素晴らしい世界(浅野いにお)のネタバレ解説・考察まとめ
『素晴らしい世界』とは、2002年より浅野いにおが『サンデーGX』で連載していた漫画作品。厳しい父親を持つ息子や友人関係に悩む女子中学生、何事も中途半端な元バンドマンなど、心のどこかに少しだけ不安や不満を抱える様々な人物が登場する短編集。日常の出来事がリアルに描かれており、各回の登場人物が他のエピソードに少しずつリンクしていく形で物語が進んでいく。
『素晴らしい世界』の概要
『素晴らしい世界』とは2002年から2004年まで浅野いにおが『サンデーGX』で連載していた漫画作品。単行本は全二巻。浅野いにおとは、茨城県石岡市出身の漫画家、イラストレーターである。幼少期から絵を描くことを好み、代表作品は2010年に宮崎あおい主演で映画化された『ソラニン』や『おやすみプンプン』、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』がある。漫画だけでなくイラスト、音楽と多彩な才能を持つ人物であり、でんぱ組.inkの『明日地球がこなごなになっても』で作詞を担当した。ペンネームの「いにお」は名前を考えてる時ちょうど目に入った保険証の記号から由来したものである。最初は「超生命」というペンネームにしようとしたが当時の編集長に悟られ考え直し「いにお」になったというエピソードを持つ。
『素晴らしい世界』は、厳しい父親を持つ息子や友人関係に悩む女子中学生、何事も中途半端な元バンドマンなど、心のどこかに少しだけ不安や不満を抱える様々な人物が登場する短編集。日常の出来事がリアルに描かれており、各回の登場人物が他のエピソードに少しずつリンクしていく形で物語が進んでいく。
抜群な言葉選びのセンスを持つ漫画家のいにおにより、作中には誰もが共感できるセリフが多く登場する。スッキリと終わる話だけではないものの、読後感が堪らないとファンから絶賛された作品である。
『素晴らしい世界』のあらすじ・ストーリー
バードウィーク
厳しい医者の父親を持つこうた。父親に勉強だけしていろと言われ友達も作らず勉強漬けの日々。いつものように学校が終わり家に帰ると父親からの留守番電話が入っていた。急患が入り帰れない、ご飯は出前を取るように後しっかり勉強をしとけと。そんな日々に嫌気がさし学校のテストに落書きをしてしまう。先生にしっかり回答を埋めてから帰るように言われ居残りをしていた。その帰り道階段から落ちて怪我をしてしまうこうた。父親の働いてる病院に息子さんが怪我をしたと電話が入る。その夜、父親がこうたにたまには二人で遊びにいくかと言われ驚いて逃げ出してしまうこうた。でも嬉しかった。
雨のち晴れ
幼い頃に母親を亡くし看護師の姉と大学生の兄と三人暮らしをしている浪人生のタエ。梅雨のとある日、姉に今日はちゃんと予備校に行けと起こされるたえ。そんな姉にイライラしてしまい梅雨の気候でやる気も出ずまた予備校をサボる。クラブに行き知り合いのDJと会い寂しさを紛らわせるためにそのまま彼の家に向かう。自分は何をしているんだろう彼に抱かれながら母親のことを思い出すタエ。一週間くらい家出をしていたタエだが梅雨が開けた同時に家に帰るのであった。
砂の城
小学生の時友達だった岡崎サトのことが気になっている地味な女子中学生。教室で居眠りをした彼女は、小学生時代、公園でサトを慰めている夢を見て目覚めた。昔はよかったと夢の余韻に浸っていると、その教室にサトが現れる。久々に一緒に帰ろうと誘うサト。その帰り道、中学に入って変わったよねと悲しげに問いかける地味な中学生に、「昔の話なんかしないで昔の私は死んだことにしといて」とサトは笑いながら言う。自分を置いて変わってしまったサトへのいら立ちを、言葉にしてぶつけた中学生だったが、「頑張ってることをカッコ悪いと思っているのか。そういうの一番ダサい」と言い返されてしまう。さらにサトは、次の電車が各駅停車か急行のどっちが来るか、その賭けに負けたら電車に飛び込み、勝ったらアイスを奢ってほしいと賭けを提案した。その賭けに勝った中学生は、公園でサトとアイスを食べ、他愛もない話をするのであった。
おやすみなさい
最近子供が産まれ、家族とは何か戸惑っている雑誌編集の仕事をしている春日部。家に仕事の資料を取りに戻ると、妻は娘の誕生日を祝う飾りつけをしていた。「仕事で忙しいけど無理してでも祝わなきゃな」と春日部が言うと、別に気を使わなくて良いと言われてしまう。仕事先の編集長と飲みに行き、「最近父親になった感想はどうだ?孤独じゃないか」と言われる。編集長も春日部も、父親としてどうあるべきか悩みを抱えていた。その帰り道、街の不良に絡まれた編集長は救急車で運ばれてしまう。人手が減り仕事の量も増えてしまう春日部。娘の誕生日も迫り、彼は焦っていた。仕事の途中、部下に少し抜けると伝えて娘の誕生日を祝いに自宅に戻る。その途中の公園で親父狩りに遭う人を見かけ、編集長のことがフラッシュバックして助けに入った。街の不良にボコボコにされて公園に倒れ込む春日部。家で妻がやっぱり来ないかとつぶやく。目を覚ますと病院のベッドの中だった。そこには妻がいて頑張ったねと言われそのまままた眠りにつくのであった。
