しあわせは食べて寝て待て(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『しあわせは食べて寝て待て』とは、​​秋田書店が発行する月刊女性漫画雑誌『フォアミセス』に2020年3月号より連載された水凪(みずなぎ)トリによる料理漫画、およびそれを原作としたドラマ作品。2025年4月にNHK総合「ドラマ10」にて桜井ユキ主演でドラマ化されている。膠原病を患いキャリアウーマンとしての道を閉ざされた主人公麦巻さとこは、出費を抑えるために団地に引っ越す。そこでの出会いから薬膳を知る。団地での生活や新たな職場の同僚との日々の中で持病を持つ自分を受け入れ、自分なりの幸せを探す。

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『しあわせは食べて寝て待て』の概要

『しあわせは食べて寝て待て』とは、月刊女性漫画雑誌『フォアミセス』(秋田書店)にて、2020年3月号(2月3日発売)から連載を開始した水凪トリによる料理漫画作品、およびそれを原作としたドラマ作品。主人公の麦巻さとこ(むぎまきさとこ)は、建設関係の会社で営業事務として働いていたが膠原病を患い退職。その後、体調に負担がかからないようデザイン会社で週4日勤務の事務パートを始めるものの、収入が大幅に減る。そのため家賃の安い団地へ引っ越すことにする。
新居の大家である美山鈴(みやますず)は、向かいの部屋で息子と称する青年・羽白司(はじろつかさ)と暮らす老女。ちょっぴりお節介な鈴と、薬膳に詳しく人当たりのよい司と出会ったことで、さとこは薬膳で体の不調をやわらげられると知り、自ら学び始める。暮らしに薬膳を取り入れ、鈴や司を通して団地の人々とふれあううちに心も身体も癒され、病気を理由にこもりがちだったさとこの人間関係は少しずつ広がっていく。出会った人々のその人ならではのしあわせを求める姿を見て、さとこは持病がある自分のしあわせはとは何かと考えるようになる。登場人物それぞれの家族のかたちや価値観、生き方が描かれおり、互いのしあわせを尊重しあう優しい空気感に包まれている作品である。
2022年には「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第8位にランクイン。さらに2025年4月1日からNHK総合「ドラマ10」枠にて、原作は水凪トリ、脚本は。桑原亮子とねじめ彩木にてテレビドラマ化(全9話)。キャストは、主人公・麦巻さとこ役に桜井ユキ、大家の美山鈴役に加賀まりこ、司役に宮沢氷魚。音楽は中島ノブユキが担当し、演出は中野亮平・田中健二・内田貴史。制作統括は小松昌代(NHKエンタープライズ)と渡邊悟(NHK)が務めた。第1話の平均世帯視聴率は4.8%。また、NHKプラスにおける同時視聴および見逃し配信の視聴数が、連続テレビ小説・大河ドラマを除くNHKドラマの中で2025年度の最多を記録(2020年4月以降の配信作品中、エピソード単位で比較)。最終話は平均世帯視聴率6.3%と、好評のうちに幕を閉じた。

『しあわせは食べて寝て待て』のあらすじ・ストーリー

団地暮らしを初めて薬膳を知る

麦巻さとこ(むぎまきさとこ)28歳は、建設会社の営業事務をしていたが膠原病を患い休職。復職後したものの、職場に居づらさを感じ退職してしまう。現在は体調を考慮しデザイン事務所で週4日のパート勤務をしている。転職後収入は大幅に減少してしまい、節約のために今まで住んでいたマンションから、家賃が安い団地へ引っ越すことを決意する。
新しい部屋の大家は、向かいに住む美山鈴(みやますず)。さとこが内見に訪れた日にひょっこり顔を出し、頭痛に悩まされているさとこに「大根をかじれ」と手渡す。唐突なお節介に戸惑いつつも、言われるままに大根をかじってみる。少し経つといつの間にか頭痛が治っていた。
鈴と一緒に暮らす青年・羽白司(はじろつかさ)は、表向きには鈴の息子ということになっているが実は他人。彼は薬膳に詳しく、鈴の大根をかじれと言ったアドバイスも薬膳の知識に基づいたものだった。薬膳効果を目の当たりにしたさとこは、薬膳に興味が湧き団地に引っ越したら羽白司に薬膳のことを教えてもらえるのではないかと淡い期待を抱く。団地の穏やかな雰囲気と、司に薬膳を教えて貰いたい気持ちから、さとこは団地に引っ越すことにした。引っ越してまもなく、司に偶然出会った時に引っ越しの挨拶をしながら、持病があるので薬膳に興味が湧いたこと、司に教えて貰えたら嬉しいなどと話したら、持病のある人には教えられないとむげに断られてしまう。それでもさとこの薬膳への興味は尽きず、自分なりに薬膳を学び始め少しずつのめり込んでいく。

