ガラスの仮面(美内すずえ)のネタバレ解説・考察まとめ

「ガラスの仮面」は美内すずえによる日本の少女漫画作品。1976年から白泉社「花とゆめ」に40年以上も長期連載されている。2014年9月の段階で累計発行部数が5,000万部を超え、少女漫画の金字塔とも言われる大ベストセラー。
平凡な1人の少女・北島マヤが演劇への熱い情熱を滾らせ、演劇に全てをかけ、才能を開花させる。演劇界のサラブレッド・姫川亜弓と競いながら幻の名作「紅天女」を目指す超人気大河ロマン。

『ガラスの仮面』の概要

「ガラスの仮面」とは、美内すずえによる日本の少女漫画作品。白泉社「花とゆめ」にて1976年から1997年20号まで長期連載されている。2008年からは雑誌を移し、「別冊花とゆめ」にて連載が再開された。
2014年9月の時点で累計発行部数が5000万部を超えている大ベストセラーである。

演劇を題材にしている作品で、作品の中で数多くの劇中劇が描かれている。
原作がある「たけくらべ」「嵐が丘」「奇跡の人」などの作品も題材として取り上げられているが、作者美内すずえのオリジナル作品も劇中劇として数多く登場している。
美内すずえオリジナル作品である「女海賊ビアンカ」を題材にした実際の舞台なども数多く上演されている。

なんの取り柄もない平凡な少女であるが、ドラマや演劇が何よりも大好きな少女北島マヤが、演じることへの情熱を強く持ち、往年の大女優・月影千草にその才能を見出されて、女優への道をひた走り、演劇界の幻の名作と言われる「紅天女」の役を目指し成長していく過程を描いた物語。

『ガラスの仮面』のあらすじ・ストーリー

「千の仮面を持つ少女」と月影との出会い

北島マヤ(きたじままや)は、母・春(はる)と2人ラーメン店に住み込みで働く容姿も成績も平凡な13歳の中学生。芝居が大好きで、出前先で芝居を見かけるとつい夢中で見入ってしまい、出前を忘れて母に叱られてばかりいた。
ある日、近所の公園で子どもたちにドラマのワンシーンを演じてみせていたマヤは、髪で半分顔を隠した黒ずくめの女性に目をつけられる。恐くなったマヤは、もう一度芝居を見せてほしいという女性の執拗な頼みを振り切り、住み込み先へと逃げ帰った。

大晦日、ラーメンの出前をたった1人でこなすマヤの姿があった。マヤは「椿姫」の舞台チケットを住み込み先の娘・杉子(すぎこ)から譲ってもらうため、その交換条件として1人で全ての出前を配り終えるよう突きつけられたのである。約束を果たしたマヤは、チケットを譲ってもらおうと杉子に手を伸ばす。しかし、杉子は住み込みの岡持ちにしかすぎないマヤが観劇に行くことが許せず、チケットをわざと風に飛ばして海に落とす。どうしても観劇に行きたいマヤは深夜の真冬の海に飛び込み、チケットを拾い上げるという恐ろしい執念を見せた。

無事に「椿姫」を観劇できたマヤは、以前公園で出会った黒ずくめの女性と再会する。女性にせがまれるままに「椿姫」の舞台をその場で演じることになったマヤ。その演技な拙いものではあったが、たった一度観ただけの舞台を全て再現してみせたマヤの希有な才能に驚いた女性は、マヤの才能を埋もれさせないために動き始める。この女性こそは、月影千草(つきかげちぐさ)という往年の大女優であった。月影は演劇界における幻の名作「紅天女」(くれないてんにょ)の上演権を持っており、その上演権を狙って大都芸能(だいとげいのう)の速水真澄(はやみますみ)と劇団オンディーヌの小野寺一(おのでらはじめ)が連日通ってきていた。月影は「紅天女」は自分もしくは自分が育てた女優にしかできないとして、彼らの要求を突っぱねていた。月影が「紅天女」にふさわしい少女を探していることを知っていた速水たちは、月影の邸で演技するマヤを見て、マヤが「紅天女」候補なのではないかと疑うようになる。

