攻殻機動隊 SAC_2045(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 SAC_2045』とは、Netflixで配信されているSFアニメシリーズ。『攻殻機動隊』シリーズでは史上初となるフル3DCG作品である。各メンバーが卓越したスキルを有する内務省元公安9課の「少佐」こと草薙素子はアメリカで傭兵となっていた。AIの急速進化の反動で世界的に持続可能性を追及した産業戦争’サスティナブル・ウォー’が勃発する中、驚異的な身体能力を持つ新人類’ポスト・ヒューマン’が出現。少佐たち元9課のメンバーは、新人類の謎に迫るうち、部隊再編を余儀なくされていく。

『攻殻機動隊 SAC_2045』の概要

『攻殻機動隊 SAC_2045』(Ghost in the Shell: SAC_2045)とは、Netflixで完全独占配信されているSFアニメシリーズ。2020年4月よりシーズン1、2022年5月よりシーズン2が配信されている。士郎正宗によるSF漫画(講談社)、アニメである『攻殻機動隊』の系列作品としては史上初となるフル3DCG作品である。テレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(S.A.C.)シリーズを手掛けた神山健治と、映画『APPLESEED』の荒牧伸志の二人が制作を務めた。キャラクターデザインはロシア出身のイラストレーター、イリヤ・クブシノブが担当している。シーズン1については、総集編である『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』が映画化され、2021年11月12日~25日の2週間限定で劇場公開された。2022年5月9日からはNetflixでの配信も開始されている。

AIが急速的進化を遂げたことにより、持続可能性をめぐる産業紛争が勃発し、それが世界的な金融危機を経て国際紛争にまで発展した2045年の架空の世界を舞台としている。人間が機械やAIと融合する義体化・電脳化が当たり前となったディストピアにおいて、日本の政府機関である内務省公安9課のメンバーは、国家を揺るがすサイバー犯罪に日々立ち向っていた。しかし、前総理大臣の意向で9課は解散し、指揮官の「少佐」こと草薙素子とその隊員らは新メンバーのスタンを加えアメリカでの傭兵生活を送ることになる。そんな中、アメリカ国家安全保障局のエージェントであるジョン・スミスから極秘のデータ回収任務を引き受けたことがきっかけとなり、驚異的な身体能力と頭脳を有する新人類’ポスト・ヒューマン’との戦いに巻き込まれていくのであった。

本作においては、作品にリアリティを設けるため、現実世界とのリンクとなるような用語が数多く用いられている。デフォルト、サスティナブル、ダークウェブ、仮想通貨、ドローン、AI、ポストヒューマンなどがその最たる例で、S.A.C.シリーズの前作制作時である2004年以降に新たに流行したワードへの更新が見られる。また、作品がフル3DCGとなったのは、前作制作時のキャラクターデザイン制作陣の収集をかけられなかったという経緯によるとされているが、電脳世界を表現するため、ウェブについては昨今のAIブームにより登場したメタバースを彷彿とさせる描写となっている。作中のストーリー描写においては、Webやスマホの普及による技術革新を迎えつつある現実世界とのリンクを意識して、学校の中で生徒らがスマートフォンやタブレットを持ち歩く様子や、街中で人々がアプリを使いこなす場面も見受けられる。

『攻殻機動隊 SAC_2045』のあらすじ・ストーリー

NO NOISE NO LIFE / 持続可能戦争

アメリカが用いたあるAIによって、2045年に世界的な金融危機である世界同時デフォルトが発生し、一瞬にして世界経済が破綻してしまう。貨幣や仮想通貨は一瞬にしてその価値を失い、一方でAIはより高度に発展。世界は崩壊へとカウントダウンを始めていたが、誰もがその危機感を実感できないでいた。世界では計画的かつ持続可能な戦争「サスティナブル・ウォー」が発生し、各地で内戦やレイドが勃発。世界同時デフォルトを契機として、その戦火は先進国であるアメリカにも及んでいた。

卓越した電脳、戦闘能力を誇る内務省元公安9課指揮官の「少佐」こと草薙素子は、同課の男性サイボーグのバトーやイシカワ、現地で遭遇した陽気な男性スタンダードと共に傭兵部隊を結成していた。彼らは「ゴースト」と名乗り、アメリカの西海岸でレイドを未然に防ぐため、民間傭兵会社から委託を受け、掃討作戦の任務遂行に没頭していたのである。その一方、元9課で刑事の経歴を持つ男性トグサは、一人日本に残り、「少佐」率いる傭兵部隊「ゴースト」の動向を探りながら、治安が悪化の一途をたどる日本各地において警備業務に当たっていた。そんな中、元9課の課長である荒巻大輔から、現在の総理大臣である久利須・大友・帝都が9課を再編しようとしているとの情報を入手し、元9課のメンバーの招集を命じられる。

