クロノ・クロス(Chrono Cross)のネタバレ解説・考察まとめ

『クロノ・クロス』は『クロノ・トリガー』の続編として1999年に発売された。
美麗なグラフィックやBGMは高評価を得たが前作との比較から賛否が別れることとなった。
前作のテーマが「タイムトラベル」であるのに対して、今作では「パラレルワールド」がテーマとなっている。
主人公セルジュは、「ホームワールド」と「アナザーワールド」という2つの世界を行き来し、パラレルワールドの秘密を解き明かしていく。

もう1つの世界へ

キッドという少女に出会うセルジュ。

時はA.D.1020年、エルニド諸島。
セルジュはこの島のアルニ村で母親と2人で暮らしており、17歳になっていた。

セルジュは、幼馴染の少女レナとともにアルニ村近くのオパーサの浜にいた。
その時、突如次元の揺らぎが起こり、セルジュだけが次元を越えてもうひとつの世界、アナザーワールドへ移動してしまう。
しかしセルジュはこの時点ではまだ自分が別の世界にやってきたことを知らない。
村へ帰ると、村の人々の様子がいつもと違い、セルジュは死んだことになっていた。
アナザーワールドの幼馴染のレナは、セルジュを見て、亡くなった幼馴染に似ていると言い、その幼馴染のお墓にお参りしてあげてと言う。
セルジュは村の近くの岬で自分の墓を見つけて愕然とする。そしてそこで、キッドという少女に出会う。

キッドは実は「ラジカル・ドリーマーズ」として暗躍する盗賊であった。
彼女はヤマネコという獣の亜人を仇として追うと同時に、伝説の宝「凍てついた炎」を捜し求めていた。

セルジュはキッドに誘われるまま、ヤマネコを打倒することと「凍てついた炎」探しを手伝うことになる。

セルジュたちは「凍てついた炎」があるという情報を得て、都市テルミナの蛇骨大佐の館、蛇骨館に乗り込む。
そこで出会った「時の予言者」と名乗る老人から、セルジュたちが今いるこの世界が10年前に起こった事故でセルジュが死んでいるアナザーワールドであることを知らされる。
元いたホームワールドに戻るためには、時空の揺らぎが起こる場所に行く必要がある。
その場所では別次元への移動が可能になるのだという。
その場所とは、セルジュが初めてこの世界にやってきたオパーサの浜である。

セルジュたちは蛇骨館の主である蛇骨大佐に潜入がバレて捕まりそうになるが、そこにはキッドがつけ狙うヤマネコの姿もあった。
ヤマネコは「凍てついた炎」の在処を知っているようで、ここには「凍てついた炎」はないと言う。
キッドが蛇骨大佐の娘リデルを人質に取り、館の上層まで逃げる。そこで人質を解放した後、セルジュたちは屋上から逃げようとするが、ヤマネコに敗れて追い詰められてしまう。
ヤマネコにより傷を負ったキッドは屋上から下へ落ちてしまい、セルジュもその後を追う。
その際、ヤマネコはセルジュを「クロノ・トリガー」と呼んだ。
館の下には川が流れており、セルジュたちは川へと落ちて流される。

仲間の助けもあって、なんとか無事に逃げのびたセルジュたち。
だがキッドはヤマネコから受けた傷がもとで倒れてしまう。

セルジュはキッドを救う為には、この世界ではもう手に入らない特効薬を使うしかないと医者に聞く。
誰もが諦めかけた時、セルジュはこの世界にはなくても、自分のいたもう1つの世界にならあるかもしれないと思い、ホームワールドへ移動するために、この世界にやってきた時の場所・オパーサの浜へと行く。
そこでキッドの持っていた星色のお守り袋を使うと、ホームワールドとアナザーワールドを行き来できるようになる。

セルジュは特効薬を手に入れ、再びアナザーワールドへ戻ってキッドを助ける。(任意のイベント)
元いた世界に戻れることがわかったセルジュだが、この世界で自分が死んだという10年前に起こったことと、ヤマネコに言われた「クロノ・トリガー」と言う意味が気になり、このままキッドと行動を共にすることにした。

セルジュたちはヤマネコの後を追い、古龍の砦へと乗り込むと、再びヤマネコと戦闘になる。
しかし戦闘の後、儀式の間でのヤマネコの怪しげな術により、セルジュとヤマネコの意識が入れ替わってしまう。
中身が入れ替わっているとは知らないキッドは、中身がセルジュであるヤマネコを倒してしまう。
だがその直後、キッドはセルジュの言動からセルジュの中身がヤマネコになっていることを見抜くが、セルジュの姿をしたヤマネコに剣で刺されて倒れてしまう。
その様子を見ていたヤマネコの姿をしたセルジュは起き上がろうとするが、なすすべもなくセルジュの姿をしたヤマネコに捕縛されてしまう。ヤマネコは、セルジュに「神の庭」へ来いと言う。
そしてセルジュは気を失ってしまう。