ある日、マヤは新聞で見た劇団オンディーヌの入団募集に誘われるようにして劇団を訪れた。法外な費用を前に入団を諦めるマヤは、窓から練習風景をのぞき見る。それに気付いた団員がマヤに猛犬をけしかけ、ケガを負わせた。マヤの窮地を救ったのは、劇団オンディーヌ団員の桜小路優(さくらこうじゆう)と、偶然その場に居合わせた速水真澄だった。速水の計らいで練習を見学させてもらえることになったマヤは、逃げた小鳥を捕まえるパントバイムを成り行きで披露することになる。当然、パントマイムなどやったこともないマヤ。団員はマヤの稚拙なマイムを笑ったが、ただ1人、姫川亜弓(ひめかわあゆみ)だけはマヤの演技の素晴らしさに気付いていた。姫川亜弓は大女優として有名な母・姫川歌子(ひめかわうたこ)と監督の姫川貢(ひめかわみつぐ)を父に持つ演劇界のサラブレッドだが、親の七光りを良しとしない努力家な少女であった。

月影の演劇研究所に転がり込むことにしたマヤ。そこに、マヤを連れ戻そうと母・春がやって来る。マヤの可能性を頑なに信じようとしない春と、マヤを大女優に育てあげようとする月影との言い争いが始まる。熱湯の入ったやかんを投げつけようとする春に対し、月影はマヤを庇って自身が熱湯を浴びる。その態度についに折れた春は、「かってにおし」と叫んで帰っていった。
月影はマヤに泣き面、笑い面、怒り面の3つの仮面を見せ、女優はたくさんの仮面を被らなければならないと話す。そしてマヤは千の仮面を持っており、それこそがマヤの強大な取り柄であることを告げた。

劇団つきかげでの稽古と紫のバラ

劇団つきかげでの練習の日々が始まった。正式に芝居の勉強をしたことのないマヤの演技は、決して上手いとはいえなかった。ある日、「はい」「いいえ」「ありがとう」「すみません」の4つの言葉だけを使って芝居をすることになる。その披露日、亜弓が突如として劇団つきかげを訪れた。4つの言葉だけを使った芝居に参加したいと申し出る亜弓に月影は許可を出し、相手役としてマヤを指名。亜弓は自由に好きなことを話せる一方、マヤは4つの言葉しか使うことができない。亜弓は敢えてマヤが答えにくい質問を選ぶが、マヤは4つの言葉を巧みに使い分け、時にはジェスチャーも交えながら芝居を進めていく。結果、マヤと亜弓の演技は1時間以上も続くことになった。亜弓はマヤの底知れぬ才能を感じ、その才能に密かに恐れを抱くようになる。

劇団つきかげの初めての発表会の演目は「若草物語」。南北戦争の頃のアメリカが舞台で、貧しいけれど暖かい家庭に育った4姉妹の愛の物語である。マヤはこの芝居で4姉妹の3女、ベス役をやることになった。ベスになりきるため、日常生活でベスとして過ごすよう月影から指示を受けたマヤは、その指示通りに1週間を過ごす。徐々にベスの気持ちをつかんだマヤは、オーディションを経て見事ベス役を勝ち取った。順調に稽古が進む中、ベスが猩紅熱で苦しむシーンについては、マヤはなかなか上手く演じることができない。その気持ちを理解するため、冷たい雨の降りしきる中に身を置いたマヤ。一晩中雨に打たれ続けて高熱を出したマヤは、猩紅熱に浮かされたベスの演技をつかむことに成功した。
迎えた発表会当日。高熱が引かないまま舞台に立ったマヤはベスが猩紅熱で苦しむシーンも見事に演じ、舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。この舞台におけるマヤの演技が速水の心を動かし、速水はマヤに紫のバラの花束を匿名で贈った。以後、「紫のバラの人」としてマヤを影ながら応援し続け、やがてマヤに心惹かれていくことになる。

演劇コンクールでの戦い

雑誌に劇団つきかげの発表会の酷評記事が載ったことを受け、記事を真に受けた劇団つきかげの団員は1人、また1人と劇団を去っていってしまう。月影の援助をしている青柳プロからは芝居に対する酷評を批難され、今度開催される演劇コンクールで好成績を残さない限り、月影への援助を打ち切ると宣告されてしまった。

