攻殻機動隊ARISE(アライズ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE(Ghost in the Shell: Arise)とは、Production I.Gが制作を務める、士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」を原作としたアニメ作品である。本作は主人公の草薙素子が公安9課を結成する前の物語に焦点が当てられており、バトーやトグサら9課の仲間たちがどのような形で素子と出会い、彼女と行動するようになったかが描かれているのが特徴となっている。

本作に登場する架空の国家・クザン共和国の少数民族。独立を目論んで武力闘争を続けたが、その独立の承認を国際社会から得られることはなく、現在も独立を求めてテロ活動を続けている。

国営水企業(こくえいみずきぎょう)

サイード博士が代表を務めるクザン共和国の国営企業。クザンへの水の輸入を行っており、日本国内にもダムを所有していて、そのダムの水を工業用水として輸出していた。第三部では倒産が避けられないほどの課税を受け、その後の第四部では軍事メーカー・ハリマダラ社との提携を余儀なくされた。

ドミネーション

ネットワークを通して広いエリアの電子機器を強制的に支配下に置く行為。その実行には多大な計算資源が必要で、作中では交通網制御AI、立て籠もり場所となった大使館の電力網や通信設備、テロ発生場所周辺の店舗のセキュリティへの強制介入などを行っている。

二次元コード

現実に存在するネットワークの情報表示用のコードで、作中では特にこれについての明確な発言などはされないが、隠語として車両のナンバーなどで使われている描写がある。

『攻殻機動隊ARISE』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

題名にある「ARISE」の意味

題名にある「ARISE」とは英語で「起こる、発生する」という意味を持っており、この「ARISE」が題名に含まれている意図として以下の3つの観点が挙げられる。

・「希望は、ここから始まった」という本作のキャッチコピー
・本作のPV画像にあった「自我 記憶 未来への希望」というフレーズ
・本作のストーリーが、主人公の草薙が「少佐」という公安9課のリーダーとなる前の内容であること

草薙の過去から未来へ繋がる「希望」となる何かが起き、彼女を中心にして公安9課の前身である「独立攻性部隊」という新しい物語が始まることから、「ARISE」という題名が付けられたと考えられる。

「第四の攻殻」と位置付けられた理由

「攻殻機動隊ARISE」の制作発表会において、プロダクションI.G.の社長を務める石川光久は、ARISEを「第四の攻殻」と呼んでいる。
石川は、「第一の攻殻」は士郎正宗の原作、「第二の攻殻」は押井守の長編映画、「第三の攻殻」は神山健治のテレビでのシリーズ作品とそれぞれナンバリングした。それに続いて、黄瀬和哉が総監督として制作するARISEは4番目のシリーズ作品となることから、ARISEを「第四の攻殻」と位置付けたのだという。

脚本家・冲方丁の「攻殻機動隊」への思い

「攻殻機動隊」との出会いは修行時代の漫画版と劇場版

冲方は攻殻機動隊との出会いについて下記のように語っている。

--まず、冲方さんにとって「攻殻機動隊」との出会いはいつでしたか?

冲方丁(以下、冲方) まずは漫画が先で、その後、劇場版の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(1995)を見ました。作家デビューのちょっと前のことだったので、感動はしましたけど、どちらかというと勉強になりましたね。作家修行時代最大の教科書のひとつと言ってもいいかもしれません。そんなに簡単に消化できない(笑)。

--当時の修行時代には、どんなことをされていたのですか?

冲方 学んで、知識を得て、技術を身につけて、それを自分の感性に従って発揮するにはどうしたらいいかということを試行錯誤していました。そうしないと食っていけないぞと。

--元々、こうした近未来SFのような設定の作品はお好きだったんですか?

冲方 特にこのジャンルがというよりも、それぞれのジャンルですぐれた傑作からなんとかしてそのエキスを吸ってやろうと。そのうちの、「SF・ディテクティブ・サイバーパンク・サイボーグアクション」の筆頭だなあと思います(笑)。

--まさにそうですね(笑)。

冲方 ていうか、ほかにないくらいですけどね(笑)。

--その時のファーストインプレッションはどんなものでしたでしょうか?

冲方 「ここまでやれるんだな」というのが最初の印象です。漫画でもアニメでも、ここまで深くテーマを掘れるし、キャラクターを繊細に描けるし、かつ超複雑な世界観を、漫画の場合は細密画のように散りばめていって、映画版の場合、エキスだけをスパッと抽出して、非常に抽象的なイマジネーションでもって統一しているという、それが非常に勉強になりましたね。

--その後の冲方さんの創作にもだいぶ影響を与えたんじゃないですか?

