東方仗助(ジョジョの奇妙な冒険)の徹底解説・考察まとめ

東方仗助(ひがしかた じょうすけ)とは、荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』Part4『ダイヤモンドは砕けない』の主人公で、特定の幻像を持つ「スタンド」と呼ばれる超能力の使い手である。能力は傷を癒し、壊れた物を直す「クレイジー・ダイヤモンド」。基本的にお調子者かつ温厚で優しい性格だが、憧れの人を真似た自身の髪形を貶されると激怒する一面もある。時にはズルもするが強い正義感を持ち、自分の怪我を治せないのを承知で友のために体を張る。スタンド使いの仲間と共に街に潜む殺人鬼と戦うこととなる。

億泰は、船室でジョセフを守っていた。体は大きいがかなりヨボヨボで、言葉を聞き間違えるなど耄碌した老人にしか見えなかった。それでも、「仗助が生まれたことも知らず16年間放ったらかしにしていた自分のことを何か言っていたか」ということは気にしていた。億泰は「あまりそういう話はしない」と返す。
船が港に近づくが、仗助としては複雑だった。音石に殺されなかったのはいいのだが、親子の情はないし、今更会ったところでお互い気まずいだけだというのが本音だった。康一は、音石がいないことに気付き、エコーズで承太郎に報告する。
音石は泳いで船にたどり着き、船員に化けてジョセフを殺そうとしていた。本物の船員が報告に来る。音石、船員共に相手が偽物と主張するが、億泰にはどちらが本物か分からない。今まで兄に頼っていたため判断力がないのだった。
船の電源からレッド・ホット・チリ・ペッパーが現れジョセフに攻撃を仕掛ける。億泰は「本体はお前だ!」と言って音石を殴りつけた。彼が音石だとの確証があったわけではなく、両方殴るつもりであった。
この騒ぎでジョセフの使っていた杖が折れてしまい、船から降りたジョセフは思わずよろける。とっさに、仗助が初めて会う父を支えた。「足元、気を付けねえとよ。海に落っこちるぜ」と声をかけ、敢えてクレイジー・ダイヤモンドで杖を直さず手を貸した。
窃盗を働いた音石は逮捕され弓と矢は回収されたが、杜王町の悪夢はまだ終わってはいなかった。

透明な赤ん坊現る

ジョセフと出会った仗助だが今一つ彼が「自分の父親」だとの実感が持てずにいた。仗助は、「自分の家の前に来るのはいいけど、お袋には会わないでほしい」と言う。その言葉にショックを受けたようなジョセフだが、「確かに君の言う通りじゃな」とその提案を受け入れた。
北海道行きの長距離バスに乗ろうとするなど、高齢の上日本に慣れていないジョセフの行動に振り回される仗助は、ジョセフが「スタンド使いがいる」と言い、地面の上を、何かを探すようなしぐさを始めたため「ボケているかもしれねえ」と感じるようになる。
しかし、ジョセフのスタンド「ハーミット・パープル(隠者の紫)」は透明になった赤ん坊を捕らえることに成功した。仗助は、見えないもののそこに赤ん坊がいることを知る。何者かのスタンド攻撃を受けているのかと警戒する仗助だが、ジョセフはその赤ん坊自身が生まれついてのスタンド使いで、近くに親がいないことへのストレスから能力が暴走して透明になっていると推測した。赤ん坊は女児だった。
裸のままにはしておけないので、「自分が行ったら高校生が恋人を妊娠させたと思われる」と、仗助はクレジットカードを渡してジョセフに服や哺乳瓶などを買わせる。自身の娘を育てていた時以上にベビーグッズが充実していた上、円とドルの為替を今一つ理解できでいないジョセフは合計13万円分のベビーグッズと化粧品を購入した。
ファンデーションを顔に塗り、服を着せたことで見失う心配はなくなったが、ストレスによるものか赤ん坊の能力が暴走し、服を着た状態でも透明化し始める。赤ん坊を抱いていたジョセフの手も透明になり、ついには完全に見失ってしまった。
火のついたタバコから赤ん坊を守ろうとしたジョセフだが、赤ん坊はべビーカーもろとも池に落ちてしまう。仗助は、ジョセフのもたついた言動に頼りなさとこれまでの母に対する不誠実さへの怒りを感じ「あんたはすっこんでなよ」と自分で赤ん坊を探し出そうとする。ジョセフは「わしはこれから死ぬかもしれんから、その時は君のかあさんによろしく伝えておくれよな」と言い、自らの手首を切りつけた。
ジョセフの地で池に血が付き、その血が透明になっていく中心に赤ん坊はいた。
「普通はこんなこと思いつきもしねえっすよ。見たこともねえ他人の子供のためにここまで…」と言い、仗助はジョセフに笑いかける。ジョセフは「カッコつけたかったんじゃよ。おまえの前で」と返した。