その少し前、アメリカ西海岸では、少佐たちがレイディストたちの攻撃を完全に防ぎきれなかったことから、ドローンの放ったミサイルがビバリーヒルズの豪邸に直撃してしまう。その情報を聞きつけて援護に向かってきたアメリカ軍の特殊部隊と、部隊を指揮するジョン・スミスと名乗る黒服の男性により失敗をとがめられた少佐たちは、そのまま彼らに連行されてしまった。連行された彼らは、半強制的にスミスからの依頼を引き受けることとなり、作戦決行日まで只管予行演習や訓練を行うことになる。

同じ頃、元9課の面々を探すトグサは、少佐たちがロサンゼルスを拠点としたPMC(民間軍事会社)である「オブシディアン」に所属していることを知る。そこで少佐たちを追ってロサンゼルスへ向かい、オブシディアンの社長から少佐たちが行方不明になったことを聞き出した。ロサンゼルスを見て回るも、戦闘があったとされる場所が短期間で綺麗に片付けられていたことから、少佐たちをさらった組織が想像以上に大きな組織であることを確信する。そして、最後に少佐たちが目撃された位置を特定すると、待機を命じられていた思考戦車タチコマと合流した。そこで少佐たちが連行される現地での映像を確認した彼は、元9課のどのメンバーとも顔が一致しない黒服の男がスミスであることを突き止める。敵の正体を知るため自身を囮に使った作戦を実行しようと決め、タチコマに自分の位置情報をリンクさせたうえで、スミスが少佐たちを連行する映像をネットにアップロードするよう命じた。すると、アップロードされた動画は瞬く間に削除され、何者かの追跡を受け始める。何とか追ってきたエージェント二人をうち倒したトグサは、そこに現れたスミスから情報を聞き出すことに成功。彼らが、NSA(国家安全保障局)に所属している事や、少佐たちが国家の存亡にかかわる極秘任務中であることを聞かされると、この件からは手を引くよう念を押された。しかし、引き下がれないトグサはタチコマたちと共に、引き続き少佐の行方を追うことになった。

他方、トグサからスミスの話した情報について知らされた荒巻は、昔の縁を頼りにNSAに所属する女部長との連絡を取付け、何とか少佐たちを任務から解放してくれるよう要請する。しかし、強力な権限を持つ部長ですら任務に関して介入することができず、上層部は任務終了後に少佐たちごと情報を抹消するつもりであるはずだと告げられる。この任務を中止できるのは大統領をおいて他にいないと悟った彼は、帝都総理と会談し大統領へ直訴するように懇願した。少佐たちの重要性を理解した帝都総理はこれを承諾し、荒巻は総理からの委任状を受けてアメリカ大統領の下へと向かった。

同じ頃、作戦決行日を迎えた少佐たちは、マイクロマシンで大成功した実業家パトリック・ヒュージの捕獲を命じられ、ビバリーヒルズでミサイルの直撃した豪邸へと潜入する。うまくターゲットのヒュージの下へとたどり着けたものの、ヒュージは人間の形をした人間ではない’何か’だった。格闘技も銃弾も全て躱してしまう脅威の身体能力を誇る’それ’は「ポスト・ヒューマン」と呼ばれる新人類。初のポスト・ヒューマンとの戦闘に苦戦を強いられる少佐たちの下にタチコマに乗ったトグサが現れ、電磁ネットでヒュージの動きを封じた。何とかヒュージを戦闘不能に追い込んだ少佐は、彼の電脳をハッキングしようとするが、自分の電脳と彼の電脳をリンクさせる途中に異常を感じ、遠方で待機していた遠距離射撃を得意とするサイトーに命じて即座にヒュージを射殺させた。

