悪魔のいけにえ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『悪魔のいけにえ』とは1974年に公開されたアメリカのホラー映画である。監督・製作・脚本をトビー・フーパーが務めた(脚本はキム・ヘンケルと共作)。テキサス州に帰郷した五人の男女が、人の皮で作ったマスクを被った大男のレザーフェイス(ガンナー・ハンセン)とその一家に不条理に襲われ殺害されていく物語である。ホラーながらも笑えるシーンも多々あり、無名俳優を起用し低予算で製作されながらも、人気のある作品である。

『悪魔のいけにえ』の概要

『悪魔のいけにえ』とは、1974年に公開されたアメリカのホラー映画である。監督・製作であるトビー・フーパーは、脚本についてもキム・ヘンケルと共に務めた。フーパーは、無名俳優を起用し14万ドル以下で製作した。限られた予算内で素早く撮影する事で、機材のレンタル費用を抑えるなどの工夫をした。内容が暴力的であったことから配給会社を探すのに苦労した上、いくつかの国では上映禁止や中止になった。しかも批評家からは賛否両論であった。一方で収益性は高く米国内興行収入は高く、1974年には1650万枚以上のチケットが販売された。非常に人気の高い映画である。

サリー(マリリン・バーンズ )と兄で車椅子のフランクリン(ポール・A・パーテイン)、サリーの恋人のジェリー(アレン・ダンジガー)、友人のカーク(ウィリアム・ヴェイル)とパム(テリー・マクミン)は、墓荒らしが頻発していたテキサス州にやって来る。サリー家族の墓がそこにあり、家の墓が気になって帰郷したのである。道中車内で楽しく会話をしていた五人であったが、一人のヒッチハイカー(エドウィン・ニール)を車に乗せる。車内でヒッチハイカーは喋り続け、笑いながらナイフで自分の手を切ってみせたり、奇妙な行動を繰り返し挙句フランクリンをナイフで傷つけた。恐ろしくなった五人はヒッチハイカーを無理矢理車から放り出すのだった。途中訪れたガソリンスタンドの店主である老人(ジム・シードウ)にバーベキューを勧められた五人であった。老人の誘いを断った五人は、サリーの実家の跡地へと向かった。カークとパムカップルは、サリーの実家に着いた後二人で小川に遊びに行く。そこで自家発電機を使っている家を発見し、ガソリンを分けてもらう事を思いついたカークだった。しかし家の中に入ったカークを人の皮で作ったマスクを被っている大柄の男、レザーフェイス(ガンナー・ハンセン)がハンマーで撲殺した。その後カークの後を追って家に入ったパムもレザーフェイスに捕まり、ミートフックに吊るされる。レザーフェイスはパムの目の前でカークの死体を切り刻んだ。カークとパムを心配して探しに来たジェリーも、冷凍庫でパムの死体を見つけた後、撲殺された。夜になり、暗闇の中戻らない三人を心配したサリーとフランクリン兄妹が探しに向かう。すると暗闇からチェンソーを振り回すレザーフェイスが現れる。フランクリンは惨殺され、サリーは必死で逃げるがレザーフェイスはどこまでも追ってくる。なんとかガソリンスタンドに逃げ込んだサリーであったが、ガソリンスタンドの老人はレザーフェイスの家族の一人であった。老人に捕まったサリーは、レザーフェイスの一家の住む家に連れて行かれる。そこには一家の父親でじい様と呼ばれているグランパ(ジョン・ドゥガン )や、三男のヒッチハイカーの男、四男のレザーフェイスがいた。サリーはそこで、ミイラの様なグランパの手によって撲殺される所であったが、隙をついて脱走した。サリーを追いかけて来たヒッチハイカーの男は、通りかかったトラックに轢かれて死ぬ。レザーフェイスもサリーを追ってやって来たものの、サリーは次にやってきたトラックの荷台に乗る事に成功した。サリーは狂ったようにレザーフェイスを嘲け笑い、サリーを取り逃したレザーフェイスは朝焼けの中で、怒り狂う様にチェーンソーを振り回した。

