ガラスの仮面(美内すずえ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「ガラスの仮面」は美内すずえによる日本の少女漫画作品。1976年から白泉社「花とゆめ」に40年以上も長期連載されている。2014年9月の段階で累計発行部数が5,000万部を超え、少女漫画の金字塔とも言われる大ベストセラー。
平凡な1人の少女・北島マヤが演劇への熱い情熱を滾らせ、演劇に全てをかけ、才能を開花させる。演劇界のサラブレッド・姫川亜弓と競いながら幻の名作「紅天女」を目指す超人気大河ロマン。

【背景】
最後の課題は土。
亜弓は土の変化に着目した。石、岩、砂、粘土、手触り、性質、種類。様々なものに変化する土。亜弓は縄文式土器に着目し、縄を使った演技に取り組む。
マヤは、土に寝転び土を感じる。そこで土の中で生まれ育って死んでいくものに着目した。
上に育つもの、根元から育つもの、全ての生命を生み育てる土、母親、と連想し、大地の母、土の力を表現しようと取り組み始めた。

【亜弓の演技】
亜弓は縄を使って土を表現する。まずは力強く躍動的なダンスを披露し、縄を使って土器を作り出す。土器に水を汲み水を飲む、水を運び、物を入れる。全てを力強いダンスで表現し、最後には土器は割れ土に戻る。古代の生活を踊りで表現し、大地のエネルギーを見事に表現した。

【マヤの演技】
マヤは、土の中に埋もれている種になり、土の中で育ち芽吹くさまを表現した。
母なる大地に守られ、育まれ、明るい日のもとに飛び出す芽。種の希望に満ち溢れた気持ちを見事に表現した。

これらの課題を通して、亜弓は頭で考え計算し演技をするが、マヤは全てを本能と感覚でとらえ自然になりきり演技をする。亜弓は、マヤの本能、才能に何度も驚愕してしまうのだった。

紅天女

【背景】
幻の名作言われた「紅天女」。
月光座の座長である尾崎一蓮が書いた月光座の代表作で、月影千草の当たり役。

かつて、両親も身寄りもなく、幼い子供たちに窃盗などをさせる親方のもとに身を寄せていた千津。ある日、月光座の楽屋に盗みに入ったところを尾崎一蓮に見つかり、そのまま月光座で世話になることになった。劇団員と一緒に日舞や芸事を教わり、千津はその才能を伸ばしていった。そのうち、月影千草という芸名をもらい、役者として舞台に立つようになり人気役者となっていった。やがて、戦争が始まり月光座はバラバラになってしまった。劇団と劇場を空襲で失くした尾崎一蓮は、行方をくらまし、残された千草は一蓮の親戚などに聞き回りをその行方を探し続けた。一蓮の姉から、梅の谷の話を聞いた千草は、梅の谷へ足を運び、そこで一蓮を見つけた。
梅の木の間から現れた千草を見た一蓮は、千草に紅天女の姿を重ね、この役ができるのは千草しかいないと熱く語った。梅の谷の古い神社に伝わる梅の木の伝説を参考に、一蓮は「紅天女」を書き上げ、バラバラになってしまった月光座の復帰第一作となった。
舞台「紅天女」は大成功し、月光座は盛り返した。その後、月光座の看板女優として月影千草は活躍するようになった。

月光座の熱狂的なファンとして現れた速水英介という男が、千草に熱烈なアプローチを繰り返すようになるが、千草はそれを丁重に断っていた。いつしか英介は、月光座の力になりたいとして、地方公演の宣伝、劇場の確保、大道具の輸送など、地方公演に必要な全てを引き受けるようになり、月光座になくてはならない人物となってきた。
月光座の成功に気をよくした英介は事業を拡大、月光座以外のプロデュースなども手がけ、さらに、自身の劇場も持つようになり、勢力を拡大させていった。
しかし、英介の有力な協力者とは、大半がヤクザで、劇団側もヤクザと付き合わねばならず、公演中にも度々暴力ざたが起こるようになり、一蓮は英介と手を切ることにした。そのため英介は大都芸能を立ち上げ、月光座の劇団員を何人も引き抜き、月光座に大打撃を与えた。英介を敵に回した月光座は、だんだんと落ちぶれ、財政難に陥ることになった。やがて、一蓮は株で大損をし、月光座は経営が立ち行かなくなってしまった。一蓮に株の話を持ちかけ、月光座を陥れたのは英介だと知った千草は、英介を憎み、英介からの引き抜きにも応じず、一蓮といつまでも一緒にいて支えようと決意を固めた。幼い頃からの一蓮への秘めた想いを千草は一蓮に伝え、その想いを受け入れた一蓮は、千草と一夜を過ごした後、「紅天女」の上演権を千草に遺して首を吊った。