漫画家・岸辺露伴

ある朝、康一が学校とは違った方向にある豪邸に向かうのを見た仗助と億泰は、不審に思い後をつけた。家から出てきた康一は、この家に住んでいる岸辺露伴(きしべ ろはん)という人気漫画家と知り合いになり、挨拶をしていたと言うのだ。仗助たちも露伴に会ってはどうかと誘われるが、漫画のことはよく知らないし、有名人相手は緊張するからと仗助は遠慮をする。億泰も男の漫画家には興味はないと言った。
しかし、何かが怪しいと踏んでおり、仗助、億泰共にこっそり家に入る。露伴は対象を本にして記憶を読むスタンド「ヘブンズ・ドアー」を使い、康一の漫画の主人公然とした性格と体験を気に入って自身の作品のネタにしようとしたのだった。ページを破り取られると康一の体重は減ってしまうが、露伴は「君は僕の作品の一部として生き残れるのだから、いいだろう?」と大笑いをした。
先に露伴の仕事部屋に入った億泰は、露伴の原稿を見たのがトリガーとなり本にされる。ヘブンズ・ドアーには、相手に命令を書き込むことで行動を制限する能力もあり、億泰は「焼身自殺をする」と書き込まれてしまった。億泰を助けるべく、しかし原稿を見ないようにするために仗助は目をつぶって現れた。
職業柄、どうすれば状況を打開すべきか考える癖をつけている露伴は、ペン先を投げて仗助の目を開かせようとした。それでも仗助は目を開けない。露伴は、康一の記憶にあった「髪型を貶されるとキレる」という記述を思い出し、仗助の髪型について悪口を言い始める。怒りで目を開けた仗助だが、「怒り過ぎて何も見えていないプッツン状態」にあり、露伴の術中にはまることなく彼を叩きのめし、仕事場を破壊し始めた。
康一が語った仗助の髪形の理由が、幼い頃に出会った恩人に憧れて真似していること、髪型を貶されるのはその人物を貶されるのと同じと考えていることを知り、露伴は重傷を負わされながらも「いい話が聞けた、いい体験ができた」「この経験を作品に活かせれば…」と喜ぶ。直後、露伴は仗助に見つかってボコボコにされ、一カ月間仕事を休む羽目になった。

ラット戦

ある日、仗助は承太郎から「ハンティングに行くから来い」と誘われた。獲物はネズミだが、ただのネズミではない。音石明に自白剤を飲ませたところ、「矢で射抜いたネズミが死なずに逃走した」と語ったという。矢で死ななかった以上、ネズミにはスタンド能力が身に着いたはずだとして、承太郎は仗助にネズミをしとめるための訓練を施す。パチンコ玉程度の球を弾いて当てるという、言葉にすれば単純な動作だが、ネズミは俊敏な動物である上に的が小さく、仗助は「ボール関係は邪念が入るタイプ」である為、可能性は五分五分といったところであった。
ネズミが逃げ込んだと思しき近辺では、他のネズミの煮凝りのようなものがあり、住宅では住民が同じく固められた状態で生きていた。承太郎と仗助はネズミを探し、いったん家の内部で別れる。仗助はスタンド使いのネズミと出くわし、どうにか倒すことに成功する。承太郎を呼ぶが、彼はネズミの飛ばしてきたスタンドの毒針をつかんで調べようとして指がドロドロに溶けていた。音石明が矢で射抜いたネズミは二匹おり、隠しカメラに写っていたもう片方のネズミは耳についた虫食い状の傷から便宜上「虫食い」と呼ばれることとなる。
虫食いが沼地に移動し、承太郎が囮になり、仗助がライフル弾で仕留める作戦がとられる。重力による影響等の説明を受けるが、仗助はプレッシャーに押しつぶされそうになる。虫食いは思った以上の知能を持ち、もっと大型の小動物が行うバッグトラック(自分の足跡を踏んで元来た道を戻る)を駆使するなど、スタンドを抜きにしても高い能力を備えていた。おまけに岩場に隠れている為狙いにくく、跳弾を利用して承太郎を行動不能に追い込む狡猾さを見せた。
仗助は、虫食いの隠れている辺りの石を攻撃した。ライフル弾は虫食いを攻撃できなかったが、外したのは「攻撃してきた方を確認する」という虫食いの行動を誘う罠であった。確実に狙いやすくなった虫食いはスタンドもろとも撃ち抜かれ、スタンド使いのネズミ騒動は幕を閉じた。

