幽遊白書の桑原和真は桑田選手・清原選手に影響を及ぼす男だった
冨樫義博の人気マンガ・幽遊白書。主人公である浦飯幽助にライバル心を燃やす、桑原和真という登場人物がいる。彼の名前の由来はプロ野球選手の桑田選手・清原選手であるのだが、名前をもらったはずの桑原が二人の野球選手に影響を及ぼしてしまっていた。にわかには信じられない架空のキャラクターと有名スポーツ選手たちとの奇妙なつながり。それが転じて原作にある変化をもたらした。その解説。
『幽遊白書』の概要
『幽遊白書』とは、週刊少年ジャンプに連載されていた漫画で、原作者は冨樫義博。主人公・浦飯幽助とその仲間たちの活躍を描いたバトル漫画で、コミックスは全19巻。1993年の小学館漫画賞を受賞した作品でもある。ドラゴンボール・スラムダンクと並ぶほどの人気作品であり、かつ単行本の累計発行部数が5000万部と、全19巻という短い巻数にしては驚異的な数字を誇っている。通称「幽白」。正式な表記は「幽☆遊☆白書」と書き、二つの星が文字の間に入る。
フジテレビ系列でアニメ化もされ、高視聴率を記録した。馬渡松子が歌うOPテーマ「微笑みの爆弾」という曲は有名。アニメーションを変えながら最終回までこの曲が使われた。最近は様々なスマホゲームとのコラボもよく見かける。
ストーリーは主人公の浦飯幽助が交通事故で亡くなって幽霊になるところから始まり、現実世界に生き返るための試練を受けることになるというのが最初の流れ。その後、人間界の他に存在する霊界・魔界といった異世界までストーリーは広がっていき、幽霊や妖怪、魔族といった敵と戦っていくのが大筋の流れ。また、幽助の味方になるキャラクターも人間・霊界の閻魔大王の息子・妖怪など様々で、個性的な面々が揃っている。中でも主人公格の飛影と蔵馬というキャラクターは主人公を差し置いて、キャラ人気投票で1、2位を長く守り続けるほどの人気を博した。
桑原和真とは
浦飯幽助の永遠のライバルを自称する、幽助と同じ皿屋敷中学に通う2年生。ライバルと自分では言っているが、一方的にケンカを仕掛けているのは桑原の方であり、幽助に勝ったことは一度もない。マンガ第1話の時点での戦績は0勝156敗である。幽助と出会う前までは同い年の相手に負けたことは一度もなかったらしい。
アニメ版での声優は千葉繁氏。役と非常にフィットしているとファンの間でも有名である。
不良ではあるが、非常に仲間思いの性格で情に脆く、仲間たちからの信頼も厚い。喧嘩っ早くすぐ熱くなるが、カツアゲや万引きなどの犯罪行為に関しては一切行わない。三枚目だが男前。
実は霊感が非常に強く、霊的なものが近づくと寒気がする。金縛りにあったり、血だらけの老婆に追いかけられたりした経験を持つ。幽霊だった時の幽助は、これを利用して何度か桑原に取り憑いたことがある。
家族構成は非常に身長が高い父(194センチ。桑原自身も中学2年にして180センチほどの身長)と、桑原より霊感が強い3つ年上の姉・静流(しずる)がいる。ちなみに姉は桑原よりケンカが強いらしい(実際、作中に妖怪をボコボコにする場面がある)。
戦闘時は霊力を物質化し、剣を形どった「霊剣」という技を使う。始めはただ剣を出すだけであったが、徐々に成長し剣を伸ばしたり曲げたりと形状変化させたり二刀流になったりもした。物語後半には対象を次元こと切り裂く「次元刀」という技を使えるようになる。文字通り次元を切り裂くこの技は非常に強力ではあるが、本人が意図的に出すことはできず、仲間が窮地に陥るなど感情が昂った時に発動する。
大の猫好きであり、自身も永吉という猫他数匹を飼っている。中でも永吉は溺愛している模様。
物語序盤は幽助のことを一方的にライバル視していたが、永吉が不良グループに捕まって人質になった際、あの世から戻ってきたばかりの幽助が助けてくれたことをきっかけに共に行動をすることが多くなり、お互いに信頼しあっていく。最終的には相棒のような存在に。
学校の成績は非常に悪く、テストで一桁の点数を取るレベル。ある日他校とのケンカを教師に注意され、仲間の大久保がバイト禁止にされそうになる(大久保は家庭の事情で特別にバイトを許可されていた)。それを覆すためには一週間のケンカ禁止と、次の理科のテストで50点以上取るという条件が課された。桑原はこれをしっかりと守り、ケンカをふっかけられても反撃せず、テストまでひたすら勉強を頑張った。そして見事目標の点数を達成した。このことがきっかけで勉学に目覚めたのか、その後は勉強する癖がつき、最終的には無謀と言われた志望する高校へ補欠合格ではあるが進学している。
桑原和真の名前の由来
桑原和真の名前の由来はいくつかある。まず一つは怖いものを見たときなどに唱えるおまじない「くわばらくらばら」から来ている。幽霊が絡んでくる物語なので、うまい具合に名字にそういった単語をはめたようだ。