冲方 結構そうですね。情報密度の基準が、あの作品のせいで人よりずれちゃったなあ(笑)。普通の気分で書いてても、一般の読者の方からは「密度が濃い」って言われちゃう(笑)。密度という点で言えば、「攻殻機動隊」をはじめとした士郎正宗先生の影響はありますね。

出典: akiba-souken.com

一大コンテンツである『攻殻機動隊』を誰かがつなげなくてはならないという使命感

冲方は『攻殻機動隊ARISE』の脚本依頼が来たときの心境について、「好きだった攻殻機動隊の仕事を断れなかった」「一大コンテンツである『攻殻機動隊』を誰かがつなげなくてはならないという使命感があった」と答えている。

--そんな冲方さんに「攻殻機動隊ARISE」(2013-2014)の脚本の依頼が来たときの心境はどんなものだったんでしょう。

冲方 いろんな意味で「逃げられない、どうしよう」って思いました。受けざるを得ない感じがしましたね。日ごろから「攻殻好き好き」言ってたので、「いや、攻殻はちょっと」って言えるわけないしなあとか。あと、勉強させていただいた恩返しっていう意味合いもありました。「攻殻機動隊」って単発の作品じゃないんですよね。「攻殻機動隊」自体がひとつのジャンルというかコンテンツになってますので、今後とも続いていくだろうという思いがありました。誰かがバトンを受け取って次に渡さないと、バトンとバトンの距離が広くなってしまって、作品世界と現実世界との隔たりができてしまう。ちゃんと誰かがつながないとダメだろうというので、覚悟を決めました。後から聞いたら「ハリウッド版」(編注:「ゴースト・イン・ザ・シェル」(2017))の企画もあったとかで、先に言えよ、って感じなんですけど(笑)。

--結構、使命感を感じてたんですね。

冲方 使命感とか持たないと、こんな面倒くさい作品できませんよ(笑)。

出典: akiba-souken.com

プロット作成における苦労と原作漫画の前日譚という時系列設定に至った経緯

冲方は『攻殻機動隊ARISE』のプロット作成における苦労と、原作漫画『攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL』の前日譚という時系列設定に至った経緯について下記のように語っている。

--「攻殻機動隊ARISE」の企画がスタートした頃にはすでに、「攻殻機動隊」って、ファンも含めて、もうある種のイメージが固まっていたと思います。そのイメージをまずは壊しにいくという作業をなされたんじゃないかと思いますが。

冲方 そうなんですよね。しかも、別の意味で単発ではない、「オムニバス形式の連作」で、監督がひとりひとり違うんだけど、話としてはつながるようにしてくれっていう。バカヤローって話ですよね(笑)。自分が何を言っているのかわかってるんだろうか、っていう気分でしたけど。それも、しょうがない、受け入れようと(笑)。いろんなものを受け入れてやらざるを得ないって思ったんですけど、それをするだけの価値がある作品だし、作るだけでも勉強になりました。なので、最終的には、やれてよかったと思ってます。

--おそらく、プロット作成段階から、相当なご苦労があったんではないかと思いますが。

冲方 もう忘れました(笑)。

--「攻殻機動隊ARISE」は、時系列的には、士郎先生の原作漫画「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」の冒頭につながるという前日譚を描いた作品ですが、そのあたりの設定自体は最初から提示されていたんですか?

冲方 いえ、そこにたどり着くのが大変だったという感じですね。最初はもう、てんでバラバラな意見が飛び交うカオスな会議でしたので。取りあえず僕のほうでも、こんなことやったらいいんじゃないかとか、いろいろ提案をしていくうちに、「今やらないと、今後やれなくなることって何だ?」という話になり、だったら「過去編」だろうと。もしかすると、この後、さらなる続編が作られていったときに、(草薙)素子っていう存在がいなくなるかもしれないし、書くなら今しかないんじゃない?という話になっていきました。

--なるほど。そこで初めて「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」の最初のシーンにつながっていくお話になったと。

出典: akiba-souken.com

「ファイア・スターター」という未知の存在と、「疑似記憶」というデータの世界を登場させた理由

冲方は「ファイア・スターター」という未知の見えない存在と、「疑似記憶」という「人とモノ」以外の世界を登場させた理由について下記のように語っている。

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