「重ちー」との出会い

銀行で自身の口座の残高を見て嘆く仗助は、小銭を拾った小さなスタンドに気付く。後を追うと、「落とした小銭を奪われた」と億泰も現れた。同じスタンドが次々現れて合流し、広場に出る。そこには小太りの少年がいた。その少年は自身のスタンドを「ハーヴェスト」と呼び、仗助と億泰が同じくハーヴェストが見え、スタンドを持っていると知り感激する。
少年は矢安宮重清(やんぐう しげきよ)といい、両親からは「重ちー」と呼ばれていた。スタンド使いという仲間に会えた嬉しさから、重ちーは仗助たちに集めた金を渡そうとする。仗助はそれを断り、「もっといい方法がある」と言って街のいたるところに捨てられているであろうポイントシールなどをハーヴェストに集めさせた。すると、億泰が拾ってきたごみの中から宝くじを発見する。それはなんと500万円の当たりくじであった。
換金のため向かった銀行の職員から「本当にあなた方が当てたのか」と怪しまれたが、仗助の能力でくじの裏面に書かれていた持ち主の名前と電話番号を一部破壊し、戻すことで事なきを得た。
500万円と言う大金に目がくらんだ重ちーは、「山分けをする」という約束を反故にし、独り占めをするために逃走する。仗助たちは後を追うが、ハーヴェストは小さいがためにいくらでもトリッキーかつ凶悪な戦い方(複数で足に食いつく、眼球に直接パンチする、スタンドについた管で直接血管に酒を入れるなど)ができるスタンドで、仗助、億泰は苦戦を強いられる。
しかし、億泰のザ・ハンドで空間を削り取ることで当たりくじを奪い、仗助がくじを破ったことで形勢が逆転した。敗れたくじの破片をハーヴェストに拾いに行かせた為、重ちーを守るスタンドがいなくなった。また、破片を拾い集めたところで、仗助のクレイジー・ダイヤモンドでなければ直せない。
もともと3人で集めたくじだったことを思い出し、重ちーはようやく山分けをすることに合意。仗助は166万円相当の金額を手に入れた。

街に潜む邪悪

仗助と億泰は、康一から杉本鈴美(すぎもと れいみ)と言う少女の幽霊の話を聞く。15年前、両親と愛犬アーノルドと共に惨殺された鈴美は、今はない小道にアーノルドと住んでいた。「今も殺人鬼が町に潜んでいる」「もし逮捕されても、殺人鬼のいる街として世間に知られてしまう」「街の誇りを取り戻してほしい」と鈴美は言った。康一は、承太郎たちに頼んで何とかその殺人鬼を探し出せないかと言うが、スタンド使いでもない者を承太郎たちが探すとは思えないと仗助は答える。

ある日の昼、所持金がない仗助と億泰は重ちーに声をかけ、「昼食代に1000円貸してほしい」と言った。当たりくじを下ろしに行くのは面倒という理由であった。重ちーは借用書を作るが、その間に彼のサンドイッチは犬に持ち去られてしまう。少し離れた場所にあった袋を取り返し、重ちーは仗助と億泰を追いかけた。しかし、その袋は例の殺人鬼・吉良吉影(きら よしかげ)の者で、中には彼の犠牲者の手首が入っていた。
重ちーを追う中、吉良はぶどうが丘中学の体育準備室に侵入。仗助、億泰がやってきた為跳び箱の中に隠れる事態にもなったが、袋の回収に成功する。ところが、自分の昼食が入った(と思い込んでいる)袋を探すべく重ちーが室内にハーヴェストを放っていた。
袋を持ち去った吉良を追ってきた重ちーだが、吉良もスタンド能力を持っており、戦闘となる。吉良は重ちーに自身の名前や習慣などを自己紹介するが、それはどんな物でも爆弾に変えることのスタンド「キラー・クイーン」で何の証拠も残さず重ちーを倒せるためであった。
ハーヴェストが手にした100円玉を爆弾にされ、重傷を負った重ちーは「一緒にいた二人もスタンド使いなのか」「言わないと、君の両親も始末する」と言われスタンドを動かす。群体型という特性を生かして一旦吉良から逃げ、重ちーは仗助たちのいる高校へ向かった。重ちーは「パパとママを守るど」との決意のもと仗助を探し当てるが、掴んだドアノブは既に爆弾に変えられていた。重ちーは仗助の名を叫び、爆死する。
重ちーの最後の叫びに気付いた仗助、億泰が見たのは、吉良のスーツから引きちぎったボタンを持ち、血だらけになったハーヴェスト一体のみであった。そのまま爆発するように消滅したハーヴェストに尋常ではないものを感じた仗助、億泰はぶどうが丘中学へ向かう。

