リトルバスターズ!(リトバス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『リトルバスターズ!』とは、2007年にビジュアルアーツの美少女ゲームブランドKeyから発売された恋愛アドベンチャーゲーム。主人公の直枝理樹は、旧友の棗恭介、井ノ原真人、宮沢謙吾、恭介の妹の鈴と共に全寮制の学校に通っていた。ある日、理樹が恭介に「昔みたいに何かしよう」と提案を持ちかけると、恭介は野球チームの結成を宣言。理樹の同級生達を巻き込み、その輪は大きくなっていく。彼女らとの交流を通じ、「世界の秘密」を知る青春アドベンチャーゲーム。2012年~2013年にはアニメ化もされた。

鈴ルート・他ヒロインのシナリオをクリア済の場合

野球部との試合が終わった後日、理樹はクラスメイトの杉並睦実からラブレターを受け取る。理樹は杉並に対し、返事は待ってほしいと答えたものの、当の理樹本人には杉並と恋仲になるという意識は全くなかった。
そんな時、理樹の事情を聞いた鈴が、「あたしと付き合おう」と提案。理樹も杉並とは違い、鈴のことが好きだと迷いなく言えることに気づき、鈴の提案を受け入れた。
2人が恋仲になったことを祝うバスターズメンバー達。杉並に対しても理樹から事の次第を打ち明けるが、杉並もまた「そうじゃないかと思っていた」と2人を祝福した。

そんなある日、理樹たちの学校に理事長と地方の有力議員の2人が視察に来るという情報が入ってきた。時を同じくして、鈴の猫であるレノンに結びつけられた紙を発見する理樹と鈴。そこには、その視察の案内係に鈴が立候補するよう指示が書かれていた。
「世界の秘密」に辿り着けるよう様々な指示が書かれた紙に、鈴と理樹は今回も従い、ともに案内係に立候補する。目上の人に失礼のないよう、その日からバスターズメンバーと共に礼儀作法の訓練を行う鈴。そこで与えられた指示を、鈴は難なくこなす。
その様子を見て、鈴が当日もうまくやれると確信する理樹。その想像通り、無事に理事と議員の視察案内を完遂することに成功した。

それから後日、鈴の元に併設校の交換留学生になるよう、担任から依頼を受ける。恭介が調べたところによると、併設校では影響力のあったグループがバス事故に遭遇。たった2人しか助からなかったという出来事が春休みにあったという。
新学期明けから、併設校の生徒たちは覇気がなく、暗いままの日々を過ごしているとのことだった。そこで、併設校へ鈴を派遣し、生徒たちの覇気を取り戻そうという事情である。
恭介や真人と違い、当初は反対していた理樹だったが、鈴が本当の意味で成長することを期待し、鈴に「併設校に行くべきだと思う」と発言する。併設校に行くのを迷っていた鈴だったが、理樹たちと話した翌日、レノンの尻尾にいつものように白い紙が結び付けられていることに気づく。そこには、「併設校を救え」という内容の指示が記載されていた。
「世界の秘密」に辿り着くための指示を受けて、鈴は併設校行きを決意した。
その日の夜、理樹はレノンを探す。しかし、そこにいたのはレノンを抱き上げる恭介の姿だった。理樹は恭介に、レノンを通して鈴に指示を出していたのは恭介なのか、鈴を独り立ちさせるために、今まで恭介が手のひらで策謀していたのかと問い詰める。
しかし、そんな理樹を恭介は「お前は問題をはき違えている」と一蹴する。そして理樹に、「世界の秘密」とは何なのかと尋ねる。それに対し、「そんなものの答えは存在しない」「鈴の興味を引き付けるための餌でしかない」と言う理樹。それを聞いた恭介は大笑いし、その場を立ち去った。

その後、併設校行きを決意した鈴。だが、併設校に送り出された鈴は、併設校の陰鬱な空気に馴染めず、それを変えることもままならない。
友人もできず、教師からはなぜ鈴のような子が来たのかと言われてしまい、段々と元気がなくなる鈴。理樹以外のバスターズメンバーとも連絡が取れない状況に陥ってしまい、鈴はさらに憔悴していく。
最初は理樹も鈴を励ましていたが、連日の鈴からのSOSに、理樹も「このままでは鈴は壊れてしまう」と思い、鈴を連れ戻そうとする。
だが、その前に恭介が立ちはだかった。鈴の窮状を知っている理樹は、突き放すような恭介の態度に激昂する。恭介は鈴を併設校から連れ戻すことはしない。全てが恭介の思い通りに動いているような気がする理樹。理樹はそんな恭介に、不信感を抱くようになった。

土曜日に併設校から戻ってきた鈴。鈴の様子は併設校に行く前と比べて遥かにやつれきっていた。日曜日の晩には併設校へ戻らないといけないという鈴。また、鈴は他のバスターズメンバーと連絡が取れないまま1週間を過ごし、理樹以外のメンバーを信頼できなくなっていた。
理樹はそんな折、謙吾に「鈴を連れて逃げる」という相談をする。謙吾は「その先に光はない」と言いつつも、「お前が恭介に勝てば、鈴は戻ってこられる」と言う。最初から解散させるつもりでリトルバスターズを再構築した恭介に不信を抱く理樹に、謙吾は「俺1人になってもリトルバスターズを続けてやる」と言う。理樹は、謙吾なら信頼できるかもしれないと思い、謙吾と共に恭介へ勝負を挑むことにした。

「野球チームらしく、野球で決着をつけよう」という恭介の提案に乗り、恭介・真人チーム、理樹・謙吾チームに分かれて勝負をすることに。当初は相方の投げるボールを3本柵越えさせられたら勝利というものだったが、1球ずつ投球した後、天候悪化のため、1本差でコールドゲームとすることになる。
恭介は1球目捨て球を、理樹は暴投を放ち、お互いにノーヒットに終わるが、2球目に真人が柵越えのホームランを放つ。この1球を決めなければ理樹たちの負け。そんな場面において、理樹は理想の投球を行った。だが、謙吾はあろうことか、それを見送った。
「茶番だ」と言い放ち、恭介に掴みかかる謙吾。理樹と真人の2人がかりで謙吾を抑えた後、恭介が冷たくコールドゲームを宣言した。

恭介との決闘に敗北した理樹は、鈴を連れて逃げ出す以外に鈴を救う方法はないと判断する。そして、日曜日の夜をやり過ごし、月曜日の早朝に鈴と共に学園を逃げ出した。行くあてのない2人だったが、理樹の提案で恭介・鈴の祖父の家を目指すことに。
理樹は恭介が祖父を苦手としていたことを思い出し、そこでならば恭介が探しに来てもやり過ごせると判断した。電車を乗り継ぎ、鈴たちの祖父の家に辿り着いた2人。だがそこに祖父の姿はなかった。
いつまでも帰ってこない祖父にしびれを切らし、鈴は家に上がり込む。それを追って、理樹も祖父の家を仮の住処として過ごすことになった。

次の日から、お金を得るため働き始める理樹。鈴たちの祖父の家は農村地域であったため、理樹は老婆の農作業を行い、その対価として食料を得る生活を過ごす。
だがある時、持病のナルコレプシーを発症し、作業中に眠ってしまう。その後、農作業の老婆は理樹を働かせようとはしなかった。
別の方法で食料を得るため、海で魚釣りや山菜採り等で食料を集める理樹。だが、食料品だけでなく風呂や調理に使用する薪などの消耗品も減っていくばかりの日々。
手持ちのお金が減ってきたことに不安を覚えた理樹は、銀行からお金を引き出そうとする。だがその口座は、理樹が学園から失踪したことを知った理樹の後見人によって止められていた。
それだけでなく、警ら中の警官にも遭遇してしまい、理樹は何とか警官から逃げ果せる。だが、そこで理樹は通行人の会話から「鈴たちの祖父の家にはもう誰も住んでいないこと」を知らされる。

状況が大きく変わり、ここからさらなる逃亡を企てる理樹と鈴。そこに、玄関のベルが鳴らされた。事情を知らない鈴は祖父が帰ってきたと喜ぶが、理樹は「家主が家のベルを鳴らすはずがない」とこれを否定。理樹の予想通り、玄関のドアを激しくノックする音が続く。
その後、玄関を破って幾人かの大人が家に入り込んでくる。闇夜に紛れ逃げようとする理樹だったが、かわいがっていた猫を見捨てられない鈴は抵抗する。
そのまま、暗闇の中で2人は取り押さえられ、元の場所へと送り返されてしまった。

修学旅行が目前に近づいた日。理樹は、鈴のいない日々に絶望する。かつて幼い日に、「生きていくことは、失うことだ」と知った理樹。だが、どこからか理樹に「またそこでお前は殻に閉じこもるのか?」と問いかける声が響く。その声に、理樹は「これからは強く生きる」と決意したのだった。

