ガラスの仮面(美内すずえ)のネタバレ解説・考察まとめ

「ガラスの仮面」は美内すずえによる日本の少女漫画作品。1976年から白泉社「花とゆめ」に40年以上も長期連載されている。2014年9月の段階で累計発行部数が5,000万部を超え、少女漫画の金字塔とも言われる大ベストセラー。
平凡な1人の少女・北島マヤが演劇への熱い情熱を滾らせ、演劇に全てをかけ、才能を開花させる。演劇界のサラブレッド・姫川亜弓と競いながら幻の名作「紅天女」を目指す超人気大河ロマン。

台風の中、舞台を見に来た速水。出演者は喜び、速水のために初日舞台を開け、芝居を始めた。
「つまらなかったら容赦なく席を立つ」と公言していた速水は、最後まで席を立たず、出演者にアンコールの拍手を贈った。

舞台に来てくれた速水と一緒に初日を祝う会をやろうと出演者は用意を始めるのだが、桜小路がマヤと速水の会話に入り、マヤとの仲を見せつけるように肩を抱いたのを見ると、速水の心に嵐が吹き荒れ、そのまま誰にも何も告げずに帰ってしまった。
その時に速水がつぶやいたセリフ。
「おれの中の嵐も当分やみそうにないな…」マヤを思っているにも関わらず表現できない速水と、自分の思いを素直に表せる桜小路。速水のマヤへの切ない気持ちが伝わって来る名セリフ。

引用:白泉社文庫 ガラスの仮面 19巻

「夢はもう終わりだ…」

梅の谷で「紅天女」の稽古中、紅天女の演技を掴むために梅の谷の木の上で梅の木と同化していたマヤ。そのうちに雨が降ってくるが木と同化しているマヤは気づかない。マヤが梅の谷に向かってまだ帰っていないと知った速水はマヤを心配して探しに行く。梅の木の上でずぶ濡れになっているマヤを発見し、保護した。
近くの神社の社務所で雨宿りをするのだが、ストーブに燃やせるものはわずかしかない。マヤを気遣う速水はマヤのために自分のコートを渡し、濡れた服を乾かす。
速水の気遣いに触れ、また、「忘れられた荒野」の後に紫のバラの人からのメッセージから速水が紫のバラの人だと気づいているマヤは、憎まれ口を聞きあえて憎まれ役を買って出てくれていた速水の本当の優しさ、それに気づかずにいた自分の愚かさを後悔していた。そしてマヤは、速水への自分の気持ちにようやく気づいた。
マヤのために雨の中ストーブで燃やせるものを探しにくという速水を引き止めたマヤは、自分を温めて欲しいと速水に頼んだ。
マヤからの頼みを聞き、速水はマヤの身体を抱きしめた。腕に閉じ込めたマヤの存在に愛しさが溢れ一瞬我を忘れそうになった速水だが、マヤの怯えた目を見て、我に返った。「チビちゃん眠れ…、おれの気が変にならないうちに…、今夜はきみもおれもどうかしている。目がさめたときはみんな夢だ、眠れ…」
速水の腕に抱かれながら穏やかな眠り付いたマヤ。速水はマヤを抱きしめながら辛い夜を過ごしていた。「夜が明けたか…、目覚めればきみもおれの手の中から飛びたっていってしまうだろう。おれはきみを見守ることしかできないかもしれん…、それでもきみが翼を広げて大空を舞う姿をみるのはたぶん誰よりもうれしい…。早く大人になれ…、チビちゃん。たとえおれの手のとどかない所へ飛び立ってしまおうと…。夢はもう終わりだ…」速水はこう思いながら寝ているマヤに唇を重ねた。