顔見知りのスタンド使いたちは鈴美に会い、重ちーの死を告げられた。ハーヴェストの恐ろしさを知る仗助は「重ちーのハーヴェストに勝てる奴なんか、考えられねえぜ」と言う。殺人鬼の正体がスタンド使いであることから、承太郎たちも捜査を始めるのだった。

吉良逃走

承太郎は、重ちーが奪ったボタンを元に捜査を開始する。道でたまたま承太郎に出会った康一は、簡単な服の仕立て直しを行う靴屋を見つける。殺人鬼がボタンの直しをその店で行ったかもしれないと踏んだ承太郎は、康一と共に店に入る。ボタンを見せられた店主は、先ほど直したばかりの服に同じものがついていると言った。服についている客の名前を読もうとしていた店主に、スタンドが襲い掛かる。店主は、骨も残さず爆発してしまった。洋服は殺人鬼本人と思しき者が持ち去ってしまう。
スーツのサイズ、素材やボタンの仕立て直しを店に頼んだ点から、殺人鬼の人物像はあらかた絞れたと承太郎は言った。また、敵スタンドが近くにいる可能性から後を追わない方がいいともいうが、康一は納得しきれずエコーズを飛ばし、50m先にいる服の持ち主を見つけた。
しかし吉良が放ったキラー・クイーン第2の爆弾である「シアーハートアタック」は熱を探知し、より熱の高いものを優先して自動的に攻撃するものだった。その爆発の威力は思った以上のもので、承太郎は重傷を負う。初めは自分が先走ったせいで承太郎に怪我をさせた、自分も窮地に陥ったことを猛省する康一だったが、エコーズact2の能力で「ドジュウ」という熱さの擬音をシアーハートアタックに張り付け、追いかけさせた。
その間に仗助に連絡を入れるが、先ほどスイッチを入れていた電気式のコンロが「ドジュウ」の字よりも熱くなった為、シアーハートアタックが康一たちのところへ向かってくる。承太郎と共に店外に出た康一だが、シアーハートアタックに取り付けた文字がそのままであったため、康一も怪我を負った(スタンドが傷つくと、本体もダメージを負う)。
この戦いの中でエコーズはact3に進化を遂げ、特定のものを重くする能力を得た。シアーハートアタックを地面に沈めると、吉良もシアーハートアタックを放った左手が重くなるという現象に見舞われる。吉良には、強い殺人衝動と共に静かな生活を送りたいという願望があった。
靴屋の場所を聞いた仗助は、億泰と共に現場へと急ぐ。財布をすり、運転免許証に書かれていた名前「吉良吉影」を知ることはできたが、仗助たちが駆けつけた時には、康一は瀕死の状態にあった。承太郎による攻撃で吉良もまた重傷を負う。仗助は康一を治すが、傷が深すぎて中々完治しなかった。
巻き込まれた会社員を装った吉良は、仗助による「俺が傷を治してやる」との言葉にすがるが、「ただの高校生にしか見えない俺に、何で治してくれなんて言うんだ?」と返された。自分のクレイジー・ダイヤモンドが見えていたこの男こそが、康一や承太郎を攻撃し、重ちーらを殺したスタンド使いだと仗助は口にした。
吉良は素直に正体を明かすが、「人を殺さずにはいられない性を持っているが、幸福に生き延びて見せる」と言い自らの左手首を切り落として去る。
仗助は、左手首とつながるシアーハートアタックを殴った。しかしそれは破壊ではなく、吉良の左手を治す為だった。左手が主である吉良の下へ飛んでいき、仗助らは後を追う。着いた場所は、スタンド使いのエステティシャン辻彩(つじ あや)の店だった。そこには、顔のない男が死んでいた。左手があることからその男が吉良ではないことは分かった。攻撃を受けていた彩は、「ひとりの男が背格好の似た男を連れてきて、私の目の前で殺した」「顔も指紋も無理矢理変えさせられた」と言い残して爆死させられる。
左手もいつの間にか持ち主の元に戻ったようだった。店の外には、会社帰りのサラリーマンが大勢いる。吉良吉影は逃げ切ったのだ。