そこに捕獲対象が殺されたとの情報を聞きつけたスミスが現れ、任務が失敗に終わったとして少佐たちを始末しようとする。しかし、同じタイミングで現場に現れた荒巻が大統領の委任状を手にしているのを目に入れると、少佐たちの始末を中止した。その後、荒巻の奮闘もあって新生9課を結成できることになった少佐たち。少佐は、元9課のメンバーではないスタンダードに疑似記憶を植え付けると、彼は少佐たちの下から去っていった。ようやく再会を果たした公安9課の面々は、この時になってようやくスミスからポスト・ヒューマンの実態について知らされることになる。

NOSTALSIA / すべてがNになる

スミスによると、少佐たちが捕獲に失敗して殺害したヒュージは、スーパーコンピューターでも太刀打ちできない驚異の知能と身体能力を有する謎の生命体であるポスト・ヒューマンの一人であり、アメリカはその正体を知って対策を立てるために彼を捕獲しようとしていたのだという。アメリカがこれまでに捕獲に成功した唯一の個体はゲイリー・ハーツと呼ばれる元海軍の軍人であり、彼は元々は仲間想いの大らかな人柄であってにも関わらず、1週間ほど高熱を出したのちに妻を殺害し、核ミサイル施設を襲撃していた。ハーツは、核ミサイル施設で多数の兵士の電脳を同時にハッキングして予め銃弾の軌道を読み、発射された銃弾を全て躱して兵士たちを殺害。しかし、ミサイル発射寸前のところで、跳弾を受けて大脳を損傷し、そのままNSAの施設に収容されるに至った。そして、超高性能の処理速度を持った新人類たちを米政府はポスト・ヒューマンと呼ぶようになり、その行動原理は揃って既存体制の転覆にあると確信するに至る。大国の始めたサスティナブル・ウォーは制御可能を条件としており、戦争従事者以外に影響を及ぼさないよう行われていた。しかし、ポスト・ヒューマンの存在が民間の武装集団や内乱を煽ったことで、世界同時デフォルトが起きる制御不能な状態へと傾いてしまったのだ。

施設に収容され、大脳を損傷して意思の疎通ができないハーツはコードのようなものを定期的に送信し意思の疎通を図ろうとしていた。隔離施設の職員はそのコードを解析しようとしていたが、実はそれはハーツが放ったウイルスプログラムで、起動条件が揃ったことで施設のシステムはハーツに乗っ取られてしまう。そして、施設内のドローンが暴走し始め、職員を襲い始めた。タチコマの一体がプログラムを解析しようと施設のシステムに接続するが、危うくハーツに乗っ取られそうになり、他のタチコマがシステムを断線したことで難を逃れた。大量のドローンを捌く9課のメンバーたちであったが、次々と押し寄せてくるドローンに手が回らないと感じた少佐はハーツ殺害を命じるようスミスに促す。スミスは状況を打破するには仕方がないことから渋々了承し、これによりバトーがハーツを殺害した。

少佐たちが帰国すると近接戦を得意とするパズや爆弾処理を得意とするボーマなど、元9課のメンバーが日本の首相官邸に集まっていた。少佐は帝都総理に対し公安9課としてもう一度再編するためには相応の予算が必要であると主張する。しかし、その話にアメリカから派遣されたスミスが割り込み、ポスト・ヒューマンはアメリカ主導で全人類が打ち倒すべき共通の敵だと反論した。そして、ハーツの例から見る覚醒過程の例から、既にアメリカではパシフィックリムで14人のポスト・ヒューマンを特定しており、そのうち3人が日本にいると語った。その上でスミスは少佐たちにその3人の捕獲を命じるが、アメリカの独善的な態度と自分たちの参加意義の方向性から彼と対立し、結果として任務にはメンバー各々が自由意思で向かうことになった。

2日後、集合したメンバーの中には新たな整備士プリンが加わっており、バトーはタチコマのメンテナンスに長けた彼女を信頼する。一方、トグサは少佐と共に行動することを望んでおり、少佐に任務への参加の可否を訪ねる。自由意志を尊重したい草薙であったが、トグサはメンバーの中で唯一義体化しておらず、また妻帯者であることから、総理官邸を盗聴していた相手の特定を合否のテストにすることとした。官邸内のスパイドローンを発見したトグサはドローンを通じて盗聴していた男たちを誘き出すことに成功。さらにその男たちに擬似記憶を噛ませ、彼らの所属が日本からアメリカの立場を優位に保持したい日米安保条約の対策班であることが分かり、同時にスミスの自分に関する記憶の削除にも成功した。そして、アメリカの傘下ではなく、あくまで独立した日本の組織として、日本のために活躍する9課が見たいとアプローチした。