Refrainシナリオ

理樹は、寮生の「恭介が帰ってきた」という声で目を覚ます。同じくその声を聞いたルームメイトの真人が、今まさに部屋を飛び出そうとするところだった。
「謙吾と決着をつける」と言う真人。その様子が心配になった理樹は、真人の後を追って寮食堂へと向かった。食堂で相対する真人と謙吾。理樹が辿り着いた時には、すでに2人の喧嘩は始まっていた。素手で謙吾に殴りかかる真人に対し、謙吾は竹刀で応戦する。だが、剣道の心得があり、武器も持つ謙吾が徐々に真人を押し始める。このままでは2人が大けがをすると思った理樹は、とっさに2人の間に入り、ルールを決めようと宣言する。
それは投げ入れられたものの中からひとつを掴み取り、それを武器として戦うというものだった。だが、2人は何故理樹がルールを決めるのか、と反論する。
再び喧嘩を始める2人を止めることが出来ず、理樹は帰ってきた恭介を探す。だが、すでに恭介の姿は消えており、どこにも見つけることができなかった。
戻ってきた理樹は、竹刀で打ち据えられ倒れる真人の姿を目撃し、介抱することしかできなかった。

翌日の朝食時、謙吾も手を折ったようで、左腕にギプスを巻いていた。剣道部の練習には参加できなくなった謙吾だったが、そこで理樹に「何か楽しい遊びを考えてくれ」と提案する。謙吾の言葉を本気にしなかった理樹は、急いで朝食を食べた後、鈴を迎えに行くために女子寮へと向かった。
鈴は、極度の対人恐怖症を患っており、理樹以外の人間が近づくことを恐れていた。理樹は鈴を連れて、初等部の学級へと連れていく。その対人恐怖症のために、鈴は高等部での授業を受けることができなかった。
どうしてこんなことになってしまったのか、と理樹は思案する。恭介がその理由について知っているだろうと思い、恭介を問い詰めるが、恭介は漫画の世界に逃避するようになってしまっており、理樹と碌に会話をしなかった。
何とかして、鈴を元の元気な姿に戻したいと思案する理樹。そこに、鈴の猫であるレノンが現れる。レノンは落ちていた野球の白球を転がして遊んでおり、その様子を見た鈴がそのボールに興味を示した。そこで理樹は、キャッチボールをしようと鈴に提案する。
日が暮れるまでボールを投げ続ける鈴に、理樹はここしばらくずっと見ていなかった元気な姿を見る。キャッチボールであれば、鈴の心も元気になっていくかもしれないと理樹は考えた。
野球の形式でやろうと提案する理樹に、謙吾は「それなら俺は降りる」と宣言する。困惑する理樹に対し、「お前の行動がかつての恭介と被る」と言い残し、謙吾は立ち去った。その後合流した真人に、謙吾が抜けたことを伝える理樹。それを聞いた真人は、「そこまで来たなら十分だな」と言い、自分も降りると言い立ち去る。せっかく昔のように戻ったのに、また2人になってしまった理樹は当惑する。

謙吾の「何か楽しい遊びを考えてくれ」という提案に、理樹は鈴、真人を入れて4人でキャッチボールをしようと提案する。それを聞いた謙吾はどこか歯切れ悪そうな雰囲気を見せたが承諾。
そこに真人も加わり、キャッチボールをする4人。最初は真人と謙吾を恐れていた鈴だったが、キャッチボールが進むにつれてその距離は縮まっていき、最終的には2人にも恐れず接することが出来るように。
かつてのリトルバスターズの姿を見出し、安心する理樹と鈴。恭介こそいなかったが、これなら鈴を元気にできると理樹は自信を持った。
次の日、理樹はキャッチボールだけではなく、2対2に分かれて野球の試合形式でやるともっと面白いと思い、廃部寸前の野球部室のバットを手に取る。そこに現れた謙吾が、「お前は何をするつもりだ」と声をかける。野球の形式でやろうと提案する理樹に対し、謙吾は「それなら俺は降りる」と宣言。困惑し理由を尋ねる理樹に、「お前の行動がかつての恭介と被る」と言い残し、謙吾は立ち去った。
その後、合流した真人に謙吾が抜けたこと、その流れを伝える理樹。それを聞いた真人は、「そこまで来たなら十分だな」といい、自分も降りると言い残し立ち去る。
かつてのリトルバスターズのように戻ったのに、また2人だけになる鈴と理樹。理樹はその理由がわからず、当惑する。

鈴を元気にして、かつてのリトルバスターズに戻るにはどうすればよいのか、理樹は思案する。恭介は漫画の世界に引きこもり、真人、謙吾の2人とも離れてしまった。
そこで理樹は、かつての恭介と同じように、再度リトルバスターズを結成し、3人を仲間に引き入れようとする。理樹は真人を呼び出し、鈴とリトルバスターズを結成したことを伝える。
真人にも加入するようにお願いするが、真人は拒否。その後、真人は「俺はこれから最強を証明し始めるだろう」と言い残し、理樹の部屋を去った。
リトルバスターズを再び結成するために、恭介と同じ道をたどる必要があると確信する理樹は、鈴から真人を仲間にした際の出来事を聞き出す。
地域の暴れん坊だった真人を、恭介が喧嘩で打ち負かしてバスターズメンバーになったのだという鈴。それを聞いて、真人を倒す必要があるのかと、理樹は思案していた。

Episode:真人

真人にリトルバスターズ加入を拒否された翌日、彼の様子はおかしくなっていた。関わる人間すべてに敵意を見せる真人に、理樹は動揺する。それどころか、心配する理樹に対しその手を強く振り払う等の暴力を行うことさえあった。
さらに昼食時の食堂では、1人の男子生徒が床に倒れ込み、介抱されているところに遭遇する。傍にいた生徒に理樹が事情を聞いたところ、真人が相手にいきなり暴力を振るい、気絶させたという。普段からは考えられない行動を繰り返す真人を止めるべく、理樹は真人と戦うことを決意する。
鈴に、恭介がどのように真人に勝ったのかを尋ねる理樹。恭介は、トラップを仕掛けることで自分が有利な状況に持っていき、真人に勝ったのだという。理樹も同じく、真人しか引っかからないようなトラップを校内にしかけ、真人の動きを鈍くしようと画策する。
張り紙を使って真人を銅像の近くに誘導し、台車と強力接着剤を使って真人を銅像に磔にするトラップを作成し、理樹は真人を待つ。真人は理樹の思惑通りトラップに引っ掛かり、強力接着剤で銅像に磔にされた。動きの止まった真人を、理樹は説得しようとする。しかし真人は変わらず敵意を剥き出しにするだけでなく、銅像を土台ごと引き抜いて理樹を追いかけまわす。
理樹は真人の体力を削るべく、校内を走って逃げ回るほか、バレーのネット等を駆使して真人の動きを止めようとする。しかし、理樹の罠が悉く突破され、最終的に理樹と真人は相対する。だが、銅像を抱えて理樹を追いかけ続けていた真人の体力も限界を迎えていた。
鈴と協力して、疲弊した真人を打ち負かす理樹だった。

(真人視点)
理樹から「話がある」と言われ、理樹の元に赴いた真人。そこで真人は、理樹から鈴とリトルバスターズを結成したことを聞き、理樹から「仲間になってほしい」と勧誘される。しかし真人は、内心でそんなに簡単にリトルバスターズはできないと、提案を拒絶する。
かつての恭介と同じ道を理樹に歩ませるべく、勧誘を断った真人。そしてかつてと同じ状況を再現するため、真人は「俺はこれから最強を目指す」と理樹に宣言する。
真人はこれから何かが起こるだろうという確信を持っていたが、それがどういった出来事なのかは自分にもわからなかった。
理樹からの勧誘を拒否した翌日。学校に登校した真人は、周囲の人間が全員自分と同じ姿になっていたことに驚愕する。右を見ても、左を見ても自分。話しかけてくる声でさえ、自分の声。その異常な光景の中で、真人の精神はおかしくなっていく。
真人には理樹の姿さえ自分の姿に見えていた。理樹の手を強く振り払ったのも、そのためだった。
そして、昼食時の食堂で、大勢の自分がたむろしている光景を見て、ついに真人の精神は爆発する。声をかけてきた男子生徒を打ちのめし、校内にいるすべての自分を打ち負かすことで自分が最強になろうと証明しようとする。