もう一つは、野球選手で有名な桑田真澄さんと清原和博さんから漢字を一文字ずつ取って彼の名前にしている。この二人は「KKコンビ」と言われ、大阪のPL学園高校に在籍してた1983年~1985年の間全てで甲子園大会に出場した。桑田選手は一年生の時からエース投手として、清原選手は4番打者として、3年間で輝かしい成績を残している。プロになった後でも1997年から9年間、読売ジャイアンツのチームメイトとして共に戦い、野球ファンを熱狂させた。
作者の冨樫義博は意図的に桑原の名前を2人の名選手から取ったのではなく、「漢字を当ててみたら、PL学園出身のプロ野球選手を一時ずつもらった形になったため、名前の方ももらった」と公式キャラクターブックや単行本7巻のカバーの折り返しなどで語っている。作者自身が野球好きというのも理由として挙げられる。
桑原自体も野球好きなのか、「首位打者剣」や「代打逆転満塁ホームラン剣」という技名を自分でつけたりしている。
桑原和真とKKコンビ(桑田真澄・清原和博)の間にある都市伝説
桑原和真がプロ野球選手2人のコンディションに影響を与えていた
記事タイトルの桑原が現実世界に及ぼす影響とは、実は桑田選手・清原選手への影響である。
幽遊白書が連載されている真っ最中、2人はプロ野球選手として活躍していた。しかしなぜか、桑原が原作のほうで活躍すると、現実世界の桑田・清原の両選手はなぜかケガをしたり、コンディションを落としてしまってどうにも調子が良くないといった現象に見舞われたという。逆に桑原が原作のほうでピンチだったりすると、両選手が試合で活躍するという反比例状態が噂されていた。このジンクスのようなものを重く見たとあるプロ野球選手会の人物が、作者である冨樫義博に「桑原というキャラクターをあまり活躍させないでほしい」と直談判に行ったという。桑原の活躍とプロ野球界の2大スターのコンディションの関係性の証明などできはしないが、ゲンを担ぐことを重視することがある日本のプロ野球界においては、そこまでありえないことではないのかもしれない。
とにもかくにも作者はこの件を承諾した。
今度は原作の桑原和真の活躍に影響が出始めた
そして今度は幽遊白書の物語の中に変化が生じてきた。物語の終盤にかけて桑原の活躍の場面、ひいては出番自体がだんだんと減り始めたのだ。
原作後半の魔界の扉編(魔界と人間界をつなぐトンネルを開こうとする敵と戦う)では戦闘描写もあまりなく、前の戦闘の影響で霊力を失ってしまっていた。戦ったのは敵に捕まる前に一回と味方に助け出されてから一回のみであった。なお、この戦闘で初めて次元刀を発動させている。むしろこの際、敵の組織が次元を切り裂ける能力の持ち主を探していたがために捕まり別空間に閉じ込められてしまう。
最終章の魔界統一トーナメント編(トーナメント戦を戦い抜き、優勝した者を魔界の統率者にするという大会)に至ってはほとんど登場しない。魔界統一トーナメント編では、戦いから一線を退き志望校合格に向けて受験勉強に勤しんでいた。この時本編の舞台は魔界に移り、主人公他主要キャラが魔界へ赴くが、桑原だけは人間界に残った。読者から見れば、桑原は魔界統一トーナメント編では中学3年生なのだから、受験勉強を頑張っていてもおかしくない時期だ。作者は自然な流れで桑原を戦いから遠ざけたと言えよう。
桑原の出番が減り始めた反面、桑田選手・清原選手のコンディションは右肩上がりになり、好成績を残したそう。結果的に桑原は両選手の活躍に貢献したことになった。
だが、未だに桑原の勇姿を魔界統一トーナメントで見てみたかったというファンは多い。
最終回で桑原に与えられた褒美
原作最終回での桑原和真は、補欠合格ではあるが志望していた工業高校に合格している。蔵馬(幽助や桑原の仲間で、その正体は妖狐。非常に頭が良い。人間としての名前は南野秀一)によく勉強を教えてもらっている描写がある。
魔界統一トーナメントが終わり、平穏な日々が訪れていた彼に、一つのご褒美が与えられる。
桑原には恋をしている人物がいた。
氷女(こおりめ)という妖怪で、飛影の実の双子の妹(雪菜本人はそのことを知らない)である雪菜である。桑原は彼女を一目見た時から、心を射抜かれていた。彼女のためとあらば、桑原は今まで苦戦していた相手を一撃で吹き飛ばすことも、コントロールが難しい次元刀を出すこともいとも簡単にやってのけてしまう。
そんな雪菜が、桑原の家にホームステイすることになったのだ。
作者が最後の最後で、桑原に出番を減らしてしまったお詫びをしたのかもしれない。
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