ヤマネコの姿になったセルジュ

ヤマネコの体になったままのセルジュは、気がつくとカオスフィールドという次元の狭間にいた。
そこへヤマネコの従者だったピエロのような姿をした謎の少女・ツクヨミが現れる。
彼女はヤマネコの中身がセルジュになっていることを知っていたが、仲間となって同行してくれる。
ツクヨミの協力でなんとかホームワールドに帰ってきたが、オパーサの浜の次元の揺らぎが消えていて、ワールド移動ができない状態になっていた。

ヤマネコの姿のセルジュは故郷であるアルニ村の自分の家に戻るが、亜人を恐れる村の人々からは避けられてしまう。
だが、母親だけは話を聞いてくれ、事情を話すと自分がセルジュだと信じてくれた。
そして母親は14年前、急用でセルジュの父ワヅキとワヅキの親友ミゲルが船を出したところ「死海」へ迷い込んだことを話した。
ミゲルは行方不明になり、戻ってきたワヅキも人が変わってしまいその後行方不明になったという。
母親はその「死海」が14年前は「神の庭」と呼ばれていたことを教えてくれた。

村を出て情報収集していると、「凍てついた炎」は「死海」にあるという情報を手に入れる。
「死海」へ行けば次元を超える手掛かりが得られるかもしれないと思い、セルジュたちは「死海」へ向かう。
セルジュたちが「死海」へと行くと、そこには前作『クロノ・トリガー』でクロノ達が回避した、滅亡した未来都市が広がっていた。
「死海」の中心にある滅びの塔へと乗り込むと、そこにはミゲルがいた。
姿はヤマネコでもミゲルにはセルジュがわかるようだった。
ミゲルはこの場所は滅びの塔であり、タイム・クラッシュの爆心地だと言う。
ここでは時間が停止していて、すべては14年前から始まった、と語る。
かつて瀕死のセルジュを連れてセルジュの父ワヅキと共にミゲルはここへやってきたという。
そこでワヅキは「凍てついた炎」にセルジュを連れてこいと呼ばれて行ってしまい、自分はここに取り残された。
そして14年前からずっとここにいるのだという。
この「死海」は年を取ることも死ぬことも、滅びることもない、時間の流れの外にある世界だった。
しかし、ここへは選ばれた者しか入ることはできないという。
3年前に「死海」へやってきた騎士団たちがいたが、皆消息不明となってしまっているという。
ミゲルは、いくつもの選択肢によって選ばれなかった運命や、過去が変えられたために、存在することを許されなくなった未来がこの「死海」に凝縮されているのだと言う。
「死海」の中には『クロノ・トリガー』に登場したガルディア国のリーネ広場の変わり果てた姿もあった。
この時間の流れのない永遠に平穏なこの世界にとどまらないか、とミゲルはセルジュたちを誘う。
それをセルジュが断ると、ミゲルは自分を倒せば次元の揺らぎも元に戻って再びアナザーワールドへ渡れるだろう、という。

セルジュたちはミゲルを倒す。
ミゲルは、この「死海」はこの星の未来だと言う。
かつて太古の昔に宇宙より飛来したラヴォスという生命体が、A.D.1999年に目覚め世界を滅ぼすはずだったが、前作でクロノたちにラヴォスが倒されたことで歴史が書き換えられ、この「死海」にある未来は存在しなくなった。
ミゲルが息も絶え絶えに話していると、彼を取り囲むようにクロノやマール、ルッカたちが子供の姿をして亡霊のように現れる。
クロノたちがラヴォスを滅ぼしたことにより、滅びの未来は無くなったはずだった。
だが、その消えたはずの未来が、復活しようとしている。
セルジュをトリガーとして、殺された未来の復讐が、始まろうとしている、とクロノは言う。
ミゲルはそれらすべては運命のしわざだといい、人はその運命のなかであがくしかないと語る。

そうしているうちに、地震が起こり始める。
ミゲルは、「死海」で眠っていた「凍てついた炎」が目覚めようとしており、運命はそれを望んでおらず、「凍てついた炎」が敵の手に落ちるくらいなら「死海」ごと消滅させてしまうだろう、そして「死海」にある失われた未来は再び次元の彼方へ消え去っていくのだと説明する。
ミゲルの言う敵とは誰のことなのか、運命とは何なのかはわからなかったが、彼はセルジュたちに早く逃げるように言って、力尽きる。

