タクシードライバー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『タクシードライバー』とは、1976年に公開されたアメリカ合衆国のクライムサスペンス映画。
タクシー運転手として働く帰還兵のトラヴィス・ビックルは、孤独な日々を送っていた。選挙事務所で働く女性ベッツィーに恋をするも上手くいかない。やがて闇ルートから拳銃を仕入れ、自らの筋肉を鍛え始めたトラヴィスはある計画を思いつく。1970年代のニューヨークを舞台に、社会への嫌悪を募らせるトラヴィスの狂気を描いた作品。徐々に明らかになるトラヴィスの鬱屈した感情とラストの銃撃シーンが見所。
『タクシードライバー』の概要
『タクシードライバー』(原題:Taxi Driver)とは、1976年に製作されたアメリカ合衆国のクライムサスペンス映画で、日本では1976年9月18日に劇場公開された。第49回アカデミー賞では4部門ノミネートし、第29回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドール賞を受賞した作品である。
本作の監督はアメリカ合衆国出身のマーティン・スコセッシ。主な監督作品に『グットフェローズ』(1990年)、『ディパーテッド』(2006年)、『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2013年)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023年)などがある。『グットフェローズ』は第47回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞、『ディパーテッド』は第79回アカデミー賞監督賞を受賞している。スコセッシはこうした数々の功績を残しており、アメリカ映画界を代表する監督である。
主人公のトラヴィス・ビックル役を演じたのはロバート・デ・ニーロ。彼は1943年生まれのアメリカ合衆国の俳優で、主な出演作品に『ゴッドファーザーPERTⅡ』(1974年)、『グットフェローズ』(1990年)、『ジョーカー』(2019年)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023年)などがある。スコセッシ監督と一緒に仕事をすることが多く、今までに数々の賞を受賞している。『ゴッドファーザーPERTⅡ』(1974年)ではヴィトー・コルレオーネの青年時代を演じ、第47回アカデミー賞助演男優賞を受賞。本作では1976年に全米映画批評家協会賞で主演男優賞を受賞した。
本作の舞台は1970年代のニューヨーク。主人公のトラヴィス・ビックルは自身の不眠を理由にタクシー運転手の仕事を始めたが、夜のニューヨークを走りながら麻薬や売春にまみれた社会に嫌悪感を募らせていく。そんなある日トラヴィスは、次期大統領候補のチャールズ・パランタイン上院議員の選挙事務所で働く女性、ベッツィーに一目惚れする。そしてなんとかデートにこぎ着けたものの彼女を怒らせてしまい、トラヴィスの恋は終わりを迎えた。そして闇ルートから拳銃を仕入れて自らの筋肉を鍛え始めたトラヴィスは、パランタイン上院議員の暗殺を企てる。
徐々に明らかになるトラヴィスの鬱屈した感情とラストの銃撃シーンが見所で、ネオンが光る夜のニューヨークの風景が印象的な作品である。
『タクシードライバー』のあらすじ・ストーリー
不眠症のタクシー運転手
ベトナム戦争帰りのトラヴィス・ビックルは、不眠症を理由にニューヨークのある小さなタクシー会社に就職する。トラヴィスは早速タクシー運転手として働き始めるが、どんな客も乗せることから「守銭奴」というあだ名を同僚たちから付けられていた。ニューヨークの街をタクシーで走り、夜勤が終わったトラヴィスはその足でポルノ映画館に行く。そして売店の女性店員に「名前は?俺はトラヴィス」と話しかけるが冷たくあしらわれてしまう。
孤独だったトラヴィスはある日、次期大統領候補のチャールズ・パランタイン上院議員の選挙事務所で働く女性、ベッツィーに一目惚れをした。事務所で働く彼女をタクシーから見つめるトラヴィス。そして数日後にトラヴィスは改めて選挙事務所を訪れ、ベッツィーの手伝いをしたいと申し出る。ベッツィーはそんなトラヴィスに興味を示し、休憩時間にカフェで話をすることになった。そしてカフェで出身や仕事の話を交わし、トラヴィスは「よかったら映画でも?」と彼女に次のデートの誘いをした。
その後ベッツィーと別れ、仕事に戻ったトラヴィスは偶然にもチャールズ上院議員を客として乗せることになる。トラヴィスは、「いつも応援している」とチャールズに激励の言葉を投げた。するとチャールズが「この国で不満に思っていることはないか」と問いかけてきたため、「クズどもで溢れかえるこの街を一掃してほしい」とトラヴィスは語った。チャールズを目的地で降ろした後、トラヴィスは窓から彼と握手を交わしたのだった。それから少しして、トラヴィスの元に焦った様子の少女アイリスが乗り込んでくる。だが彼女はポン引きの男であるスポーツによって強引にタクシーから引きずり降ろされてしまった。その様子を見ていたトラヴィスは、アイリスのことが気になったものの干渉せずにいることにした。
初デートの失敗
ある日、約束のデートに出かけるトラヴィスとベッツィー。だがトラヴィスはポルノ映画館に彼女を連れて行き、憤慨させてしまう。引き留めるトラヴィスを振り切り、ベッツィーはその場を去ってしまった。後日、謝罪をしようとトラヴィスは事務所に電話を掛けるがベッツィーは当然出てくれない。そのことに逆上したトラヴィスは事務所に直接乗り込んで「殺してやる」とベッツィーに暴言を吐いた。そしてベッツィーの同僚であるトムによってトラヴィスは事務所を追い出されてしまう。