月となると
屋台でラーメン屋をしているおじさん。そのラーメン屋に若い三人組の客がくる。その若い客たちは仕事の愚痴や世の中の不満を話していた。その若者たちにラーメン屋の親父は恋人がいるのかと問いかけると若者はいると答えた。ラーメン屋の親父はそれだけで十分じゃないですかと意味ありげに答えた。若い客が帰り一服しながら昔を振り返っていた。有名な料理亭の次男として生まれた屋台ラーメン屋の親父。料理の腕が兄よりも優れていたので、弟に店を継がそうとしていたが、彼は家を出てこうとする。必死で引き留めようとする兄を振り払い、家を出たのだ。そんな昔を振り返っていると30年ぶりに兄が目の前に現れた。家に戻れと言われるが自分の作ったラーメンを食ってくれと言い返すが、お前の料理など食いたくないと言われる。それでもと自分のラーメンを食べさせ二人は昔を振り返りずいぶん歳をとってしまったとつぶやくのであった。
ウイスキーボンボン
前日に酒を飲みすぎて二日酔いになり仕事をサボる自堕落なO L。仕事をサボりコンビニに行きウイスキーの小瓶を購入してまた酒を飲む。そして年下の彼氏を呼び出した。仕事休んで平気なのかと彼氏に言われると別に自分などいなくても会社は困らないと皮肉に答えた。そこに彼氏がウイスキーボンボンをプレゼントした。OLはとても喜んだ。5歳年下の彼氏に年齢のことを気にしているのかと言われる。OLはすぐシワシワになり相当悲惨だと言うが彼氏はそれでも好きだと答えた。
素晴らしき世界
コンビニのバイトをしているフリーターの男。バイト終わりの帰り道で、子供に悪戯をされて怪我をしている野良猫を見つける。その猫を抱き抱えるが、助ける余裕がなかったため「運が悪かったと思ってどこかでのたれ死んでくれ」とつぶやく。フリーターになって三年だが、この生活にも慣れた。退屈な日常でも、言い換えれば怒りも悲しみもない平和な日常だと開き直りそのまま眠りにつく。目覚めた後、コンビニで買い物に出かけその帰り道に前付き合っていた彼女とすれ違う。追いかけるか否か迷うが追いかけ声をかけるが、冷たくあしらわれてしまった。元恋人との過去を思い出し、自分の人生とはなんだったんのだろうと考え込む。その時、ふと怪我をしていた猫のことを思い出す。せめてその猫だけでも助けてやろうと猫がいた場所に向かうが、そこに猫の姿はなっかた。近くのコンビニの店員に猫のことを聞くと、「ホームレスに連れて行かれた、今頃食われてるんじゃないか」と言わてしまう。途方に暮れた帰り道、猫とホームレスの男が仲良く歩いている姿を見つけた男は、「まだ世界は捨てたもんじゃない」とつぶやくのであった。
あおぞら
何事も中途半端に生きてきた元バンドマンの男。親のコネで入った会社もすぐに辞めてしまう。それでも自分は特別な人間だと何か大きいことができると根拠のない自信を捨てきれずにいる。友達や彼女にも呆れられている。そんな時サッカーボールを追いかけている少年が目の前を通りトラックに轢かれそうになる。その少年を助けるか迷っていたが、気がついたら木の上にいた。そこには死神もいた。少年を助けて死んだのかと思っていたが、死神から何もせずに突っ立っていた所に急ハンドルを切ったトラックが突っ込んだことを説明された。中途半端な人生が嫌になった男は、もう一度人生をやり直すのであった。
『素晴らしい世界』の登場人物・キャラクター
こうた
「バードウィーク」の主人公である少年。医者である厳しい父親に育てられ、愛情に飢えていた。
タエ
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目次 - Contents
- 『素晴らしい世界』の概要
- 『素晴らしい世界』のあらすじ・ストーリー
- バードウィーク
- 雨のち晴れ
- 砂の城
- おやすみなさい
- 月となると
- ウイスキーボンボン
- 素晴らしき世界
- あおぞら
- 『素晴らしい世界』の登場人物・キャラクター
- こうた
- タエ
- 友人関係に悩む女子中学生
- 岡崎サト
- 春日部(かすかべ)
- 編集長
- 屋台ラーメン屋のオヤジ
- 屋台ラーメン屋のオヤジの兄
- 酒好きの自堕落なOL
- OLの彼氏
- フリーターの男
- 元バンドマン
- 『素晴らしい世界』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
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- フリーターの男「世の中まだまだ捨てたもんじゃねえってか?」
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