残された千草は、「紅天女」を演じられるのは千草だけ、という付き人・源造の言葉を聞き、一蓮の後追いを思いとどまった。一蓮を陥れた英介を憎み続け、大都芸能のライバル社に所属した千草は、そこで大活躍を果たし、押しも押されぬ大女優となっていた。そんな中、舞台上で照明が落ちてくるという事故に遭い、顔半分にも渡る火傷を負い、千草は女優生命を絶たれてしまった。

【あらすじ】
遠い昔、南北朝の時代。国が戦で乱れていた頃、帝が平和を願い一人の仏師に天女の像を彫るように申し付けた。仏師は何体も天女像を彫るがどうしても気に入ったものができない。天女の魂がこもる仏像を彫るにはどうすればいいのか思い悩む。そんな仏師に、あるところに千年からなる梅の神木がある、それを切って天女像を掘ればきっと魂のこもる素晴らしい象となるだろうと、教える者がいた。
仏師は、その梅の木を探し求め旅に出て、そこで一人の乙女、千年の梅の木からなる梅の木の精、紅天女と出会った。

仏師は、禁足地紅谷に向かう途中、戦乱に巻き込まれ記憶をなくし、村の娘・阿古夜に助けられた。阿古夜は神の声を聞く神女だったが、仏師と恋に落ち、だんだんと神力を無くしていく。阿古夜と過ごしていた仏師は、阿古夜の神力を目の当たりにし、それをきっかけにしてだんだんと記憶が戻ってきた。阿古夜の神力が消えかけているのを知った村長や、かつて阿古夜の神力を受けた武将らが阿古夜と仏師を引き剥がす。仏師から引き剥がされた阿古夜は憔悴し、弱るばかり。
様子を見に現れた武将は、弱った阿古夜から神の声、神の意志を聞き、戦乱の世を終わりにする決意を固める。

しかし、武将一人では戦を止めることはできず、激しい戦乱が起こった。阿古夜の住む紅谷に戦火は及び、阿古夜や村長は紅の大神を守るため禁足地へ入った。
急いで紅谷にやって来た仏師は、焼けた村や切り殺された無残な死体の山を見て眠っていた遠い記憶を完全に呼び覚ました。千年の梅の木で仏を掘らなければならないという自分の使命を思い出した。禁足地に入ろうとした時、村長から阿古夜が弱っていること、紅の大神の元で体を直していること、紅の大神とは千年からなる梅の木で阿古夜はその化身であることなどを聞いた。

仏師は梅の木の前で阿古夜と再会した。

月影が演じたのはここまで。仏師と阿古夜の対決シーンは次代の紅天女である亜弓とマヤに託された。

帝から託された使命を果たすため梅の木を切り仏を彫らねばならない仏師と梅の木の化身である阿古夜の戦いのシーンは演じられず、その後の話を源造が語りだした。

戦から数年が経ち、仏師の行方はわからなくなっていた。しかし、諸国で念仏の代わりに不思議は仏像を彫る僧が評判になっている。僧が仏像を彫り祈願すれば日照りの空からは慈しみの雨が降り、荒れた土地には豊かな作物が実る。僧が彫った仏像にも加護は宿っている。その僧は決してひとところには留まらず仏を彫りながら旅を続けている。僧が彫った仏像には「真」の文字が彫られていた。

『ガラスの仮面』の用語解説

紅天女

演劇界の幻の名作と言われている作品。
尾崎一蓮が原作を手がけた。尾崎が主催する月光座の看板作品となり、月影千草が紅天女を演じ、最大の当たり役となった。
梅の木の精である紅天女を演じることは、月影千草、または月影が育て認めた女優しか演じることはできないとして、月影は自分の後任の紅天女を探すため、芸能界引退後は奔走することになり、横浜で北島マヤを見つけた。
尾崎一蓮亡き後、上演権を譲られた月影は、「ジュリエット」を演じ、アカデミー芸術大賞をとった姫川亜弓を暫定的に次代の紅天女と決定し、これより2年の間に北島マヤが姫川亜弓と同等の賞を受賞しない場合、または、北島マヤが棄権した場合には、紅天女の上演権は姫川亜弓のものとすると宣言した。
結局、北島マヤが「忘れられた荒野」でアカデミー最優秀演技賞を獲得したため、紅天女は2人で競うことになった。

紫のバラの人

速水真澄が北島マヤの初舞台に感動し、気持ちを伝えるために紫のバラを贈ったことが始まり。速水は紅天女の上演権を月影千草から得ようとしているため、時に汚い手を使い月影を追い詰めていた。そのため、門下生であるマヤから恨まれているので、素直に名前を記すことができず、「あなたのファンです」と記し、以降、マヤの舞台ごとに花束を贈り続けている。
マヤが困っていると、この紫のバラを贈りつつマヤを援助するため、マヤにとっての足長おじさんとして、マヤはとても感謝している。
月影の入院の手配、ヘレン役のための稽古場所の提供、マヤの高校進学、はては劇場の改修工事まで、何くれとなくマヤを助ける。
仲介役として聖唐人を置くようになってからは、マヤから感謝の贈り物やメッセージが届くようになった。

