レプリカズ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『レプリカズ』とは、2018年にアメリカで製作されたSFスリラー映画である。『トランスフォーマー』シリーズのロレンツォ・ディ・ボナベンチュラら製作スタッフが集結し、洗練されたタッチで近未来の世界を演出した。主演のキアヌ・リーブスは主人公の天才科学者を熱演するだけでなく、製作にも名を連ねている。不慮の事故で家族を失った科学者ウィリアムが、自身が研究する神経科学を用いて家族を取り戻そうと奔走する姿を描く。近未来の科学技術を描くSF要素と、家族愛がテーマとなった重厚な作品である。
合成ボディ(アンドロイド)
出典: film-tales.com
本作に登場するアンドロイドは1体のみ。ウィリアムらが無機質にそう呼ぶ345番である。このアンドロイドの左胸には「345」と刻印されている。その数字が単なる番号なのか、あるいは「345体目のアンドロイド」という意味なのかは定かではない。作品中でこれについて語られるシーンは無いのだ。とはいえ、冒頭にあった実験失敗の場面でジョーンズは「投資家の我慢もそろそろ限界だ。次の実験に失敗すれば研究は終わるかもしれん」と、ウィリアムに告げている。彼の発言は、これまでに相当な資金と長い年月が投入されていることを匂わせている。
このアンドロイド345は鋼鉄製のボディを持ち、銃弾を跳ね返すほど頑丈である。また、インプリントされた人間の声や息遣いまで再現するほど、精巧に作られている。頭部には人間の脳を模した形の「合成脳」が搭載され、インプリントすることにより人間の意識や記憶を移植することが可能だ。
『レプリカズ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
モナの鋭い指摘に困惑するウィリアム
出典: film-tales.com
冒頭、帰宅したウィリアムと家族の、ほのぼのとしたシーンから一転。
研究についてモナと議論になるウィリアム。どうしても合成脳に意識が定着しないとボヤく夫に対し、
モナ「人間にある何かが無いのかも。魂とか」
ウィリアム「過去の出来事とその過程を総合した結果、その情報が人間だと言える。神経科学そのものだ」
モナ「本当に?ただの電気信号だと?子供達や私はあなたを愛しているのに」
ウィリアムはモナの鋭い指摘に困惑してしまう。もう辞めるしか無いというのかと反論するが、
モナ「善悪の判断が付かなくなるのが怖いの」
家族の為とは言え、科学者としての倫理観を失い暴走してしまう物語である。この後の展開の伏線となる場面だ。
前人未到の偉業を成し遂げる
出典: hmayshop.com
クローン合成に成功したウィリアムとエドだったが、神経情報を定着させるインプリントには不安が残っていた。前回の実験での兵士のように、家族のクローンが錯乱して自らの肉体を破壊するかも知れない。タイムリミットが迫る中、ウィリアムは絶望する。家族を再び失わねばならないのかと。ウィリアムはモナの手を取り「許してくれ」と慟哭する。その時、脳波を測定する装置がわずかに反応した。意識を持たないクローンではあるが、潜在意識で脳が肉体の存在を認識していたのだ。ウィリアムは確信する。アンドロイドのボディにインプリントするから、人格や意識が拒絶反応を起こしていたのだ。身体が人間のものであればきっと大丈夫、ましてやこのクローンはモナの身体そのままなのだから。クローン合成に成功したからこそのひらめきであった。
「神経インプリメント起動。バイオプロトコル開始!」
ウィリアムは愛する妻の姿をしたクローンに、モナの神経情報のインプリントを開始する。
残酷なくじ引き
出典: movie727.com
家族を甦らせる為のクローン合成ポッドがどうしても足りなかった。ウィリアムは妻のモナ、長女のソフィ、長男マットそして末っ娘のゾーイのうち誰かひとりを選び、この世から抹消するという残酷無残な決断を迫られる。そんな悲しい選択が簡単に出来るはずもない。ウィリアムは4枚のメモにそれぞれの名前を書き、大きなサラダボウルに入れたのだ。そして親友のエドに「決めてくれ」と頼む。だがエドはそれを断った。
「君が決めなきゃダメだ。他はどんな協力でも惜しまない。だが、これだけは君がやらなきゃダメなんだ」