再び孤独になってしまったトラヴィスは、タクシーで夜の街を走る。すると1人の男性客が乗り込んできた。その男はタクシーでアパートの前まで行くと、自分の妻が黒人男性と浮気していることを話し始めた。そして男はマグナムで妻を撃ち殺すつもりだと言う。トラヴィスはそんな男の話を黙って聞いていた。
トレーニング
トラヴィスは拳銃の密売人をしているイージー・アンディに会う。部屋の一室でイージーから様々な種類の武器を紹介してもらい、トラヴィスはマグナムやワルサーを仕入れた。それからトラヴィスは鈍った体を鍛え直す日々を送り、銃撃の練習を始めた。腕立て、懸垂などのトレーニングを毎日欠かさず行う。
そんなある日トラヴィスは、チャールズ上院議員の演説準備をしている会場を訪れ、シークレットサービスの男性に「あんたシークレットサービスだろ」と声を掛けた。トラヴィスの問いかけにシークレットサービスは怪訝な表情を浮かべたが、トラヴィスが続けて「銃はどんなの持ってる?」と質問すると「そんなに興味があるなら応募に必要な書類を送ろう」とシークレットサービスが答えた。
トラヴィスは自室に戻って鏡を見ながらホルスターの拳銃を抜いて素早く取り出す練習を始め、「俺に用か?」と繰りかえし呟いた。そして、「この腐りきった世の中に、鉄槌を下す男がここにいる」という文章を日記に書き記す。
ある時、トラヴィスは路肩にタクシーを止め小売店の店主と軽く挨拶を交わし、店内を物色していると、黒人の強盗に出くわした。店主に拳銃を向けて「店の金を出せ」と脅している強盗を、トラヴィスは拳銃で撃ち殺す。その後「俺は拳銃の許可証を持っていない」と言って焦るトラヴィスだったが、店主が「ここは俺に任せておけ」と言って店から逃がしてくれたので、トラヴィスは捕まらずに済んだ。
アイリスとの再会
ある時トラヴィスはアイリスと再会し、彼女に話しかけると売春婦をしていることを知った。そしてポン引きのスポーツの元に行くと、そこでアイリスが13歳であることも知る。そしてトラヴィスがアイリスと共に部屋に行くと、アイリスがすぐに服を脱ごうとしたためトラヴィスは彼女の動きを止めた。そして「君を助けたい」とトラヴィスが言うと、アイリスは「明日の1時に一緒に朝食を取ろう」とトラヴィスを誘った。
後日遅めの朝食を取り、トラヴィスは「こんな生活から抜け出すべきだ」とアイリスを説得した。その後トラヴィスの説得のおかげで「この仕事が嫌」とスポーツに言うことができたアイリス。だがスポーツは「お前が必要なんだ」と甘い言葉を投げかけてアイリスを引き留めた。
暗殺の失敗と売春宿の銃撃戦
アイリスと食事をした数日後、トラヴィスはアイリスに置き手紙と現金を残してチャールズの演説会場を訪れた。髪型をモヒカンに変え、サングラスをかけたトラヴィスは徐々にチャールズに近づく。そこで拳銃を取り出そうとしたところ、シークレットサービスに怪しまれたためトラヴィスは急いでその場を走り去った。
計画が失敗に終わったトラヴィスは、タクシーでスポーツの元に訪れた。そして「やあスポーツ」と挨拶するが、スポーツの方はトラヴィスを覚えていない。それどころか「とっとと消えろ」と追い返されそうになったため、トラヴィスは拳銃でスポーツの腹部を撃ち、その足で売春宿に入って中にいた男たちを次々と撃ち殺していった。その後腹部を撃たれたスポーツが反撃しようとトラヴィスの元に現われたため、トラヴィスはスポーツも撃ち殺した。隙をついて、アイリスの客がトラヴィスの腕を撃ち抜くが、トラヴィスは怯むことなく客に反撃し、容赦無く撃ち殺すのだった。最後にトラヴィスは、自殺を試みようと引き金を引くが弾切れとなる。そこで自分のこめかみに血まみれの手を当て拳銃を撃つポーズをしているところに、大勢の警察がやってくる。
ヒーロー
アイリスを救い出したトラヴィスは、ヒーローとして新聞に取り上げられ、アイリスの両親から手紙を受け取った。
数日後、仕事に戻ったトラヴィスはタクシーを走らせると偶然ベッツィーを客として乗せることになる。「新聞の記事を見たわ。大丈夫?」と気遣うベッツィーに、「ああ。新聞はいつも大げさだから」とトラヴィスは言う。そして、「いくらかしら」と降りた後に料金を尋ねるベッツィーを無視してトラヴィスは再びタクシーを走らせ、夜の街に消えてゆくのだった。
『タクシードライバー』の登場人物・キャラクター
主要キャラクター
トラヴィス・ビックル(演:ロバート・デ・ニーロ)
吹替:津嘉山正種(TBS版) 宮内敦士(ソフト版)
本作の主人公でベトナム戦争帰りの元海兵隊員。戦争の影響で不眠症になったため、タクシー運転手として働き始めた。退廃した街の風景に嫌悪感を抱きながら孤独な日々を過ごしている。選挙事務所で働いているベッツィーに一目惚れしてデートに誘うが、ポルノ映画館に連れて行ったことで彼女を怒らせてしまう。そしてチャールズ上院議員の演説中に彼を暗殺しようとするが、シークレットサービスに怪しまれて失敗に終わった。その後売春宿を銃撃し、アイリスを救ったヒーローとして持ち上げられた。
ベッツィー(演:シビル・シェパード)
吹替:田島令子(TBS版) 井上喜久子(ソフト版)
チャールズ上院議員の選挙事務所で働いている女性。トラヴィスにデートに誘われるが、ポルノ映画館に連れて行かれて憤慨する。その後選挙事務所に乗り込んできたトラヴィスに暴言を吐かれる。トラヴィスが英雄として扱われた後、ベッツィーは偶然トラヴィスのタクシーに乗り込んだ。
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目次 - Contents
- 『タクシードライバー』の概要
- 『タクシードライバー』のあらすじ・ストーリー
- 不眠症のタクシー運転手
- 初デートの失敗
- トレーニング
- アイリスとの再会
- 暗殺の失敗と売春宿の銃撃戦
- ヒーロー
- 『タクシードライバー』の登場人物・キャラクター
- 主要キャラクター
- トラヴィス・ビックル(演:ロバート・デ・ニーロ)
- ベッツィー(演:シビル・シェパード)
- アイリス(演:ジョディ・フォスター)
- スポーツ(演:ハーヴェイ・カイテル)