こうして参加意思のある者のみが首相官邸に集まる日、トグサの熱意と行動に惹かれた9人のメンバーが全員首相官邸に集まり、新生公安9課が始動。そんな中元プロボクサーでありポスト・ヒューマン疑惑のある矢口サンジが白昼に在留管理局事務次官を殺害する事件が発生した。頭部打撲という死因と、プリンが警視庁から盗み出したデータから矢口は少なくとも90件を超える殺人事件を起こした可能性が浮上。その被害者全員が、サスティナブル・ウォーの余波として廃れた東京を復興させるとの名目で秘密裏に日本に来た移民でありながら、不正に生活保護を受給していた不法移民であることが分かった。このことから、矢口は東京復興を名目に不正を行っている人間に私刑を下しているのではないかと少佐は考えるようになる。その後、総理の義父の企業が東京復興の仕事を天下りを条件に引き受けていると知った9課は、次の標的が総理の義父である危険性を察知し護衛に向かうが、一足遅く矢口は義父を殺害。

これを受け、自らが囮になることで矢口の行動を阻止しようと考えた総理は、東京復興委員会の責任者に就任するニュースを流した。矢口が総理の前に現れ、総理に行動の目的を聞くと総理は日本を立て直すために命をかけると熱弁する。矢口の動きが止まったところに少佐とバトーが駆けつけ彼を捕獲すると、スミスが矢口を連行した。そんな中、空港内で300万人のハッカーによるクラッキングを受け、男が電脳を焼かれるという殺人事件が発生する。事件の捜査を進めていくと、「シンクポル」と言う不特定多数の人間による投票で他者を裁くシステムによる殺人であることがわかり、そのアプリを運用していた高校生に少佐は事情聴取した。しかし、その少年は製作者ではなく、製作済のアプリを公開しただけの存在であった。プログラムの利用停止による対策は行えたものの、製作者であるとされる第二のポスト・ヒューマンの手口は脅威であった。

二人目のポスト・ヒューマンとして捜査線上に上がったシマムラタカシは中学2年生であり、覚醒後に学内で女子生徒に性的暴力を振るっていた教師をシンクポルで殺害した後行方不明となっていた。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』にはまっていた彼が覚醒後に残したコードを一人で解析しようとしたトグサは、そのコードの引き起こす作用により一時昏倒してしまう。しかし、彼の調べでシマムラが幼少時代を京都の片田舎で過ごしていたことがわかり、トグサとバトーはその村の捜査に当たった。そこは既に廃村となり何の証拠も残っていなかったが、なぜかトグサだけが過去の映像を見ることができ、かつてその村でシマムラが体験した壮絶な過去を追体験する。シマムラは、自分たちにとって不利益となるような人間を拳銃で射殺し山に埋めていた悪徳警官らに従姉妹を殺され、『1984年』を彼に授けてくれた元空挺部隊の男に助けられていた。しかし、その追体験を現在のものであるかのように感じ取ったトグサは、元空挺部隊の男とトラックに乗り込む今の姿のシマムラに一緒に乗るか否か尋ねられる。トグサの見ているものが何も見えず、彼の行動が理解できないバトーは呆れた様子でその光景を眺めていた。しかし、バトーが目を離した一瞬の間に、トグサは目の前から消えてしまった。

N-POWER / 独立国家の作り方

失踪したトグサの行方を追う9課の面々は、その過程でポスト・ヒューマンに関する秘密を握る一人のロシア人がポスト・ヒューマンの脅威にさらされていることを知る。そのロシア人の保護に向かったバトーとプリンであったが、途中で元数学オリンピックチャンピオンで3人目のポスト・ヒューマンであるミズカネスズカの襲撃を受ける。彼女は電脳ハッキングにより二人の目を攪乱して潜伏しつつ、捜査秘密をも入手しようとしていた。ミズカネの存在に気付いた二人は彼女との戦闘を余儀なくされ、そこにミズカネとロシア人を捕えようとするアメリカ軍特殊部隊が現れたことで、事態は混迷を極めてゆく。ミズカネは逃走し、バトーたちは何とかロシア人の身柄を確保することに成功した。

