【推しの子】(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『【推しの子】』とは、『週刊ヤングジャンプ』にて、2020年4月より連載を開始した、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の赤坂アカ(あかさかあか)が原作を担当し、横槍メンゴ(よこやりめんご)が作画を担当している、芸能界を舞台にしたサスペンス漫画。主人公が彼の「推し」であったアイドルの子供に転生するも、母であるアイドルを殺害され、殺害の秘密を握っている可能性の高い正体不明の父親を捜すために芸能界に切り込んでいく姿を描く。芸能界やインターネットの闇を現在の視点から描く切り口が魅力である。

【推しの子】の概要

『【推しの子】』とは、『週刊ヤングジャンプ』にて、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の赤坂アカ(あかさかあか)が原作を担当し、『クズの本懐』の横槍メンゴ(よこやりめんご)が作画を担当している、2020年4月より連載を開始した、芸能界を舞台にしたサスペンス漫画である。2021年8月26日時点で累計発行部数200万部を突破しており、「次にくるマンガ大賞2021」のコミックス部門で1位を受賞した。
主人公が彼の「推し」であったアイドルの子供に転生するも、母であるそのアイドルを殺害され、殺害の秘密を握っている可能性の高い正体不明の父親を捜すために芸能界に切り込んでいく姿を描く。転生というファンタジー要素と芸能界という現実の要素をうまくミックスし、芸能界やインターネットの闇を描く独自の切り口が魅力となっている。
原作の赤坂は『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の連載中に本作を開始しており、作画は横槍の担当とはいえ異例の"2作品同時週刊連載"となっている。

【推しの子】のあらすじ・ストーリー

プロローグ

主人公ゴローは、産婦人科医であり、重度のアイドルオタクであった。そんな彼の最推しはアイドルグループ「B小町」の絶対的センター「アイ」。彼女の突然の活動休止宣言に彼は落ち込んでしまう。
ゴローが彼女を推すのには理由があった。研修医時代、仲の良かった幼い少女「さりな」がアイに憧れていたのだ。彼女は12歳の幼さで死去していた。彼女が生きていればアイと同い年、さりなをアイと重ね、彼がアイを推す原動力となっていた。

そしてゴローの前にアイが患者、つまり妊婦として現れる。アイドル、しかも16歳、自分の最推しの妊娠と言う事態にショックを受ける。しかし綺羅星のようなまぶしい笑顔でアイドルとしての幸せも母としての幸せも両方掴みたいと言うアイに、ゴローは改めて彼女に惹かれ、彼女の子供を絶対に無事に産ませると決意するのだった。

だがアイの出産予定日、患者として入院していることは秘密にされている筈のアイのことを知る謎の男に、ゴローは殺害されてしまう。しかし死んだ筈の彼は気が付くと、アイの子供である星野愛久愛海(ほしのあくあまりん)、通称アクアに転生していたのだった。

幼少期編

最期に双子に愛を告げるアイ。

生まれ変わったアクアには双子の妹が居た。彼女の名は瑠美衣(ほしのるびい)通称ルビー。双子は世間を欺くため、対外的にはアイが所属するプロダクションの社長、斎藤壱護(さいとういちご)の子供として扱われた。壱護の妻、ミヤコに面倒を見られながら、彼女の目を逃れて前世からの推しであるアイの舞台を楽しむアクア。そして彼同様に熱狂するルビー。彼女もアクア同様、アイのガチオタの転生者であったのだ。その正体はゴロ―の元患者「さりな」であった。しかし二人は互いに前世での知り合いであったことに気づくことはなかった。

1年が経ち、1歳になった双子は歩き回っていても不審に思われない程度には成長していた。アイの初ドラマの現場に、双子はミヤコの子供として連れてきてもらう。そんな中、アクアはドラマの監督、五反田泰志(ごたんだたいし)に廊下で遭遇する。彼に対しアクアは子供とは思えない態度を見せ、興味を持たれることになる。

撮影終了後、ドラマの映像を見ると、アイの出番はほとんどカットされていた。主演女優を「可愛すぎる女優」として売り出していたのに、隣にいたアイがあまりにもカメラの意識の仕方が上手く、可愛く映りすぎたのだ。五反田にその説明を受け、納得いかないと怒るアクア。そこで五反田はアイに映画の仕事を振る代わりに同じ映画でアクアに子役としてデビューしろと提案をするのだった。