本心を明かせない速水の切ない名シーン。

引用:白泉社文庫 ガラスの仮面 21巻

梅の谷で紅天女の稽古を終え、ふたりが本気で本音を言い合うシーン

梅の谷で「紅天女」の稽古を終え、東京に戻ることになった亜弓とマヤ。マヤは全てにおいて完璧な亜弓の演技に感動し、亜弓はマヤの本能、才能の違いに苦しんだ日々だった。
早朝に自主練習をしている亜弓を見ていたマヤは、亜弓の動き全てに魅了されかなわないと思ってしまう。練習を見ていたマヤに気づいた亜弓はマヤを強い視線で威嚇する。亜弓にはかなわないと語るマヤの言葉を遮り、亜弓はこれまでマヤに感じていた鬱憤を全てマヤにぶつけ始めた。亜弓に「かわいそう」と同情するマヤに憤った亜弓は、思いっきりマヤの頬を殴り飛ばした。これをきっかけにマヤも反撃を開始。2人は雨の中取っ組み合いの喧嘩を始めた。
空が明るくなる頃、2人はボロボロになって地面に座り込んでいた。女優であるにも関わらず、顔にも体にも傷が付き泥だらけ。2人はお互いの姿を見て、笑い出した。

完璧と言われる亜弓の苦悩を知り、思い切り本性を見せ合った2人は、お互いに絶対に負けないと宣言し合い、かけがえのないライバルだと確認した。
いつも比較されながら、お互いの本心を言えずにいた2人の距離が縮まった名シーン。

引用:白泉社文庫 ガラスの仮面 23巻

「覚えておいてくださる?わたくし紫のバラが大嫌い…!」

大都芸能の速水真澄との婚約が整い、幸せであるはずなのに、速水の態度はただ優しいだけで本心が全く見えない。そのことで不安を覚えた鷹宮紫織は、速水とマヤとの関係に疑問を持ち始めた。マヤにだけ見せるいろいろな表情や、マヤのためにあえて憎まれ役を演じている速水の姿に気づき、紫織は速水の別荘を探り速水がマヤの紫のバラの人だと気づいた。
速水とマヤをこれ以上近づけさせないように、紫織はマヤに次々と罠を仕掛けていく。紫織はマヤを呼び出し、速水との仲をアピール、それでも動じないマヤのカバンにこっそりと婚約指輪を入れマヤに盗まれたのではと速水に泣きつく。
さらに、指輪を返しに来たマヤをドレスの仮縫い場所に誘導し、喉が渇いたのでジュースを持って来いとマヤに頼み、速水が来る時間に合わせて、ジュースを持っているマヤに自分から倒れ掛かった。ジュースは紫織のドレスにひどいシミを作った。紫織の悲鳴を聞いて部屋に駆け込んだ速水は、マヤが速水憎さで紫織に嫌がらせをしたのだと勘違いし、マヤを怒鳴りつける。
信じてもらえなかったマヤはショックを受け、泣きながらその場を立ち去った。その影で紫織は自分の企みがうまくいったことを喜び暗い笑みを浮かべていた。

会社に戻った速水は、マヤがしたことを信じられないおもいでいたのだが、秘書の水城から何か裏があると指摘され、冷静になった。
一方の紫織は帰宅し、家に生けられている紫のバラを発見し、おもむろに花を切り落とし始めた。「覚えておいてくださる?わたくし紫のバラが大嫌い…!」

紫織の狂気が始まった瞬間だった。

引用:白泉社コミックス 46巻

速水がマヤを身を呈して守ったシーン

マヤは紫織から嫌がらせを受け続けていた。これまで紫のバラの人に送った卒業証書やアルバムが送り返され、マヤを見限ったというメッセージまで送られてきていた。アルバムの写真はズタズタに切り裂かれ、箱に詰められ送り返されてきた。
速水が大事な人を傷つけられたと誤解して怒っているのだと思ったマヤは、誤解を解くために大都芸能を訪れた。
1人で扉から出てきた速水にマヤが話しかけると、そこに大都芸能を恨むライバル社に雇われたごろつきが現れた。マヤにもナイフが向けられ、マヤを助けようと速水はごろつきに立ち向かった。相手は複数人、とても1人では敵わない。速水はマヤを腕に囲い込み車に押し付け、自分は暴漢に背を向けて全ての攻撃を受けた。自分は瀕死の重傷を負いながらマヤの身を案じる速水の姿を見て、自分に切り裂かれた写真を送りつけたのは速水ではないとマヤは確信した。
暴漢に襲われながら、決してマヤを離さなかった速水を見て、紫織の心はさらに壊れていった。