この映画の見どころとしては、ホラー映画でありながら笑えるシーンがある所である。笑える所や間抜けな所があるからこそ、現実味があり恐怖が増すのである。

『悪魔のいけにえ』のあらすじ・ストーリー

奇妙なヒッチハイカー

1973年8月18日、テキサス州ニュートンの墓地でグロ手クスな芸術作品が見つかった。腐敗が進んだ死体を繋ぎ合わせた、モニュメントが発見されたのだった。その墓地に祖父の墓があり、近くに実家跡地のあるサリー(マリリン・バーンズ)と兄で車椅子のフランクリン(ポール・A・パーテイン)、サリーの恋人のジェリー(アレン・ダンジガー)、友人カップルのカーク(ウィリアム・ヴェイル)とパム(テリー・マクミン)は、車でテキサス州に訪れていた。祖父の墓が荒らされていないか心配していたサリーだったが、道中車内ではみんなと楽しく過ごしていた。しかし食肉処理場の傍を通った時、悪臭が車の中に漂ってくる。さらに、食肉になる動物がどのように処理されるかをフランクリンが話始め、皆を更に不快にさせるのあった。少し行くとヒッチハイカー(エドウィン・ニール)を見つけ、車に乗せてあげることにした。乗って来たヒッチハイカーは、気味の悪い笑顔を浮かべながら喋り続ける。ヒッチハイカーの男の家族は全員肉を扱っていると言い、動物を処理している写真を皆に見せる。そしてヒッチハイカーはフランクリンの持っているナイフをとり、自分の手の平を切って見せるのだった。笑いながらフランクリンにナイフを返すヒッチハイカーだったが、車内は凍り付く。更にヒッチハイカーは、首にかけているポラロイドカメラでフランクリンを撮り、写真代を請求するのだった。しかし、払うつもりがない事をヒッチハイカーに伝えると、写真に火薬をふりかけ燃やすのだった。おまけにヒッチハイカーは持っていた剃刀で、フランクリンを切りつけた。ヒッチハイカーの異常な行動に恐怖を感じたサリーたちは、無理矢理車からヒッチハイカーを放り出す。ヒッチハイカーは憤慨し、車に蹴りかかり自分の血を車につけたのだった。
一行はガソリンを給油しに、通りかかったガソリンスタンドに立ち寄った。しかしガソリンを運んでくる輸送タンクがまだ来ていない為、ガソリンは無いとスタンドの店主である老人(ジム・シードウ)が言う。近くにガソリンスタンドも無く、ここでバーベキューを食べて行けばいいと老人は一行を誘う。しかし、サリーたちはサリーの実家跡に向かう事にした。その際、車にヒッチハイカーの血がついている事にサリーは気が付くのだった。フランクリンは、ヒッチハイカーが追ってこないかと不安になるのであった。

レザーフェイスの登場

サリーの実家跡地では、廃墟になった家でサリーたちがはしゃいでいた。しかし車椅子のフランクリンは、うまく車椅子で動けず機嫌が悪いのであった。そんな中恋人同士のカークとパムが、家の傍の小川に泳ぎに行きたいと、出掛けて行く。しかし小川があった辺りに行くと、小川の水は枯れ果てていた。小川の傍に自家発電をしている家を見つけたカークとパムは、ガソリンを売ってもらう為家を訪ねるのだった。しかし、ドアをノックしても返答がなく誰も居ない様子であった。カークはパムを置いて、一人で家の中へ入っていった。すると玄関から見えた奥の部屋には、様々な動物の頭の剥製が飾られていた。奇妙に思いながらも部屋の方に行ったカークは、突然目の前に現れた人の皮で作ったマスクを被っている大男のレザーフェイス(ガンナー・ハンセン )にハンマーで撲殺される。一方家の庭にいたパムは、カークの声がしない事を心配し、家の中に入るのだった。奥の部屋に入っていくと、大量の骨が転がっていた.。人骨や動物の骨で作られた数々の作品を目にしたパムは、恐怖で吐いてしまう。そして現れたレザーフェイスから必死で逃げようとしたが、捕まってしまいミートフックに体を吊るされてしまう。目の前にはカークの死体があり、パムの前でレザーフェイスはカークをチェンソーで切り刻むのであった。
一方、なかなか戻らないカークとパムの心配をしていたサリーたちであった。そこでジュリーがカークたちを探しに行くことにした。2人が行ったと思われる小川に行き、家を訪ねたジェリーは奥の部屋に入るが、そこにカークたちの姿はなかった。そして置いてある冷凍庫を開けると、中にはパムが入っているのを発見したが、レザーフェイスが現れ撲殺されてしまうのだった。