映画撮影の現場に向かったアクアとルビーは、「10秒で泣ける天才子役」と呼ばれる有馬かな(ありまかな)に出会う。スタッフにも横柄で高飛車なかなに、アイを侮辱され双子は怒り狂う。
始まった撮影でアクアとかなは同じ場面に出演し、気味の悪い子供を演じることになっていた。さすがの演技力を発揮するかなに対し、演技では勝てないと判断したアクアは肉体と精神のギャップをそのまま見せることで気味の悪い子供を表現して見せる。それを見て負けたと思い涙を流して悔しがるかな。そんなかなを宥める横で、五反田はアクアに演出の意図を読んだことを褒め、「すごい演技より、ぴったりの演技ができる役者になれ」と言うのだった。

それから更に2年の月日が流れ、アクアとルビーは3歳になる。アイはアイドルとしてますます人気を高め、3人は幸せな時間を過ごしていた。
しかし、そんな幸せは突如崩壊してしまう。アイが自宅を訪れたファンによって、玄関で刺されたのだ。そのファンは、嘗てゴロ―を殺害した男だった。
「子供がいるなんて裏切だ、嘘つきだ、散々ファンのことを好きだと言っておいて全部嘘っぱちじゃないか」と叫ぶ男。それに対しアイは「君達のことを愛せてたかはわからないけど、愛したいと思いながら、愛の歌を歌って来たよ」と答える。元々施設で育てられたアイは人を愛すると言うことがわからなかった。
それでも社長に言われた言葉、「嘘でも言い続けていたら本当の愛になるかもしれない」、その言葉に真っすぐと向き合ってアイドルを続けてきたのだ。それを聞いて男は走り去る。

自分の命が尽きようとしていることを悟ったアイ。彼女は最後に二人の子供に愛を告げる。それは愛が分からない筈の彼女がその気持ちが嘘でないと確信できる想いであった。
アイが殺害され、犯人は自殺した。双子は既に戸籍を斎藤夫妻に移していたため存在が明るみに出ることはなかった。
親を失ったアクアとルビー。そんな二人に対し、ミヤコが「君達さえよかったら、本当にうちの子になりませんか」と彼等を引き取る。
自分も母のようなアイドルになれるだろうかと前を向くルビー。それに対し犯人にアイの居場所を教えた人物が居ることに気づくアクア。
それは自分たちの父親だと感づいた彼は、父親を必ず見つけ出して自分の手で殺すと決意するのであった。

芸能界編

打ち上げパーティーで原作者に感謝され、涙をこぼすかな。

アイが死んでから十数年の月日が流れた。アイの所属していたプロダクションの社長は失踪。プロダクションはミヤコが継いでいたが、センターを失ったB小町は解散していた。
成長したルビーはアイドルを目指すもオーディションは失敗続き。それはアイと同じ轍を踏ませたくないアクアの裏工作が原因だった。けれどルビーは夢を諦めず、評判の悪い地下アイドルのスカウトを受けそうになってしまう。彼女は決して諦めないとアクア、ミヤコの両方が理解する。変な所に入らせる位ならとミヤコは十数年ぶりにアイドルグループを立ち上げ、彼女をそこに入れさせるのであった。

芸能科の存在する陽東高校を受験するルビー。一方アクアは自分には特別な才能はないと役者になることを諦めていた。代わりに裏方を目指し、ルビーと同じ高校の普通科を受験する。その受験先で彼は有馬かなに再会するのだった。

かなが主演を務める名作漫画『今日は甘口で』、通称『今日あま』の実写ドラマに自分と一緒に出ないかと誘われるアクア。一度は断るが、プロデューサーが鏑木勝也(かぶらぎまさや)だと聞いて承諾する。その名前はアイが妊娠以前に使っていた私用スマホの連絡先一覧に残っており、自分とルビーの父親の可能性があった。