真人は、昔から人とは違う思考の持ち主だった。それを周囲の人間に嘲笑され、馬鹿にされていた。ある時、真人を虐めていた子供の1人を殴り倒した時に、自分が強くなれば馬鹿にされなくなる、孤独でなくなると考えた。真人はそれから、懸命に身体を鍛えるようになったのである。身体を鍛えて、誰よりも強くなった真人。しかし、真人の期待とは裏腹に、今度はその力のために周囲に人が寄り付かなくなってしまった。
そこに恭介が現れる。ガキ大将として、年上の人間さえ喧嘩で負かすような生活を送っていた真人は挑戦者に飢えていた。そこで、恭介は爆竹やかんしゃく玉等を巧みに使い、真人に挑む。
恭介はうまく立ち回り、真人の手をポストに突っ込ませることに成功する。手が抜けない真人を一方的に攻撃する恭介だったが、真人はポストに腕を突っ込んだまま、それを持ち上げて恭介に攻撃する。最終的に打つ手のなくなった恭介と、1対1で殴り合う真人。その勝者は恭介だった。
「俺は馬鹿だから、強くないといけない。負けると自分が自分でなくなる」と言う真人に、恭介は「馬鹿でもいいじゃないか、その方が人生が楽しい」と言い、リトルバスターズに勧誘する。恭介のその言葉に救われた真人は、リトルバスターズに参加する。そして、真人は初めて孤独ではなくなったのだった。

理樹に負けて幻覚から解放された真人。理樹の「真人がどうなっても、真人は僕の親友だよ」という言葉に、真人は再び救われた。そして真人は、再びリトルバスターズに加入するのだった。

Episode:謙吾

真人が仲間になり、3人になったリトルバスターズ。3人は恭介の様子を見に部屋へ赴く。しかし恭介は、部屋の電気もつけず一日中漫画を読み耽っていると、恭介のルームメイトが言う。実際に理樹たちが恭介と話をしても、恭介はけだるそうに布団に潜り込んでいるだけであった。
理樹は、今の恭介はかつての自分だと感じ、恭介を仲間にするためにはまず謙吾を仲間にする必要があると考えた。かつて恭介がどのようにして謙吾を仲間に引き入れたのか、理樹は鈴と真人に尋ねる。2人は、恭介が謙吾の実家の剣道場を、道場破りをして謙吾を仲間に引き入れたのだと言う。
最終的に、道場師範であった謙吾の父を打ち破ることで、謙吾を仲間に引き入れたと語る真人と鈴。その話を聞いて、謙吾の父親に会いに行こうと理樹は画策する。
3人は実際に謙吾の実家に赴いたものの、父親は不在。母親はいたが、恭介と謙吾の父とのいきさつについては何も知らないとのことで、手掛かりを掴めないままであった。

何か謙吾を仲間に引き入れる方法がないか模索する中、理樹は心配して恭介の部屋を訪れる。ベッドと部屋の隅を行き来するだけの生活を送っていた恭介の姿を見て、かつての元気だった恭介に頼りたい気持ちにあふれる理樹。だが、その気持ちを抑えて部屋を立ち去ろうとした際、恭介から「謙吾は一つだけ嘘をついている」という言葉を聞く。
その嘘を暴くべく、3人は謙吾の部屋を訪ねたり、謙吾に直接話を聞く等の方法を試したが、いずれもうまくいかない。
その後、3人は授業中の謙吾の動作に何か怪しい点がないか、調べてみることにした。その中で、理樹は謙吾が授業中、怪我をしているはずの左手で消しゴムを取り、その後思い出したように右手に持ち替えたことに気づく。
左手の怪我を思い出したかのような謙吾の動きに、理樹は謙吾の怪我は嘘なんじゃないかと考えた。そこで、バスターズの3人は謙吾の怪我が真実かどうか暴くため、一芝居を打つ。
真人が作り物の壁を押し、そのすぐそばに人形を設置。謙吾が来たら鈴が人形が潰されると大声を上げるという芝居。腕を吊っている謙吾は右手で人形を抱えるはずであり、右手で人形を抱えていた場合、謙吾は左手で迫る壁を支える必要がある。真人の膂力であれば、謙吾が本当に左腕を負傷していた場合、数秒と経たず押し戻されるはずだ、という考えである。
実際にその芝居は成功し、謙吾は左手で迫る壁を支えることになる。だが、謙吾は左手だけで迫る壁と拮抗を続けていた。

謙吾の怪我が嘘であったことを暴いた理樹。どうしてそんな嘘をついたのか尋ねる理樹に、謙吾はそんなこともわからないのかと答える。理樹は謙吾が怪我をしてからの様子を振り返る。怪我をしてから、真人が引くほど遊ぶようになった謙吾。まるで部活動や剣道から解き放たれ、自由になったような謙吾の様子を思い返し、理樹は謙吾が実は剣道が嫌いだったのではないか、と考える。
自分たちだけにでも言ってくれればよかったのに、と言う理樹に対し、謙吾は「言えばお前はリトルバスターズをやめてくれるのか」と聞き返す。まるで嚙み合わない答えに、理樹は困惑する。そして謙吾は、「お前の辿る先は一筋の光もない暗闇だ」と言う。謙吾は理樹に、お前がすべきは「今」を守ることであり、その為にリトルバスターズを解散させなくてはならないと諭す。また、謙吾は「そうしてくれれば、俺は一生お前を守ろう」とまで言う。謙吾の提案を魅力的だと感じつつも、いつか強く生きると決意したことを胸に、理樹は謙吾の申し出を拒否する。
謙吾を仲間にするには、やはり謙吾に何らかの方法で勝つしかない、と考える3人。そこで、鈴が野球による勝負を提案する。最初はやったこともない野球で勝負することを躊躇っていた理樹だったが、鈴と真人の後押しと、ほかに方法がないことから、謙吾へ野球での真剣勝負を挑むことにした。

(謙吾視点)
かつて、理樹と鈴が付き合っていた世界。謙吾は何度もこの世界を繰り返し、終わらない日常を続けることが正しいことだと考えていた。
だが、ある時、世界を作っていたうちの1人である恭介が、この日常を変えてしまう大きな変化を齎した。鈴を併設校に送り、1人で成長させるという出来事だ。だが鈴の成長はうまくいかず、謙吾は日に日にやつれていく鈴の様子を気に掛ける理樹の相談を受けた。
鈴を連れて逃げるという理樹に対し、「その道の先にあるのは暗闇だ」と諭す謙吾。そして、恭介と戦って鈴を取り戻そうと理樹を鼓舞する。謙吾は、恭介を倒すことでこの日常を、そしてリトルバスターズを永遠のものにしようとしていた。
そして、理樹と謙吾、恭介と真人に分かれて行った野球勝負。お互い1投目はノーヒット、続く2投目で真人がホームランを上げる。ここで打てなければ負け。その場面で、ピッチャーだった理樹は絶好の球を投げる。確実に取れると確信する謙吾だったが、その時視界にある人物が映る。それは、謙吾の最も触れられたくない部分でもある古式みゆきの姿だった。
謙吾は一瞬そちらに気を取られ、ボールを見逃す。1歩差でのコールドゲームとなった。謙吾は恭介に激昂する。負けたことに納得できないのではなく、謙吾の最も触れられたくない部分に、恭介がこの世界の仕組みを利用して干渉してきたことに激怒した。
さらに、理樹は鈴と逃亡。だが、謙吾の懸念していた通り、2人は連れ戻され深い闇の中に沈んでしまった。

恭介の強引なやり方は失敗だった。なら自分は自分のやりたいようにやると、謙吾は決意する。再び繰り返す日常の中で、謙吾は嘘をついてまで剣道をやめ、いずれ襲い来る災禍からリトルバスターズの仲間を守ろうとする。
だが、理樹と鈴は強くなり、恭介に手を引かれることなく、自らの意志で歩み始める。恭介が理樹を導いているのかと疑った謙吾は恭介を問い詰める。だが恭介は朦朧としながらも、「あいつらが自分で始めたことだ」とそれを否定。理樹の行く末にあるのは絶望だけ。それを知っている謙吾は、何としても理樹を止めようと画策する。
だが、謙吾の想像以上に理樹は強くなっていた。暴走した真人を止め、自身に頼ることもない理樹。そればかりか、自分をリトルバスターズに引き入れようとしてくる。かつて、この世界を変えようとした恭介の姿を彷彿とさせる理樹の姿に、謙吾は困惑した。
そして、理樹が自分を仲間に引き入れるべく、野球の真剣勝負を挑んだ。理樹が勝てばリトルバスターズに加入し、謙吾が勝てばリトルバスターズを解散させるという条件を提示し、謙吾は理樹の勝負を受ける。
恭介にもそのことを伝える謙吾。そして自分が勝ったら、そんな病んだふりはやめて戻ってこいと恭介に伝えた。