速水としては、マヤに厳しく恨まれるような言動をしつつ、影では紫のバラを贈り続けマヤを励ましている。
「忘れられた荒野」までは紫のバラの人が誰なのかマヤには全く知る由もなかったのだが、紫のバラの人から届いたメッセージから、紫のバラの人が速水なのではないかとマヤは疑いだした。
それ以降、マヤは速水に対し急速に気持ちが傾いていく。

劇団つきかげ

月影千草が全国から優秀な俳優の卵たちを集め、次代の紅天女候補を育成するために始めた演劇研究所。
青柳プロダクションの援助を受け、研究所の他に、併設された寮などもある劇団だった。
しかし、紅天女の上演権を狙う速水や、劇団オンディーヌの演出家である小野寺一から妨害を受け、月影が青柳プロの社長とあらぬ噂を流され、劇団員は激減。存続するためには全国演劇コンクールで入賞しなければいけなかったのだが、ここでも小野寺の妨害にあい、劇団つきかげは失格となり、青柳プロからの援助は打ち切られてしまった。
研究所も寮も出され、残った劇団員も青木麗をはじめとする5人ほどになってしまった。
稽古場もなくなってしまったが、地下劇場を借りられるようになり、そこを拠点として活動をしている。
劇団つきかげは、全国演劇コンクールで知り合った劇団一角獣と親しくなり、以降何度か合同公演を行っている。

劇団オンディーヌ

大都芸能が経営する俳優養成研究所。
姫川亜弓や桜小路優などが所属している。かつて、マヤが団員募集広告を見て応募しようとしていたが、月々にかかる費用が莫大なため入団を諦めている。
演劇コンクールで劇団つきかげと争い、同率一位となり全国大会に出場している。
全国大会では、観客が選ぶ審査では3位、審査員選考では1位となった。
小野寺一が理事長であり、演出家を務めている。

劇団一角獣

劇団つきかげや劇団オンディーヌも参加した、全国演劇コンクールで北海道代表として出場していた劇団一角獣。
優勝候補として評判だった。
彼らは早朝からランニングやストレッチなどのトレーニングを行い、身体を大きく使ったアクションなどを得意としている。
団長は堀田太一。団員には田部はじめ、細川悟、紅一点である二の宮恵子などがいる。
劇団鳥獣戯画が劇団一角獣のモデルとなっている。

鷹通グループ

速水真澄の見合い相手である鷹宮紫織の祖父が会長を務める世界でも1、2を争う大手広告代理店。
他にも輸入・鉄道・デパート・ホテル・運輸・建築・食品と多種多様な企業を経営している。さらに、中央テレビ、中央新聞などのメディア関連にも系列グループを持っている。鷹通グループの総長は鷹宮天皇とあだ名されている人物で、政財界の黒幕とも呼ばれている。

鷹宮紫織の父は、中央テレビの社長を務めている。

大都芸能

14歳で岡山から東京に出て、小さな運送会社を起こした速水英介は、月影千草演じる「紅天女」を観た事でその魅力に取りつかれ、千草をサポートするために事業を拡大し、全国に会社を持つほどに成功を収め、月光座の芝居をサポートするようになっていった。
しかし、初期の協力者たちがヤクザ者が多かったため、主催である尾崎一蓮から手を切られ、仕方なく自ら芸能会社を立ち上げた。それが大都芸能である。
多くのタレント、劇場を持ち、芸能社として一流の会社となっている。

速水英介は、それ以外にも大都不動産、大都興産、大都観光社など、運輸業にとどまらず手広く事業を行っている。

創業者である速水英介は若い頃に、子供ができない体となり、結婚することなく過ごしていたが、後継者を求められ、家政婦の息子であった藤村真澄に目をつけた。
真澄の母と結婚し、真澄を後継者として厳しく育て上げ、現在英介は会長、真澄が社長として大都グループは経営している。

一ツ星学園

高校進学を諦めていた北島マヤが紫のバラの人の手配で入学した高校。
芸能人が多く通う学校で、芸能科がある。
演劇部が有名である。
芸能界を追放され、芝居をやれる場所を求めていたマヤが探し当てたのがこの学校の体育倉庫だった。
マヤが文化祭の出し物の一つとして一人芝居「女海賊ビアンカ」を上演し大成功をおさめた。生徒からの要望を受け再演されることになり、再演後は「通り雨」なども上演することになった。
マヤの一人芝居が評判になり、演劇部からオファーを受け、演劇部の芝居にも出演、好評を博した。

芸能界を追放されたマヤの再起の場所である。

『ガラスの仮面』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

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