遺伝子上のつながりがある以上、鏑木の髪の毛の一本でも確保できればDNAの検査ができる。それを目当てに潜り込むことを決めたアクアだったが、既に放映されていた『今日あま』をルビー、ミヤコと共に見て絶句する。演出はしっかりしているが、原作に出ていないオリジナルキャラクターが大量に出演しており、ストーリーの展開も大幅に違う。
更に言うなら役者の演技が皆ひどい。全六話構成の三話まで放映された現段階で、既に酷評されていた。状況自体も悲惨だが、かなはもっと演技が上手ではなかったかと、ルビーは訝しがる。

その奇妙な状況を、後日アクアに会ったかなはこう説明した。このドラマはこれから売り出したいイケメンモデルを女性層に売り込むためのものであり、演技は二の次である。そんな中、かなは浮かないように敢えて抑えて演技をしていたのだ。特出して上手い一人が居ては作品としては逆に観れないものになる。「役者に必要なのはコミュ力よ」と笑うかなはアクアに「私と一緒にいい作品を作って」と頼み込むのだった。

撮影日は雨だった。アクアの役はストーカーであり、本来その役をやるはずだった男が嫌がって降板したため急遽アクアをねじ込むことができたのだ。実際に演じるアクアを見て、「ずっと努力してきた人の演技って感じがして、私は好き」とかなは言う。かなは子役としての旬を過ぎて以降、稽古だけは続けてきたが全く売れない時代が続いていた。「それが今回、十年ぶりの主役という形で努力を評価されたのが嬉しい」と笑う。

しかしそれはかなの勘違いだった。鏑木は知名度があり、フリーになってただ同然のギャラで使える彼女が便利だったから主役に据えただけだったのだ。それを偶然聞きつけたアクアは、一波乱起こすことを決める。

撮影本番、アクアはかなの相手役である鳴嶋メルト(なるしまめると)を小声で挑発して役通りの怒りの演技を引き出す。そして音、カメラの方向、照明の当たり方などを計算し、原作通りの空気を作り上げた。主人公が泣く原作最大の見せ場、そのシーンをかなに全力で演じさせるためだ。アクアの狙いを読み取ったかなは、望んでいた通りの全力でそのシーンを演じきった。その時、かなは、アクアに恋をした。

アクアの功績もあり、『今日あま』は最終回のみは評価されたものの、結局大きな話題になる事もなく終わった。しかし打ち上げパーティーでかなは原作者の吉祥寺頼子(きちじょうじよりこ)に、「この作品は有馬さんの演技に支えられていたと思います。 ありがとうございます」と礼を言われて涙を流すのであった。

一方アクアはパーティー会場で鏑木に声をかけられる。遺伝子を調べた結果、鏑木はアクアの父親ではなかった。しかしアイとよく一緒に仕事をしていて、いい営業先を紹介したり彼女が内緒で誰かに会うのにいい店を紹介したりなど、仕事以外でも世話をしていたのだ。その話を聞きたがるアクアに、鏑木は交換条件を出す。それは「恋愛リアリティーショーに興味はないか」と言う物であった。

一方、ルビーは無事に陽東高校芸能科に入学したものの、未だアイドルとして活動できておらず肩身の狭い思いをしていた。だが一人ではアイドルグループとしては活動できない。
そこでアクアは、かなをアイドルとして引っ張りこむことを提案する。誘われたかなは言葉では考えさせてくれと言うが、内心では若手役者枠から新陳代謝が激しい若手アイドル枠に行くのは危険すぎると思っていた。
しかしアクアに「有馬はそこらのアイドルよりずっと可愛い。有馬になら妹を任せられる、アイドルをやってくれ」と説得され、結局引き受けてしまうのだった。

だが打ち上げパーティーには多くの人が集まっている。これだけ多くの人間が関わっていたのだと実感するアクアの隣で、かなは原作者の吉祥寺頼子(きちじょうじよりこ)に、「この作品は有馬さんの演技に支えられていたと思います ありがとうございます」と礼を言われて涙を流す。一方遺伝子を調べた結果父親ではないと判明した鏑木に、アクアは「アイに似ている」と声をかけられた。鏑木はアイとよく一緒に仕事をしていて、いい営業先を紹介したり彼女が内緒で誰かに会うときいい店を紹介したりなど、仕事以外でも世話をしていたのだ。その話を聞きたがるアクアに、交換条件と言って鏑木は「恋愛リアリティーショーに興味はないか」と告げた。