セルジュたちはホームワールドにいた六龍の1体、天龍に助けられて滅びゆく「死海」から脱出する。
天龍はセルジュの動向を見守りたいと言う。

オパーサの浜にいくと、次元の揺らぎが復活しており、再びアナザーワールドへ移動できるようになった。

一方、セルジュの体を手に入れたヤマネコはダークセルジュと名乗り、洗脳したキッドと共に各地で破壊行為を行っていた。

ツクヨミによると、クロノポリスへは龍神たちの加護とセルジュの体が無いと行けないということだった。
龍神たちはクロノポリスによって封印され、今は六龍として各地に生息している。
セルジュはアナザーワールドに移動し、各地の六龍と戦って勝利し、彼らの加護を得ることに成功する。
しかし、ヤマネコの姿のままでは龍神の加護があっても中へ入ることが出来ない。
ツクヨミは、元の姿に戻るためには「龍の涙」というアイテムが必要だということをセルジュに教える。
最初にヤマネコが古龍の砦の儀式の間でセルジュと入れ替わった時にも「龍の涙」が使われていたというのだが、あの後に割れて砕けてしまったのだという。
砕けて消失したのはアナザーワールドの「龍の涙」であ理、ホームワールドにいけば「龍の涙」があるかもしれない。
セルジュたちはホームワールドに戻り、龍の社にいる巫女スティーナから「龍の涙」を手に入れる。

「龍の涙」を持って古龍の砦へ行き、スティーナの導きに従って儀式を行う。
龍神の台座に向かうとセルジュの体を取り戻させたくないダークセルジュが現れ、戦闘になるが、これを退けるとダークセルジュは「もう手遅れだ」と言い残して消えてしまう。
その後、儀式を進め、「龍の涙」を使ってセルジュは自分の体を取り戻すことができた(セルジュが自分の姿を取り戻しただけで、ダークセルジュがヤマネコの姿に戻ったわけではない)。
そして「龍の涙」は砕け散って「愛の涙の破片」となった。
そこでセルジュはスティーナから龍人の伝説の「クロノ・クロス」について聞き、セルジュならば「クロノ・クロス」の力を引き出せるかもしれない、と言われる。
「クロノ・クロス」を生み出すのは龍神の滝の祠であり、「愛と涙の破片」はその材料となるという。

クロノポリスへ

セルジュたちは、ヤマネコに洗脳されているキッドを救い、ヤマネコと決着をつけるため、クロノポリスへと向かう。
クロノポリスに乗り込む前に、突然ツクヨミが、ある目的によりパーティーから抜ける。

クロノポリスに乗り込んだセルジュたちはセキュリティを解除しながら進み、そこでメイン・コンピューター「フェイト」の端末にたどり着き、様々な情報が提供される。
「フェイト」には、この世界のこれまでの様々な出来事が記録されていた。
クロノポリスが、タイムクラッシュで過去に飛ばされたこと、人々に暗示をかけて操ってきたこと、セルジュの生死によって2つのワールドが存在するようになったことなど。
やがて中央の実験室の前にたどり着いたセルジュたちは、プロメテウスに調停者として認識され、「凍てついた炎」のある間へと入っていく。
そこにはダークセルジュの姿があり、キッドが倒れていた。
セルジュたちの前でダークセルジュは、自分こそが「フェイト」なのだと語る。
そして、「フェイト」はセルジュにこれまでのことを語る。

A.D.1006年、エルニド諸島のアルニ村でセルジュという幼い少年が、自宅の裏手でヒョウ鬼というモンスターに襲われ、瀕死の重症を負ってしまう。
セルジュの傷は普通の医者では治せないことを知ったセルジュの父ワヅキは、親友のミゲルと共にセルジュをマブーレの賢者の元へ連れて行くために、船で海へ出る。
しかし、船は嵐に遭って座礁し、ワヅキたちは「神の庭」へと迷い込んでしまう。
「神の庭」とはこの時代にクロノポリスが存在する場所である。
普段は封印が施されていて、立ち入ることはできない空間だった。
だがこの時は、嵐が磁気嵐をひき起こし、クロノポリスの「フェイト」のシステムを一時的にダウンさせてしまった。
「フェイト」が機能停止している僅かな時間にワヅキたちは封印の解かれた「神の庭」からクロノポリスへと入ることができたのだった。