吉良の父との戦い

仗助たちは、主の帰らなくなった吉良の家を調べる。一人暮らしのわりに中は綺麗に片付けられており、吉良のまめな性格がうかがえた。集めた情報によれば、吉良吉影は現在33歳。二流の大学を卒業し、あまりぱっとしない企業に勤めていた。家にはたくさんの賞状やトロフィーがあったが、ジャンルがばらばらでいずれも銅賞や3位であった。アルバムも目立たないポジションで写っており、承太郎は吉良が目立たないように生活をしてきたと推測する。学歴や勤務先が二流なのも、高い能力を隠すためだろうと思われた。家族は既に他界した両親のみであった。
「奴(吉良)の趣味のようなものでもあればと思ったんだが」との承太郎の言葉に、仗助は机の引き出しを開ける。中には爪の入った小瓶と、爪の長さを測ったノートがあった。爪が30cm以上伸びる年は「絶好調!!誰にも僕を止めることはできない!!」と書かれており、爪の伸びる速度で殺しの占いをしていたのだろうと承太郎は言う。
その時、シャッター音がした。室内にあったポラロイドカメラが作動したのだ。そこには、死んだはずの吉良の父・吉良吉廣(きら よしひろ)が写っていた。また、吉良の父が写真の中で電話の受話器を持つと、吉良邸の電話も鳴った。電話をかけてきたのは、他ならぬ吉廣であった。
幽霊となってはいるが、自分の写った写真の空間を支配するスタンド「アトム・ハート・ファーザー」を持つ吉廣は息子の凶行を知りながら、それでも一人息子を守るため、仗助たちを殺そうとしていた。仗助、承太郎は共に現実世界にいるものの吉廣と同じ写真に閉じ込められた形となり、吉廣が包丁を持てばその場にも包丁が現れるのだった。
ザ・ハンドでも写真に写った空間に干渉はできない。仗助はどうすることもできなかったが、承太郎は吉廣のみを改めて写真に写し、一人だけにすることで支配から逃れた。
「何か決め台詞を言ってやれ」と言われた仗助は「お前なんか、ちっとも怖くなかったぜ!」と情けない言葉を吐いた。
吉廣の写った写真はセロハンテープで何重にもまかれて柱に画びょうで止められる。その後家探しを続けると、既に回収したはずの弓と矢が見つかった。吉廣は億泰たちを騙して(写真に納まったままではあるが)自由の身となり、矢を回収し、逃走する。息子を守るため、吉廣はスタンド使いを増やしていくのだった。

自称「宇宙人」支倉未起隆

ある朝。仗助と億泰は登校途中、田んぼのミステリーサークルと、その中心に眠る青年を見かけた。目覚めた青年・支倉未起隆(はぜくら みきたか)は自分を宇宙人だと名乗る。初めは彼をからかっていた仗助たちだが、ティッシュを食べるという奇行を見て「調子に乗り過ぎ」と呆れてその場を去る。そのまま行きつけのアイス屋に立ち寄る仗助った位だが、店は閉まっていた。そこに未起隆が現れ「さっきのティッシュと交換」と言い、アイスを差し出す。仗助たちは念のためアイスには手を付けなかった。未起隆にはスタンドは見えていないらしく、スタンド使いではないらしかった。
そこに、消防車が通る。未起隆はサイレンの音にアレルギーがあると言って苦しみだし、「この音が聞こえないところまで連れて行ってほしい」と言って変身を始める。何にでもなれる能力を持った未起隆はスニーカーに変身して仗助の足に履かれると、そのまま彼と共に2倍の脚力(仗助と未起隆二人分の脚力)で飛ぶように走り去った。
未起隆は、「あなた(仗助)のおかげでサイレンの音から逃れられたから、お礼がしたい」と言う。初めは断った仗助だが、「みんながハッピーになれる方法」と称して露伴から小遣いを巻き上げるためにチンチロリン(サイコロを使ったギャンブル)をしようと未起隆に数個のサイコロになってもらう。
ところが、仗助を勝たせたいがために未起隆は不自然な目を連続して出し、仗助がイカサマをしていると疑われ始める。露伴は自らの小指をペンで突き刺し、「イカサマを見抜けなければ、200万円払ってお前のスタンドで治してもらうが、もしイカサマを見抜けたら、お前の小指をもらう」と新たな条件を加えた。
立会人として、玉美が呼ばれる。仗助がイカサマをしなかった場合は玉美のスタンド「ザ・ロック」の錠前が仗助を襲うとの条件が加えられた。結果、イカサマをしていることはバレたが、どんなイカサマかまでは露伴でも分からないようだった。そこに、消防車のサイレンの音が響く。未起隆にアレルギー症状の蕁麻疹が出始めるが、火事の現場が露伴の家だと判明する。露伴と玉美の意識が燃えている家に向かっている間に変身が解けた未起隆を抱え、露伴の小指を治して仗助は未起隆と共に逃げるのだった。
後日再会した未起隆は母親と一緒にいたが、「彼女は私が洗脳して母親と思い込ましているんです」と仗助に耳打ちする。母親は母親で、「この子が行く先々で自分が宇宙人だと言って困る」「気にしないでください」と言い、「息子」と一緒に去っていった。
未起隆が本当に宇宙人なのか、特殊なスタンド使いなのか、判断しかねる仗助であった。