ルビーは無事に陽東高校芸能科に入学したものの、未だアイドルとして活動できておらず肩身の狭い思いをしていた。だが一人ではアイドルグループとしては活動できない。そこでアクアは、カナをアイドルとして引っ張りこむことを提案する。アイドルにならないかとルビーに誘われ、カナは内心では冷静にありえないだろうと判断していた。若手役者枠から新陳代謝があまりに激しい若手アイドル枠に行くのは危険すぎる。だが同時にルビーに、かつて一度一緒に仕事をしたアイに似たものを感じてもいた。売れるべくして売れたアイと、「芸能人」としての嗅覚が同じものを感じさせる。それでも自分はそれほど可愛くないしと断ろうとしたカナだったが、「有馬はそこらのアイドルよりずっと可愛い。有馬になら妹を任せられる、アイドルをやってくれ」とアクアに説得され、結局引き受けてしまうのだった。

恋愛リアリティーショー編

芸能活動をしている6人の高校生が週末いろんなイベントを通じて交流を深め、恋愛関係になったりならなかったりする様を楽しむ恋愛リアリティーショー、『今からガチ恋♡始めます』、通称『今ガチ』。撮影ノウハウは既に確立されており、カメラのアングルさえ気を付ければ出演者たちは自由に会話して構わない。台本はないが演出はあり、ディレクターの発言を指示と取るかアドバイスと取るかは人それぞれである。

番組は進行するにつれ、ファッションモデルの鷲見ゆき(すみゆき)とダンサーの熊野ノブユキ(くまのノブユキ)、二人の関係に嫉妬を見せるバンドマンの森本ケンゴ(もりもとケンゴ)の三角関係が中心になりつつあった。
やり過ごせれば十分と適当に軽いキャラを作っていたアクア。自分の番組への導線を引くことを目的で出演したユーチューバー兼インフルエンサーのMEMちょ(めむちょ)。
二人は目立たずとも問題ない、とのスタンスで撮影に臨んでいたが、女優の黒川あかね(くろかわあかね)は同じようなスタンスを取る訳には行かなかった。

生真面目なあかねは、自分が番組内で目立たないせいで事務所の所長にマネージャーが怒られたこと、エゴサした際「あかねはいてもいなくても同じ」と言われていたのをきっかけに、ゆきからノブユキを奪う悪女ムーブを始める。これができれば間違いなく目立つし、キャラも立つとディレクターに言われたのだ。

悪女ムーブに挑むあかねだったが、どうにも目立つことができない。そんな中、撮影前にゆきにデコネイルを施してもらった後、ノブユキに寄りかかったゆきの腕を振り払おうとしたあかねの爪がゆきの頬を傷付けてしまう。モデルであるゆきの顔を傷つけてしまったことに動揺して平謝りするあかねの背を、「大丈夫だから落ち着いて!」とゆきは抱く。ゆきは自分が一番目立つように動くの自体は譲れないが、努力家のあかねのことは好きだし、あかねも強くて優しいゆきのことが好きだった。当事者の間ではそれで済んだことだったのだが、謝罪のシーンが流れなかったのも手伝い、インターネット上で大炎上してしまう。

すべての叩きを真面目に受け止めてしまったあかねは、もう疲れたと台風の中ふらふらと外に出て歩道橋から飛び降りようとする。それを止めたのはアクアだった。落ち着いたあかねから「逃げたくない」と言う意志を確認したアクア、彼は世間の目を変えるため『今ガチ』メンバーにある提案をする。それは「あかねを悪役にしたら面白い」という番組サイドの演出とは違う、出演者目線の『今ガチ』を動画として作成し、SNSで流そうという計画であった。

動画がバズったことにより炎上は何とか収束。あかねが今ガチに復帰するにあたり、MEMちょが少しキャラを作った方がいいと提案。場の流れでアクア好みの女、つまりアイのようなキャラを演じてみようという話になる。
そして復帰したあかねはまさしく、「B小町のアイ」そのものだった。あかねは元々役者が本業で、徹底した下調べに基づく役作りとそれを完璧に演じ切る演技力で知られた天才女優だったのだ。
そんなあかねに対し、動揺するが、星野アイの幻影を見ているだけと自分の感情に整理をつけるアクア。しかしアイに隠し子がいることまでプロファイリングだけで見抜き、アイの大体の生き方や好みの男はわかると思う、と言ったあかねはアクアにとって手放し難い存在だった。
今後も付き合いを続けるため、アクアは番組の最後にあかねにキスして「交際」を始める。あかねもアクアが自分を恋愛対象として見ていないことには気付いていたが、アクアの「女優としてのあかねには興味がある」との言葉が嬉しかったので、番組終了後も仕事として彼氏彼女を続けることになるのだった。