拠店へと戻り、ロシア人の電脳からポスト・ヒューマンに関する情報を解析するプリンたち。そこに記されたコード:1A84に含まれる情報から、衝撃の事実が浮かび上がってきた。なんと、世界同時デフォルトの原因となったAIプログラムを開発したのは、他でもないアメリカだったのだ。アメリカは、自国の利益になるように金融市場のドルの相場を操作しようともくろんで、そのAIを開発していたのだった。陰謀をめぐらせるアメリカのスパイが国内に潜伏していることが疑われるようになり、その過程でマサチューセッツ工科大学(MIT)を首席で卒業していたプリンに容疑がかけられる。少佐はタチコマたちを使ってプリンの過去を探らせることにした。そんな中、プリンが突如覚醒し、首相官邸を突然襲撃して総理のSPの一人を射殺するという事件が勃発する。覚醒して間もなかった彼女は、自分の身体を思うように制御できず、その場で残ったSPらに射殺されてしまった。

やはりプリンが工作員だったのではないかと考えるタチコマたちが彼女の身辺調査をしていくうち、潜入した彼女の下宿先の冷蔵庫内に保存された秘密のデータを発見する。そこには、プリンの記憶領域から切り離された彼女の過去にまつわる膨大なデータが保存されていたのだ。彼女の過去を紐解いていくうち、彼女が実はバトーが20年ほど前に解決した江崎一家殺人事件の生き残りであったことが判明する。事件当時彼女を介抱していたバトーに憧れ、彼と同じ職場で働くために、彼女は電脳工学のメッカとされるMITに入学し、首席で卒業して9課に配属されていたのであった。彼女が不憫だと独立思考するタチコマたちは、彼女の生前の記憶データとパーソナリティに関するデータを内務省内に保管されている別の義体に埋め込んで彼女を再生させることにした。同時に、自分たちが彼女を蘇らせたという記憶に関しては、独断での行動であったことから抹消することにした。その後、ビルの一室で新たな義体となったプリンは目覚める。その後、彼女が撃ち殺したSPこそがアメリカの回し者であったことが総理により判明し、彼女の容疑は晴らされるのであった。

他方、昏倒していたトグサが目覚めると、そこは自分の記憶の中だった。過去の記憶の中を彷徨ううちに、彼は突如として2045年の内戦で荒廃した東京で目を覚ます。ネットにアクセスできず、自分の位置情報を把握できないでいた彼は、付近を探索するうちに公衆電話を見つけ、バトーとの連絡を取ることに成功。彼からの連絡をうけた9課の面々は、逆探知により彼の居場所を突き止め、東京へ向かうことになった。一方、福岡に残った少佐は、ポスト・ヒューマンがアメリカの原子力潜水艦を奪ったことを知らされる。その頃、東京に向かっていたバトーたちは、そこで自らを「N」と名乗る難民集団と、介入するアメリカの部隊に遭遇するのであった。

DEMI DEWS / 神へと進化するモノたち

「N」を率いていたのは他でもないシマムラだった。サスティナブル・ウォーにより特異点と化した東京で、新たなレイドが始まろうとしていた。東京にミズカネが潜伏しているとの情報を聞きつけた米軍の飛行機が迫る中、バトーたちは姿を隠してその様子を探り、着陸地点へと向かうことになった。米軍が潜伏した建物の様子を外部から窺っていると、電脳ハッキングされたのか米軍兵士たちが笑いながら同士討ちを始めた。そして、戦いから逃れて落下した兵士が水路を流されていくのを辿っていくと、それは旧「ゴースト」のメンバーであるスタンダードだった。

一方、9課のメンバーが新東京に集結しつつあるという情報をタチコマたちから聞きつけたプリンは、自力で新東京へと向かう。しかし、新東京へと向かう橋が陸上自衛隊により封鎖されていたため、足止めされてしまう。そこにシマムラが現れ、一瞬にして陸自の兵隊たちの電脳をハッキングしてしまう。少佐がバトーたちとの合流を果たす中、プリンも彼の後に続いて新東京への潜入を果たし、同行者と別れた。しかし、その後同行者は101号室と呼ばれる場所へ連行されてしまった。