野球のルールはかつて恭介と戦った時と同じく、お互いにボールを投げ合い、ホームランを3本先に打った方の勝ち。いかに強くなった理樹と言えども、謙吾は一筋縄では倒せない。謙吾は理樹の投げるボールを打ち込み、ホームラン2本を打ち取る。あと1本で謙吾が勝ち、リトルバスターズは解散する。
その時、鈴が乱入してくる。理樹の代わりにボールを投げたいと駄々を捏ね始める鈴。理樹は困惑するが、謙吾はそれを了承。鈴の投げるボールを打ち取れば、謙吾の勝ちに変わりはない。だが、鈴は謙吾の想像を超えるノーコン投者だった。鈴はボール球ばかりを投げ、バッターボックスに立つ謙吾の集中力は徐々に疲弊してくる。ようやく鈴がまともに投げられるようになったころにはすでに数時間が経過しており、謙吾の選球眼は大きく乱されていた。
明らかなボール球であっても、多くのノーコン球に比べれば手が届くように見えてしまい、バットを空振りしてしまう。謙吾は2ストライクに追い込まれた。ここでアウトになれば、謙吾の負けである。
謙吾は集中する。ボール球を見送り続け、ストライク球だけを狙う謙吾。そして、絶好の真ん中ストレート球が投げられる。謙吾は勝利を確信し、バットを振り抜いた。しかし、鈴の投げたボールはフォークボールだった。バットに当たる手前で、球が落ち謙吾は空振りする。そして、真人のアウト宣言。謙吾は理樹に、敗北した。

勝負の決着がついた後、謙吾はマウンドで涙を流す。俺は何故あんな時間を過ごしていたのか、もっと早く剣を捨てていればこんなことにはならなかったのにと、自身の後悔を口にする。
そして理樹が、一緒に遊ぼうと、かつて恭介に救われた時のように手を差し伸べる。謙吾はその手を取り、だがしばらくの間涙を流し続けるのだった。

Episode:恭介

この世界が始まった時、恭介は疲弊していた。以前の世界では、途中までうまく行っていた。野球のメンバー集め、世界の秘密の謎を解き明かすミッションを通して、鈴と理樹は確かに成長していった。鈴と理樹が付き合うことになった時は、恭介はもう、鈴が自分に頼ることもないだろうと安心した。だから恭介は、2人を送り出すために多少強引な手段を用いた。
鈴を1人で併設校へ送り出し、成長させる。いつまでもこの世界で遊んではいられない。鈴と理樹はこの世界を出て、2人だけで生きていかなくてはいけない。恭介はそう思い、半ば強引な手法を以て鈴と理樹に試練を与えた。
だが、恭介は失敗した。鈴は精神を病み、理樹も限界を迎える。そして、強硬な手段を取って鈴を送り出そうとしたことに反対だった謙吾にも、限界が近づいていた。だから、謙吾は恭介に勝負を挑んできた。その勝負を、恭介は謙吾にとって最悪の方法で踏みにじる。倫理を犯しても、どんな手を使っても、理樹と鈴を成長させるためだった。
しかし、理樹は鈴を連れて逃亡してしまう。最終的に2人を連れ戻すことには成功したものの、鈴の心には大きな傷が残ってしまった。
この世界が始まった時にも、鈴の状態は治らなかった。心を病み、理樹がいなければ何もできない状態にまでなってしまった鈴の姿を見て、恭介は自分の失敗を責める。
最初から、この世界で永遠に子供として遊んでいればよかったのではないか。そしてそれは、謙吾が望んだことでもある。
だが恭介は、理樹と鈴はこの世界を出て、自分たちがいない世界を2人で生きていかなくてはならないと思い、2人を強くあろうとさせた。

恭介はこの世界が始まってから、この世界と「何かが起こった世界」を行き来していた。
「何かが起こった世界」では、恭介は大けがをしていて地を這うようにして前を進む。先にある光を目指して、恭介は体を引きずるようにして、その光へ向かっていく。
だが、いつも途中で呼び戻され、自分の部屋で目が覚める。そして再び「何かが起こった世界」に戻ると、最初に倒れている場所に戻されている。どれだけ光へ近づいても、もう1度目が覚めれば元の場所に戻されるのである。
恭介はこれを何度も繰り返し、疲弊していた。謙吾は「病んだフリ」と言っていたが、この世界の行き来を通して、恭介の身体と精神も限界を迎えていた。
ある時、恭介はついに光の元、恭介が行きつかんとしていた場所に行きつく。水の流れるような音がするそこに、恭介は自身の身体を押し当てて、その流れを塞ぐ。だが、また目が覚めれば最初の場所に戻されると知っている恭介。徒労に過ぎないと思っていた恭介だったが、自身をもう1度死に瀕することで、目覚めの位置をリセットすることを思いつく。
そして恭介は自身の身体に、思い切り鉄の破片を突き立てるのであった。

次に目が覚めた時、眩しい光で恭介は目を細める。光が収まったそこには、真人と謙吾を仲間に引き入れた理樹が、手を差し伸べていた。
強くなり、リトルバスターズをもう1度作り上げた理樹の様子を見て、恭介は安心する。理樹の手を取れば、この世界は終わり、新たな試練が始まる。だが、成長した理樹ならば、鈴を連れて生きていくことができるだろうと恭介は確信する。そして、差し伸べられた理樹の手を取った。

Episode:Little busters

理樹と鈴が始めたリトルバスターズは、真人と謙吾、そして恭介を仲間に引き入れ、再び5人に戻った。
かつてのように、校庭で野球をする理樹。ピッチャーの鈴に、バッターの理樹。そしてマウンドに立つ真人、謙吾、恭介の3人。だが、この世界にも終わりが近づいていた。恭介は人差し指を立て、真人と謙吾に合図を送る。あと1球ずつ、それぞれ1球をキャッチしたら、この世界から退場する合図だった。

理樹がボールを打つ。大きく逸れて、見送ればファールになるボール。だが真人は追いすがり、飛び込んでそのボールをキャッチする。
無茶な捕球に、真人を心配し理樹が駆け寄る。そこで真人は、「これを取ったらもう去らなければならない」と理樹に語り掛ける。突然の真人の言葉に、理樹は困惑する。
真人は続けて、理樹に「自分と一緒で楽しかったか」と問いかける。理樹は困惑しながらも、「真人がいない生活なんて考えられなかった」と答える。
その言葉を聞いた真人は、理樹に感謝の言葉を告げる。そして、理樹にボールを投げ渡すと同時に、この世界から退場した。真人が突然消滅したことに、激しく動揺する理樹。だが、恭介がそれを冷静に諭し、理樹に真実を伝える。

修学旅行のバスが崖から転落したこと、理樹と鈴の2人しか助からなかったこと、皆が重傷を負った中、臨死の世界でバスターズメンバーたちの意志が共鳴し、この虚構世界を作り上げたこと。そして、この世界が皆の意志で生み出された虚構の世界であることが、世界の秘密だったこと。
それらの真実を聞かされた理樹は動揺する。しかし、強くなった理樹はそれらを受け入れて、前に進もうとする。状況を呑み込めていない鈴に、理樹は野球を続けるように言う。理樹の言葉通り、ボールを投げる鈴。そして、理樹の打球は謙吾を目掛けて飛んでいく。理樹の打球を取った謙吾。謙吾は、打球を取ると同時に、膝から崩れ落ち、涙を流す。
謙吾は俺はずっと遊んでいたかったと今までの人生を悔悟し、自身の心情を吐露する。だが、幸せな人生だったとも言い、涙を拭き理樹と握手をする。「リトルバスターズは不滅だ」の言葉を残し、理樹の手を握ったまま謙吾もこの世界を退場する。恭介、理樹、鈴だけになった世界。鈴が再びボールを投げ、理樹がそれを打つ。ジャストミートで振り抜いたバットが、鈴の投げたボールを空の彼方に吹き飛ばした。それを見た恭介は、グローブを足元に置いて立ち去ろうとする。

恭介の背中に、「もうどうにもならないのか」と理樹が大声を上げる。どうしようもないことは、理樹にもわかっていた。恭介は背中を向けたまま、お前はこれから鈴を引っ張っていくのだから、弱さはもう捨てていけと理樹を諭す。恭介の背中を追ってここまで来た理樹は、その恭介が行かないでほしいと涙ながらに声を荒げる。

恭介は振り返り、涙を流しながら「俺だってお前たちとずっと一緒にいたい」「ずっとそばにいたかった」と理樹に叫ぶ。世界の崩壊が近くなり、地響きが校舎を襲う。恭介は理樹を怒鳴りつけ、鈴を連れて校門から出ろと叫ぶ。恭介に従い、鈴の手を引いて校門を駆け抜ける理樹。そして理樹は、リトルバスターズの皆へ別れを告げるのであった。

理樹は全身の痛みで目を覚ます。眼前には崖から転落したバスの残骸や、周囲に散らばった荷物が広がる。「みんなはもう助からない」と悟った理樹は、横で目を覚ました鈴の手を引き、その場を離れる。事故の現場から少し離れたところで、ナルコレプシーに襲われる理樹。もし皆を救助したり、迷ったりしていたら、鈴と一緒にバスの爆発に巻き込まれていただろうと、薄れる意識の中で理樹は思う。そして鈴の声と背後の爆発音を聞きながら、理樹の意識は眠りへと落ちていった。

