ダイジン(すずめの戸締まり)の徹底解説・考察まとめ

ダイジンとは、『すずめの戸締まり』(すずめのとじまり)に登場するキャラクターで、人語を操る白い子ネコ。
災害を発生させる力の奔流を封じる要石が姿を変えた存在であり、自分を解放してくれた岩戸鈴芽を慕う。鈴芽とずっと一緒にいるために、その近くにいた宗像草太をイスと融合させ、要石としての役目を押し付けた。鈴芽と草太をミミズが暴れる場所へと導き、協力した気になっていたが、鈴芽に「お前なんか好きじゃない」と言われて意気消沈。なお鈴芽の力になろうと奮闘し、最後は要石へと戻っていった。

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宗像草太(むなかた そうた)

後ろ戸を閉じてミミズを抑えることを役目とする、閉じ師の一族の青年。ダイジンに要石としての役目を押し付けられ、鈴芽の母の形見のイスに融合させられてしまう。
ダイジンが草太を新たな要石としたのは、「鈴芽と一緒にいるには自分以外の誰かに要石になってもらう必要がある」と考えたためだが、その直前に「お前は邪魔」と語り掛けており、鈴芽が彼に興味を抱いていることを察して嫉妬したというのも大きいようである。

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サダイジン

西日本の要石が姿を変えた存在。外見は大きな黒ネコ。ダイジンとは「対となる存在」という重要な関係だが、ダイジンと違って真面目かつ寡黙な性格で、要石としての役目をひたすら全うしようとする。そのためダイジンを捕まえようとするが、彼から鈴芽のことを聞かされたのか、常世からの草太救出に協力する。
人の悪意や敵意を喚起する力を持っているらしく、鈴芽の叔母の岩戸環(いわと たまき)がその影響を受けて暴言を吐いたことがある。宮城に向かう旅の途中は、自身のこの力を中和するためか、ずっとダイジンに抱き着いていた。

「サダイジン」という名は自ら名乗ったものだが、これは「もう1つの要石が“ダイジン”と呼ばれている」ことをなんらかの方法で知り、それに合わせて考えたものと思われる。

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ダイジンの名言・名セリフ/名シーン・名場面

「鈴芽、好き!」

鈴芽にかわいがられ、「ウチの子になる?」と問われたダイジン(この頃はまだこの名前では呼ばれていない)が、突如口を開いて発した言葉。“ネコがしゃべる”という驚きの事態に鈴芽も草太も視聴者までもが目を丸くすると同時、ここから一気に物語は加速していく。
ダイジンとサダイジンは非常に謎の多い存在で、作中でその正体について明確に語られることなく物語は完結している。しかしいくつか断片的な情報を拾っていくと、ダイジンとサダイジンは最初から要石だったわけではなく、神様か妖怪かあるいは素質のある人間をミミズの封印のために利用した存在なのではないかと視聴者の間では指摘されている。

ダイジンは非常に子供っぽい性格で、暴れるミミズを見て笑うなど一見すると性格も良くないように見える。しかし「ダイジンとサダイジンはもともとは別の生き物、下手をすると人間だったかもしれない」という前提で彼の行動を振り返ると、彼が長い長い時を要石として過ごしながら何を考えていたのか、鈴芽に解放された時に何を思ったか、その鈴芽に優しくされた時にどんな気持ちでこの言葉を発したのか、非常に意味深なものが見えてくる。
1度だけでは足らない、2度、3度と見て物語の裏の裏まで知りたい。『すずめの戸締まり』は、そんな風に思わせてくれる作品である。

「鈴芽の子になれなかった」

常世の中で、再び要石へと戻る直前、ダイジンが寂しそうに語ったセリフ。ここでいう「鈴芽の子」というのは、親子的な意味でのそれではなく、宮崎で彼女からかけられた「ウチの子になる?」という言葉に対するものである。
ダイジンは自分をつらい要石の役目から解放し、優しく接してくれた鈴芽のことが大好きだった。しかし彼女が本当に好きなのは草太で、自分は嫌われてしまった。それでもせめて鈴芽には笑顔で、幸せでいてほしいと考えたダイジンは、草太を助けるために命懸けの旅に赴く彼女に同行。「誰かがやらなければならないなら、草太をその役目から解放できるなら、自分が要石になってミミズを永遠に封じる」とまで覚悟を決めていた鈴芽を生き永らえさせるため、再び冷たい要石に戻る運命を受け入れる。

