人パイロットたちはあっさりと戦闘不能に追い込まれる。ガンダムの基幹システムに干渉するアンチドートによってエアリアルも一時機能停止状態に陥るが、スレッタの呼びかけに応えるように再起動。シャディクのチームの機体を次々と撃破していく。なお数的優位を活かして立ち回るシャディクに追い詰められるも、「誰も信用していないシャディクは最後は自分で決めに来る」と読んでいたミオリネの策により、チュチュと仲間たちが中破した機体を支え合うようにして放った一撃がシャディク機の頭部アンテナを破壊したことで勝利を得る。
シャディクの作った新校則が撤回され、この決闘が宣伝になったこともあり、株式会社会社ガンダムは順調な滑り出しを見せるのだった。

デリング抹殺計画