うみべの女の子(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『うみべの女の子』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)にて2009年から2013年にかけて連載された浅野いにおによる成人向け恋愛漫画作品である。本作は、田舎で暮らす中学生たちの性や葛藤を描いている。憧れの先輩にフラれた中学2年生の女の子・小梅は、その腹いせに同級生・磯辺と初体験を済ませてしまう。はじめは自分に好意を抱いている磯辺を利用していた小梅だったが、1枚の写真をきっかけに2人の立場は逆転していく。

高校に進学した小梅の彼氏。趣味や容姿がどことなく磯辺に似ている。小梅を一途に愛しているが、小梅の中学時代のことは知らない。

磯辺の兄

磯辺の3つ上の兄。兄弟仲は良好だった。生まれつき足が悪く、いじめられていた。引きこもってブログの運営をしていたが、ある日パソコン内に遺書を残したのち自殺によって命を落とす。

磯辺の父(演:村上淳)

ゲーム会社のディレクターをしている。息子を大切に思っているが、仕事が忙しいうえに長距離通勤のため、家に帰ってこないことが多い。

『うみべの女の子』の用語

うみべの女の子

磯辺が小梅に貸したSDカードに入っていた写真の女の子。写真を一目見て彼女に惹かれた磯辺が名付けた。

はっぴいえんど

細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂によって結成された日本のロックバンド。日本語ロック史の草創期に活動したグループである。代表曲の『風をあつめて』は、本作のほかにもアメリカ映画『ロスト・イン・トランスレーション』や、日本映画『おと・な・り』に使用されている。

『うみべの女の子』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

磯辺「…俺が嫌いなのは、そういう自分勝手な欲求を満たすために他人の内面に土足で踏み込んでくる奴。自分の腹黒さに無自覚で平然と生きてられる奴が世の中多すぎるから、俺等は生きてるだけで息が苦しいってことをお前は一瞬でも想像したことある?」

小梅の頬をつかみ問い詰める磯辺。

嫉妬心から「うみべの女の子」の写真を削除してしまった小梅は、それ以来磯辺に距離を置かれていると気づく。磯辺からのキスも告白も拒んでいた小梅が、いつのまにか磯辺を求めるようになっていたのだ。磯辺はそんな小梅を「…俺が嫌いなのは、そういう自分勝手な欲求を満たすために他人の内面に土足で踏み込んでくる奴。自分の腹黒さに無自覚で平然と生きてられる奴が世の中多すぎるから、俺等は生きてるだけで息が苦しいってことをお前は一瞬でも想像したことある?」と突き放す。小梅よりも兄の死にとらわれるようになっていた磯辺のこのセリフは、小梅にあてたようで、兄をいじめていた者たちへの言葉でもあるのだ。

小梅「してもしても何か足りない気がするのは、なんでだと思う?」

狭い浴槽で磯辺に顔を近づける小梅。

親が不在の磯辺の家でさんざん求めあった後、湯船につかりながら磯辺に顔を近づけた小梅は「してもしても何か足りない気がするのは、なんでだと思う?」と問いかける。磯辺に距離を置かれ心にぽっかりと穴が開いていた小梅は、この少し前にフラれたはずの三崎と会っていた。しかし小梅は、案の定求められた性的な行為を拒んでその場から逃げる。小梅はこの時すでに、「自分は磯辺を好きになってしまった」と自覚していたのだ。

磯辺「テメーの理屈を押しつけてくるバカが多過ぎる。バカの一番悲しい所はそのバカさを説明しても理解できない所だ。誰のこと言っているかわかるか?お前だお前だお前だ、この勃起野郎。俺は俺の理屈でお前の内蔵をひきずり出して、屈辱的な死に様を世界中に晒してやる」

殴られながらも不敵な笑みを浮かべる磯辺。

磯辺に小梅との関係性と追及するはずが磯辺の煽りに乗せられ殴りかかってしまった鹿島。その勢いのまま磯辺の兄の死について触れてしまう。すると磯辺はニヤリと口角を上げて「テメーの理屈を押しつけてくるバカが多過ぎる。バカの一番悲しい所はそのバカさを説明しても理解できない所だ。誰のこと言っているかわかるか?お前だお前だお前だ、この勃起野郎。俺は俺の理屈でお前の内蔵をひきずり出して、屈辱的な死に様を世界中に晒してやる」と言う。磯辺は兄を排除した者たちに復讐したのちに、兄と同じく自殺しようと考えていたのだ。しかしその考えは、「うみべの女の子」本人と出会うことによって変わっていくこととなる。

磯辺を探し回る小梅

荒れる町で磯辺の名前を叫ぶ小梅。

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