引用:白泉社コミックス ガラスの仮面 46巻

自分の気持ちを誤魔化せなくなった速水がマヤを抱きしめるシーン

速水との仲を深めたい紫織は、仕事で邪魔をされたくないといい、携帯電話をおいてクルーズ船に来て欲しいと速水に頼んでいた。紫織より先に到着した速水は案内された部屋の中に巨大なダブルベッドが設置されているのを見て、紫織と一緒に泊まることはできないと下船しようとしていた。
紫織から速水と手を切るように1千万の小切手を渡されたマヤは、小切手を返すために紫織を探しにクルーズ船にやってきた。紫織に会うだけだからと無理やり乗船しようとしているマヤと、下船しようとしていた速水が偶然出会った。マヤが速水の知り合いだと分かった乗組員は特別にマヤの乗船を許可し、速水がマヤに事情を聞いているうちに出航の時間になり船は港を離れてしまった。
その頃紫織は、事故渋滞に巻き込まれ港へ行くことが出来ずにいた。携帯を置いてきて欲しいと頼んだため、速水に連絡する手段もない紫織は絶望の淵にいた。
速水とマヤは船の上で2人で過ごすことになった。
速水と一緒に食事を取る中、紫織から1千万の小切手を渡されたことをマヤは速水に話し、これまでマヤが紫織にしたという嫌がらせの数々の誤解を解いた。速水もマヤの話を信じ、紫織からという小切手を2つに破った。豪華客船のクルーズに普段着で参加していることに気後れを感じていたマヤは、速水からドレスを贈られた。ドレスアップして現れたマヤの大人っぽく美しくなった姿に速水は見とれた。
2人でダンスを踊り、満天の夜空を見上げ楽しいひと時を過ごした速水とマヤ。夜も更けマヤを部屋に案内した速水は、自分は外のソファで休むと言って部屋を出ていった。豪華な部屋、大きなダブルベッドを見たマヤは、この部屋は速水が紫織と過ごすための部屋だと思い知り部屋を飛び出した。速水が紫織のために用意した部屋では寝られないと涙を流すマヤに動揺した速水は、あの部屋は紫織が用意したことや、マヤが来なければ帰ろうとしていたことなどを話し、速水もあの部屋に行くつもりはないとして、部屋の鍵を海に投げ捨てた。
船のデッキで一夜を明かすことにした2人は、楽しいひと時を過ごした。
早朝、余りにも見事な朝日に感動したマヤはソファで微睡んでいた速水を起こし一緒に朝日を見た。そこで、速水が怪我をした時に側にいたのはマヤではないかと思っていた速水は、部屋に落ちていたという血だらけのハンカチをマヤに見せ、受け取るかどうか試してみた。
すると、マヤは真っ赤になりながらハンカチを受け取った。怪我をして朦朧とした速水が夢かと思い聞いていた阿古夜の恋のセリフは現実のものなのではないかと思い始めた。速水はマヤに阿古夜のセリフを言ってくれと頼み、マヤは速水を愛しい一真に見立て阿古夜の演技を始めた。マヤの演技は、まさしく怪我をして意識が半分なかった速水が夢と思って聞いていた声と重なり、マヤが愛おしそうに速水の上着を抱きしめた時には、自分が抱きしめられているかのような錯覚をした。マヤが速水の前まで歩を進め頬に手を当てながら恋のセリフを語る。演技なのか、それとも自分への恋なのか速水は迷うが、マヤの演技を見て感情が高まり、もはや自分の気持ちを押さえておくことは不可能だと感じ、マヤを力強く抱きしめた。今まで憎まれていると思っていたのにいつから嫌ではなくなったのかと問う速水にマヤは自分こそ相手にされていないと思っていたと話す。今までの誤解が解け、思いが通じ合った速水とマヤ。