(鈴視点)
爆発の後、目が覚めた鈴は誰もいない学校にいた。鈴は何気なく手に取った小毬の描いた絵本と、それに挟まっていたリトルバスターズのメンバーたちの集合写真を見つけ、すべてを思い出す。
みんないなくなっていたのに、気づかなかった。鈴は学校中を駆け回り、バスターズのみんなを探す。しかし、葉留佳も、美魚も、来ヶ谷も、クドも、誰もいない。大事なものは失ってから気づく。泣きそうな面持ちで屋上へ向かう鈴。屋上には1人、小毬がいた。
「みんないなくなってしまった。自分も本当は行かないといけないけれど、鈴が心配だから残っていた」と鈴に語り掛ける小毬。小毬やリトルバスターズのメンバーにもう会えなくなると聞き、誰か1人でも欠けるのは嫌だと鈴は涙を流す。
小毬は髪のリボンを外し、鈴に手渡す。「鈴ちゃんが、笑って過ごせますように」の言葉を残し、小毬も虚構世界から去っていった。

病院のベッドで目が覚めた理樹。傍らには、座り込んでいる鈴の姿が見えた。理樹は鈴から、他のみんなは助からなかったことを聞く。これからは自分が鈴を守ると、理樹は鈴に告げるのだった。

Episode:鈴

虚構世界の学校が崩壊し、事故の現場での出来事を経験した理樹。虚構世界が完全に崩壊した後、暗闇の中で「現実でもこうなるはずだ」「これでいいよな」という恭介の声がする。
だが、理樹はそれを否定する。何が不満だと尋ねる恭介に、理樹は「みんながいない」と答える。救うことはできないと諦める恭介に、理樹は自分がナルコレプシーを克服すればみんなを助けられると言う。だが、恭介は鈴が足手まといになると言い、理樹の予測を否定する。
だがそこに、「あたしも強くなる」という鈴の声が響く。成長するための虚構世界はもうない、という恭介に、「世界は僕たちで作る」と言う理樹と鈴。そして2人の力で生み出した虚構世界に、理樹と鈴は入っていく。

鈴は誰もいない学校の中にいた。小毬の描いていた絵本と、新しいメンバーたちと一緒に撮ったバスターズの集合写真。ここにはもうみんなはいない。鈴は、大事なものはいつも失ってから気づく。
そして、小毬と最後に出会った屋上に向かう鈴。そこにはもう、小毬はいない。しかし、鈴の手には小毬に渡された髪飾りがあった。「鈴ちゃんが笑って過ごせますように」という小毬の願い。それを叶えるためには、みんなを救い、誰1人欠けることなく取り戻すしかない。
「小毬ちゃんのお願い、叶えてみせる」と、鈴はみんなを救う強さを手にすることを決意した。

Episode:理樹

ナルコレプシーを克服するため、自分の弱さと向き合う理樹。自分の弱さがどこにあるのか、理樹は現在から生まれるまでを回顧していく。
高校生活、かつて恭介に手を引かれたリトルバスターズ、両親を亡くした時。そして生れ落ちる以前の世界まで、理樹は自分自身を遡っていく。

生まれること、生きていくことは、失うこと。生れ落ちる以前の世界で、理樹の思念は生きていくことに恐怖を覚える。
だが、そんな理樹の前に、鈴の姿、リトルバスターズのみんなの姿が映る。
生きていくことは失うこと。だけど、いつか失うと分かっていても、誰かと出会い一緒に過ごした時間がかけがえのないものだと、今の理樹は知っていた。
辛いこと、失うことを恐れずに誰かと一緒に生きていくことを望み、理樹はこの世界に生まれ落ちることを望む。そして自分の持つ恐怖と向き合って、理樹はナルコレプシーを克服した。

理樹が目を覚ますと、そこはバス事故の現場だった。虚構世界ではない、今度こそ現実世界のバス事故の現場である。凄惨な事故を目の当たりにして、理樹は酷く動揺する。しかし、自身を鼓舞して冷静さを取り戻し、みんなを救うための方法を考え始める。太い枝を折り、バスからけが人を運び出すための担架を作る。警察への連絡を済ませた鈴と共に、バスの中からけが人を1人ずつ確実に運び出し、バスから離れたところに寝かせる。
その途中、理樹は横転したバスの底面にもたれて倒れる恭介の姿を見つける。けがが酷く、すぐに助けようとする理樹だったが、周囲にガソリンの匂いが充満していることに気づく。恭介はバスの底に空いたタンクの穴を塞いでいるのだ、と察した理樹は、他のみんなを先に救出して恭介を最後に救出することにする。
最後部の座席にいた謙吾、真人を救助し、残るは恭介だけ。だが、このまま恭介を運び出せば塞がれていたタンクから大量のガソリンが漏れ出し、炎に包まれてしまう。
理樹はその場にあった女子生徒の上着を恭介の代わりに押し込み、恭介の肩を担ぐ。その時、バスの後方から火柱が上がった。
駆け付けた鈴と共に、恭介を安全なところまで運ぶ理樹。バスから少し離れたところで、バスが爆発し、3人を爆風の余波が襲う。

しかし理樹は、爆風の中でもう2人を離さないと、しっかりと鈴と恭介を掴んでいたのだった。

エンディング

修学旅行の事故からしばらく経った頃。
怪我をしていた生徒たちも徐々に復学し、理樹たちのクラスはかつての喧騒を取り戻しつつあった。理樹もバスターズのメンバーたちも、虚構世界での出来事は殆ど覚えていなかった。しかし、彼女たちは夏休みの間を通して、虚構世界で理樹たちと共に解決した自分の心残りを、現実世界でも解決していた。

夏休みも明け、殆どの生徒がクラスに戻ってきた頃、謙吾が退院し復学するというニュースが入る。登校してきた謙吾は元気そうだったものの、脚を骨折しており普段のように活発な運動やバカ騒ぎは当面厳しそうな様子だった。
謙吾が復帰したことで、リトルバスターズのメンバーが全員揃うまであと1人だけ。ただ1人、バスターズのリーダーだった恭介はまだ復学していなかった。
元々重傷を負っていた上に、バスのガソリン漏出を防いでいたこともあり、他の生徒たちに比べてもけがの度合いが極めて大きかったようで、恭介だけはICUへと搬送され、転院の際にも、症状の軽快に伴い転院していった生徒たちとは違う病院へ送られていた。たった1人、しかし誰よりも大きい1人の抜け穴。理樹たちは恭介が戻ってくるのを今か今かと待ち望んでいた。

理樹たちが何をして遊ぼうか、バスターズのメンバーで集まっていた時。窓の外から聞きなれた声が聞こえてくる。そして、上の階からロープを垂らし、それに捕まった恭介が2階の窓から飛び込んできた。
すっかり回復し、復学した恭介を祝福するメンバーたち。恭介はメンバーたち全員に向かって、「修学旅行をやり直そう」と提案。入院中にこっそり病院を抜け出して免許を取っていた恭介の運転で、メンバー全員で旅行に向かう。行先は、海辺。

過酷を乗り越え、強くなった理樹が起こした奇跡は、「いつも変わらない日常」を取り戻したのだった。

『エクスタシー』版追加ヒロインルート

『EX』版での追加ヒロインシナリオは、すべてRefarin後のストーリーであったり、「世界の秘密」について知っていることを前提としたストーリーとなっているため、Refrain攻略後でなければ攻略できない。
しかし、通常版プレイ済のユーザーへの配慮として、『EX』版の初回起動時に「世界の秘密を知っているか」という質問が発生する。
「はい」と回答した場合、Refrain未クリアの場合でも『EX』版追加ヒロインシナリオに進むことが出来る。

佐々美ルート

野球の試合が終わった後日、クドリャフカから飼い犬のヴェルカの捜索を頼まれた理樹は、小毬・鈴の協力を得て、4人でヴェルカを探し回っていた。
校舎や寮を探し回るうち、学校裏手の焼却炉の近くで、佐々美と戯れるヴェルカを見つけた4人。動物好きという意外な一面を知った理樹だった。
その日の午後、理樹たちの教室に1匹の黒猫が入ってくる。佐々美について回っていた黒猫だと気づいた理樹は、彼女のところに連れていくべきか思案する。しかし、小毬は佐々美は猫が苦手なのだと語り、おそらく連れて行っても会ってくれないだろうと話す。
一応猫を佐々美のところに連れていく理樹だったが、猫が苦手な佐々美に追い返されてしまう。だが、黒猫は佐々美にかまってほしいのか、その場から動かない。
仕方なく、猫を外に連れ出す佐々美。小毬は、当初弱っていた猫を看病したことから、佐々美に懐くようになったのだと語る。佐々美は校舎裏にある古びた焼却炉の近くで、猫を放して教室へ戻っていく。その後、猫は理樹に向けて何か言いたげに鳴くのだった。