同じ頃、バトーたちはスタンダードから情報の提供を受けていた。それによると、米軍はポスト・ヒューマンが1日のうち15分だけ眠る性質を有しているとの情報の真偽を確かめに来ているとのことだった。加えて、シマムラとミズカネは米軍と協定を結んでおり、万一シマムラが米軍に殺された場合はミズカネが、ミズカネが殺された場合はシマムラが新東京から核を発射し、両者とも殺されてしまった場合は自動的に核が発射される仕組みとなっているとのことだった。結局、「N」に手を出さなければ核攻撃はなされないという取り決めであったが、レイドを企てる「N」を放置しておくわけにもいかず、また奪われた原子力潜水艦のコントロールを取り戻したい米軍はミズカネとシマムラの捕獲に躍起になっていた。核を野放しにはしておけないと考えたトグサたちは、手分けして「N」が核燃料を回収していると思われる地点に赴くこととなった。道中、トグサは死んだはずのプリンによく似た人物を目撃したが、タチコマたちに尋ねてもプリンに関する記憶を抹消していた彼らからの反応はなかった。

回収地点にたどり着いていたイシカワは、そこで「N」の自衛団と遭遇し、襲撃を受ける。しかし何とかこれを撃退して核発射のスイッチの回収に成功した。その後バトーたちと合流し、そのままミズカネの確保に向けて作戦を変更することとなった。その後、ポスト・ヒューマンたちが原子力潜水艦に超長波を送るため、ビルや橋の鉄骨の上という高い居場所を移動していることを突き止めたバトーたちは、眠っていたミズカネを発見する。しかし逃げられてしまい、そこに合流した少佐と共にミズカネを追いかけることとなった。同じ頃、新東京の海岸線には米軍の新手が到着し、部隊は二手に分かれてシマムラとミズカネの追跡を開始する。9課のメンバーも二手に分かれてシマムラとミズカネを追跡することとなった。少佐とバトーはバイクに乗って逃走するミズカネにようやく追いついたが、反対側から米軍が進行してきてミズカネを挟み撃ちする形となる。睡眠ガスを用いてミズカネを捕獲することに成功した米軍であったが、9課とミズカネの取り合いになり、仲間をミズカネにより減らされていた米軍は交戦停止を申し入れる。しかし、ミズカネが目を覚まして逃走しようとしたため、再び9課と米軍の戦闘が生じる中で射殺されてしまった。

一方、単独でシマムラとの接触に成功していたプリンは、橋の上からシマムラに突き落とされてしまう。完全義体となっていたプリンはもちこたえた。その後、橋の上の高い位置で眠りについたシマムラは、ミズカネの死に気づいていないようであった。9課の面々はシマムラの下へとたどり着くが、彼は目を覚ましてしまう。彼は米軍を一人で制圧し、そこに彼に共感したプリンも現れて助太刀した。そして、シマムラはタチコマをハッキングすると、思いもよらない宣言を始める。「戦争は平和であり自由は屈従である。無知は力なり。ただだまって我々のやることを見ていろ。要求はそれだけだったのに。私はルールを変更する。まずは核ミサイルの発射権限を300万人のNに移譲する。僕が死んだ場合、核ミサイルが発射されるルールを破棄し、僕自身も発射権限を放棄する。」と述べたのだ。このルール変更により、バトーの他、米軍の手のひらに突如核発射のスイッチが現れ、フィルタリングは解除されていた。想定外の事態に、少佐と9課のメンバーは難しい選択を迫られることになり、操られたタチコマは、内部にトグサを乗せたままシマムラと同行していった。

こうなるとシマムラを捕えて全員のミサイル発射権限を除去させるしかないと考えた少佐たちは、再びシマムラを追うことになっていく。一方、タチコマから解放されたトグサは、シマムラが全ての人間が等しく幸せである世界を願っていることを知る。「トグサくんもNになればわかるよ」と言い残すと、タチコマはシマムラと共に扉の向こうへ消えていった。そして、トグサは自分の手のひらの上にも核発射ボタンが表示されているのを見て、自らも「N」となったことを悟る。同じ頃、9課のメンバーからルール変更の件について連絡を受けていた荒巻は、対策について電脳通信で総理と話していた。そして、直接首相官邸に向かうべく車に乗り込むが、乗り込んだ車は直後に爆破され、大破してしまった。しかし、すんでのところでタチコマに乗りこんでいた荒巻は、何とか急場をしのいだ。

一方、ミズカネの根城に到達したボーマとプリンは、ミズカネが用いていたデバイスを発見する。これを利用して米軍が利用しているデバイス「ペンタゴン」のシステムに侵入しようと試みるも、逆にペンタゴンからの反撃を受けてしまう。米軍が核の脅威を手にした「N」を排除するため、致死性のスマートガスを東京に散布させようとしていることを何とか少佐に報告する。しかし、プリンの傍には脳殻を破壊されたボーマと、その脳を持つシマムラが立っていた。プリンからの報告を受けた少佐は荒巻に事態を知らせようとするが、通信が繋がらず、総理に回線を繋ぎ事態を共有する。そして、ボーマからの接続が切れ、ミズカネの根城からトクザ機の信号が出ていることで、シマムラがプリンの方にいると察知した。