地方移住という選択

団地での生活に慣れてきたさとこは、大家の鈴が手作りのスカートをネットで販売したり、新しく引っ越してきたイラストレーターの高麗なつき(こうらいなつき)と、コラボした布で新作スカートを作ろうと盛り上がっている姿に刺激を受ける。収入が激減した自分も何か副業を始めたいと考えるが、何から手をつけていいか分からない。そんな思いをパート先のデザイン事務所で話すと、デザイナーのマシコヒロキが、自宅の空き部屋を貸すレンタルスペースが増えていると教えてくれる。使っていない部屋を活用するだけで収入が得られると知ったさとこは鈴に許可をもらい、司にも手伝ってもらって準備を始める。しかし、いざ始めてみると想像以上に心身の負担が大きく体調を崩してしまいレンタルスペースは一時休止することになってしまう。自分には何もできないと落ち込むさとこだった。
ある日の早朝。大きなリュックを背負って出かける司を見かける。鈴によれば司は、ときどき山に行って気持ちをリセットしているのだという。さとこと司をくっつけようとしている鈴は、さとこにテント泊の司とは別に宿を取って山に行くことをすすめる。即、司にも連絡し司も快諾する。さとこは鈴の提案に乗り山で司と共に過ごし司の身の上話を聴いたり、自然の心地よさにふれたりして心が軽くなっていく。

さとこがパートで働くデザイン事務所の社長である唐圭一郎(からけいいちろう)が、出張先の福島で田舎暮らしに憧れて東京から移住してきたという、こけし職人の青年に出会ったと事務所で話す。さとこは地方移住に興味を持ち、唐から移住に関する資料を見せてもらい自分でも調べていくうちに、自然に囲まれた場所でもっとゆったりと暮らす未来を思い描くようになる。地方移住の話を、司やレンタルスペースの準備をきっかけに親しくなった八つ頭仁志(やつがしらひとし)や、八頭と最近親しくしている反橋りく(そりはしりく)にすると、八頭と反町も興味を示す。ふたりはそれぞれに自身の引きこもりや、家族との関係など今の生活を変えたいと思っており、さとこと同様に移住に希望を感じていた。
さとこは真剣に地方への移住を考えてゆくうちに、持病を持った状態で慣れない土地に一人で行くのは無理があると断念する。一方で、八頭と反町は二人で移住する事になった。結果的にさとこの移住は叶わなかったが、新しいことに向けて考える時間の楽しさや自分も挑戦できるのだと思えたことが嬉しかった。さとこに持病があるのを知っていて地方移住の話を持ちかけた唐も、できないと諦めるのではなく思い描くのも大切なことだと思っていた。

