スノウボールアース(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『スノウボールアース』とは、2021年より辻次夕日郎が『月刊!スピリッツ』で連載しているSF冒険アドベンチャー漫画であり、作者の初連載作品である。人類と銀河怪獣群の最終決戦にて「救世主」と呼ばれる少年・流鏑馬鉄男は巨大ロボットである・ユキオを失いつつも怪獣群を討伐し、10年ぶりに地球に帰還する。ただ帰還した鉄男を待ち受けていたのは、雪と氷に覆われ、多くの怪獣が跋扈する変わり果てた地球であった。SF要素と王道的なバトル漫画要素が見事にマッチしていることが、本作最大の魅力。
『スノウボールアース』の概要
『スノウボールアース』とは、2021年より辻次夕日郎が『月刊!スピリッツ』で連載しているSF冒険アドベンチャー漫画である。
辻次夕日郎のデビュー作であり、初連載作品になっている。
A.D.2025年に地球の生物を殲滅することを目的とした銀河怪獣が宇宙から襲来し、人類はたびたび大きな被害を被っていた。そこで人類は対怪獣戦線「E-RDE(エルデ)」を設立し、地球防衛大機星スノウマンという巨大ロボット開発、操縦士には開発した博士の息子である流鏑馬 鉄男 (やぶさめ てつお)が選ばれ、スノウマンを「ユキオ」と呼び仲を深めつつ多くの銀河怪獣を撃退していた。そしてA.D.2035年に宇宙にて銀河怪獣群との最終決戦に挑んだ鉄男はユキオを失いつつも何とか勝利をおさめ、地球に帰還する。しかし10年ぶりに地球に帰還した鉄男が目にした光景は雪と氷に覆われ、怪獣が跋扈している変わり果てた地球であった。
本作の魅力は王道的な少年漫画のストーリー展開であり、特にバトルシーンにおける鉄男とユキオとのコンビネーションを駆使して、怪獣たちと渡り合う展開は非常に胸を熱くさせる。また鉄男の人間的な成長にも重点が置かれており、周囲の人と仲良くするために努力する鉄男の姿には非常に好感が持てる。
『スノウボールアース』のあらすじ・ストーリー
最終決戦と変わり果てた地球
A.D.2025年に地球の生物を殲滅することを目的とした銀河怪獣が宇宙から襲来し、人類はたびたび大きな被害を被っていた。そこで人類は対怪獣戦線「E-RDE(エルデ)」を設立する。
E-RDEの科学者である流鏑馬 虎鹿(やぶさめ こじか)は自動稼働型爆弾である「スノウマン」を開発するが、スノウマンが自爆して銀河怪獣を討伐するという自身の役割を受け入れることができず、自爆することを拒否してしまう。そんな抗議のさなかに銀河怪獣が襲来し、虎鹿とスノウマンらは絶体絶命のピンチに見舞われるが当時9歳であった虎鹿の息子である流鏑馬 鉄男 (やぶさめ てつお)がスノウマンの手動操作コックピットに乗り込み、怪獣を撃退する。
この一連の騒動から鉄男は「救世主」として多くの人類の希望となり、スノウマンは鉄男が呼んでいた愛称「ユキオ」と周囲に呼ばれることになる。その後、10年間怪獣を撃退し続けた結果、ユキオは戦力を増強していくうちに巨大なロボットになり、鉄男は周囲の人間と接する機会を失ったせいで人見知りな性格になってしまう。
そしてA.D.2035年に宇宙にて銀河怪獣群との最終決戦に挑んだ鉄男は、想定外の銀河怪獣の多さに苦戦しつつも、ユキオが提案した自爆によって怪獣群を撃破し、勝利をおさめる。そして鉄男は自爆寸前にユキオに言われた「地球に戻った後、多くの友だちを作って幸せに過ごしてほしい」という約束を守るため、8年間のコールドスリープを経て、緊急脱出ポットで地球に帰還することに成功する。しかし到着した鉄男の前に広がった光景は氷と雪に覆われた無人の街であり、地球は「全球凍結(スノウボールアース)」となっていたのであった。
スノウボールアースとミシマモールの人々
変わり果てた地球で生きている人を探すために周囲を探索する鉄男であったが、道中で銀河怪獣に襲われてしまう。手持ちの武器がなく防戦一方の鉄男であったが、持ち前の戦闘経験を生かして、移動用として使っていたショベルカーを利用し怪獣の頭を貫き、なんとか勝利を収める。
その戦いの後に、倒した怪獣の死体の近くで倒れていたところを白い髪をした若い女性・乃木 蒼(のぎ あお)という人物に助けてもらう。そして蒼との会話から、ミシマモールという場所に生存者がいること、人々は銀河怪獣の死体から肉を採取し、それを食いつなぎながら細々と生きていることが明かされる。蒼との話の後に、銀河怪獣の肉を採取しに来たミシマモールの人々と出会い、銀河怪獣の解体を通じて交流を深めていくが、解体作業中に突如としてヒト型に近い銀河怪獣と遭遇する。その銀河怪獣の苛烈な攻撃に絶体絶命になる鉄男らであったが、可変脱出ポッド「"SNOWFLAKE"」第一戦闘形態「スノウボール」として復活したユキオが合流し、鉄男の見事な操縦技術でヒト型の銀河怪獣を討伐する。そして鉄男はユキオが生きていたことを心から喜び、涙を流すのであった。