その演劇コンクール東京大会の劇団つきかげの演目が、樋口一葉の「たけくらべ」に決定する。主役の美登利(みどり)にはマヤが抜擢された。同じく東京大会に出場する劇団オンディーヌの演目も、劇団つきかげと同じ「たけくらべ」に決まる。美登利役は、姫川亜弓だった。劇団オンディーヌの小野寺の妨害工作により、劇団つきかげは舞台稽古ができないまま本番を迎えることになってしまった。劇団オンディーヌの舞台稽古を見たマヤは、亜弓の演じる完璧な美登利に自信を喪失し、弱音を吐く。これが月影の怒りを買い、マヤは物置に閉じ込められてしまった。物置の中でやることがないマヤは、退屈しのぎに「たけくらべ」の台本を読み始める。亜弓とは違う美登利を作ろうと1人練習を始めたマヤに対し、扉越しにその様子を聞いていた月影も付き合う。マヤと月影のやりとりは一晩中続けられ、ようやくマヤの美登利が完成した。

演劇コンクール当日。小野寺の策略により、劇団つきかげの出場順は最終日、劇団オンディーヌの直後に割り振られていた。劇団オンディーヌの「たけくらべ」は、まるで原作からそのまま抜け出してきたかのような見事な演技に高評価をもらう。そして、いよいよ開演した劇団つきかげの「たけくらべ」。完璧な美登利を演じた亜弓とは違い、新鮮なキャラクターで人びとを魅了したマヤの美登利は好評を博し、劇団つきかげと劇団オンディーヌは同率1位で全国大会への出場が決まった。

演劇コンクール全国大会での劇団つきかげの演目は、「ジーナと5つの青いつぼ」。主役ジーナにはマヤが選ばれた。「たけくらべ」の成功でマヤが主演を務めることは多くの団員たちが好意的に見てくれていたが、2人の団員がマヤのことを快く思っていなかった。そのことに目をつけた小野寺は、劇団つきかげの邪魔をすれば劇団オンディーヌで良い配役を与えようという話を2人に持ちかける。小野寺に言われるがままに、2人は劇団つきかげの大道具や衣装を台無しにし、演技ができないようにした。マヤを残し、壊された大道具や衣装の代わりになるものの手配するために大急ぎで動き始める劇団つきかげの団員たちだったが、これも妨害され上演時間に間に合わなくなってしまう。これを知ったマヤは1人で舞台に立つ決意を固める。本来なら大勢の登場人物が出てくるはずの芝居を、家の中で窓越しに登場人物たちと会話するという独自の形式にアレンジし、1時間45分におよぶ舞台を見事に演じきった。

マヤの機転もあり、舞台は大好評。観客が選ぶ一般投票で「ジーナと5つの青いつぼ」は1位に選ばれた。2位は劇団一角獣(げきだんいっかくじゅう)、劇団オンディーヌは3位に終わった。しかし、マヤの行動は神聖なる演劇精神を汚したという小野寺の意見によって審査員は審査をやり直すことに。1位は劇団オンディーヌ、2位に劇団一角獣、劇団つきかげは失格にされてしまう。それでも観客の人気はマヤに集中し、亜弓は1位になったもののマヤに対する強烈な敗北感を拭い去ることができなかった。

「舞台あらし」マヤ

全国大会で失格にされてしまった劇団つきかげは、解散を余儀なくされる。稽古場も寮も青柳プロに明け渡し、団員たちはバラバラになってしまう。マヤは月影と、同じ劇団つきかげのメンバーの1人である青木麗(あおきれい)とともに安アパートで一緒に暮らすことになった。

中学生のマヤが働ける場所はなかったが、自分も何かしたいといてもたってもいられなくなったマヤは、「白い青春譜」という映画のクラスメイト募集の記事を新聞で見つけ、オーディションに参加する。結果としてクラスメイト役を勝ち取ることはできなかったが、マヤの素晴らしい演技に理解を示してくれたスタッフが端役をマヤに持ちかける。それは足の悪い少女の役であり、セリフがたった1つしかなかったが、マヤはこの役を引き受けることにした。セリフがたった1つしかないにも関わらず懸命に演技の練習をするマヤの姿は、スタッフ、共演者の目には奇異に映った。しかし、マヤの演技はもはや演技を通り越して足の悪い少女そのものであり、これに胸打たれたスタッフは、本来なら後ろ姿しか映らないはずのマヤを大きくアップで映し出した。