同じ頃、シマムラと分かれ施設を彷徨っていたトグサは、偶然にも原潜を発見し乗り込んでいた。そこには乗組員の死体とミズカネのリモート義体があり、リモート義体は突如トグサを襲ってくる。なんとか抑えることに成功したトグサは、生き延びた荒巻に情報を共有した。他方、ミズカネの根城に到着した少佐たちはシマムラと遭遇していた。しかし、そこにシマムラに寝返ったプリンが現れる。少佐とバトーを先に行かせプリンをくい止めるイシカワであったが、プリンに敵わないと判断し自爆してしまう。そしてプリンを狙撃しようとしていたサイトーもハッキングにより自分を銃撃してしまい、命を落とした。残された少佐とバトーはシマムラを追うが、そこに雪のようなものが舞い落ちてきた。それは、米軍が散布したスマートガスだったのだ。そして、少佐はシマムラと、バトーはプリンと対峙する。シマムラは自分で少佐に殺されることを選び、彼の死に気づいた300万人の「N」が掌のスイッチを押したことで、潜水艦内で停止していたミズカネの義体が動き出し、核を発射してしまう。少佐は、スマートガスの影響で倒れてしまうのであった。

その後少佐が目を覚ますと、そこは公安9課の拠点だった。何事もなかったかのように平穏な日々を過ごすメンバーたち。シマムラは無事に自宅に戻ったとの情報を知らされ、少佐は「N」に関する事件の功績で勲章を授与される予定となっていた。しかし、少佐はただ一人、この状態に違和感を抱き、真相を探り始める。少佐が施設内を探っていると、突如視界が暗転し、また目を覚ました直後の状態に巻き戻されていた。それが思考迷路のループであることを突き止めた彼女は、現実世界へと戻るための糸口を探り始める。「私がここに存在していない。では私の体はどこにある?」と少佐が自問していると、また視界が暗転し、今度はカプセルの中で目覚めた。彼女がカプセルの外に出ると、そこには無数のカプセルが並んでいた。そこで、少佐はプリンに遭遇する。現状を訪ねる少佐に対し、プリンは「核ミサイルはある人にとっては発射され、ある人にとっては回避されました。Nとは、現実を生きながら摩擦の無いもう一つの現実を生きられるようになった人たちのことです。」と語った。

彼女に導かれて少佐がある部屋に向かうと、そこには無数のプラグに繋がれたシマムラの姿があった。彼は世界中の人々をダブルシンクにする作業に没頭していた。彼は少佐たちが最高機密に関する通信をしたことから、米軍がスマートガスを散布する1時間前にアメリカの主要機関のネットワーク全てを掌握し、「N」にすることに成功していたのだった。いずれにしてもポスト・ヒューマンの前に人類は敗れたことを少佐が伝えると、シマムラは少佐だけは「N」の見る夢から覚めることができたと告げた。そして、少佐が自分の下を訪ねてくることを想定していなかったシマムラは、彼がつながれているプラグを抜くことで、世界は元の状態に戻るのだと言う。少佐は少し考えた後、プラグを抜き取るのだった。

その数か月後、9課は日常を取り戻し、新メンバーとしてプリンを正式に迎えていた。相変わらず離婚していない様子のトグサと、ため息をつくバトー。屋上へ向かったバトーと少佐の眼下には、復興した新東京の街並みが広がっていた。「ネットは広大ね」という少佐に対し、「行くのか?また、次に会う時の合言葉を決めておくか。」と語り掛けるバトー。「コード:1A84。忘れないで、私たちがこの時代に存在していたことを」と答えると、少佐はネットの海に飛び降りていった。

『攻殻機動隊 SAC_2045』の登場人物・キャラクター

元公安9課のメンバー

草薙素子

声:田中敦子
元公安9課の現場指揮官。脳と脊髄の一部を除いて全身義体化したサイボーグ。9課での呼び名は「少佐」である。

荒巻大輔

声:阪脩→中博史
元公安9課の課長。元々陸自の情報部に所属しており、現在でも軍部には太いパイプを持つ。義体化は行っていない。

バトー

声: 大塚明夫
元公安9課で、男性型高出力義体を持つパワー型サイボーグ。過去に起きた江崎一家の殺人事件の際、現場に取り残された江崎プリンを保護したことから、彼女に慕われている。