クロノポリスに置かれていた「凍てついた炎」の声を聞いたワヅキは、セルジュを「凍てついた炎」に触れさせる。
セルジュはそれにより一命を取り留める。
一方、ミゲルはワヅキたちと別れてそのまま消息不明になるのだが、実はこの時からずっと「フェイト」の意志により、「神の庭」と呼ばれる場所にとどまっていたのだった。
やがて2つのワールドに別れた後は、ミゲルのいた場所はホームワールドの「死海」と呼ばれる場所に変化しており、そこでは年も取らず時が止まったままとなった。
「フェイト」は自分の代わりにミゲルをホームワールドの「死海」に存在させ、そこに眠る「凍てついた炎」を監視させることにしたのだ。

「フェイト」がダウンしている隙に、マザーコンピューターに密かに埋め込まれていたセキュリティシステム「プロメテウス」が起動する。
「プロメテウス」はセルジュを「凍てついた炎」に選ばれた「調停者」として認証し、システム権限をセルジュに移行してしまった。
そのため再起動した「フェイト」はシステムから締め出されてしまい、「凍てついた炎」にアクセスできなくなってしまった。

「プロメテウス」は、フェイトの暴走を防止するためのセーフティ・プログラムであった。
このプログラムは11世紀の科学者ルッカ・アシュティアが発明したものであり、この発明をマザーコンピューターの発明者である研究者ガッシュが、マザーコンピューターに「プロメテウス」を組み入れた。
ガッシュのプログラムにより、「フェイト」は「プロメテウス」の設定した権限を越えることが出来ずにいた。
それまでは「フェイト」は、クロノポリス内に安置されている「凍てついた炎」にアクセスし、「凍てついた炎」の力を使って人間を支配したり龍神を封印したりしていた。
しかし「プロメテウス」が起動したことにより「凍てついた炎」へのアクセス権限を寸断されてしまった「フェイト」は、権限を回復するため、セルジュの父ワヅキの精神に入り込み、彼の肉体を「ヤマネコ」へと変えて自らの外部機関とし、邪魔なセルジュを殺害するよう仕向けた。
しかし、何者かの介入があり、セルジュは一命を取り留める。
この時から世界は「セルジュが死んでいる世界」アナザーワールドと、「セルジュが生きている世界」ホーム・ワールドとに分かれてしまった。

実はセルジュが死んでしまったアナザーワールドこそが本当の時間軸である。
それがセルジュが助かった為に矛盾が生じ、時間軸が2つに別れ、2つのワールドが生まれることとなったのだ。
「フェイト」は、ヤマネコを使ってセルジュを殺したが権限は回復せず、「プロメテウス」の発案者であるルッカを誘拐して権限の回復を試みるも、これも失敗する。
「凍てついた炎」へのアクセス権限を与えられているセルジュは、ホームワールドでのみ生存している。
だが「フェイト」は分岐した方のホームワールドにはなぜか干渉することができなかった。
「フェイト」はセルジュがいつかアナザーワールドへやってくることを予測しており、ヤマネコを使って、セルジュの体を手に入れる機会を狙っていたのだ。

「フェイト」であるヤマネコは、セルジュの姿を使ってプログラム「プロメテウス」の権限の中に入ることに成功していたため、邪魔な「プロメテウス」を消去してしまう。
「プロメテウス」はセルジュに「フェイト」と龍たちの憎しみを止めて欲しい、と言い残して消えていく。

ダークセルジュの姿のヤマネコは本来の機械の姿の「フェイト」と一体化し、セルジュたちに戦いを挑んできた。
セルジュたちは戦闘に勝ち、フェイトを破壊する。
「フェイト」が倒れるとキッドは目覚め、「凍てついた炎」が固定されている装置に近づく。
そこへツクヨミが現れ、「凍てついた炎」に近づくな、とキッドに警告する。
ツクヨミはキッドの中に「無に帰りたいという欲求がある」と指摘し、その思いにセルジュたちを巻き込まないでくれ、と怒鳴る。
だがツクヨミは、怒鳴られたことに逆上したキッドに返り討ちにされてしまう。

「凍てついた炎」に近づいたキッドは、何者かの意志によってか、彼女自身も知らないことを語り出す。
まず、「フェイト」が倒れたことにより、「龍人の都・星の塔」が復活する、と予言する。
A.D.2400年にタイム・クラッシュを引き起こし、クロノポリスは一瞬にしてB.C.10000年の過去に吹き飛ばされたと語る。
それは古代で目覚めかけていたラヴォスが、A.D.1999年にクロノたちに滅ぼされる可能性を見て、自らを救うために「凍てついた炎」をクロノポリスごと引き寄せたからかもしれない、と言う。
そしてもうひとつ、恐竜人の未来、アザーラの子孫たちの都「ディノポリス」もまたB.C.10000年に飛ばされてきたとも語る。
それは星が人間に対抗する手段として引き寄せたのかもしれない、と言う。
そしてこれから「フェイト」から解放された龍神たちの人間への復讐が始まるのだ、と言う。