ヒト型銀河怪獣との戦いの後に、鉄男とユキオは蒼らと共にミシマモールに向かう。その道中に蒼は「地球が凍結状態に陥ったのは、鉄男が宇宙に旅立った後に現れたヒト型銀河怪獣の能力が原因」ということを鉄男らに話す。話を聞いた後に、鉄男たちは無事にミシマモールにたどり着き、温かい歓迎を受けるのであった。
E-RDEの灯との戦い
ミシマモールに滞在することになった鉄男は、二代目技術課の課長である瀧村 剥音(たきむら はがね)の家族の元で暮らすようになる。ミシマモールの生活を通じて剥音と交流を深めていく鉄男であったが、鉄男は剥音がかつて母を捕食したネズミ型の銀河怪獣を倒すために武器を作っていることを知る。その秘密を知った鉄男は剥音の武器づくりを手伝い、ついに剥音は武器を完成させるのであった。そして武器を完成させた際に、剥音はかつて母が自分を褒めてもらったことを思い出し、母と同じように「がんばった!」と鉄男の頭を撫でた。こうして鉄男は剥音の秘密を通じてより心の距離を縮めるのであった。
ある日鉄男は蒼に呼び出され、ミシマモールの地下に向かう。そこで鉄男は鳥型の銀河怪獣を目撃すると同時に、蒼がその怪獣を操る怪獣使いであることを告げられる。蒼は住人たちに受け入れられつつある鉄男のことを信頼し、ミシマモールに定住してもらうためにもこの秘密を明かし、鳥型の怪獣である「人間の大地」が発する熱を使いミシマモールを極寒の寒さから守っていると説明をする。衝撃の事実に驚きつつも、鉄男は家に帰るがそこに剥音の姿はなかった。そして鉄男は剥音が残した置き手紙から、完成した武器を携えてネズミ型銀河怪獣の復讐に向かったことを知るのであった。
復讐に向かった剥音はネズミ型の怪獣と遭遇する。剥音は鉄男と共に制作したホバークラフトのブーツで攻撃を回避し、ネズミ型の銀河怪獣の口元にロケットランチャーを命中させるが、ネズミ型の銀河怪獣の更なる猛攻に絶体絶命の危機に瀕してしまう。そんな間一髪の状況の中、鉄男とユキオが助けに入り、鉄男の見事な操作技術をもってしてネズミ型の銀河怪獣を討伐することに成功する。
母への復讐を終え安堵する2人の元に、突如複数の怪獣と怪獣使いが襲来し、2人に襲い掛かる。その怪獣使い達のリーダーである・相模逸石 (さがみ いっせき)は「自分たちは人類を救う組織・E-RDEの灯(ヴィエルデ)である」と名乗り、かつての救世主である鉄男の抹殺と「人間の大地」の強奪が目的であると告げる。師の剣(ヘラクレス)をはじめとする複数の怪獣による連携攻撃に加え、ミシマモールに向かった別動隊が気になり、鉄男は防戦一方になってしまうが、ミシマモールからのドローンを使った道案内や重火器攻撃の支援を受けて、なんとかE-RDEの灯らから逃げ、ミシマモールの避難エリアに向かうことに成功する。
E-RDEの灯との戦いの決着
一方「E-RDEの灯」別動隊の怪獣使い達に奇襲を受けたミシマモールであったが、鉄男たちをドローンで追跡し情報を得ることができたため、事前に市民を非難させ、防御システムを展開することで怪獣の攻撃を防いでいた。さらに蒼が「人間の大地」と共に「E-RDEの灯」の怪獣使いらと交戦する。空を飛べる機動力に加え、炎を操ることができるなど「人間の大地」の圧倒的なスペックを前に戦況は優位に進むが、逸石らが合流すると戦況が苦しくなり始める。そして逸石が操るケンタウロス型の銀河怪獣・師の剣(ヘラクレス)の攻撃に蒼と「人間の大地」はピンチを迎えるが、そこに鉄男とミシマモールに避難地で新たに武装をパワーアップさせたユキオが現れる。
ユキオのパワーアップした新たな形態「スノウボール 短期要塞(ランパート)」で師の剣(ヘラクレス)と互角の戦いを繰り広げるが、師の剣(ヘラクレス)の「未来を見通す」能力を前に徐々に戦況が劣勢になってしまう。しかし鉄男は過去の戦闘データから、攻撃が成功したのはユキオがオート操縦をした時であることに気づき、「未来を見通す」能力は無機物には適応しないという性質を見抜く。そしてその性質を見抜いた鉄男はユキオのオート操縦を交えた攻撃を繰り出すことで師の剣(ヘラクレス)に勝利した。
