世界最速のインディアン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『世界最速のインディアン』とは2005年のニュージーランド・アメリカ合衆国の伝記映画である。実在のライダであるバート・マンローの話を元にした伝記作品であり、監督はロジャー・ドナルドソン、出演はアンソニー・ホプキンスが務めた。初老のライダー、バート・マンローは、愛機「1920年代インディアン・スカウト」で世界最速記録に挑戦することが長年の夢であった。ある日自身の老い先が短いことを悟ったバートは、人生最後のチャンスとしてバイカーの聖地「ボンネビル塩平原」へ向かう決断をする。

『世界最速のインディアン』の概要

『世界最速のインディアン』とは2005年公開されたニュージーランド・アメリカ合衆国の伝記映画。監督はロジャー・ドナルドソンが務め、主人公を演じるのは『羊たちの沈黙』などで知られる名優アンソニー・ホプキンス、道中に出会う初老の女性エイダをダイアン・ラッドが務めた。
1000cc以下オートバイの地上最速記録保持者バート・マンローの実話を基にした作品。「1920年型インディアン・スカウト」が最速のスピードで疾走する迫力ある描写、ニュージランドからアメリカのボンネビル塩平原へ向かう過程で出会う様々な人たちとの触れ合いが見所である。
世界興行収入は1830万ドル、Rotten Tomatoesによれば143件の評論のうち高評価は82%にあたる117件であり、日本において2007年度チケットぴあの満足度ランキング外国語部門で一位に輝いた。

67歳を迎えるバート・マンローには叶えたい夢があった。バイカーの聖地ユタ州ボンネビル塩平原に渡り、長年かけて改造を繰り返してきたオートバイ「1920年型インディアン・スカウト」で世界最速記録に挑むことだった。そんなある日、狭心症による心臓発作で倒れたバードは自身の老い先が短いことを悟り、自身の家を担保にいれて渡米の決断をする。周囲からは無謀だと囁かれるも夢に向かい人生をかけた大勝負に挑むバード。インディアン・スカウトを船に積み込み、ニュージランドからアメリカ・ユタ州にあるボンネビル塩平原に向けて大いなる旅がはじまるのだった。

『世界最速のインディアン』のあらすじ・ストーリー

渡米の決断

物語の舞台は1960年代。ニュージーランドの南端に位置する田舎町インバーカーギルに、67歳のライダーのバート・マンローが住んでいた。彼にはアメリカのボンネビル塩平原に渡り、愛機「1920年型インディアン・スカウト」で世界最速記録に挑戦するという、大きな夢があった。その為にバートは40年以上もスピードを求めインディアン・スカウトの改造に勤しんでいた。
バートの誕生日が訪れると、友人たちがホールを借りてパーティをひらいてくれた。多くの友人に囲まれ幸せの一時を過ごすバートだが、突然地元の暴走族の一団がパーティに乱入し、場はただならぬ雰囲気となる。良くも悪くも変わり者としてちょっとした有名人であるバートに、暴走族は面白半分でバイクレースを持ちかけ、バートはそれを了承する。
翌朝海岸にて集まったバートと暴走族の一団。バートのインディアン・スカウトには多くの改造が施されており、部品のほとんどが日用品で補強されていた。スタートラインに並び開始の合図と共に暴走族の一団は一斉に走りだすが、バートのインディアン・スカウトはエンジントラブルを起こしスタートラインで止まってしまう。
友人たちに押してもらう形でやっとエンジンが作動し、出遅れてのスタートを切ったバート。軌道に乗りだすとグングンとスピードを上げていき、瞬く間に暴走族の一団を追い抜いていった。このまま折り返し地点を曲がり走り抜けば勝利は確実であったが、あまりのスピードで走行しているため曲がることが出来ず豪快に転倒してしまう。そのまま追い抜かれていきレースは暴走族の勝利で幕を閉じた。
レース後、馴染みの女性フランの家にいたバートは突然倒れてしまう。すぐさま病院に運ばれ大事には至らなかったが、医師から狭心症による心臓発作と診断され、薬は常に持参しバイクに乗るのは禁止と言われてしまう。死を間近に感じたバートは悔いのない人生を全うするため、バイカーの聖地「ボンネビル塩平原」へ向かうため渡米の決断をする。しかし今まで倹約しながら貯蓄をしてきたものの、まだアメリカまでの渡航費が足りない状況であった。途方に暮れるバートにフランは先日のレースを観て感銘を受けたこともあり、家を担保に入れてはどうかとアドバイスする。早速銀行に赴き、借入金を借りる手続きを済ますことで渡米への第一歩を踏み出した。バートがいよいよ旅立つことは噂となり、誰もが無謀だと話していた。隣の家に住む少年トムはバートと仲が良く、彼の夢への挑戦を心から応援していた。事故が怖くないのかと訊ねたトムに対してバートは「このマシンでスピードに挑む時は5分だが一生に勝る。一生よりも充実した5分間だ」と答えた。
出発の日、フランにバイク運びを手伝ってもらい、港に到着したバート。見送りにはフランだけで少々寂しげに感じていると、いつぞやの暴走族の一団が駆けつけ餞別だと言い幾らかの金をバートに渡すのだった。出港の時間が迫り、インディアン・スカウトを船に詰め込み終わるとフランと暴走族たちの声援を貰いバートは長年の憧れだったバイカーの聖地「ボンネビル塩平原」を目指しアメリカへ渡るのだった。