打ち上げからの帰宅時、アクアはMEMちょをアイドルのメンバーに誘う。MEMちょが大幅に年齢を鯖読みしていた事実はあったものの、それを問題なくルビーとかなが受け入れたことでアイドルグループ、新生B小町が正式なスタートを迎えた。

ファーストステージ編

B小町の楽曲を使い、ルビーとMEMちょ、かなの三人はダンスの練習を始めた。だが元々アイドルオタクだったルビーとMEMちょの情熱にかなは付いていけず、アクアとあかねがキスをして交際を始めたことに感情がついていかないまま、アクアにもきつい態度を取ってしまう日々が続いていた。

そんな中、B小町は今ガチのプロデューサーのコネで、ジャパンアイドルフェス、通称JIFという大きな舞台に参加することになる。センターをやりたがるルビーとMEMちょ、対照的に嫌がるかな。子役を干されて以降いろんなジャンルに手を出しては人気が出なかったことがトラウマとなっていた。しかし一番歌が上手いのはかなだった。自己評価の低さに反し、努力を続けてきた彼女には力があったのだ。ルビーとMEMちょが思った以上に歌が下手だったこともあり、本当にやりたくないと内心では思いながらもかなはセンターを引き受けるのだった。

JIF当日、かなは自分が売れなくなっていくに連れ、自分への関心を薄れさせた母の姿やオワコンと叩くネットの書き込みなどを思い出し、強いプレッシャーを感じていた。芸歴が長い自分が二人を引っ張らなければ、あんな思いを2人にさせてなるものかと必死に奮い立つも緊張に震えるかな。しかしルビーに「新人アイドルなんだから、私たちは失敗して当たり前。楽しく挑もう!」と言われ、二人と同じ新人アイドルなのだ、という意識で舞台に立つ。

メンバーのサイリウムの色はルビーがアイと同じ赤、MEMちょは黄色、かなは白を選んだ。客層の前方は黄色のライトが大半、赤いライトも思った以上に目立つ、とかなは分析する。知名度の高いMEMちょ、天性のカリスマ性で客を惹きつけるルビー、そんな二人と比較し、今の自分を欲しいと言ってくれる人はいないと感じるかな。その時、彼女の目に入ったのは、白い光だった。白だけでなく赤と黄色のサイリウムを持ったアクアだ。アクアは真顔で三本のサイリウムを振りつつオタ芸を披露し、周囲の客をドン引きさせていた。

吹き出しそうになりつつ、箱推し気取りかと同時に腹も立てるかな。だから自分がアイドルをやっている間に、アクアのサイリウムを真っ白に染めてやる、アンタの推しの子になってやる、と心を決めるのだった。

2.5次元舞台編

姫川と共に素晴らしい演技力を発揮するかな。

アクアはかな、あかねと共に、大人気バトル漫画『東京ブレイド』の舞台に出演することが決まる。この舞台は劇団ララライから多くのメンバーが参加しており、アクアの目当ては劇団ララライの主宰であり今回の舞台の演出家でもある、金田一敏郎(きんだいちとしろう)だった。鏑木から、劇団ララライが「かつてアイが恋を知った場所」だと聞かされたのだ。ならば金田一は父親である可能性もあり、そうでなくとも何か話が聞き出せる可能性もある。

今回の舞台は同世代の新旧天才対決でもある。かつて天才子役と呼ばれ、周りの演技を綺麗に受ける「適応型」であるかなと、現在天才女優と呼ばれ、役にどっぷり入り込む「没入型」であるあかねは、本人たちも互いを絶対に負けたくないライバルだと思っていた。