その後もマヤは演劇との接点を自分なりに保ち続けていく。自分を芝居に使ってもらおうと劇場や舞台を巡るうち、栄進座(えいしんざ)で座長を務める原田菊子(はらだきくこ)の目に留まり、マヤは演技テストを受ける。無事に原田から合格をもらったマヤは、「おんな河」という舞台で田舎出の世間知らずな子守の役を演じることになった。マヤに役を取られた役者がマヤへの嫌がらせを画策したが、マヤは見事な機転でアクシデントを乗り越える。演技に対するマヤの天性の才能に周囲は驚愕し、主役でもないのに人目をさらってしまうマヤの演技に危機感を抱くようになる。座長の原田はマヤを「舞台あらし」と称し、以降は二度とマヤを起用することはなかった。

「奇跡の人」ヘレンをめぐって

劇団つきかげのもとに、劇団一角獣の団員たちが訪ねてくる。2つの劇団は合同公演を行うことになった。演目は「石の微笑」。この芝居で、マヤはセリフもない人形の役をすることになった。人形には人形の動きがあるが、なかなか人形になりきれないマヤに対し、月影は竹の物干しで作ったギプスをマヤの身体にくくりつけ、人形の動きを学ばせていた。そこへ、速水が現れる。マヤの芝居に対する情熱に改めて驚愕した速水はマヤを大都芸能に誘うが、マヤはその誘いを断る。迎えた「石の微笑」公演当日。観客の中には、姫川亜弓の姿もあった。マヤの演じる人形は、まさしく人形そのもの。芝居は日に日に盛り上がり、大成功を収めた。

ある日、マヤに舞台「奇跡の人」のヘレン役の話が舞い込む。劇団一角獣との合同公演「石の微笑」のマヤが演じた人形役がきっかけであった。ヘレン役候補に選ばれたのは5人で、オーディションを経てヘレン役が決定する。候補者の中には、姫川亜弓も混じっていた。マヤはヘレン役をつかむための練習を始める。その内容は凄まじいものであり、耳に粘土を詰めて音を遮断し、目には目隠しをすることで光を遮断していた。何も見えず、聞こえないマヤは、転んで傷を作ったり、物を落として壊れてもそのままになっており、部屋の中は散乱していた。そこへ駆け付けた速水は、部屋の中の様子に驚愕する。音も光も遮断した生活を続けているマヤは速水が来ても気付いていなかった。動こうとして転びそうになったところを急に人の腕に抱き留められ、驚いたマヤは速水の手のひらに「あ・な・た・は・だ・れ?」と書く。速水が紫のバラを触らせると、マヤは目の前にいる人物がこれまで自分を影ながら支えてくれた「紫のバラの人」であることに気付き、速水に抱きつく。名前を教えてほしいと頼むマヤに対する速水の答えは、マヤの手のひらに「あなたのヘレンを楽しみにしています」と書くことだった。この出来事をきっかけにしてマヤはいっそう練習に励み、ヘレンになりきっていく。

一方の亜弓も、ヘレンをつかむための練習を始めていた。盲聾唖者の施設で実際に盲聾唖者の世話をしながら観察を続けていた亜弓は、今度は自分が盲聾唖者として過ごすことを許可してもらう。亜弓自身は目も見えているし耳も聞こえているはずだが、亜弓の動向を取材に訪れた記者が亜弓を試すために亜弓の目の前にりんごを置いたところ、亜弓は躊躇なくりんごを踏み、転んでしまった。盲聾唖者そのものになりきっている亜弓の演技に、記者たちは驚愕するしかなかった。

迎えたヘレンのオーディション当日、5人の候補者はそれぞれのヘレンを演じきった。最終選考はマヤと亜弓の2人が勝ち残り、どちらがヘレンかを決める投票が審査員によって行われる。最終的には、ヘレンの家庭教師サリバン役を務める大女優・姫川歌子が両方とヘレンを演じてみたいとしたことで、ヘレン役はマヤと亜弓のダブルキャストとなり、1日交代での公演が決まった。

ついに舞台「奇跡の人」が開幕。亜弓の演じる完璧なヘレンは場内の観客を圧倒し、常に客席は満員であった。一方、マヤのヘレンは日に日に話題となり、観客動員数は増えていくばかり。亜弓のヘレンは高い評価を受けていたにもかかわらず、亜弓自身の心は晴れなかった。この舞台で、マヤと亜弓はカデミー芸術祭、演劇部門助演女優賞にノミネート。最終的にマヤが助演女優賞を獲得し、同時に大河ドラマへの出演も決まった。授賞式の場に月影が現れ、舞台上で亜弓に「紅天女」を目指す気はあるかと問いかける。亜弓は二つ返事で了承した。これを受けて月影はマヤと亜弓の手を取り、これから2人で「紅天女」を闘わせると宣言、マスコミを騒がせた。