- 選挙事務所の関係者
- トム(演:アルバート・ブルックス)
- シークレットサービス(演:リチャード・ヒッジス)
- チャールズ・パランタイン(演:レナード・ハリス)
- タクシー会社の関係者
- タクシー会社の受付(演:ジョー・スピネル)
- ウィザード(演:ピーター・ボイル)
- ドーボーイ(演:ハリー・ノーサップ)
- その他
- イージー・アンディ(演:スティーヴン・プリンス)
- 強盗に入る黒人(演:ナット・グラント)
- タクシーの客(演:マーティン・スコセッシ)
- メリオ(演:ヴィクター・アルゴ)
- ポルノ映画館の売店で働く店員(演:ダイアン・アボット)
- 『タクシードライバー』の用語
- ベトナム戦争
- ポルノ映画館
- ニューヨーク
- 『タクシードライバー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- トラヴィス・ビックル「Thank God for the rain to wash the trash off the sidewalk.(雨は歩道のゴミを洗い流してくれるからいい)」
- トラヴィス・ビックル「You talkin' to me?(俺に用か?)」
- 売春宿の銃撃戦
- 『タクシードライバー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「You talkin' to me?(俺に用か?)」というセリフはロバート・デ・ニーロのアドリブ
- 映画がきっかけでレーガン大統領暗殺未遂事件が起こる
- ポルノ映画館で働く店員はロバート・デ・ニーロの元妻
- 役作りで実際にタクシー運転手として働くロバート・デ・ニーロ
- アイリスを演じたジョディ・フォスターは当時13歳
- 『タクシードライバー』の主題歌・挿入歌
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Main Title (from "Taxi Driver")』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Thank God for the Rain』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Cleaning the Cab』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『I Still Can't Sleep / The Cannot Touch Her (Betsy's Theme)』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Phone Call / I Realize How Much She Is Like the Others / A Strange Customer / Watching Palantine On TV / You're Gonna Die In Hell / Betsy's Theme / Hitting the Girl』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『The .44 Magnum Is a Monster』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Getting Into Shape / Listen You Screwheads / Gun Play / Dear Father & Mother / The Card / Soap Opera 』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Sport and Iris』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『The $20 Bill / Target Practice』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Assassination Attempt / After the Carnage』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『A Reluctant Hero / Betsy / End Credits』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Diary of a Taxi Driver』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『God's Lonely Man』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Theme from Taxi Driver』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『I Work the Whole City』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Betsy In a White Dress』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『The Days Do Not End』
- 挿入曲:バーナード・ハーマン『Theme from Taxi Driver (Reprise)』
- 挿入歌:Jackson Browne『Late For The Sky』
- 挿入歌:The Five Keys『Ling Ting Tong』
- 『タクシードライバー』のオリジナルサウンドトラック