同じシーンに立つことが多い主演の姫川大輝(ひめかわ だいき)の演技に答え、素晴らしい演技力を発揮するかな。
一方、あかねは役柄を捉えられずにいた。彼女が演じる鞘姫は原作では内気で人を殺めることに葛藤を抱く優しい少女なのだが、舞台では尺の都合上、戦いに前のめりなクレイジーな少女として描かれていた。
演出家の金田一と脚本のGOA(ごあ)に必要な改変と言われ、原作者もこれでOKしたなら従うしかないと、あかねはなんとか飲み込もうとする。

だがそれを破壊したのは『東京ブレイド』の作者・鮫島アビ子(さめしまあびこ)だった。アビ子は上がってきた脚本に修正依頼をしていたが、改稿作業には原作者と脚本家の間に多くの人間が介在する。その結果伝言ゲームとなり、アビ子の指示は全く違う形でGOAに伝わっていたのだ。だがそれを知らないアビ子は、こんな脚本ならGOAを下ろせ、自分がすべて脚本を書くと宣言する。

脚本が変わる以上、稽古を続けることはできない。稽古は一度中断されるが、アクアは今回『東京ブレイド』で使われる「ステージアラウンド」と呼ばれる形式の舞台を知らなかったため、あかねに連れられて舞台を見に行く。アクアは舞台演劇が余り好きではなかった。だがステージアラウンドは、近代的な改変により彼が欠点だと思っていた多くの点を克服したものであることを知り感心する。同時にアビ子がこの舞台に対応した脚本が書けないと思い知る。GOAが『東京ブレイド』の脚本にいかに力を入れていたかも聞かされたアクアは、彼に助け舟を出すことにする。

かつてアビ子は頼子のアシスタントをしており、彼女を尊敬していた。頼子の説得にならアビ子も応じるのではないかとアクアは考えるが、説得を断られてしまう。ならせめてこれをアビ子に渡してほしいと、アクアは頼子にGOAが脚本を書いたステージアラウンドの舞台のチケットを託す。

チケットを手に舞台を見に行ったアビ子、彼女が舞台を見に来たことに気付いた舞台『東京ブレイド』の総責任者、雷田澄彰(らいだすみあき)だった。雷田は彼女を説得し、GOAを脚本に戻すことに成功する。ただし脚本は、クラウド上のテキストデータをGOAとアビ子がリアルタイムで共有し、通話しながら修正することになった。これをやると脚本と原作者が揉めて企画自体が潰れる恐れがあるが、これ以上悪くなることもないと、開き直って雷田はやり取りを見守る。幸い二人のやり取りは熱の入ったものになったが、結果として状況を説明する台詞がほぼ削られ、動きだけで感情を表す役者の演技に全てがかかった尖った脚本が出来上がってしまった。

こちらのほうがやりがいがあると、劇団ララライの面子とかなはやる気を見せる。あかねは鞘姫の解釈が一致したこともあり、どう考察を深めようかとわくわくしていた。問題は『今日あま』の時より随分稽古を重ねてそれなりに上手くはなったものの、劇団ララライには遠く及ばないメルトと、アクアだ。
アクアは自分の感情を強く引き出す、いわゆる「感情演技」をしたことがない。案の定役の感情を引き出し切れず、演出家に「もっと強く」とやり直しを要求される。

「有馬はどうやって泣く演技をしているんだ」とかなに聞くと、かなは手法はいろいろあるけど、と前置きし「アクアくん、もしお母さんが目の前で死んじゃったらどうする?」と問いかける。
それは目の前のものを大切なものと思い込んで泣く手法であったが、その言葉はアイの死んだ光景を思い出させてしまい、アクアは嘔吐感と共にその場に倒れ込むのだった。

【推しの子】の登場人物・キャラクター

主要人物

星野 愛久愛海(ほしの あくあまりん)/ ゴロー

本作の主人公。通称及び芸名は「アクア」。母親からの遺伝で、右目に星のマークが入っている。演技力は平凡だが頭脳とコミュニケーション能力に優れ、演出家の意図を読み取ることで適切な演技を行っている。母の復讐を誓って以降冷めた性格にはなったものの、その分妹を同じ目に遭わせてなるものかという意識が強く、シスコンの名をほしいままにしている。
転生前は宮崎で産婦人科医をしており、亡くなった入院患者・さりなの影響で彼女と同じくアイのファンになっていた。

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