ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜(Pts)のネタバレ解説・考察まとめ

『ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜』とはPS2用ゲームソフト『ペルソナ3』を原案として制作されたテレビアニメ。2008年1月から6月まで放送。『ペルソナ3』から10年後のパラレルワールドを描く。不可解な事件が多発する綾凪市に、主人公が10年振りに帰ってきたところから始まる。久しぶりの再会だったが冷たくあしらう兄、諒に困惑しながらも弟の洵と3人だけの家族の絆を慈しむ慎。しかし、綾凪市で起きている事件がそんな兄弟の絆を揺すぶる。不思議な力、ペルソナに目覚めた慎はその事件の真っ只中へ巻き込まれていく。

富山湾に面した湾岸都市。10年前に突如発生した同時多発無気力症による事故、災害により壊滅状態になったが、その後復興を果たす。

無気力症(むきりょくしょう)

精神疾患の一種で、動くことはおろか、話すこともできなくなるほどの無気力に陥る。

くじらのはね

神郷兄弟の両親が書いた絵本。具体的なストーリーは分からないが、不気味な印象を与える結末となっている。この絵本にでてくる白い羽根が、劇中でも多くのシーンで出現する。

特殊部隊計画(とくしゅぶたいけいかく)

秘密裏に行われていたペルソナを持つ人間によるスパイ計画。しかし、ペルソナの年齢制限という問題が解決できず頓挫してしまう。真田、諒、戌井もこの計画に関与していた。

『ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

アヤネとの逢瀬で変わる洵(第18話)

アヤネ(手前)と逢瀬を重ねる洵(奥)

洵が実家に帰ると、家の裏手から声が聞こえてきた。その声が気になった洵が裏へいくと、そこには赤い髪の少女、アヤネが「くじらのはね」を読んでいた。そして、アヤネとの邂逅が、洵を変えてしまった。今までは慎やめぐみたちに対して甘えたような態度を取っていた洵だったが、素っ気ない態度に変わり、さらには慎を避けるようになった。洵は、アヤネとの逢瀬を重ねていき、次第に洵の中でアヤネの存在が大きくなっていった。また、今まで誰にも言ったことのない本音を吐露するようになる。それは、1人になりたいというものだった。アヤネもまた、洵に特別なものを感じていた。洵とは逆に、ずっと1人だったアヤネ。洵という相手を見つけたことで、1人ではなくなった。そして、2人は「あなたとなら、私は1人じゃない」「君となら、僕は1人になれる」と確かめ合うように呟くのだった。

無力な自分を隠し何者にも心を閉ざすべく仮面を被る諒(第24話)

「くじらのはね」のラストシーンを塗り替える諒

まだ慎たちの両親が健在だった頃、諒は京都の大学を受けた話を両親とするなど、普通の日々を過ごしていた。ある日、諒は両親に誘われ海岸を散歩する。そこで諒は、両親がかつてペルソナの研究に携わり、非人道的な実験をしてきたことを知らされる。そして、両親がこれまでしてきたことを全て告発しようと決心した最中、両親が参加してきた実験により自殺に追い込まれたアヤネが現れる。アヤネは、家族と過ごしている両親を見て怒り、ペルソナ、アディティを出現させて襲いかかってきた。アディティは、両親からペルソナを剥離させようとしていた。諒は、リバースしようとしている両親を呆然と見ることしかできなかった。そんな中、いないはずの慎が海岸に現れる。慎は、両親がペルソナに捕らえられているのを見て、自らもまたペルソナ、アベルを覚醒させる。アベルは、アディティに斬りかかるが、それを体を張って阻止したのは、他でもない両親だった。結果、両親はリバースされて死亡し、慎は両親を刺してしまったという強い精神的ショックから無気力症になってしまった。さらに、諒を不幸が襲う。一番下の、洵と結祈の双子が、その日起きた同時多発無気力症が原因で起きた鉄道事故に巻き込まれてしまったのだ。このままでは、2人とも死んでしまうという状況の中、諒は偶然居合わせた医師、小松原の言うことに従い結祈の脳を洵に移植する手術に同意した。また、無気力症になった慎を回復させる為、催眠療法によってその時の記憶を封じ込めることにも同意した。

家族が3人兄弟だけになってしまった神郷家。慎と洵は、東京の叔母のところへ引き取られることになり、兄弟は離れ離れになってしまう。諒は、1人になってしまった家で、両親が描いていた絵本、「くじらのはね」に色を重ねていた。元々は、主人公の周りにたくさんの人が描かれていた。しかし、諒は自らの心境を表すかのように、主人公以外の人間を消してしまった。そして、「くじらのはね」のラストは歪ものになってしまったのだった。