修学旅行を終え夏も過ぎた10月のある日、突然佐々美は黒猫の姿になってしまう。あまりにも突拍子のない出来事に困惑する佐々美。さらに、何を話しても猫の鳴き声になってしまい、周囲の人間との意思疎通が図れなくなってしまう。唯一言葉を聞き取ることが出来る理樹が、彼女の猫化現象を解決するべく協力することに。理樹と2人きりの時は人間の姿に戻ることができる佐々美。しかし、理樹以外の人間が近くにいるときや、理樹が電話で他の人間とやり取りをしているときは猫の姿に戻ってしまう。
さらに、理樹の寮室以外では猫の姿になってしまい、佐々美は人間の姿のまま、理樹の部屋から出ることが出来なくなってしまう。
ひとまず解決法を探るべく、佐々美は理樹の部屋で一夜を過ごすことに。
その日、理樹は不思議な夢を見る。何かを伝えることができずに後悔する「誰か」の夢だった。

変身しても、服を着たままの佐々美。その姿を見て、理樹は物理法則を超越した何かが働いているのではないかと推測する。
そして、理樹は誰かの願いによって作り出された虚構の世界ではないかと思い至った。
世界を構成しているゲームマスターが誰なのかを特定するため、理樹はバスターズのメンバーたちを巻き込んで原因を探す。
小毬に事情を話し、佐々美が元に戻るための協力を取り付ける理樹。謙吾にも協力を得ようとしたが、佐々美の希望で謙吾には話をしないことに。メンバーの協力を得ることで、事態の解決に一歩前進したと感じる理樹だった。
理樹はその夜、また不思議な夢を見る。「誰か」が、居場所を探して彷徨う日々の夢だった。

次の日、寮室で佐々美が作った料理を食べている途中、鈴が部屋に乱入してくる。鈴は小毬がいなくなったと言い、理樹を連れて女子寮へ向かう。そこには、空っぽになった小毬と佐々美の部屋があった。
鈴曰く、携帯も通じなくなっているという。理樹は、小毬が何らかの理由で虚構世界から脱出したのではないかと推測した。さらに鈴は、朝から真人もいないということを理樹に伝える。真人がいないことに気づかなかったことを不思議に思わなかった理樹だったが、鈴は「いないのが普通だという感覚がある」と理樹に伝える。そして鈴は、理樹なら解決できると、小毬が残した絵本を理樹に渡した。
絵本の内容は、かつての虚構世界の出来事をモチーフにしたものだった。悩みを抱えた小人たちの悩みを、1人の少年が解決していく。そして、悩みが解決した小人は、森を去っていくというものだ。
その内容から、理樹はその「誰か」の願いを叶えることが出来れば、この世界から解放されるのではないかと考える。そして、まずは再び校内を散策してヒントを探すことにした。
焼却炉付近には近づけないという異常を見つける理樹と佐々美だったが、それ以外の場所に異変は見つからない。そんな折、理樹はレノンを通して就職活動中の恭介と接触することに成功する。
恭介は、理樹は以前と同じような世界にいると伝え、「誰かが見ている夢」のようなものだと伝え、その世界は穴だらけなものだと言う。そして、そこに穴をあけるような存在がいる場合、そのマスターが排除してしまうと言うのだ。恭介からは介入することができないと理樹に伝え、理樹に激励を送る。その後、恭介は世界から切り離され、連絡が取れなくなってしまった。
理樹は佐々美に、恭介から得た情報を共有する。世界の歪みである穴から抜け出すか、マスターの望みを叶えるか、2人が虚構世界を抜け出すにはこの方法しかない。
また、佐々美は探索の結果、校外に出ることが出来ないことを発見していた。校内を探索することで、マスターの望みを叶える鍵を、2人は探すことになる。

その後、理樹はある憶測から、佐々美に猫が嫌いになった理由を尋ねる。
佐々美は子供の頃、1匹の黒猫を飼っていた。佐々美はその猫をかわいがり大切にしていたが、引越しをすることになった際、その猫が行方不明になってしまう。その後も猫は見つからず、佐々美の家族が住んでいた家は取り壊されてしまった。飼い猫だった猫が野良になって2週間生き延びる確率は1/3。もうその黒猫は息絶えてしまったのだろうと佐々美は語る。
その猫を置き去りにしてしまった慙愧の念、黒猫は自身を恨んでいるだろうという想いから、佐々美は猫を好きになる資格はないと考えていた。

佐々美がマスターではないかと考えた理樹は、佐々美と謙吾を引き合わせることで佐々美の望みを叶えようとする。
しかし、謙吾は佐々美の想いに応えることはできないと語る。また、佐々美が捨てられた大切なユニフォームを拾ってもらったというのは、謙吾ではなく理樹の功績だった。
そのことを聞いて動揺する佐々美だったが、なお謙吾に向かって語り掛ける佐々美。佐々美の声は謙吾に届いたが、すぐさま謙吾は世界から退場させられてしまう。
マスターが佐々美ではないことが結果的に判明したものの、すべては振出へと戻ってしまう。

そんな折、理樹は毎夜見ていた夢のことを思い出す。「誰か」が居場所を求めてさまよい、何かを伝えようとしている夢。その夢を思い出し、理樹は夜の校舎を辿っていく。行きついた先は焼却炉。そこには1匹の黒猫がいた。黒猫がマスターだと確信する理樹。そして、黒猫の記憶が脳裏に流れ込んでくる。
家が解体された後、野良猫として街中を徘徊して生き延びてきたこと。何度も季節を過ごして、もう先が長くないこと。そこで、かつての飼い主だった佐々美と再会したこと。しかし、佐々美はもう自分のことを覚えていなかったこと。全てを理解した理樹は、翌日の朝、佐々美を連れて校舎裏の焼却炉へと向かう。しかし、そこには見えない障壁があり、黒猫は佐々美を拒んでしまう。
佐々美は、きっともうあの子は私には会いたくないのだと、この世界から脱出するべく校門前へ向かう。そこから2人で脱出しようとしたとき、佐々美は理樹を校門の外に突き飛ばした。
佐々美は、これ以上理樹を巻き込むことはできないと、理樹をこの世界から追い出そうとする。それに納得のできない理樹は佐々美を説得しようとする。
しかし佐々美は、理樹のことが好きになっていたからこそ、ここから無事に脱出してほしいと伝え、黒猫の生み出した世界に1人取り残されていった。

それにどうしても納得できない理樹は、再び黒猫の生み出した世界に戻ろうとする。そして再び戻った世界で、佐々美に自身の想いを伝える。
そうして再び、黒猫の待つ焼却炉へ向かう2人。変わらず障壁はあったままだったが、佐々美はその障壁に触れて黒猫に語り掛ける。その時、障壁が消える。
佐々美と黒猫は長い時間を経て再会した。もう今際の際の黒猫と遊ぶ佐々美。段々体が動かなくなってくる黒猫に寄り添い、佐々美はこの世界が完全に消えてしまうまで、ずっと黒猫の傍に居続けた。
そして、現実世界に戻った2人は焼却炉へ向かう。そこには、もう冷たくなった黒猫の姿があった。佐々美はその黒猫のために、小さなお墓を立てる。
その後、「泣いた後、笑えるようでなければ嘘でしょ?」と、黒猫の死を振り切った佐々美はリトルバスターズに加入するのだった。

佳奈多ルート

野球の試合が終わった後、理樹は恭介から同好会の部室再編成の要望が生徒会に届いているという情報を聞く。そこで恭介は、理樹を寮会の手伝いへ派遣することで、リトルバスターズが活動するために間借りしている、現在休止中の野球部室を確保するための交渉材料としようとしていた。
恭介の申し出を快諾し、理樹は寮会における雑用係として、寮長室へ手伝いに赴く。
そこには、以前から寮会の手伝いをしていた佳奈多がいた。女子寮長であるあーちゃん先輩によれば、佳奈多は入学してすぐ寮会の仕事をしているようで、現在は風紀委員との掛け持ちをしているとのことだった。
寮長たちが部屋を開けている最中、佳奈多と2人きりになる理樹。佳奈多は何かと口実をつけて理樹を追い出そうとするが、理樹はめげずに寮会に顔を出し、雑用の仕事をこなしていく。
結果的に理樹は寮会での雑用を通して、佳奈多と交流する。そして、彼女の風紀委員長以外の意外な側面を知っていく。そして、葉留佳と双子の姉妹であることを、理樹は佳奈多との関わりを通して知る。

恭介から部室の問題が解決したことを聞いた後も、理樹は寮長室へ顔を出していた。そんな折、中庭で料理研究部と化学部が、アルコールランプの貸し借りで揉めているのを発見する理樹。止めに入ろうとしたとき、はずみで落ちたアルコールランプが割れ、火の手が上がる。
通りがかった佳奈多がそれに気づいて駆けつけ、現場の消火活動を実行・指揮する。無事に火は消し止められたが、上着を脱いで作業していた佳奈多は水をかぶっていた。水でシャツが透けて、その素肌が露わになった時、理樹は佳奈多の両腕に夥しい数の痣のような跡があるのを見る。衆目を集めてしまったことに気づいた佳奈多は、逃げるようにその場を立ち去った。
理樹は佳奈多を探す。佳奈多は人目のつかないところで嘔吐していた。慌てて駆け寄る理樹を払いのける佳奈多。佳奈多の目は、理樹以外の誰かを見ているように怯えていた。理樹が声をかけつづけて、なんとか佳奈多は正気を取り戻す。偶然通りかかった来ヶ谷が、佳奈多のことを引き受け、理樹はその場を立ち去ることにした。