トグサ

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『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作とし、1995年に公開された日本のアニメ映画である。AD2029年、公安九課のリーダー草薙素子が事件を追う中、正体不明のハッカー“人形使い”と遭遇する。押井守監督版『攻殻機動隊』シリーズの1つであり、続編の『イノセンス』は2004年に公開された。ガイノイド“ハダリ”の暴走した原因を九課のバトーとトグサが追う。

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GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年11月18日公開)は、士郎正宗原作のSF漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を映画化したアニメーション作品。製作会社はProduction I.G 。 その革新的ともいえるアニメーション技術から映像面で評価が高い本作だが、キャラクターの巧みな台詞回しもその人気の一因だ。当記事では、ファンの間で特に知られている名言・名セリフを紹介する。

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攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』とは、士郎正宗が原作、神山健治が監督を務めたSFアニメ作品。2002年から2003年まで日本テレビ系列で放送された。舞台は、西暦2030年の日本。主人公の草薙素子(くさなぎ もとこ)が属する国の秘密組織「公安9課」が様々な事件を解決しながら「一つの陰謀」を明かしていく様子が描かれている。

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攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(S.A.C. SSS)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(S.A.C. SSS)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』とは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』に続く長編SFアニメ作品である。原作は士郎正宗、監督は神山健治が務める。2006年にパーフェクト・チョイスで公開され、2011年には劇場で公開された。 主人公である草薙素子が公安9課を去り、トグサが新隊長として事件解決に挑む。現代にも通ずる社会問題と、その裏で動く組織と対峙するハードボイルドな作品である。

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攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』とは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の続編であるSFアニメ作品。原作は士郎正宗、監督は神山健治が務める。本作はストーリーコンセプトとして、劇場作品『イノセンス』の押井守が参加している。2004年からパーフェクト・チョイスで放送され、2005年には日本テレビ系列で放送された。主人公である草薙素子が所属する公安9課が「個別の十一人」と名乗るテロ集団と対峙する。テロリストの影で動く大きな組織に立ち向かうハードボイルドな9課の姿が描かれている。

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攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE(DUAL DEVICE)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE(DUAL DEVICE)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』とは、『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の続編に位置づけられるサイバーパンク漫画である。士郎正宗が1997年7月~9月までに『週刊ヤングマガジン』で「DUAL DEVICE」という副題で連載していた作品群に、大幅加筆修正を加え単行本として発行された。ネットも普及していない時代に、ネット全盛の世界感を描いた事で多くのSFファンを魅了した攻殻機動隊シリーズの中で、第一巻を超えると言われる難解さが今作の魅力ともいえる。

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攻殻機動隊ARISE(アライズ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE(アライズ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE(Ghost in the Shell: Arise)とは、Production I.Gが制作を務める、士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」を原作としたアニメ作品である。本作は主人公の草薙素子が公安9課を結成する前の物語に焦点が当てられており、バトーやトグサら9課の仲間たちがどのような形で素子と出会い、彼女と行動するようになったかが描かれているのが特徴となっている。

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攻殻機動隊ARISE、攻殻機動隊 新劇場版(黄瀬・冲方版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE、攻殻機動隊 新劇場版(黄瀬・冲方版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊ARISE』は2013年6月に公開された劇場用アニメ。公安9課結束以前の物語で、正体不明のハッカー・ファイアスターターを巡る事件を追う。『攻殻機動隊 新劇場版』は『攻殻機動隊ARISE』の続編で2015年6月全国公開。ファイアスターターと草薙素子の出生の秘密が繋がっていくストーリー。 黄瀬和哉総監督・冲方丁脚本版『攻殻機動隊』シリーズ。

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【必見】高評価おすすめアニメまとめ【攻殻機動隊・コードギアスなど】

【必見】高評価おすすめアニメまとめ【攻殻機動隊・コードギアスなど】

アニメ大国と言われる日本。毎年数多くのアニメが制作されており、何を見たらいいのか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。そんな数々のアニメの中でも、長年にわたり高い評価を得ている作品を、あらすじ・レビューとともにまとめました。これさえ見ておけば間違いない、見て損はないという作品ばかりです!

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