拓朗「無茶しやがって、お前どこまで漢なんだよ!」(第26話)

1人でテテュスに立ち向かっていくめぐみ

病院で拓朗の看病をしていためぐみは、病院に来ていた伊藤と会う。伊藤は、稀人の本部から回収されたテテュスが動き出し、街に甚大な被害を与えていることを伝える。しかし、伊藤は「これ以上動くな、もう十分だ」と、高校生であるめぐみたちが関わることを良しとしなかった。しかし、めぐみは街の現状を鑑みて誰にも告げずにテテュスの元へと向かった。テテュスは、くじらのもとへ一緒に行こうと言うアヤネを取り込み、真田と戌井が取り付けたリモート爆弾の爆発にも耐えて富山湾へと向かっていた。テテュスのもとへ辿り着いためぐみは、ディアナを出して戦闘を開始する。弓でディーヴィを狙うも、高い防御力でまったく傷をつけることができなかった。逆に、ディーヴィの触手に捕らえられ締め上げられてしまった。身動きの取れないディアナだったが、突如、その触手に雷が落ちてディアナのピンチを救う。それは、めぐみがいない事に気づき病院から抜け出してきた拓朗だった。拓朗は、1人だけで強敵に立ち向かって行っためぐみに対し、「無茶しやがって、お前どこまで漢なんだよ!」と声を掛ける。めぐみは、拓朗のその言葉に「だって」と苦笑いを浮かべるのだった。

『ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

総評がいまひとつ

本作のメインストーリーは至極単純で、心の力を集めて人間の無意識を支配しようとしている敵に、高校生の主人公たちが立ち向かっていくというもの。しかし、本作では、それを直接的に描くことはせず、小さなエピソードを積み重ねていくというスタイルをとっている。さらに、テテュスの存在理由と目的、くじらのはねの正体、無気力症との関連など、ストーリーを観るだけでは理解できず、視聴者の想像に任せている部分が多い。また、ゲームの『ペルソナ3』を題材としている為、ペルソナを用いての戦闘シーンというものが魅力の1つになるはずが、ペルソナの身体が半透明、個体名が全く出てこない、そもそも戦闘シーンが少ない。これらの理由により、本作が脚本、演出、美術、音楽はどれも高水準にもかかわらず、視聴者にあまり受け入れられないという現象が起きている。

書き換えられていた絵本「くじらのはね」

くじらのはねとは、神郷兄弟の両親が描いた絵本である。この本は、両親が参加していた非人道的な実験により死なせてしまったアヤネに対する贖罪として描かれている。くじらのはねの具体的なストーリーは分からないが、両親が慎に「大切な人がみんな幸せになる」という結末であることを語っている。しかし、くじらのはねのラストは、他の人間がみんなどこかへ消え、主人公が街に独り佇んでいるというバッドエンドな結末。このチグハグさの理由は、本作の終盤に明かされる。それは、10年前に起きた事故に洵と結祈が巻き込まれ、両親がテテュスにリバースされたところを目撃した為、慎が無気力症になってしまったことで、家族の全責任を諒1人が持つことになってしまった。悲しみに暮れる諒が、くじらのはねの結末を書き換え、主人公を今の自分の心境と同じ独りにしてしまった。本作のラストでは、桜の花びらが主人公の周りに積もったことでハッピーエンドを演出している。

『ペルソナ3』との繋がり

本作は、『ペルソナ3』のパラレルワールドという設定の通り、『ペルソナ3』で登場していた人物も出演している。その最たる人物が、真田である。また、真田のように直接的なものではないが関連があるとされているのが、寮監の戌井である。「いぬい」は「乾」とも書ける為、『ペルソナ3』の登場人物である「天田乾」と関連があると思われている。また、諒や真田が過去に参加していた特殊部隊計画も、『ペルソナ3』と関係がある。それは、『ペルソナ3』のエンディングから数年後、『ペルソナ3』の登場人物である桐条美鶴のいる桐条グループと警察公安部によって設立された組織、シャドウワーカーである。このシャドウワーカーは、シャドウ(『ペルソナ3』の敵の総称)が関わっている事案を秘密裏に解決すべく設立された組織である。本作でも、ペルソナを持った人間を使ったスパイ計画である特殊部隊計画が登場する。

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