マヤの活躍とスキャンダル

助演女優賞を獲得したマヤは、NBAテレビの大河ドラマ「天の輝き」で田沼伯爵(たぬまはくしゃく)の令嬢・田沼沙都子(たぬまさとこ)を演じる。日本舞踊やバレエなどを学んでいないマヤは、薙刀などの立ち回り、着物での立ち居振る舞いなどが上手くできない。そんなマヤに優しく接してくれる共演者の里美茂(さとみしげる)に、やがてマヤは淡い恋心を抱く。順調に仕事をこなす中、里美との仲を快く思わない里美のファンたちや、マヤの活躍に嫉妬した者たちからの執拗な嫌がらせが始まる。エスカレートする嫌がらせにも屈することなく素晴らしい演技を見せるマヤを前に、嫌がらせをしていた張本人たちもやがてマヤを認め、自分の行為を謝罪した。

すべてが順調にいくかに見えたが、乙部のりえ(おとべのりえ)という熊本弁で話す謎の少女がマヤに近付く。いつの間にかマヤの付き人のように振る舞うようになっていたのりえを、マヤのマネージャー水城冴子(みずきさえこ)は密かに警戒していた。のりえの正体は熊本の天才少女であり、マヤの演技を盗んで自分がマヤの代わりに舞台に立つことを画策していたのであった。

そんな中、マヤの母・春が交通事故で亡くなる。春の死を知ったマヤは抜け殻のようになり、演技に身が入らなくなってしまった。速水はマヤをスターにするために春を利用したのだが、茫然自失となるマヤの姿に、さすがの速水も罪悪感を隠せなかった。母の死によって隙だらけになったマヤに対し、ついに乙部のりえが動く。暴走族と結託して自暴自棄になったマヤに酒を次々と飲ませて海へと連れ出し、そこで睡眠薬入りの酒をマヤに飲ませて昏倒させる。これによってマヤは初日の舞台をすっぽかし、舞台はマヤの代わりにのりえが立つことになった。一方、必死で探し回る速水によってついに発見されたマヤは、マスコミによって暴走族と繋がりがあったと根も葉もない噂を広められてしまう。大河ドラマや舞台の仕事をことごとく降板させられたマヤの後を引き継ぐことになったのは、乙部のりえであった。マヤに対する世間の風当たりは強く、その後どんな芝居をやろうとしても嫌がらせを受けてしまう。
その頃、マヤのスキャンダルを知った亜弓は、そのことがなかなか信じられずにいた。亜弓は、ふとしたことからのりえが一連の騒動の犯人であることを知り、のりえの主演舞台に乗り込む決意をする。圧倒的な実力差でのりえを徹底的に叩きのめした亜弓は、マヤの行く末を心の中で密かに案じた。

再起、そして亜弓との共演

芸能界を追放されたマヤは、ある日、自身の通う学校で図書委員を務める草木広子(くさきひろこ)と知り合う。草木と仲良くなったマヤは、彼女が読んでいた本『女海賊ビアンカ』に興味を持ち、この本を1人芝居として上演することを思いつく。マヤが芸能界を追放されたことは学校でも周知のことであり、上演当日はマヤを冷やかしに来る野次馬や、落ちぶれたマヤを好奇の目で見る観客が多かった。拙い舞台装置ながらも、マヤは持ち前の見事な演技と機転で観客を惹きつけ、後日再演が決まるほどの人気ぶりとなった。次なる1人芝居の演目「通り雨」も大盛況の内に幕を下ろす。マヤの才能を無視できなくなった学校の演劇部は、客演という形でマヤを公演に招き、ここでも大成功を収めた。マヤの素晴らしい才能を目の当たりにした人びとはマヤに対する見方を少しずつ変えてゆき、マヤ自身も失った演技への情熱を取り戻してゆく。