ハイウェイ・スター戦

火事の一軒の後、仗助はバスの中で露伴と再会する。嫌味を言われつつ彼の前の席に座る羽目になってしまう。その上、露伴は「今二ツ杜トンネルの中に部屋があり、男が女の手を切断した」と言い出した。うんざりした仗助は露伴と言い合いになり、露伴は一人でトンネルの捜査に向かう。トンネル内部には足型のような形状のスタンドがおり、露伴に吸い付いたそのスタンドは、彼の養分を吸い取り始めた。
喧嘩別れをした仗助が露伴を放っておけず戻った時、露伴のバイクだけがトンネルから飛び出してきた。仗助は慌ててトンネルに入り、トンネル内部の部屋(スタンドが他者を誘い込むための罠)に露伴がいた。敵スタンド「ハイウェイ・スター」は「仲間(仗助)を中に呼べば、お前を助けてやる」と言うが、露伴は「本当に僕を助けてくれるんだな?」と確認をした上でハイウェイ・スターの提案を断り、仗助に逃げるよう言った。
しかし、仗助は露伴の助言を聞かずハイウェイ・スターを倒すために部屋に入ろうとする。露伴はヘブンズ・ドアーで「時速70キロで背後に吹っ飛ぶ」との命令を仗助に書き、逃がす。自身が襲われた経験から、ハイウェイ・スターが時速60キロでどこまでも追ってくること、養分を奪われることを告げ、本体を見つけ出して倒せと露伴は言った。
露伴が自分を助けたことに驚いた仗助は、彼を救うためにもハイウェイ・スターの本体を探すことにした。何故トンネルで罠を張っていたのか。何故養分を奪うのかとの謎に本体を探すヒントがあると見た仗助は、康一に連絡を入れることにする。
60キロを超える速度で走れば追いついてこないが、離れたところで止まっているとテレポートしてにおいを追ってくるため、止まっての電話はできない。やむを得ず通行人から携帯電話を奪い、康一に連絡をした。
康一によれば、二日前暴走族の少年が飲酒運転をしてトンネルの入り口にぶつかり、重体を負ったことが分かった。初めはその少年も被害者と見た仗助だが、やられ方が違う点からハイウェイ・スターが養分を奪うのは、その少年が自分の怪我を治すためだと推理。
病院に向かった康一は、看護師からハイウェイ・スターの本体である噴上裕也(ふんがみ ゆうや)の名前と病室を聞き出し、バイクのまま突っ込んできた仗助にそのことを教える。
スタンドの追跡を康一の助力もあってかわし、病室につくと裕也は取り巻きのレディースたちに世話をされていた。仗助は直にハイウェイ・スターから養分を奪われてしまう。
裕也はレディースたちに仗助のことは放っておけと言い、「桃が腐っている」「だれか一人が生理中」と次々に言い当てた。スタンドが身についてから嗅覚が鋭くなったらしい。「誰か怒っているだろう、アドレナリンの匂いがプンプンするぜ」と言うが、レディースたちは怒っていなかった。
怒っているのは仗助だった。点滴からブドウ糖を得た仗助はクレイジー・ダイヤモンドで裕也を殴りつけ、自身のスタンドのパンチ力について言及する。裕也は「自分は重傷者だ。それなのにぶちのめすのか」と命乞いを始めた。仗助は「確かに重傷者を叩きのめすのが後味が悪い。だから、お前を治しといたぜ」と言う。
クレイジー・ダイヤモンドで殴ったことによりすっかり怪我は治ったが、それは心置きなく裕也を叩きのめす為だった。「ハイウェイ・スターを使って他者の養分を奪えば、何度も同じことをする」と念を押され、裕也は前以上の重傷を負って入院生活を続行することとなった。
露伴は仗助に治されたが、忠告を無視されたことを怒っており、ふたりの間に友情が芽生えることはなかった。