翌日には、佳奈多の腕の傷について、学園中にそのうわさが広まってしまっていた。さらに理樹は、二木家の内通者の生徒と佳奈多が会話をしているのを立ち聞きしてしまう。二木家の人間が学校に来ること、佳奈多の結婚相手が決められていることを聞いてしまった理樹。そこに葉留佳が現れる。葉留佳はすでにその事情を知っていた。監視の目があったからこそ、佳奈多は常に優秀・品行方正でありつづけなければならなかった。三枝の家から敵視されている葉留佳と仲良くすることすらできなかったと理樹に語る。三枝の家の古い慣習を理樹に教える葉留佳。そして葉留佳は、佳奈多は自分の代わりに身代わりになったのだと語った。

ある日の朝、理樹は寮のすぐ近くで、葉留佳と佳奈多を見かける。佳奈多に声をかける葉留佳だったが、佳奈多に強く拒絶されてしまう。しかし、葉留佳は佳奈多との接触を諦める様子はなかった。理樹は葉留佳に、想いは通じるはずだと語りかける。しかし、佳奈多は頑なに葉留佳を遠ざけようとしていた。そんな折、理樹は葉留佳から、佳奈多が遅刻してきたこと、宿題をやっていなかったことを聞く。
葉留佳を意図的に拒絶していること、佳奈多らしくない失敗を重ねていることから、理樹は佳奈多が何か無理をしているのではないかと考えた。葉留佳は佳奈多に救われたことから、自身も佳奈多の力になりたいと言う。理樹と葉留佳は協力して、佳奈多の助けになろうと奔走する。
どこか様子のおかしい佳奈多は、半ば八つ当たりじみた施策を風紀委員として提案する。それはグラウンドの使用許可を厳格化するといったものだった。当然生徒の反発を招き、それどころか同じ風紀委員にも反対票多数で否決されてしまう。腕の傷の件から、佳奈多は空回りを繰り返し、孤立していった。
鬱屈した心を晴らすべく、雨天の中でも竹刀を振り続ける佳奈多。剣道は嫌いだったが、竹刀を振れば余計なことを考えずに済むからだった。そこに謙吾が現れ、「そんな剣では何も倒せやしない」と自身の葛藤を見抜かれる。「今」を変えたくないと、謙吾に語る佳奈多。その為に佳奈多は今まで努力してきたのだ。
同じく変わらぬことを望む謙吾。だが変わらないことはできないのかもしれないと、佳奈多はふと思う。
謙吾が立ち去った後、雨と無理に酷使した体が祟り、佳奈多はその場に倒れる。部屋にいた理樹は、クドから佳奈多が倒れたことを聞いて駆けつける。その後、クドと共に佳奈多を保健室へと運んだ。

(佳奈多視点)
葉留佳と佳奈多は、小さい頃から比べられて育った。どちらが三枝の継嗣にふさわしいか、ありとあらゆることで比較された。どんなに小さなことでも、葉留佳と佳奈多は比較され続けて育った。
そんなある日、佳奈多たちの元に実の両親から誕生祝のプレゼントが届く。桃色の髪留めが4つ。それは、葉留佳に勝った佳奈多への賞品として、三枝の人間から渡された。
佳奈多はそのうちの2つを、葉留佳に分け与える。そして、葉留佳と1つの約束をした。「いつか、2人でここを逃げ出して、本当の両親に会えるまで」「それまでは、仲が悪いふりをしよう」と。
月日が過ぎ、佳奈多が三枝の継嗣に選ばれた。三枝の家に向かった佳奈多は、以前とは違う虚ろな表情をした葉留佳を見つけてしまう。さらに、傍に居た三枝の人間は葉留佳に嘘を吹き込んでいた。「お前は永遠に2番だから、佳奈多はお前に髪留めを2つ渡した」「佳奈多は、髪留めの1つを捨てたそうだ」というものだった。
佳奈多は否定したかった。だが、三枝の人間に葉留佳を庇う様子を見せれば、葉留佳がもっとひどい目に合うかもしれない。そう考えた佳奈多は、その言葉を否定できなかった。
そして葉留佳は、佳奈多を憎悪するようになっていく。約束だった「仲が悪いふり」は、もうふりではなくなってしまっていた。それでも佳奈多は、葉留佳が自身を憎むことで少しでも生きていけるのであればと、葉留佳の憎悪を受け入れることにした。
だが、三枝の人間の悪辣さはそれに留まらなかった。佳奈多と違い、「要らない子」だった葉留佳を、雨風も凌げないボロボロの物置に監禁していたのだった。
それに気づいた佳奈多は激昂し、三枝の親族たちに食って掛かる。だが、二木家の叔父は佳奈多が家の風習を変えようとしていたことが気に食わなかったという理由で、葉留佳を傷つけたと言い放つ。さらに、交換条件として葉留佳を傷つけない代わりに、佳奈多が三枝の人間たちの言いなりになれと言う。現状の風習を維持し、三枝の人間たちの言いなりになれば、葉留佳はこれ以上傷つけられずに済む。
葉留佳を守るために、自らの意思を放棄する佳奈多。それでもなお、葉留佳と交流することは許されなかった。
そして佳奈多は葉留佳を守るため、本当の両親のところへ送り届けることにした。本当の両親に出会っても、佳奈多はもう何の感情も湧き出せなかった。

理樹が看病する中、佳奈多は目を覚ます。佳奈多の心配をする理樹に対し、佳奈多はあくまで理樹を遠ざけようとする。しかし、理樹はめげずに彼女の傍に居続ける。
唐突に、佳奈多は小学生の時分にいじめられていたクラスメイトの話を理樹にする。唯一佳奈多とだけ、話をしていたクラスメイトの話だった。
佳奈多は妹を守ることに心血を注ぐあまり、そのクラスメイトのことを助けることはできなかった。そして佳奈多は、理樹に人が助けられるものは多くないと語る。
だからこそ、理樹は佳奈多にではなく他の人にその手を差し伸べるべきだと、佳奈多は理樹を諭す。かつて佳奈多がクラスメイトを見捨てたように、理樹にも自身を見捨てるように言った。
しかし理樹は、佳奈多が苦難の中で流されそうになっているように見えると語る。そして、差し伸べられる手を取ることは、重荷に思うことはないのだと佳奈多に言う。理樹の言葉に、佳奈多はいつものように皮肉りながらも、涙を流して理樹の手を取った。

目が覚めた佳奈多は、葉留佳に看病され、クドリャフカの部屋に連れていかれる。そこで葉留佳に、すべての真実を伝える佳奈多。全てを受け入れた葉留佳は、佳奈多にもう1人じゃないと話す。今のままでずっとい続けることはできないと言う葉留佳。だからこそ、今だけじゃなくこれから先を望んでもいいんだと佳奈多に語り掛けた。

葉留佳との「これから」を歩むために、佳奈多は風紀委員、剣道部を脱退する。寮会に専念することになった佳奈多は、未だ寮会の手伝いに来る理樹を不思議に思い、あんなに邪険に扱ったのにどうしてか、と尋ねる。佳奈多の質問に、佳奈多のことが好きだから、と理樹は答える。動揺する佳奈多は、他に好きな人はいないのかとさらに尋ねる。
それでもなお、理樹は佳奈多が好きだと告げる。そして、佳奈多は理樹を拒まなかった。2人きりの寮会室で、理樹と佳奈多は口づけを交わした。
佳奈多との交流を深めているうち、修学旅行の時期が近付いてきた。それと同時に、三枝の人間たちが学校に視察に現れる。今にも本家に連れていかれそうな佳奈多を校門で見つけた理樹は、教室から飛び出して追いかける。だが佳奈多は理樹を明確に拒絶した。
葉留佳を守るために、自身を犠牲にしようとする佳奈多。だが、葉留佳を筆頭にリトルバスターズのメンバーたちが佳奈多の本家行きを阻止する。葉留佳が三枝の人間たちを相手に啖呵を切って、あそこは佳奈多の帰る場所ではないと言い放つ。佳奈多自身もようやく本心を見せ、「帰りたくない」と口にした。捨て台詞を残して逃げ去る三枝家の人間を見送った後、佳奈多は理樹に、「夏の終わりに『一緒に逃げよう』と言ってくれる?」と尋ねる。理樹はその問いに、もちろんと答えを返すのだった。