師の剣(ヘラクレス)討伐後、逸石を鉄男に仕向けるように暗躍したヒト型の銀河怪獣が突如姿を現し、攻撃を開始するが、鉄男との会話で彼こそが救世主であると認めた逸石が身を挺して攻撃をそらし、何とか難を逃れる。ただヒト型の銀河怪獣の攻撃により逸石は命を落とし、「E-RDEの灯」は壊滅してしまう。こうして黒幕である怪獣の謎を残しつつも「E-RDEの灯」の襲撃からミシマモールを守ることに成功するのであった。
『スノウボールアース』の登場人物・キャラクター
主要人物
流鏑馬 鉄男 (やぶさめ てつお)
「E-RDE(エルデ)」に所属している地球防衛大機星スノウマンのパイロット。黒色の短髪をしている青年であり、地球防衛大機星スノウマンを「ユキオ」と呼んでいる。
性格は心優しく、正義感が強い。自分の身を挺して人を守るなど、人を助けたいという気持ちを強く持ち、助けることに関して見返りを一切求めない。
ただ長年ユキオとともに銀河怪獣と戦ってきたため、他人とコミュニケーションを取る機会がなく、極度の人見知りとなってしまう。
機械の扱いに長けており、特にユキオの操縦に関しては右に出る者はいない。また分析能力にも非常に長けており、師の剣(ヘラクレス)との戦闘では戦闘をこなしつつ、過去の映像データを分析して能力の欠点を見つけ出すという常人離れした戦闘能力を発揮した。
ユキオ
正式名称は「地球防衛大機星スノウマン」でユキオの名は鉄男から名付けられた。
鉄男の父親である流鏑馬 虎鹿(やぶさめ こじか)が開発したロボットであり、当初は自律稼働爆弾として開発された。しかし9歳の鉄男が乗り込み銀河怪獣を撃破したことで、戦闘ロボットとして扱われるようになり、度重なるアップデートで物語冒頭の最終決戦時には超巨大ロボットの姿に変貌を遂げている。
ただ最終決戦に銀河怪獣群を倒すために自爆を選択したため、鉄男はユキオを失ったと思っていたが、鉄男が乗った脱出ポッドに、自分の全データ(人格)を転送し、可変脱出ポッド「"SNOWFLAKE"」第一戦闘形態「スノウボール」として復活を遂げる。
「地球に戻った後、多くの友だちを作って幸せに過ごしてほしい」と思うほど鉄男の身を案じており、鉄男とは戦友でありながらも、親友であるという関係を築いている。
ミシマモールの人々
乃木蒼(のぎ あお)
ミシマモールに住んでいる女性で白色のセミロングの髪が特徴的な人物。
性格は明朗快活で人思い。ミシマモールが他の怪獣使い達に襲われた際は、多勢に無勢な状況にも関わらず、ミシマモールの人々ために立ち向かう勇敢さも見せた。
怪獣使いであり、火を操る鳥型の怪獣「人間の大地」をコントロールすることができる。ミシマモールは地下にいる「人間の大地」の熱で人が住める環境を維持しているため、「人間の大地」をコントロールすることができる蒼はミシマモールの生命線と言えるほどの存在である。
ミシマモールでは経理課の課長のポジションを与えられているが、たびたび持ち場から離れて周囲をパトロールしている。
瀧村剥音(たきむら はがね)
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目次 - Contents
- 『スノウボールアース』の概要
- 『スノウボールアース』のあらすじ・ストーリー
- 最終決戦と変わり果てた地球
- スノウボールアースとミシマモールの人々
- E-RDEの灯との戦い
- E-RDEの灯との戦いの決着
- 『スノウボールアース』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 流鏑馬 鉄男 (やぶさめ てつお)
- ユキオ
- ミシマモールの人々
- 乃木蒼(のぎ あお)
- 瀧村剥音(たきむら はがね)
- 作中に登場した怪獣
- 人間の大地
- 師の剣(ヘラクレス)
- その他人物
- 相模逸石 (さがみ いっせき)
- 流鏑馬 虎鹿(やぶさめ こじか)
- 『スノウボールアース』の用語
- 銀河怪獣
- E-RDE(エルデ)
- 全球凍結(スノウボールアース)
- E-RDEの灯
- ミシマモール
- 『スノウボールアース』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「全球凍結(スノウボールアース)」となった地球
- 瀧村剥音「がんばった!」
- 流鏑馬 鉄男「戦いながら分析するっ!」
- 『スノウボールアース』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者は映画会社でアニメ宣伝をしていた異色の経歴の持ち主
- 単行本1巻では庵野秀明がコメント