どんな結果になろうとも、ウィリアムはきっとエドを許せなくなり、あとから彼を責めるかもしれなかった。悲劇が大きくなるのは目に見えている。すでに倫理を犯し、禁断の行為に手を染めたのだ。これだけはウィリアム自身が背負わねばならない試練だった。エドが帰ったあと、ひとりウィリアムはメモのクジを引く。そこには末娘ゾーイの名前が書かれていた。嗚咽を漏らし、ウィリアムは打ちひしがれるのだった。
『レプリカズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
振るわなかった興行収入
出典: www.amazon.co.jp
本作は『人生の動かし方』『ベラのワンダフル・ホーム』と同じ2019年1月に全米で封切られた。最初の週末までに興行収入700万ドルは行くと予想されていたが、実際にはその期待を大きく下回る結果となった。
2019年1月11日に全米2329館で公開。週末興行収入は237万ドル、ランキング初登場は13位。期待された700万ドルには遠く及ばなかった。同じ日に公開された『人生の動かし方』は週末興行収入2035万ドルを叩き出しており、大きく差を付けられる結果となった。ヒット作の多いキアヌ・リーブス主演映画の中では、最も振るわなかった公開作品だと言える。
各方面から酷評される
出典: kinomanclub.ru
本作は批評家から酷評されている。「どの部分も等しくプロットに穴が空いており、観客は失笑するほかない。『レプリカズ』は実に出来の悪いSF映画であるが、出来の悪さを売りにできるほど酷いというわけではない。」と、散々な言われようである。一般観客のレビューもおおむね低く、平均点をかなり下回った評価だと言える。
ネット上に散見される意見を要約すると、「本作の根幹をなす近未来SFの要素はすでに過去の多くの作品で描かれており、既視感が否めない」や、「細かい点で説明が抜け落ちており、観客に疑問を生じさせたままストーリーが進んでしまったようだ」などがある。クローンに対する科学者の倫理観や、家族愛などの重いテーマも、多くの観客には響かなかったようである。
『レプリカズ』の主題歌・挿入歌
主題歌:Rick Garcia & Liela Avila『I Will Live Forever』
挿入歌:『Opening Scene』
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目次 - Contents
- 『レプリカズ』の概要
- 『レプリカズ』のあらすじ・ストーリー
- 天才科学者
- 家族
- 決断
- 真実
- 逃走
- 『レプリカズ』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- ウィリアム・フォスター(演:キアヌ・リーブス)
- 主人公の家族
- モナ・フォスター(演:アリス・イヴ)
- ソフィ・フォスター(演:エミリー・アリン・リンド)
- マット・フォスター(演:エムジェイ・アンソニー)
- ゾーイ・フォスター(演:アリア・リーブ )
- バイオナイン産業の上司・同僚
- エド・ホイットル(演:トーマス・ミドルディッチ)
- ジョーンズ(演:ジョン・オーティス)
- スコット(演:ナシャ・ハテンディ)
- 『レプリカズ』の用語
- インプリント
- クローン
- 合成ボディ(アンドロイド)
- 『レプリカズ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- モナの鋭い指摘に困惑するウィリアム
- 前人未到の偉業を成し遂げる
- 残酷なくじ引き
- 『レプリカズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 振るわなかった興行収入
- 各方面から酷評される
- 『レプリカズ』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:Rick Garcia & Liela Avila『I Will Live Forever』
- 挿入歌:『Opening Scene』
- 挿入歌:『Mona's Imprint』
- 挿入歌:『I'll Delete Her』
- 挿入歌:『End Credits』
- 『レプリカズ』のサウンドトラック
- 『レプリカズ』の予告映像