そして、修学旅行が終わり、永遠の1学期から生還した理樹たちリトルバスターズは、結婚式から佳奈多を奪還する計画を立てていた。計画は成功し、理樹と葉留佳は佳奈多を連れて会場から逃げることに成功する。
その後、ほとぼりが冷めるまで半年程、理樹と佳奈多、葉留佳の3人で逃避行を送ることに。葉留佳は逃避行に向けて、逃走資金の用意や三枝の親戚たちの同意もすでに確保していた。そして、葉留佳と佳奈多は長い時間の先に、三枝の家が変わるきっかけを生み出したのだった。

9zhino155
9zhino155
@9zhino155

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planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜(Key)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』(プラネタリアン)とは、ビジュアルアーツ社のゲームブランドであるKeyが制作した、ノベルゲームである。 本作は戦争によって荒廃してしまった未来の世界を舞台に、生き残りの人間である主人公とロボットである「ほしのゆめみ」の交流を描いている。 世界の終末を感じさせる空気感の中、機械であるはずのゆめみとの交流を通して変化していく主人公の心が感動を呼び起こす作品。

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プリマドール(Key)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

プリマドール(Key)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『プリマドール』とは、VISUAL ARTSのゲームブランドKeyが原作を手がけたオリジナルアニメ作品である。また、メディアミックスプロジェクトとして漫画やゲームが発売された。「人形と歌」をテーマに、兵器として作られた自律人形の少女達の想いと成長を描く物語である。遠間ナギは自律人形の新たな居場所として黒猫亭というお店を開いた。そこで働く主人公の灰桜は記憶を失った自律人形で、世間知らずで失敗も多いが歌うことが大好き。明るい灰桜を中心に、歌を通した自律人形たちの交流が広がっていく。

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Summer Pockets(サマポケ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

Summer Pockets(サマポケ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Summer Pockets』 (サマポケ)とは2018年6月に発売されたビジュアルアーツのゲームブランド「Key」から発売されている恋愛アドベンチャーゲーム。 素行の悪さが原因で停学中の少年、鷹原羽依里(たかはらはいり)は周りの白い目から逃げるように夏休みに田舎の島を訪れた。訪れた島は初めて来るはずなのにどこか懐かしい、そんな島での羽依里の夏休みが始まるのだった。 忘れていた何かを思い出させてくれる、そして決して忘れることのない、そんな夏休みが体験できる一作。

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クドわふたー(Key)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

クドわふたー(Key)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『クドわふたー』とは、株式会社ビジュアルアーツのゲームブランド、keyによって制作された恋愛アドベンチャーゲーム。前作『リトルバスターズ!』のスピンオフ作品となり、主人公の直枝理樹とヒロインの能美クドリャフカのifの世界を描く。宇宙飛行士である母親に憧れ、自身も宇宙飛行士になることを夢見て毎日を過ごすクドリャフカ。そこに幾多の困難が立ちはだかるも、理樹や仲間の支えによって乗り越え成長していく。夢は叶えるものだ、と前へ進むクドリャフカの姿が、多くの人の心を揺さぶる作品となっている。

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ONE 〜輝く季節へ〜(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ONE 〜輝く季節へ〜(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ONE 〜輝く季節へ〜』とは、1998年にTactics(後のKey)から発売された恋愛アドベンチャーゲーム。高校生同士の恋愛を題材としており、「泣きゲー」を開拓した作品の1つとして名高い。R18のゲームとして制作された後に通常版が売り出され、2023年にはリメイク版である『ONE.』が発売された。 ごく普通の高校生だった折原浩平は、ある時から周囲の人々の記憶の中から消え始める。それが「永遠の世界」への旅立ちを意味するものだと気付いた浩平は、恋人との絆の中に己を現世に留める縁を求めていく。

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Kanon(カノン)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

Kanon(カノン)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Kanon』(カノン)とは、1999年にKeyから発売された恋愛アドベンチャーゲーム。感動的なストーリーを特徴とした「泣きゲー」の代表格として名高く、小説、マンガ、アニメと様々なメディアミックスを果たしている。 高校生の相沢祐一は、7年ぶりに従姉妹の水瀬名雪が暮らす北国の街を訪れる。子供の頃は毎年のように遊びに来ていたこの街での記憶をなぜか忘れていた祐一は、月宮あゆを始めとする同年代の少女たちと出会い、やがて恋仲となっていく。そんな彼らを待ち受けていたのは、残酷な運命と天使が呼ぶ奇跡だった。

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Angel Beats!(エンジェル ビーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

Angel Beats!(エンジェル ビーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

「Angel Beats!」は、P.A.WORKS制作によるテレビアニメ作品。 主人公「音無結弦」が目覚めると、そこは死後の世界だった。そこで出会った「仲村ゆり」に理不尽な人生を強いた神への復讐を目的とする「死んだ世界戦線」へと誘われる。音無は戦線の一員として、「天使」と呼ばれる少女と戦いを繰り広げる日々が始まる。 青春コメディ要素もありながら、人生に言及する重みのある名言を多く残す。

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CLANNADの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

CLANNADの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『CLANNAD』とは、ゲームブランドKeyが製作した恋愛アドベンチャーゲーム。これを原作にアニメやコミックも制作されている。家族というテーマを通して人と人との絆を描いており、ありふれた学園生活から始まる、人と町の物語である。物語を併して複雑に描かれゆく人の物語から、ネットでは”CLANNADは人生”といわれている。絆や家族の物語を描く作中には、人々の心に響く数多くの名言・名セリフ、名シーン、名場面が登場している。

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アニメ『Charlotte(シャーロット)』とkey様の魅力は第4話を見れば全て理解できる件

アニメ『Charlotte(シャーロット)』とkey様の魅力は第4話を見れば全て理解できる件

2015年7月〜から、株式会社ビジュアルアーツkey様のアニメ『Charlotte』が放送されてます。そんなkey様の魅力的な作品として、『リトルバスターズ』や『クラナド』などがあります。今回の『シャーロット』にも、そういったkey様の魅力が如実に表されている回がありますーーそう!それは第4話です!そのポイントをまとめてみました。

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【リトルバスターズ!】KEY(麻枝准)作品の厳選壁紙画像まとめ【Angel Beats!】

【リトルバスターズ!】KEY(麻枝准)作品の厳選壁紙画像まとめ【Angel Beats!】

麻枝准といえば、ゲームのシナリオライターや脚本家、音楽プロデューサーとして知られる人物。過去に『リトルバスターズ!』や『Angel Beats!』などのヒット作を生み出してきました。人気の高さからアニメ化されたものもあります。この記事では、そんな麻枝准による作品の壁紙画像をまとめました。

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違いはここだ!「一番くじ」と「プライズ」の違いまとめ

違いはここだ!「一番くじ」と「プライズ」の違いまとめ

アニメやゲームのキャラクターグッズといえば、「一番くじ」や「プライズ」などがあげられますよね。しかしながら実際、どれだけクオリティや種類などが異なるのか明確なのです。同じフィギュアやぬいぐるみでも、「一番くじ」には500円〜800円払ってでも手に入れたいもの、「プレイズ」には数千円を投資しようともゲットしたいものと、必見です。

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【あつ森】アニメ・漫画キャラの制服を再現したマイデザインがすごい!【マイデザインIDまとめ】

【あつ森】アニメ・漫画キャラの制服を再現したマイデザインがすごい!【マイデザインIDまとめ】

大人気ゲームシリーズ「どうぶつの森」のニンテンドーSwitch専用ソフト『あつまれ どうぶつの森』では、服やタイルを自由にデザインして作る「マイデザイン」という機能があり、人気を博している。特に人気漫画などに出てくる服を再現したマイデザインはたびたびネット上で大きな話題になっている。Switchオンラインで公開されているマイデザインは自由に使うことができるので、大好きなあのキャラになりきることも可能だ。ここでは様々な人気アニメ、漫画の制服を再現したマイデザインを紹介する。

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涙腺崩壊必至!?泣けると話題のアニメ作品まとめ【あの花、クラナドほか】

涙腺崩壊必至!?泣けると話題のアニメ作品まとめ【あの花、クラナドほか】

泣きたいときに思いっきり涙を流して気持ちをリフレッシュさせる「涙活」。膨大な数のアニメの中には「涙活」にぴったりな、「泣ける」作品がたくさん存在している。本記事では特にSNS上で評価が高かった「泣ける」アニメ作品を、簡単なあらすじや登場人物・キャラクター、メディア展開情報などを含めてまとめて紹介する。

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【CLANNAD】京都アニメーション(京アニ)の女性キャラクター限定壁紙まとめ【涼宮ハルヒの憂鬱】

【CLANNAD】京都アニメーション(京アニ)の女性キャラクター限定壁紙まとめ【涼宮ハルヒの憂鬱】

京都アニメーション(京アニ)といえば、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』など、数々のヒット作を生み出してきましたよね。萌え要素たっぷりの可愛い女の子がたくさん登場することで知られており、オタクの心をくすぐっています。この記事では、そんな京アニ作品から女性の登場人物・キャラクターに限定した壁紙画像をまとめました。毎日こんなに可愛い子の姿が拝めるなんて、最高すぎる…。

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