自分の気持ちを偽り続けてきた速水がようやく素直になりマヤを腕に抱きしめた名シーン。

引用:白泉社コミックス ガラスの仮面 47巻

紫織が憎い紫のバラとともに池に入水自殺しようとしたシーン

幼い頃から病弱でおとなしく、男性と付き合ったこともなかった紫織は、速水真澄と出会い心惹かれるようになった。紫織は一途に速水を思うのだが、速水の本心がわからず、不安を感じていた。速水の机の中からマヤの写真を見つけた紫織はマヤと速水の関係を疑うようになった。そして、速水がマヤの紫のバラの人だと知ると、マヤに対して執拗な嫌がらせを行うようになった。
どうにかしてマヤと速水を引き離したい紫織は、小切手をマヤに渡し、黒沼にも条件を飲むなら舞台の援助をすると脅し、速水から手を引くようにとマヤを脅す。
紫織の策略のせいで、一時は速水とマヤの間に溝ができたが、暴漢に襲われたことで速水のマヤへの愛情の強さを知ることとなった。さらに、速水との仲を深めたかった紫織が手配したワンナイトクルーズで事故渋滞に巻き込まれ遅れた紫織に小切手を返しに来たマヤが代わりに船に乗ってしまい、速水とマヤはこれまでの誤解を解き、思いを通じ合った。
速水は紫織がこれまでマヤにした数々の嫌がらせの裏を取り、紫織を糾弾した。そして婚約破棄を言い出した速水に対し、紫織は自分も幸せになりたいからと承諾した。しかし、このことがきっかけで紫織は心を壊し、執拗に紫のバラを攻撃するようになってしまった。自室のベッドの上で紫のバラを千切る紫織。家族はその姿を見て速水に婚約破棄を思いとどまるように懇願する。さらに紫織は、使用人が持っていたマヤが載っている雑誌を手にし、「お葬式をしてあげる」とベッドの上に高く積み上げた紫のバラの上にマヤの写真を置き火をつけた。部屋が焼け落ちる前に紫織は助けられるが、目が覚めた時、まだまだ大量の紫のバラがあることに気づき、それを持ったまま、池に入水した。
部屋からいなくなった紫織を探していた速水は、池に浮かぶ紫織の姿を見て、ここまで紫織を追い詰めたのは自分の責任だと痛感し、鷹宮会長の懇願に頷いた。

何度も畳み掛けるように自殺未遂を繰り返す紫織の狂気を感じさせる衝撃のシーン。

引用:白泉社コミックス ガラスの仮面 49巻

紫織の側にいると頷いたものの、速水はマヤへの気持ちが捨てきれず聖に本心を漏らしたシーン

紫織の狂気に触れ、このままでは攻撃の矛先がマヤに向かってしまうと危惧した速水は、鷹宮会長の懇願に負け、紫織と結婚すると頷いた。思いを通じあえたマヤにはすまないと思いながら、冷たい態度でマヤの期待を打ち砕いた。これまで紫のバラの人とマヤとの仲介役をしていた聖に、もう二度と紫のバラはマヤに贈らないと言った速水に、マヤへの気持ちはもうなくなったのかと聖は問いかけた。速水が肯定すると、聖はニッコリと笑い、「北島マヤはいただきます」と言った。これまで速水の影として生きてきた聖は速水の考えを一番に考え、なぞるようにしてきたため、速水の好きなものは自分も好きになるのだという。
聖の言葉を聞いた速水は、思わずペーパーナイフを聖に投げつけ、「それだけはやめてくれ」と懇願した。
ようやく本心を言った速水に聖は笑顔を見せ、幸せになって欲しいと言葉をかけた。

いつも冷静な速水が、マヤへの強い思いをみせた名シーン。

引用:白泉社コミックス ガラスの仮面 49巻

『ガラスの仮面』の主題歌

1984年エイケン版OP:芦部真梨子「ガラスの仮面」

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