宇宙の騎士テッカマンブレード(タツノコプロ)のネタバレ解説・考察まとめ

『宇宙の騎士テッカマンブレード』とはタツノコプロが1992年に制作したSFアニメである。宇宙進出を果たした未来世界において、突如宇宙から襲来した侵略者ラダムと、仮面の超人・テッカマンブレードとの、人類の存亡をかけた壮絶な死闘が描かれる。原作『宇宙の騎士テッカマン』では描かれなかった、肉親と戦い葛藤する要素を取り入れており、主人公・Dボゥイが、肉体的・精神的に極限まで追い詰められ全てを失いながらも、敵に改造された兄弟・友人と死闘を繰り広げるという、非常にハードな展開が特徴である。

シンヤ/エビル「最高だ、最高だよ兄さん……こんなにも充実した時を過ごせるなんて。もうラダムも人間も関係ない! この瞬間が俺の全てだよ兄さん!」

「最高だ、最高だよ兄さん……こんなにも充実した時を過ごせるなんて」兄(左)の首を絞め上げながら喜悦に震えるエビル(右)

第48話。ブレードとの最終決戦時のセリフ。実の兄の首を絞めながら、「最高だ、最高だよ兄さん……こんなにも充実した時を過ごせるなんて。もうラダムも人間も関係ない! この瞬間が俺の全てだよ兄さん!」と恍惚として言い放つ。シンヤが抱える兄への歪んだ愛が絶頂を迎えつつある。

名も無き兵士「大丈夫だ、ボウズ……俺たちにはまだ、テッカマンブレードがいる!」

死の恐怖に怯える男児(右)を勇気づける、『宇宙の騎士テッカマン』の主人公・鉄也にそっくりな青年(左)

第48話。オービタルリングに殺到する人の波にさらわれ、転倒してしまった男児。それを助け起こした連合軍兵士の青年が、「僕たちみんな死んじゃうの?」と怯える男児に「大丈夫だ、ボウズ……俺たちにはまだ、テッカマンブレードがいる!」と勇気つける。その直後、戦うブレードに民衆が声援を送る様子があり、この頃には、救世主・テッカマンブレードの名前が民衆の間に広まっていたようである。蛇足だが、くだんの青年の容姿が、原作『宇宙の騎士テッカマン』の主人公・鉄也にそっくりである。

シンヤ「ごめんね、兄さん……」

ブレードに自らのクリスタルを託し、「ごめんね、兄さん……」と言い残して息を引き取るシンヤ

第48話。相羽シンヤの最後の言葉。ラダムから解放され、兄タカヤに抱き起こされたシンヤは、「勝った、よね?」と問いかける。発作で手元が狂わなければ兄の心臓を貫いていたと勝利を噛みしめる。「うれしい、はずなのに悲しい……いつまでも兄さんと戦っていたかったのに、目標無くなっちゃったじゃないか……」と、殺し合いすらも兄との楽しい一時だったと語る。そして自らのクリスタルを渡すと、「ごめんね、兄さん……」と先にこの世を去る事を詫びて事切れる。

Dボゥイ「Dボゥイも相羽タカヤも今ここで死んだ!俺はテッカマンブレードだ!」

「Dボゥイも相羽タカヤも今ここで死んだ!俺はテッカマンブレードだ!」と宣言し、人としての全てを捨てる覚悟を示したブレード

第48話。エアロックの扉を閉ざし、アキを遠ざけるテッカマンブレード。もう1度顔を見せてほしいと懇願するアキに、「Dボゥイも相羽タカヤも今ここで死んだ!俺はテッカマンブレードだ!」と、人としての生を捨てることを宣言する。この後エビルのクリスタルを使い、単身月に進撃する。状況的にあきらかに片道切符の死出の旅である。閉ざされた扉にすがって泣き叫ぶアキの姿が哀愁を誘う。

アキ「Dボゥイ生きて、生き続けて。例え記憶を、何を失おうとかまわない。あなたがあなたのまま帰ってきてくれればそれでいい」

オービタルリングの窓ぎわでDボゥイの生還を祈り続けるアキ

第49話。単身月に旅立ったDボゥイの身を案じ、アキが「Dボゥイ生きて、生き続けて。例え記憶を、何を失おうとかまわない。あなたがあなたのまま帰ってきてくれればそれでいい」と願う。その間にも、Dボゥイの脳神経核は崩壊し続け、記憶が消えていく。この後、本当に全てを失い身体だけが戻ってきたDボゥイを、甲斐甲斐しく世話するアキの姿に、彼女の愛が本物であったことがうかがえる。

ケンゴ/オメガ「人の心を信じたお前がしてきたことはなんだ、人としての最大の罪、肉親殺しではないか!」

肉親を手にかけた罪を責め立てるオメガ(左)。しかしその言葉を受けて葛藤する心すら、ブレード(右)は失ってしまった

第49話。テッカマンブレードと相対したテッカマンオメガが言い放ったセリフ。オメガはブレードが手にしたクリスタルを見て、シンヤが死んだことを悟る。「不完全な貴様が、我らをここまで追い込もうとはな。それも貴様の信じる、人の心とやらの力か」と感嘆する。そしてブレードを指し示し、「だが、人の心を信じたお前がしてきたことはなんだ!人としての最大の罪、肉親殺しではないか!」となじる。みずからの素顔を晒し、最後に残った自分も殺せるのかと挑発する。しかし、すでに記憶を全て無くしラダムへの怒りと憎しみだけで動くブレードには通用しない。

アキ「神様、あなたはどこにいるのですか? 彼はもう、もてるもの全てを失いました。愛する父も兄弟も友も、その思い出すら」

オービタルリングのホールで、ひたすらDボゥイのために祈るアキ

第49話。オービタルリングから空を見上げ、Dボゥイのために「神様、あなたはどこにいるのですか? 彼はもう、もてるもの全てを失いました。愛する父も兄弟も友も、その思い出すら。これ以上彼から、何を奪おうというのですか。ひとりの人間に、これほど重いさだめを負わせてもいいものなのですか。ひとりの、そう、ひとりのおびえる魂に」と祈るアキ。その頃テッカマンブレードはラダム宇宙船の甲板で、最後の肉親ケンゴ=テッカマンオメガに切り刻まれている最中である。アキの「神様、どうかDボゥイに救いを」との願いが届いたかのように、ペガスが盾となってブレードをかばうが、次の瞬間にはバラバラにされ、クリスタルは砕けてしまう。Dボゥイが、文字通り全てを失っていく絶望的な展開である。この後、残った命を燃やし尽くすかのように、ブレードはブラスターテッカマンをも超えた存在に進化する。

Dボゥイ/ブレード「帰ろう、家へ」

一瞬だけ蘇った家族への想い。今までの激闘が嘘のように穏やかな顔で、兄ケンゴに話しかける

第49話。数瞬だけ意識が戻ったDボゥイが、「帰ろう、家へ」と穏やかな笑顔でケンゴ=テッカマンオメガに呼びかける。その表情からは怒りも憎しみも消え、兄を迎えに来た弟の顔になっていた。その後、超ボルテッカすら超えた、極限のボルテッカがラダム宇宙船を飲み込み、オメガ共々消滅させる。

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