自分らしいていねいな暮らし

地方移住が叶わず気落ちしているさとこを見て青葉乙女は、さとこが好きそうな谷根千へと誘う。ナチュラル志向の店を巡る穏やかな時間のなかで、青葉はある頼みごとを切り出す。取材を断り続ける人気ブロガーのウズラと会うため、同じ団地に住むさとこに同行をお願いしたのだ。さとこの同席があるならと、3人は浅草の中国茶の店で顔を合わせる。子育てを終え仕事を辞めたウズラは、スーパーの見切り品で作った料理を投稿していてその自然体で穏やかな暮らしぶりで人気なのだが、心ない言葉に傷つき今は鍵付きで静かに投稿を続けている。取材の話はやんわりと断られるものの、和やかに語り合った3人は意気投合する。数日後、団地近くのスーパーでウズラと再会したさとこは、さとこがプレゼントしたバルサミコ酢を使ったポテトサラダをごちそうすると言われウズラの家に招かれる。ウズラの家は同じ団地の一室とは思えない空間で、ウズラ好みの田舎の一軒家のような佇まい。都会でも心豊かに暮らす姿にさとこは深く感動する。元ロック少女だったウズラは、自分の母とは全く違う自由な考えで生きている。そんな姿に憧れるさとこに、ウズラはそれぞれに葛藤があって選んだ道なのだと優しく諭す。その言葉に、病気になってから母を拒絶していた自分に気づかされるのだった。
ある日、さとこはスーパーで大根を丸ごと1本買い、余った分を干して切り干し大根を作り煮物にした。その煮物を具に、皮から作ったおやきを職場や鈴の家に届ける。鈴の家に行くと鈴は、山へ出かけた司の帰りが遅いことに不安を感じ、ひとりになってしまったら老人ホームに入るしかないとまで考え落ち込んでいた。
一方その頃、山にいる司は亡き母の面影を偲んでいた。団地に戻った司は、さとこの家のベランダに干した切り干し大根を見てほっとする。そして、山の老人たちが葉っぱビジネスで​​生き盛んな姿な姿を思い出し、そのギャップに思わず笑みがあふれる。家に帰ると、さとこが鈴を何やら慰めている姿があった。司の不在に不安になったのだと言う2人の話を聞いているうちにふと、鈴が以前さとこが支払っている家賃の総額が、家の購入額に達したら家を譲ると言っていた事を思い出す。家をさとこに譲る話しをすっかり忘れていた鈴に契約書を書かせ、冷蔵庫に貼り出した。いつもの司とは違うきっぱりとした態度に驚くとともに、さとこは司の想いを嬉しく感じる。
契約成立と司の帰宅を祝って3人で囲む食卓。自分の体調を気遣うだけで精一杯のさとこだが、こうして誰かのために料理する時間が心の豊かさにつながっていると実感する。ワケありでも自分らしいていねいな暮らしを重ねていく日々が、少しずつさとこを前向きに変えていくのだった。

『しあわせは食べて寝て待て』の登場人物・キャラクター

主要人物

麦巻さとこ(むぎまきさとこ/演:桜井ユキ)

(幼少期:永谷咲笑)
週4日のパートで質素に暮らす38歳。以前は建設会社にて営業補佐を勤めていたが、膠原病にかかり休職。復職後に会社に居づらくなり退職し、前職の上司の知り合いである唐デザイン事務所で事務のパートをしている。パートの仕事に転職したため収入が激減し、そのため家賃が安い団地に引っ越しをした。そこで、大家の美山鈴や鈴と同居している司に出会い、彼らを通じて薬膳に出会う。穏やかに身体を整える薬膳や、団地に住む人々や、唐デザイン事務所の仲間にも影響を受けながら、持病を持つ自分に向き合い、自分らしい暮らしや幸せとは何かと前向きに考えるようになる。

団地住民

美山鈴(みやますず/演:加賀まりこ)

さとこが団地で借りた部屋の大家。同居している司の薬膳の知識のおかげなのか好奇心旺盛で元気な92歳。
さとこの部屋の向かいに住み、何かとさとこを気遣ってくれる。夫は他界し、娘は団地を出て家庭を築いている。さとこのことを気に入っており、団地に長く住んでもらいたいと思っていて、そのせいか司とをくっつけようとしたり、家賃の支払いが300万円に達したらさとこに貸している部屋をあげると提案する。

羽白司(はじろつかさ/演:宮沢氷魚)

鈴の同居人。
公園で野宿していた時に、風邪を引いてテントで寝込んでいるところを鈴に助けられた。その後、鈴と同居を始め親子のように暮らしている。
鈴と同様にお節気な一面があり、高齢者が多い団地の人々の手助けをよくしていて皆に好かれ頼りにされている。薬膳に詳しく、体調が悪い人を見るとつい薬膳の効能を伝えたくなる。その性格が災いしてトラブルに巻き込まれたことがあり、持病を持つ人へのアドバイスには慎重になっている。そんな心優しい司だが、学生の頃に祖母と母を続けて介護していた時に感じていた暗い気持ちや、司が生まれてすぐの頃に父親が母と自分を残して蒸発したことが、自分も父と同じようにふらっと居なくなる無責任な人間なのではないかと、司の心に影を落としている。

高麗なつき(こうらいなつき/演:土居志央梨)

さとこが撮った入居者募集の空き部屋の写真に惹かれ、団地に越してきたプロのイラストレーター。
イラストレーター仲間の中には、イラストレーター年鑑に載るような仲間もいるが、まだカット書きの仕事が多くパッとしない自分にイラつき滅入ることもある。しかし、ワンルームから2LDKの団地に引っ越して仕事部屋を持てるようになったことで、いい絵が描けるのではないかと期待している。
手作りのスカートをネット販売している鈴から、高麗さんのイラストで作ったオリジナルプリントのス布のカート作りをしたいと頼まれコラボレーションする事になる。

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