ジョーカー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジョーカー』とは、2019年にアメリカ合衆国で作成されたスリラー映画である。DCコミックス『バットマン』に登場するスーパーヴィランであるジョーカーが主人公となっており、2019年10月4日に日米同時公開された。舞台は、まだバットマンが誕生する以前の、不景気により治安の悪化する1981年のゴッサム・シティ。後のジョーカーことアーサーは、発作的に笑い出してしまう病と病弱な母親を抱えながら、一流のコメディアンを目指して貧しい生活を送りながらピエロのアルバイトを続けていた。

ジョーカーとして覚醒する前、アーサーが母を寝室に連れて行く際にテレビから作曲者であるディーン・ケイ&ケリー・ゴードン名義の歌詞のない『That's Life』が流れ、曲に合わせてアーサーがダンスのステップを踏むシーンがある。その後アーサーが母を殺してマレーのショーに出演するためメイクをするシーンと、エンディングで流れるのが歌詞のあるバージョンで、まだ真実を知らず希望を持っていたこの時のアーサーと比較させるような演出となっている。

挿入歌:Gary Glitter『Rock and Roll Part 2』

自宅でランドルを殺害したアーサーが、ジョーカーとしてマレーのショーに出演するため街へ出かけ階段の踊り場でダンスのステップを踏むシーンで流れる曲。なおゲイリー・グリッターは小児性愛者であり、児童ポルノ所持、児童売春と児童への性的虐待での逮捕歴がある狂人で、作品中のジョーカーもまた狂人であるという関連付けとなっている。

挿入歌:Ray Davies and His Button Down Brass『Spanish Flea』

アーサーがジョーカーとしてテレビ番組に出演中マレーを殺害、マレーの決め台詞である「That's Life!」を真似したところで場面が切り替わり、場にそぐわない軽快なこの曲が流れる。なお原曲は、トランペット奏者でミュージシャンのハーブ・アルパートが発表している。

挿入歌:Cream『White Room』

ジョーカーが主演したテレビ放送終了後、暴動の発生したゴッサム・シティ内をパトカーに乗せられたジョーカーが連行されていくシーンで流れる曲。希望が閉ざされ悲しい時代が始まったという歌詞の内容は、炎に包まれ富裕層が襲われるゴッサム・シティの惨状、またジョーカーの闇と救われなさを表している。その後、シーンは曲名通りの白い壁に包まれた部屋、病院の一室へと切り替わる。

ED(エンディング):Frank Sinatra『That's Life』

エンディングは2曲続けて流れる。先に流れるフランク・シナトラが歌う『That's Life』は、母を殺したアーサーが、マレーのショーに出演するためにジョーカーのメイクをするシーンで流れるものと同じである。歌詞は「滑稽だがそれも人生、うつむいた日も顔を上げて」という前向きなものであるが、アーサーの現状を思えばあまりに悲しい内容である。

また、浮き沈みの激しい芸能界を渡り歩いてきたフランク・シナトラらしく「誰かの夢を踏みつけて楽しむ人間もいる」「僕はずっと操り人形で、海賊で、詩人で、歩兵で、王様だった」「浮き沈みの中で時に逃げ出しながらも、レースに戻ってきた」と、意味深で皮肉めいた歌詞も多い。尊敬していたマレーに笑いものにするためショーに呼ばれたこと、生活のために自分の心を殺し道化を演じてきたこと、同僚の裏切りや信じてきた母親の過去を知り人生に絶望する中でジョーカーとして覚醒したことなど、本作品でのアーサーの人生そのものを象徴しているかの様である。

ED(エンディング):Frank Sinatra『Send In The Clowns』

エンディングで2曲目に流れる。アーサーが地下鉄で3人組のサラリーマンに襲われた時、サラリーマンたちがアーサーのピエロ姿をからかって歌った曲でもある。元恋人との報われない恋を歌ったものだが、やりきれない状態に対して歌の主人公が道化師(clown)を呼び、今その道化師が到着したから邪魔をしないように告げるというその内容は、現実に対してアーサーの報われなかった思いと、最終的なジョーカーの誕生を表現している。

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