スーパー・フライ戦

学校へ行く途中、仗助と億泰は道に双眼鏡が落ちているのを見つける。それは、双眼鏡に化けた未起隆であった。未起隆は奇妙なものを見つけたので、二人に見てほしいと言う。それは鉄塔だが、既に電線を外されて使われていないはずだった。
しかし、よく見ればやかんなどの家具があり、鉄塔の上では男が料理をしていた。鉄塔に住み、自給自足で生活をしているだけの住民に思われたが、スタンド使いの可能性もあった。近づくと、男は「糞尿がかかるからもう少し離れた方がいい」と言った。今しがた用を足したばかりで、まさに糞尿が降り注ぎ、仗助たちは慌てて鉄塔から離れる。
鉄塔に住む男・鋼田一豊大(かねだいち とよひろ)はその糞尿を肥料に食べられる野草を作り、小動物を捕らえる罠を張っているのだと言う。捨てられた鉄塔を10万円で買い取り、快適な家に仕立て上げたと語る。自給自足であるため会社勤めはしなくてよく、鉄塔の中を歩き回るだけで運動不足にもならない。もう3年も住んでいると豊大は言った。
敵スタンド使いではないようなので、見るだけにしておくことにした仗助たちだが、豊大のポケットから落ちたのが吉廣の入った写真であることに気付いた。仗助が鉄塔に入ると、豊大は「やっと入ってくれたか」と口にした。吉廣を追って外に出ようとした仗助だったが、その体は突如鉄のようになってしまう。無理やり出ようとすると鉄塔の一部になってしまうと言うのが、豊大の言であった。この鉄塔は、新しく入ってきた者を本体にして閉じ込めるスタンド「スーパー・フライ」であった。元は豊大が矢で射抜かれて発動したスタンドだが、彼の手に負えるものではなく、出られなくなって仕方なく住んでいたのだという。
未起隆は自分にできることはないかと億泰に尋ねるが、「怪我をするからすっこんでな。おめーの役目はもう終わったぜ」と言われる。
仗助は、億泰と共に鉄塔を破壊して外に出ようとしたが、スーパー・フライには恐ろしい性質があった。破壊しようと攻撃をすれば、同じ攻撃をそのまま返してくる反撃エネルギーであった。豊大は「誰かを代わりに引っ張り込めばいい、トランプのババ抜きのようなものだ」と語るが、ワイヤーに化けて鉄塔内に入ってきた未起隆が「あなたが鉄塔に戻ればいいんですよ」と返した。未起隆が中に入ったことで仗助は外に出ることができた。
未起隆は、「自分は宇宙人だからババ抜きと言うゲームを知らないが、今豊大が仗助にしたことはババ抜きではなく、子供をゲームでだます大人と同じ」「だからあなたが帰るべきだ」と言う。それに対し、豊大は鉄塔での生活が長引く中で掌に大きなタコができ、そこに色々な道具をしまえるようになったと語り出す。ナイフで鉄塔の一部であるワイヤーを切り、その切断面が未起隆に向かうようにして彼を傷つけた。
切ったら切られる、ボルトを打ち付ければ打ち付けられる。豊大は何度も訓練し、反撃エネルギーがどんな形で向かっていくかを熟知していた。豊大はボルトを打ち込んで未起隆を鉄塔に磔にする。仗助は怒り、豊大がどこに逃げてもすぐに見つけて倒すと言うが、「お前らは、吉良吉影のことも見つけられていないだろう」と返された。豊大の名前は偽名で、顔も仮面をかぶっていた。
未起隆は怒り狂う仗助に対し、「自分が鉄塔に残るから入ってこないで下さい」と言った。「鉄塔を見つけたのは自分だし、ワイヤーに化けてきたのも自分で勝手にやったこと。『僕だって少しはやるんだぜ。見直したかい』と思ってもらうためにやった、宇宙船の中だと思えば結構広そうだ」と未起隆は語る。
豊大は「自分さえ出られればそれでいい」と言うが、仗助は「残るのはおめーだよ。おめーにさよならって言葉があるとするならよ。俺たちがさよならと言うのと聞く時だけだ!」とワイヤーを直し、上ってきた。
クレイジー・ダイヤモンドのラッシュを食らわせようとするが、3年間鉄塔で暮らしてきた豊大は目をつぶっていても鉄塔の中を歩けると言い、鉄塔の一部を刻んで反撃エネルギーを食らわせてきた。
反撃エネルギーは、スタンドでガードをしてもビリヤードのごとく鉄塔に当たり、仗助に当たる。かろうじてクレイジー・ダイヤモンドで鉄塔にしがみつけている状態だったが、弾き飛ばした反撃エネルギーの数を億泰に尋ねると「4発くらい」と答えた。そこで仗助は鉄塔の傷を治すことで反撃エネルギーを逆行させ、豊大に当てることに成功する。
豊大はとうに戦意を失っており、鉄塔から出たいとの気持ちもなくなっていた。「知り尽くしているはずの鉄塔でさえ、こんな恐ろしい目に遭うんだから、外に出たらと思うと恐ろしくて」と鉄塔に帰りたいと懇願までしてきた。
何かお詫びがしたいと言う豊大に、仗助は吉廣が何か言っていなかったかを尋ねる。豊大は「コーイチ…というスタンド使い、知ってますか?」と聞き、吉廣は詳しく言わなかったし、自分も尋ねなかったと言った上で「『始末した。今朝、新手のスタンド使いが』そう言ってました」と続けた。