一方その頃、亜弓は1人芝居「ジュリエット」に挑戦していた。速水とともに亜弓の舞台を観たマヤは、亜弓との圧倒的な実力差に打ちのめされる。おまけに亜弓は「ジュリエット」で芸術大賞を受賞し、その差は開くばかりであった。「紅天女」は亜弓に決定したと宣言する月影だったが、マヤにもチャンスは残されているという。マヤが2年間のうちに芸術大賞か、それに匹敵する全日本演劇協会の最優秀演技賞を受賞した場合には、マヤを亜弓と互角とみなし、2人に「紅天女」を競わせた上で正式にどちらか一方に決定するとした。ただし、2年の間に月影の身に何かあった場合、またはマヤが棄権した場合は「紅天女」は亜弓のものとなる。芸能界を追放されたマヤにとっては厳しい条件だった。周囲の誰もが諦めの境地に至る中、ただ1人、亜弓だけはマヤを信じて2年間待っていると告げた。

劇団つきかげや劇団一角獣の仲間たちとの日々を送るマヤに転機が訪れる。亜弓が出演する「ふたりの王女」のオーディションを勝ち残り、亜弓の相手役としてマヤも出演することになったのだった。「ふたりの王女」は、無実の罪で母を処刑され、自身も薄暗く寒い牢獄の中で長く不遇の時代を過ごした王女オリゲルドと、誰からも愛され、春の女神と周囲から讃えられる第2王女アルディスの物語。アルディスは絶世の美女という設定であったため、アルディス役は亜弓にピッタリだとマヤをはじめ誰もが思う中、発表された配役は意外にもマヤがアルディス役、亜弓がオリゲルド役であった。いったんは驚愕したマヤと亜弓だったが、亜弓の提案でお互いの生活の場を交換するなどして役作りに励むことになる。この甲斐あってか、2人はそれぞれ見事なアルディスとオリゲルドを演じ、舞台は大成功に終わった。

芸能界復帰と「紅天女」

「ふたりの王女」の大成功により、マヤは再び芸能界から仕事のオファーを受けるようになる。月影と約束した期限まで残り1年しかない中、マヤは次なる作品として「忘れられた荒野」への出演を決める。マヤの役は、狼に育てられた少女ジェーンという難しいものであった。厳しい稽古を経て迎えた舞台初日、大型の台風が東京を直撃してしまう。公演が中止になるかと思われたその時、ずぶ濡れになった速水が現れた。たった1人の観客のため、マヤたちは「忘れられた荒野」を上演する。公演終了後、速水はマヤの演技を絶賛した。「忘れられた荒野」は評判を呼び、舞台は大成功のうちに幕を閉じる。この舞台で最優秀演技賞を受賞したマヤは、見事「紅天女」の候補に返り咲きを果たした。

月影の指導を受けるため、マヤと亜弓は「紅天女」の故郷である梅の谷に向かう。「紅天女」を演じるため、月影から様々な課題を出される2人。ある日、亜弓の稽古を盗み見ていたマヤを亜弓が非難する。演劇界のサラブレッドとして生まれながらも親の七光りには頼らず、自分自身の涙ぐましい努力によって実力で芸能界を生き残ってきた亜弓。彼女にとって、類い希なる演技の才能を持つマヤは非常に羨ましく、かつ妬ましい存在であった。どんなに周囲から演技を称賛されようとも、亜弓自身はこれまで一度も「マヤに勝った」と思ったことはないという。そんな本音をぶつけてくる亜弓に、マヤも負けじと言い返す。やがて2人の喧嘩は取っ組み合いにまで発展するが、お互いの本音を全力でぶつけ合ったことでわだかまりが解けた2人は、正式にライバルとして認め合う。そして「紅天女」をかけて競い合う決意を新たにするのであった。

『ガラスの仮面』の登場人物・キャラクター

北島 マヤ(きたじま まや)

CV:勝生真沙子(パイロット版:鶴ひろみ)(東京ムービー版:小林沙苗)

神奈川県横浜市出身。13歳~。2月20日生まれ。
母親や周囲からなんの取り柄もないと言われ続けてきたが、芝居が好きで芝居を見ると夢中になって全てのことを忘れてしまうという少女。
一度見た芝居はセリフから身振りまで全て覚えてしまうという特技を持つ。
公園でマヤがしていたドラマの再現をみた月影千草は、マヤの天賦の才能を見抜き、自分の後継者にしたいと考えるようになった。
月影のもとで演技を学び、様々な困難にあいながらも芝居への情熱を捨てず、紅天女を目指し邁進していく。

月影 千草(つきかげ ちぐさ)

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