アメリカ上陸

渡航中、船の雑用を手伝ってくれれば船賃タダにしてもらえるとのことで、船乗りたちに混ざり料理係を引き受けたバート。朗らかな人柄もあって船員たちと馴染み、何事もなく船はロサンゼルスに到着した。半年間のアメリカ滞在の許可をもらったバートだったが、バイクは通関手続きがある為、2日後にまた来るようにと言われ、ひとまず今日泊まる宿を探す。しかしタクシーを拾えたものの、運転手の態度は冷たく適当なホテルを案内され運賃も高くぼったくられてしまい、降り立った矢先に花売りの女から強引に法外な値で花を買わされたりと酷い扱いを受ける。ホテルに入ったバートはフロントの女性ティナ・ワシントンに声を掛ける。最初は訝し気味に対応するティナだったが、バートの礼儀正しく朗らかな人柄に触れるにつれ好印象を抱く。翌朝ティナから朝食に誘われ、彼女から実は女装した男性だと告げられるもバートは「関係ない。君はいい子だ」と答え、ますますティナを喜ばせた。インディアン・スカウトを運ぶ車が必要な為、ティナに中古車店に連れていってもらったバート。出費を抑えるためエンジン調整諸々は自分で行うと店のオーナーのフェルナンドに値引き交渉をし、早速車の調整に取り掛かる。長年のバイクいじりで培ったその手際の良さはフェルナンドを感心させ、文句を言いながらも徹夜で調整するバートに夜遅くまで付き合ってくれた。日が昇り、車の調整を終えたバートにフェルナンドは他の車の調整も頼みこむ。仕上げたその具合の良さからバートの腕を気に入り、「このままここにいろよ」と勧誘するがバートは丁重に断るのだった。購入した車に手作りの牽引用台車を取り付けると、インディアン・スカウトを引き取りに税関に向かう。到着するやいなや荷運びの操作ミスでバイクの入った木箱が粉々に大破されており、戸惑いを隠せないバートだったが幸い中身のインディアン・スカウトは無傷であった。トラブルの連続だったが全ての準備が整い、改めてボンネビル塩平原に向けて車を走らせるのだった。
果てしなく続く荒野の道を進むバート。このまま何事もなくボンネビル塩平原に着けるかと思ったが、車に取り付けた牽引用台車のタイヤが外れてしまい、載せていたインディアン・スカウトが横転してしまう。幸いバイクに支障はないものの途方に暮れるバートの前に一台の車が通りかかる。中からインディアンの男性ジェイクが現れ、事情を理解すると横転したバイクを一緒に立て直してもらい、日が暮れていることからジェイクの家に泊めてもらうことになった。旅の目的から他愛のない話ですっかり意気投合するバートとジェイク。翌朝、同じ前立腺の痛みに悩む同士として伝統の特効薬とお守りをジェイクから貰い、バートは灰皿代わりにと予備のピストンをプレゼントした。応急措置として手頃な枯れ木で台車を補強し、車の速度を落としながら慎重に旅を続けるバート。しばらく進むといくつかの廃車が並んだ農場を発見し、バートは車を乗り入れる。そこには夫に先立たれた未亡人エイダが一人でおり、事情を説明し承諾を得ると廃車の部品から修理を行った。最初は警戒していたエイダだったが、話していくにつれバートを気に入り今夜泊まっていくよう勧める。夫が亡くなってから12年経ち一人で農場を切り盛りしてきたエイダに、バートはその孤独に寄り添うよう優しく接するのだった。出発の朝、帰りにはもう一度顔を出すと約束し、万全の状態でエイダの農場を後にする。
道中、狭心症の発作でしばらくサービスエリアで休んでいると、若い軍人のラスティがソルトレイクシティまで乗せてくれないかと尋ねてくる。ラスティはベトナム戦争に参加している軍人であり、休暇を利用して恋人に会いにきたのだ。同じ方向だからと快く了承したバートはラスティを乗せて車を走らせる。バートの目的地であるボンネビル塩平原まであと少しであり、ラスティとの会話を楽しみながらソルトレイクシティに到着する。ラスティはバートの年齢で夢に挑戦する熱意と純粋さに心打たれ、「ボンネビル塩平原に着いた時のあなたの顔が見たい」と同行を申し出た。トラブル続きだが様々な人に出会い、そして助けられた長い旅路はとうとう終わりを迎え、バートは遂にバイカーの聖地、白い地平線が続くボンネビル塩平原に降り立つのだった。

