しあわせは食べて寝て待て(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『しあわせは食べて寝て待て』とは、​​秋田書店が発行する月刊女性漫画雑誌『フォアミセス』に2020年3月号より連載された水凪(みずなぎ)トリによる料理漫画、およびそれを原作としたドラマ作品。2025年4月にNHK総合「ドラマ10」にて桜井ユキ主演でドラマ化されている。膠原病を患いキャリアウーマンとしての道を閉ざされた主人公麦巻さとこは、出費を抑えるために団地に引っ越す。そこでの出会いから薬膳を知る。団地での生活や新たな職場の同僚との日々の中で持病を持つ自分を受け入れ、自分なりの幸せを探す。

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仕事帰りに輸入食材店に立ち寄ったさとこ、そこで偶然に青葉乙女に出会う。これからとろろ定食を食べにいくと言う青葉に誘われて、さとこも一緒にとろろ定食を食べることになる。青葉にとってのとろろ定食は、子供の頃を思い出す懐かしい味で、会社で嫌なことがあると食べたくなるものなのだと言う。青葉には苦手なことがあって、いくら気をつけても直らない。それを皆の前で怒られたりすると消え入りたくなってしまい、そんな時のとろろ定食は癒しではなくて、自分ではどうしょうもない状況を乗り越えるための能力であるネガティブ・ケイパビリティなのだった。青葉は「能力って、普通何かができることをいうじゃない?40を超えて先が見えてきた人間には、できない自分を受け止める能力の方が必要な気がするわ。」と言うのだった。それを聞いたさとこは、持病があり頑張れない自分に気後れしていたが、青葉の言葉で気持ちが軽くなる。

唐圭一郎「想像してみるだけでもいいんだよ。独り身だとさ失業しようが、病気にかかろうが、自分で決めていかなきゃならないんだからさ。」(漫画第4巻)

バーで飲む唐圭一郎とマシコヒロキ。さとこが田舎の風景を歩く姿を想像する。

持病を持ち普通に暮らすのでさえ大変そうなさとこに、地方移住という方法を伝える唐。その様子を見ていた部下のマシコはバーで唐とふたりで飲んでいた時に、移住なんて負担が大きすぎて叶えられるかどうかも解らないさとこに、なぜそんな話をしたのかと唐に言った時に唐から返された言葉。「想像してみるだけでもいいんだよ。独り身だとさ失業しようが、病気にかかろうが、自分で決めていかなきゃならないんだからさ。」この言葉を聞いたマシコは、さとこと同様に独り身の唐に「それ、唐さんにもそっくり返しますけどね。」と小さく呟く。

合田正一「音楽と生活に境目なく、普通に生きて、時々燃える…みたいな。」(漫画第4巻)

温泉で伝説のギタリスト合田正一に会う。ドラマには描かれなかった漫画だけのシーン。

さとこがパートで働く唐デザイン事務所代表の唐は、会社員の頃に仕事とアマチュアバンドの音楽活動の両方に力を注いでいた。バンドがメジャーデビューのチャンスを掴もうとした時、メンバーそれぞれ音楽活動に対するスタンスが違い、唐も音楽活動をするか会社勤めを優先するか迷っていた。そんな時に唐が思い出したのは、自分が心から心酔している伝説のギタリスト合田正一だった。合田正一は今は一線から退き故郷の伊豆でバーをしているという。憧れの人に話を聞いてもらおうと伊豆に行くが、バーは廃墟となており泊まった民宿で合田正一に会いに来たと話すと、女将が合田に会えるように手引きしてくれる。露天風呂で憧れの合田に会った唐は、会社とバンド活動のどちらを優先すべきか迷っていると話す。合田は音楽活動を辞めた今も「音楽と生活に境目なく、普通に生きて、時々燃える…みたいな。」と言う。この言葉を聴いて唐は、独立して会社を立ち上げようと決意する。

美山鈴「だいじな事はちゃんと紙に書かないと。」(ドラマ第8話)

さとこが借りている部屋の家賃の支払いが300万円に達したら、鈴はさとこに貸している部屋をさとこにあげると決める。さとこは遠慮するが「だいじな事はちゃんと紙に書かないと。」と筆で書き上げる。無くしてはいけないので司が預かることになる。
漫画でも同様に家賃が300万円に達したら部屋をさとこにあげる約束をするが、さとこは鈴に娘がいることを知っており、そうなればいいなあと思う程度のエピソードだった。ドラマでは、鈴の娘が登場し不動産のを譲ることの難しさをあらわすエピソードになるが、司の手助けにより将来その時が来たら譲り受けるという事になる。

