【羊たちの沈黙】映画のモデルにもなった実在する異常快楽殺人者（サイコパス）たち！【悪魔のいけにえ】

トールマン・カポーティの「冷血」のモデル。モデルというより、本人自身である。
カンザス州ホルカムで家族4人が縛られた挙句射殺された。犯人のペリーとデックは強盗であったが、たった50ドルで4人もの罪もない人間を惨殺した。

刑務所での邂逅

デック（リチャード・ヒコック）はカンザスの刑務所で同室であった、フロイド・ウェルズから聞いた「ガセネタ」が事の始まりであった。
フロイドはデックに被害者である、片田舎ホルカム村の名士であるクラスター氏の隠し金庫を真に受けたのが発端であった。

短絡な犯罪と凶悪さの不釣合い

デックは刑務所を出所すると、相棒であるペリー・スミスと合流し、刑務所で語っていたクラスター氏の家に押し入ることを計画する。
驚くべきことに、この時点で不確定なうわさ話に過ぎない隠し金庫を信じ、被害者を殺すことを決意していたというのは恐ろしいことである。（まさに冷血である）

神は死んだ

デックとペリーは1959年11月15日深夜、ディックとペリーの両名はカンザス州ホルカムのクラター宅に侵入した。裏口のドアには鍵が掛かっていなかった。
実際、クラスター氏は会社経営をしていたが、現金など持ち歩いてはおらず、ましてや隠し金庫など存在すらしていなかったのだが、デックは隠し金庫の存在を疑おうともしなかった。
デックはクラスター氏を縛り上げ、病気で療養中の妻ボニーも捕らえ、さらに二階に寝ていた、息子のケニヨン（15）と娘のナンシー（16）を叩き起こすと、両親と共に浴室に閉じ込めた。
デックは部屋という部屋を探したが、当然金庫など見つからず、見つけたものは僅かな小銭50ドルほどであった。

ちぐはぐの心

ペリーはクラター氏とケニヨンを地下室に連れて行くと、ナイロンのロープで縛り上げた。この時にクラター氏を冷たいコンクリートの床ではなくボール紙の上に寝かせ、ケニヨンの頭の下には枕をあてがう等、一定の気遣いを見せている。そして、2階に戻るとボニーとナンシーをそれぞれの寝室で縛り上げた。その間、ディックはというと、家中の壁をコツコツ叩いて、ありもしない金庫を探し続けた。

結局ペリーははクラスター氏の喉を掻き切り、顔面に銃弾を打ち込んだ。
妻のボニーも二人の子供もその後殺されている。

クラスター氏は人格者で、家族もどこも非の打ち所の無い一家であった。それが、なんの前触れもなく、無慈悲に「冷血」な犯人にとって命を奪われた忌まわしい事件であった。

無意味な時間たち

1959年12月30日、小切手詐欺で逮捕された二人は、うわさ話を吹聴したフロイド・ウェルズからの証言で、クラスター一家殺人事件で逮捕される。ディックとペリーの両名は、5年に渡って控訴審を争った挙げ句、1965年4月14日に絞首刑に処された。
実は彼らから話が聞きたかったカポーティは弁護士を雇い、死刑執行を遅らせたという、カポーティの努力も報われず「冷血」は未完となっている。
自らの本を描き上げるために刑期を軽減しようとしたカポーティこそが「冷血」かも知れない。