メリダとおそろしの森(ディズニー映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『メリダとおそろしの森』とは、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズによって2012年に公開されたアニメ映画である。ディズニー映画初となる女性主人公の作品で、世界中で話題を呼び2013年にはアカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞。ダンブロッホ王国の次期王位継承者である王女メリダが、王位になるためにと日々厳しく躾ける母エリノアと衝突してしまったことをきっかけに、崩壊しかけた家族の絆を取り戻すため、1人おそろしの森へと出かける。家族の愛が詰まったディズニーらしいファンタジー映画である。

CV:スティーブ・パーセル/梅津秀行

メリダと出会った当初は、おばあさんにより木彫りのカラスだと紹介されていたが、お喋りの性格のために摩訶不思議な喋るカラスだと正体がばれてしまった。

モルデュー

CV:フランク・ウェルガー

ダンブロッホ王国の付近の森に昔から住む、巨大で狂暴な熊。
メリダが幼い頃、ファーガスと戦い片足を食いちぎっている。
モルデューの正体は、大昔に滅びた王国の王子である。他の3人の兄弟よりも自分が国を継ぐべきだと考えたモルデューは、メリダと同じようにおばあさんに魔法を依頼。
魔法により人の10倍の力を得るも、人間に戻ることができずに巨大な熊としてメリダたちの生きる時代まで彷徨っていた。
最期はメリダに襲い掛かろうとしたところ、熊になったエリノアとの闘いに敗れ、死後は鬼火となって森へと消えて行った。

『メリダとおそろしの森』の用語

失われた王国

ダンブロッホ王国に古くから伝説として伝わっていた物語の名前である。
かつてあった王国には4人の王子がおり、1番上の王子が力を求めるあまり、運命を変えてしまったという物語。その実態は、メリダのように魔法の力を求め、人の10倍の力を手に入れた代わりに熊となり、そのまま人間に戻ることができずに今も狂暴な熊・モルデューとして森をうろついているのだった。

鬼火

運命に導くとされている、不思議な青い炎である。その正体は不明で、魂でもあり、幻でもあり、現実でもある。
メリダの幼い頃より、たびたびメリダを導いてくれている。

『メリダとおそろしの森』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

エリノア「自由の代償を払う覚悟はある?」

懇々とメリダ(左)へ伝統を守る大切さを語るエリノア(右)

自由がほしいがために結婚に対して大反対のメリダと、国のために伝統を守る必要があると必死に説明するエリノア。2人の話し合いは平行線で両者1歩も譲らなかったが、その伝統を守らなければ国中で戦いが起き、メリダの望む自由さえもなくなってしまうという意味で、エリノアは「自由の代償は払う覚悟はある?」と鋭い言葉を放った。口うるさい母親として描かれている彼女だが、メリダの将来もこのまま平和であってほしいという願いが込められているセリフだ。母親の愛情が込められており、胸が熱くなる名言である。

メリダ「皆の勇気と友情で作り上げられた絆は、今日まで続いている」

当初は結婚に大反対し、氏族たちに目もくれなかったメリダは、自らの意思と言葉で皆をまとめあげた

熊になったエリノアを城の自室にこっそり連れ戻すため、広間で騒いでいる父や氏族たちの注目を浴びようと中心に立ったメリダ。当初はそういう目的だったが、次第にメリダはそれぞれの氏族や自分の家族との絆を実感する。
国の誰もが知っている失われた伝説を例に出した際「伝説は伝説だ」「所詮架空のおとぎ話だ」と一蹴される。しかし、モルデューの真実を知っているメリダは、「伝説は教訓よ」と皆をなだめた。まだ若いダンブロッホ王国は、歴史の浅さゆえ伝説にはなっていない。しかしそれぞれの氏族が戦ってこの土地を守ったおかげで王国ができた事、この絆は今日まで続き、今なお歴史を刻んでいる途中なのだと皆をまとめた。「皆の勇気と友情で作り上げられた絆は、今日まで続いている」というセリフは、己の間違いを認め相手の事を称え、頑固で自由奔放だったメリダが、初めて国のためを思って行動するきっかけとなった。メリダが1歩大人になった事を表現しているシーンで、本作最高のシーンの1つである。

メリダ「運命は私達の中にある」

物語終盤、エリノアを仲良く森を駆け抜けるメリダ

物語の終盤、エリノアにかけられた魔法が解け、それぞれの氏族も自分達の村へと帰って行ったあと、エリノアとメリダは馬にまたがり仲良く森を駆けて行った。その中で、メリダは「運命は、自分の意思では変えられないという人もいる。運命は自分のものではないと。でも、私は知っている。運命は、私達の中にある。それを見つめる勇気を持てば、いいだけだ」と物語を締めくくっている。
間違った意見ではなかったものの、自分本位で少々行き過ぎた行為をしたがゆえ、エリノアは熊になりメリダは王国に混乱を招いてしまった。しかし、過ちを認め、愛する家族のために立ち上がったからこそ解決でき、再び王国に平和を取り戻すことができたのだ。メリダが成長した証ともとれるこのシーンは、締めくくりにぴったりであり、印象的なシーンの1つである。また、メリダらしい力強く希望に満ち溢れた溢れたセリフである。

『メリダとおそろしの森』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

新しい時代の幕開けとなったディズニー作品

1950年にディズニー初の長編アニメ映画となった『白雪姫』を始め、『眠れる森の美女』『シンデレラ』などでは、かよわい姫はただ王様を待つのみ、白馬に乗った王様が姫を迎えに来るというストーリーが一般的であった。1990年代に入ると『アラジン』『美女と野獣』『ムーラン』など、王女や姫が自ら剣を握り、運命に抗い、王子や王様にも堂々と意見するキャラクター性へと変わっていく。それでもなお国を継ぐのは男である王子で、女は1歩下がっているような印象だったが、2010年代に上映された『アナと雪の女王』『モアナと伝説の海』では女性キャラクターが国を治める様子が描かれ始める。本作でも、メリダは女性であるため1990年代であれば国を継ぐ権利すらなかったが、第1子であるという理由から3つ子の王子ではなく、メリダに国を継ぐ権利が与えられることとなった。また、それまで物語の主軸となる冒険には、ヒロインだけではなく男性主人公も一緒に出掛けていたが、本作では主にメリダ1人だけが軸となって動いている。
しかし、本作が新しい時代の作品となった理由はそれだけではない。ディズニー作品の中には、『眠れる森の美女』とその作品に登場する悪役の魔女の裏側を描いた『マレフィセント』など、当初悪役とされ叩きのめされていたキャラクターの裏側を描いた作品も多くある。主人公視点であれば意地悪で悪の心に満ちたキャラクターであったが、理由があって行っており根っからの悪ではないことなどが描かれている。
初期の1950年代以降の作品では、ヴィランズなどの悪役は殺されるか事故に遭い死んでしまい、誰も悲しまないどころかそれを喜ぶ描写が多くあった。1990年代に入ると、悪役への対応はやや柔らかくなったものの、まだ多くのヴィランズは最後を死で迎えていた。2010年代になって、ようやくヴィランズであっても死なない結末や和解する結末を迎えることができた。
本作に登場する唯一のヴィランズ・モルデューも、熊の本能から人を襲っていただけで元々は人間であり、魔法により熊になったことが発覚している。

メリダのモデルとなったのは監督の娘

7qshinotaro
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