世界最速への挑戦

ボンネビル塩平原は字の如く塩で形成された巨大な平原だ。厚い塩で覆われたフラットな地平線はスピードウェイとして最も適しており、スピードに飢えた世界中のバイカーはここを聖地として崇めていた。そこで毎年開催されるのが「ボンネビル・スピードウィーク」という大会だった。朝日に照らされる純白の世界にバートは感無量に浸っていた。そこに同じ出場者であるジム・モファットが現れ、同じ志を持ったバイカー同士故かすぐに意気投合する。続々と大会出場者が集まり、レースの準備が行われ塩平原に活気が満ち溢れる。バートは受け付けに赴き出場を申請しようとするも、レースには事前登録手続きが必要であり既に登録は締め切られていた。規則だからとけんもほろろに追い返されたバートは、レースの常連であることから口利きの効くジムに助けを求めた。バイクの点検まではこぎつけるも、インディアン・スカウトは40年以上前のバイクであり、日用品で補強された部品に防火服からパラシュートなどが装備されていないこと、安全面に加えそもそも年齢がオーバーしていることから出場の許可は下せないと宣告される。諦めきれないバートに同じレース出場者であるロリーとマーティが声を掛ける。長い旅路の果てにどれほどの思いでレースに懸けてきたかを聞かされた二人は、心打たれどうしてもバートを出場させてやりたいと考えた。こっそりと出走してしまえば良いと、強引な手段でロリーとマーティの協力の元実行するが係員に見つかり止められてしまう。気が済むまで走らせてやれとジムも加わり、見た目からのオンボロ具合に大したスピードも出ないだろうと判断したスタッフは試走の許可を許した。大喜びのバートは助けてくれたジムたちに感謝を述べ、ヘルメットとゴーグルを装着しインディアン・スカウトのエンジンを稼働させる。車と並走しながら危なっかしながらも車体は軌道にのり、ギアチェンジをすると並走した車を置き去りにグングンとスピードを上げる。誰もが予想しなかったインディアン・スカウトの疾走する姿に見る人々は喝采をあげ、まだ余力を残しながら試走を終えた。
あまりの速さにレーススタッフのマイク・マクファーレンは「時には規則を曲げないとな。今日がその時だ」と言い、特例でバートの出場を認めたのだった。本番は明日、しかし奇跡の出場を果たしたわりに渋い顔のバートがいた。エンジンの調子が良くないこと、スピードに乗り出した際に車体が激しく揺れるという異変に気づいたのだ。急ぎロリーたちの助けを借りて調整を施し、車体の揺れに関しては走りながら考えると結論に至った。