ダイジンが要石として過ごした年月を思えば、彼が鈴芽にどれほど感謝し、期待し、好意を抱いたかは想像に難くない。そのダイジンがどれほどの後悔と共に「鈴芽の子になれない(=鈴芽を傷つけてしまったから、嫌われてしまったから、もう一緒にいられない)」との言葉を口にしたのか、草太ですら恐怖した要石としての役目をどんな気持ちで再び受け入れたのか、考えるだけでも胸が痛くなる。
本作のトリックスターであるダイジンが、最後の最後に鈴芽に言い残したセリフである。その意味を噛み締めながら聞いてほしい。

ダイジンの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ダイジンが痩せたのはすずめとの心の繋がりが絶たれたため

かなめ石であるダイジンが最初に鈴芽に抜かれた際、痩せた猫の姿になった。また、再び鈴芽の前に現れたダイジンも痩せた姿をしていたが、鈴芽に「うちの子になる?」という言葉をかけてもらった直後にふっくらとした姿に変化する。これは、ずっと一人ぼっちで孤独を感じていたダイジンが鈴芽との繋がりを得て、力を得たのだと考えられる。鈴芽からの愛情を受けたことがそれだけ嬉しかったということだろう。
しかし東京の後ろの戸にて鈴芽に「大嫌い」と言われてしまったダイジンは、再びやせ細った姿に戻ってしまう。これも鈴芽との心の繋がりが絶たれたと感じたためだ。そして最後の東北にある鈴芽の実家跡では鈴芽と仲直りができたため、再び愛情を得て元気を取り戻し、ふっくらとした猫の姿に戻ったのだった。

ダイジンの声優は幼い子供のイメージで演技

ダイジンの声優を務めている子役の山根あんは、2014年7月29日生まれ。当時8歳の女の子だった。もともと山根あんは鈴芽の子供役でオーディションを受けたが、その場で新海から「ダイジンの声もやってみてもらえる?」と言われ、ダイジン役で声優デビューすることになったのだという。
実際のアテレコ現場では、新海から「ダイジンは3~4歳くらいの幼い子供のイメージ」と伝えられ、演技指導を受けた。作中でのダイジンは無邪気で少し怖いところがあるが、これは子供の無邪気さをイメージしているのだろう。声もダイジンにぴったりで、山根あんはその後『ウィッシュ』など海外作品の吹き替えに抜擢されている。
なお、今でもダイジンのことは大好きで、ダイジンのグッズではぬいぐるみがお気に入りだという。

「ダイジンとサダイジンの関係=閉じ師を持つ元人間」説

ダイジンとサダイジンについては謎が多く、「なぜ要石なのに動き出したのか」、「もともとは草太がそうされたように石ではなくなんらかの生き物だったのか」、「そうだとすれば要石になる前はどんな存在だったのか」、「どうして要石になったのか」など、様々な考察が存在する。
草太を要石にしたことから、「ダイジンたちは、特別な才能を認められて要石になった、閉じ師の一族の人間だったのではないか」との説もある。ここからさらに発展して、ダイジンとサダイジンの関係を、それぞれの性格から「ダイジンは子供、サダイジンは責任感の強い人物(大人)」であるとしている意見も根強い。ダイジンが鈴芽に対して見せた無邪気な好意が、この説を補強する材料にもなっている。

ダイジンを捕まえに来たのだろうサダイジンが、何も言わずに鈴芽たちに協力するようになったのも、「ろくに自分の人生も歩まぬまま要石になったダイジンが、どうしてもこの少女を助けたいというなら力を貸してやろう」と考えた結果だといえる。
ダイジンの想いは結局報われることはなかったが、彼が自分たちに協力してくれていたことを知った鈴芽からは感謝されているはずだ。

「ダイジンの名前の由来=天岩戸伝説」説

映画館で販売されているパンフレットには、「ダイジンという名前は、大神の意味も含めて設定されたもの」との記述がある。鈴芽の名前は「洞窟の中に隠れ、入り口を岩で閉じたアマテラスを、入り口の前で宴会をすることで誘い出した」という天岩戸(あまのいわと)伝説のアマノウズメから取られており、ここから「ダイジン=天照大神」とも考えられるのではないかと考察されている。
もっとも「岩戸に隠れたアマテラスを、アマノウズメたちが誘い出す」と「災いが封じられた後ろ戸を閉じていたダイジンが逃げ出し、これを鈴芽が追いかける」で構図はかなり異なっている。そのため、「ダイジン」という名前の由来が天岩戸伝説だとしても、あくまで“モチーフとしての設定”になる。

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