エニグマ戦

「新手のスタンド使いに始末された」とだけ伝えられた康一の行方を探すべく、仗助は裕也の下へ向かった。「クレイジー・ダイヤモンドで怪我を治してやるから、捜査に協力してほしい」との申し出を突っぱねた裕也だが、結局は受け入れ協力する。ハイウェイ・スターを身に着けてからの裕也の嗅覚は猟犬以上であった。
病院の外に出た裕也は、「自分は康一を始末したスタンド使いを探すのが役目で、戦うのは入ってないよな」と言い、その上でスタンド使いの少年・宮本輝之助(みやもと てるのすけ)から康一の匂いがすると言った。
突如輝之助が消え、仗助の母が現れた。仗助は、こうした奇妙な事象に恐怖を抱く。輝之助は姿を現し、自身の能力の説明をした。輝之助のスタンドは「エニグマ」といい、人でも何でも紙にして持ち歩ける能力があった。紙にするだけで殺傷能力はないが、誰かが紙を破けばファイルされたものも破壊され、人物の場合は殺されると語る。人を紙にする時には、その人物が恐怖を感じた時に見せるサインを確認する必要があり、康一、仗助の母共々輝之助によって恐怖のサインを見破られ紙にされて人質になっていたのだった。人質を取って神経に脅しをかける敵は、仗助の許せないタイプであった。
仗助をも紙にするため、輝之助はあの手この手で仗助の恐怖心を煽ったのだが、怒りで恐怖をごまかす仗助のサイン(下唇を噛む)を引き出すことはできなかった。「これが康一だ」と示された紙が道路上に投げ出される。車に轢かれそうになる紙を見た仗助は紙を救いに行くが、下唇を噛むという恐怖のサインを見せたために紙にされた。
道路上の鉄棒を折り、それを直すパワーで紙から出ようとしたができそうもなかった。仗助は、康一だと示された紙が偽物であることは分かっていた。それでも助けに向かったのは、万が一本物の康一である可能性があるのなら助けないわけにはいかないと考えたからだった。
「俺が紙になったら、さっさと破いて始末することだ。でないとお前を殺すぜ!」と言い、仗助は紙になる。輝之助は冷や汗をかきつつも仗助を大したことのない奴だったと言い、戦闘に参加しなかった裕也に「お前のしたことは賢い行いだった」と言うとファイルしておいた運転手付きのタクシーを出して去る。
しかし、裕也は仗助の「破壊されそうなのが紙にされた本物の康一なら、助けに行かねえわけにいかねえだろう」との言葉に感化され、紙にされたのが「自分を元気づけてくれるあいつら(レディース)の誰かなら、俺だってそうしたぜ!」と言ってハイウェイ・スターで輝之助を追った。
「紙にされたものは、誰であろうと開くだけで解放できる」と輝之助は言うが、そうはさせないと言ってハイウェイ・スターを振り切りタクシーだけを広場に置いた。炎、生きたサソリ、電気さえも紙の中にファイルすることができ、裕也はそれらの罠をかいくぐりながら仗助たちを救おうとする。
現れたシュレッダーが仗助と康一がファイルされた紙を飲み込み始めた。スイッチを切ることはできずハイウェイ・スターのパワーではシュレッダーを破壊できない。裕也は自身の恐怖のサインを輝之助に見られて紙にされる。しかし、ペラペラの紙にされたおかげでシュレッダーの中に手を入れることができ、仗助、康一を救出、解放することに成功した。
康一のエコーズで動きを封じられた輝之助は「人の恐怖のサインを観察するのが好きだっただけ」「スタンドを身に着けて調子に乗ってしまった」と命乞いをしたが、仗助は輝之助自身の恐怖のサインである「怖いときは片目をつぶる。でも、もっと怖いときは両目をつぶる」を指摘し、彼に怒りのラッシュを食らわせる。
シュレッダーの中の紙と一体化した輝之助は『エニグマ』のタイトルを持つ本となり、杜王町立図書館に寄贈される。貸出禁止だが書名を言うと閲覧はできるらしい。『エニグマ』の本を読んでいると、「たまーに声が聞こえる気がする」との噂ができた。

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