レース本番、番狂わせの走りを見せたバートに出場者、観客の注目が集まる。狭心症の発作を防ぐ薬を飲み、バイクと共に準備万端のバートは皆の期待と自身の夢を乗せ、スタートの合図と共にインディアン・スカウトを走らせる。滑り出しは上々、軌道に乗り第1地点を255.317kmで通過。まだまだスピードを上げ第2地点、第3地点をあっという間に通過する。第6地点を311.758kmで通過した辺りでエンジンが過熱し、バートの足を焦がしはじめる。ぐっと痛みに耐えるバートと加速するインディアン・スカウトは第7地点を312.552kmで通過する。ここで懸念していた車体の揺れがはじまり、バートは上体を起こし車体から顔を出す。とてつもないスピードにゴーグルは弾けてしまうも車体の揺れは止まり、インディアン・スカウトは更なるスピードで疾走する。満身創痍の身体で耐え抜くバートはついに最終ラインの第8地点を324.847kmで通過し、世界最速記録を打ち立てた。スピードの神が降り立ったかのようなこの光景に誰もが興奮し、歓声で溢れる。しかし歯止めが効かずブレーキ用のパラシュートを装備してないインディアン・スカウトは激しく横転してしまう。車体から這い出たバートは足に大火傷を負いつつも、命に別条はなく力なく横たわった。「やったぞ」と呟き、バートは満ち足りた表情を浮かべ、憧れだったこの地を背にして余韻に浸るのだった。
バートが世界最速記録を打ち立てたことは世界中に広がり、コレクトコールにてバートはニュージランドの少年トムに向けてインディアン・スカウトが世界最速になったと伝えた。それから数週間後、バイクと共にインバーカーギルに凱旋したバートは町中の人々に迎えられる。来年もまた行くと宣言すると皆を驚かせるのだった。

『世界最速のインディアン』の登場人物・キャラクター

主人公

バート・マンロー(演:アンソニー・ホプキンス)

吹き替え:石田太郎

本作品の主人公。67歳を迎える初老のライダーであり、若い頃に購入した1920年型インディアン・スカウトで、世界最速のスピードを求め40年以上も改造に勤しんできた。大胆で朗らかな性格であり、どこかほっとけない人柄から多くの人を魅了し、後の大きな助けへと繋がる。倹約生活から日用品などあるもので修理、改造を施し、大抵のものは自分で調整できる。長年のバイクいじりの経験則からか分析力に長け、ことスピードに関しての追求はレース常連者たちをも驚かせた。

インバーカーギルの住人

トム(演:アーロン・ジェームズ・マーフィ)

吹き替え:高橋まゆこ

バートの家の隣に住む少年。バートを変人扱いする両親と違い彼を慕い、なにかと遊びにいっては改造の手伝いをしている。インディアン・スカウトの可能性を信じる数少ない理解者であり、バートが留守の間は家の鍵を預かり諸々の手入れや管理をしていた。

フラン(演:アニー・ホイットル)

吹き替え:不明

役所の窓口で働く初老の女性。バートとは友人であり、良い仲の関係でもある。そのため無茶ばかりするバートを案じつつも、ひたむきに夢の実現に邁進する姿にアドバイスを送ったりと応援している。

道中に出会う人々

ティナ・ワシントン(演:クリス・ウィリアムズ)

Sonochy
Sonochy
@Sonochy

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