麦巻さとこ「お茶を飲みながら、井戸端会議できるカフェです。誰かと喋りたくなったらふらっと来られるような。あと、薬膳茶とか薬膳ランチセットもあって、体調に合わせて選べるんです。」(ドラマ最終話)

働きたくても働く場所がない高齢で一人暮らしの団地の住人に、将来の自分の姿を重ねなんとか手助けをしたいと思うさとこ。司が鈴と暮らす部屋から出て行ってから鈴は、発送の手続きをしてくれていた司がいないので、手作りのスカートを出品していたソーイングマーケットを辞めてしまった。さとこは、そんな鈴のことも気になり何か良い方法はないかと考える。そこで思いついたのが、団地の共有スペースでリサイクルショップを開くこと。さっそくパート先の唐デザイン事務所の面々に、団地の住人から聞いた意見や要望を話す。その中にはさとこの意見はなく、唐からさとこの意見はないのかと問われて言ったのが「お茶を飲みながら、井戸端会議できるカフェです。誰かと喋りたくなったらふらっと来られるような。あと、薬膳茶とか薬膳ランチセットもあって、体調に合わせて選べるんです。」と伝える。この計画は一度は金銭面で一度は断念したものの、共有スペースでカフェをしたり、レンタルスペースをすることで地域の活性化ができると考えた唐圭一郎により、地域の補助金が使えるかもしれないと新たに企画を練り直し、唐デザイン事務所のプロジェクトとして再発進することになる。コミニュティデザインに興味があるマシコヒロキが手助けしプロジェクトが始まりその後、共有スペースでのカフェが出来上がる。さとこの想いが叶うシーンでドラマが終わる。

『しあわせは食べて寝て待て』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

主人公の膠原病は作者の実体験

原作者の水凪トリは、​​2016年に麦巻さとこと同じ膠原病と診断されている。
自身の体験をもとに物語を盛り上げるために無理な設定はせず、主人公の麦巻さとこには膠原病である自分ができないことはさせないようにし、病気を持つ者の現実から離れない物語を作っている。作中の大根を食べたら頭痛が治ったというエピソードは、実際に体験したことが元になっており、さとこと同様に気を張りすぎることなく薬膳を実践している

ドラマのロケ地はレトロな滝山団地

ドラマに出てくるさとこ達が住む団地は、​​ドラマのロケ地として人気の​​滝山団地だ。
東京都東久留米市にあるこの巨大な団地は、高度成長期の東京での住宅不足を解消するために造成され総戸数は3200を超える。
入居開始の1968年当時、その頃にしてはめずらしく分譲がメインの団地だったこともあり、当時から暮らす住民を中心に多くの人々が暮らしている。
滝山団地は、​​NHKドラマ『団地のふたり』(2024年)にも夕日野団地のロケ地として登場している。​​​​

登場人物などの固有名詞は鳥の名前から

作者の水凪トリは登場人物の名前を、担当と相談して鳥の名前を参考にしてつけている。
例えば、麦巻さとこはムギマキ。マシコくんはベニマシコ。 巴沢さんはトモエガモ。青葉さんはアオバズク 。そして、テウリマート(コンビニ)は野鳥愛好家の憧れの島である天売島(北海道羽幌町の沖合に浮かぶ海鳥の楽園と呼ばれる島)だ。
他にも、反橋りく(そりはしりく)はソリハシシギというくちばしが反っている干潟でみられる鳥がいる。目白弓(めじろゆみ)はメジロ。唐さんは、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガなどの集団をカラと呼ぶ。志穂美春子のハンドルネームはウズラで、そのまま鳥のウズラ。また、登場するお店の名前にも鳥の名前が使われている。麦巻さとこが利用している書店の名前はツグミ書店、銀行はミサゴ銀行、いつも利用しているスーパーはイスカスーパーだ。
作者の名前である水凪トリも、ミズナギドリという名前の鳥がいる。

フードスタイリストは飯島奈美

ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』のフードスタイリストは飯島奈美である。21歳の頃からアシスタントとして伊丹十三作品などに関わり、28歳で独立後に初めて担当した映画『かもめ食堂』で、印象的だったおにぎりやシナモンロールは彼女のスタイリング。この他、『ちひろさん』『敵』、テレビドラマ『深夜食堂』シリーズなどにも参加。映画、テレビドラマ、CMなどでも活躍している。飯島奈美の料理はおいしそうに見えるだけでなく、実際においしいと定評があり、レシピ本の著作も多数。なかでも『ほぼ日』での連載をまとめた『LIFE』は家庭料理の定番メニューを確実においしくつくれると好評だ。

『しあわせは食べて寝て待て』の主題歌・挿入歌

テーマソング:武田カオリ「青空のレシピ」

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