ガソリンスタンドの老人

夜になっても戻らないジュリーたちを心配したサリーは、探しに行こうとするが車のキーがない事に気が付く。それでも歩いて探しに行こうとするサリーをフランクリンは止めるが、聞く耳を持たないサリーであった。車椅子で体が思うように動かないフランクリンは、その場に一人残される恐怖から強引にサリーについていく。しかし足場の悪い山道で、思うように車椅子を押しながら歩けないサリーであった。暫くするとサリーとフランクリンは、灯りのついた家を見つけた。すると目の前にレザーフェイスがいきなり現れ、フランクリンをチェンソーで切りつけ殺害した。逃げるサリーを、レザーフェイスはどこまでも追いかけて来るのだった。レザーフェイスの家に逃げ込んだが、家のものをチェンソーで破壊しながら追いかけて来るレザーフェイスだった。しかしサリーはなんとかその場を逃げ、昼間のガソリンスタンドまで逃げ込むことが出来たのである。そこにいた老人に、サリーはあった事全てを話した。レザーフェイスの姿はどこかに消えており、老人はなんとかサリーを落ち着かせた。老人は車をとりに行き、戻って来るとほうきでサリーを何度も殴り気絶させた。その後縄でサリーを縛ると、意識を取り戻したサリーに袋をかぶせて、車に乗せた。一旦は車にエンジンをかけたが、急にエンジンを止め、「そうだ!」と言って店の電気を消し、扉を閉めて車に戻って来るのであった。そしてサリーに「電気代もばかにならんからな」と言い、レザーフェイスのいる家へと向かうのであった。老人はレザーフェイスの兄なのであった。途中ヒッチハイカーを見つけた老人は、ヒッチハイカーをトラックの荷台に乗せて再び走り出した。ヒッチハイカーは老人の弟で、レザーフェイスのもう一人の兄であった。
家に着いた老人とヒッチハイカーは、サリーを中に運び、椅子に縛り付けるのであった。老人は、レザーフェイスが家を破壊している事に激怒し、棒でレザーフェイスを殴る。その後老人は、夕食を作るから二階にいるじい様(ジョン・ドゥガン)を連れて来る様にヒッチハイカーとレザーフェイスに言うのだった。じい様とは、三人の父親の事であった。

じい様と殺人一家

二階から、ヒッチハイカーとレザーフェイスに連れて来られたじい様は、自力では歩く事も出来ないミイラの様な出で立ちであった。そしてじい様をサリーの前に連れて来ると、サリーの指を切ってじい様に血を吸わせるのであった。サリーの血を吸うじい様は、椅子に座ったまま楽し気に踊っていた。サリーはその異常な光景に、気を失ってしまうのであった。
サリーが意識を取り戻すと、レザーフェイスたちは食卓を囲んでいた。助けを乞いながら泣き叫ぶサリーだったが、レザーフェイスたちは楽しそうにその姿を見るのだった。老人の役割は、死んだものを料理する事で、殺しは楽しめない為いつもレザーフェイスとヒッチハイカーで殺しをしていた。ヒッチハイカーは「じい様は一番の名人だから、じい様にサリーを殺して貰おう」と提案した。じい様にハンマーを持つ力は無く、何度も床にハンマーを落とす為、レザーフェイスがじい様の手を支えるがうまくいかないのだった。もたついている隙を見て、サリーは部屋の窓を破って逃走した。ヒッチハイカーはサリーを追いかけて、道路にでた。ヒッチハイカーはやって来たトラックに轢かれ、死んでしまう。続けてチェンソーを持って追いかけて来るレザーフェイスを、間一髪で交わし、ヒッチハイカーを轢いたトラックの車内からレンチを取る運転手は、レザーフェイスにめがけてレンチを投げた。運転手の投げたレンチはレザーフェイスに当たり、転んだ拍子に持っていたチェンソーが足に落ち足を負傷してしまう。トラックの運転手は逃げ去り、サリーはたまたまやって来た別のトラックの荷台に乗せてもらい逃走する。サリーは、小さくなっていくレザーフェイスを嘲笑い続けた。一人路上に残されたレザーフェイスは、朝焼けの中で踊り狂いながらチェンソーを振り回すのであった。

『悪魔のいけにえ』の登場人物・キャラクター

サリー・ハーデスティ(演:マリリン・バーンズ)

兄のフランクリン(左)とサリー(右)

主人公で、フランクリンの妹でジュリーの恋人である。次々と仲間が殺されていく中、唯一の生き残りである。
レザーフェイスたちに捕まってもなお、諦めることなく戦い続けた女性である。
心に問題を抱えた車椅子の兄と、よく言い争いをするものの見捨てることなく、しっかり者の妹である。

ジェリー(演:アレン・ダンジガー)

サリーの実家跡に訪れたカーク(左手前)パム(左二番目)ジェリー(左奥)サリー(右奥)フランクリン(右手前)

サリーの恋人である。サリーの実家を訪れる際、運転手を務めた。
カークとパムが遊びに出掛けたまま帰らない事を心配し、探しに行くが、レザーフェイスによって殺害されてしまう。

フランクリン(演:ポール・A・パーテイン)

実家跡に到着したパム(左)カーク(中央奥)サリー(右奥)フランクリン(中央)

サリーの兄で車椅子に乗っている。精神的に不安定であり、喜怒哀楽が激しい。
臆病者で我儘な為、サリーとよく言い争いになる。
サリーとジェリーを探しに行った際、レザーフェイスに殺害された。

カーク(演:ウィリアム・ヴェイル)

車内でヒッチハイカーと話すフランクリン(左)パム(中央)サリー(右奥)カーク(右)

パムの恋人である。我儘なフランクリンの世話をしている。
パムと遊びに出掛けた際、たまたま見つけた家でレザーフェイスに撲殺され、死体を切り刻まれる。

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