倒れていたツクヨミはキッドの隙をついて起き上がり、「凍てついた炎」を持ち去ってしまう。それが彼女の目的だった。
キッドは気を失って倒れてしまう。
「フェイト」が倒れたことで、各地で抑圧されてきた六龍たちの封印が解かれ、蜂起し始めた。

六龍と「凍てついた炎」を奪ったツクヨミは合体し、龍神の完全体「時を喰らうもの」となる。
それと同時に、封印されていた龍人の都・星の塔(ディノポリス)も浮上する。
ツクヨミは龍神の復活と人間への復讐のために、ヤマネコやセルジュたちに協力をしていたのであった。
だが、本心ではセルジュとは争いたくなかった彼女は葛藤し、あえてパーティーを抜けていたのだ。

「時を喰らうもの」の目覚めは世界の消滅を招くという。
気を失ったまま目を覚まさないキッドを村に預け、空中に浮遊する星の塔へ行く方法を探すセルジュたち。

「時を喰らうもの」は怨念の凝り固まったもので、倒すためには「クロノ・クロス」が必要となる。
セルジュたちは龍神の滝の祠で、「憎しみの涙の破片」を手に入れ、既に手に入れていた「愛の涙の破片」と合わせて「クロノ・クロス」を製作・入手する。
また、魔剣化したグランドリオンを見つけ、闇を払い、グランドリオンの精霊たちを解放し、「聖剣グランドリーム」を手に入れる。
その後、セルジュたちが眠ったままのキッドを見舞うと、グランドリームの精霊たちが現れ、キッドを「お姫さま」と呼んだ。
そしてキッドが目を覚まさないのは彼女が過去に囚われているからだ、とセルジュたちに教える。
精霊たちは特殊な力でキッドの過去へとセルジュを誘う。

キッドの過去へ

キッドの過去に入るセルジュ。
そこには燃えている孤児院があった。
セルジュは孤児院内に入り、キッドを探す。
廊下に倒れていた幼いキッドを見つけるが急に起き上がり、走り出す。
キッドが、姉と慕うルッカを探しているようだった。
部屋にはルッカの眼鏡だけが落ちていたが、ルッカの姿はない。
炎と魔物を生み出していたのはヤマネコとツクヨミだった。
彼らは窓辺から姿を消し、幼いキッドはそれを追いかけようとする。
しかし炎の勢いは強くなる。
セルジュはキッドを連れて外へ出る。

セルジュとキッドは小高い丘から炎上する孤児院を見ていた。
嘆き悲しむキッドを抱きしめるセルジュ。
1人にしないで、と懇願するキッド。
だがセルジュの姿はゆっくりと消えていく。

キッドの過去から戻ったセルジュ。
するとキッドは目を覚ます。
キッドはセルジュに「ひさしぶりだな」と声をかける。
キッドにはセルジュに命を救われたという記憶が追加されたようだった。

キッドがヤマネコを仇と狙っていた理由は、自分の過ごしていた孤児院を焼かれ、ルッカを失ったからだった。
ルッカはその後二度と帰らなかったという。
キッドはルッカのかつての研究者仲間から手紙をもらう。
それは、キッドに宛てたルッカからの手紙だった。
そこには、ルッカが未来を予想していたかのような内容と、キッドの素性についても触れられており、キッドが本当の名前を受け入れられるように、と記されていた。
そして、いつかジャキがキッドを見つけてくれるだろう、ともかかれていたがこの時のキッドには意味は分からなかった。

ガッシュは語る

セルジュたちは仲間から重力制御装置を手に入れ、それを船に取り付けると飛べるようになり、星の塔へと突入する。
星の塔には「時の予言者」ガッシュの姿があった。
ガッシュは、セルジュたちに、ここは「存在しない空間」だと説明する。

ガッシュはセルジュたちにすべてを話す。
ガッシュは、はるか古代に栄えた魔法王国ジールの「理の賢者」だった。
ジール王国の民は、原始から地中に眠るラヴォスという生命体のエネルギーを魔神器という装置を使って吸い上げて利用し、魔法を使えるようになって繁栄していた。
やがてジール王国の女王はその力に溺れてラヴォスの力をもっと引き出そうと試みた結果、魔神器ともどもラヴォスの力が暴走してしまう。

ジール王国はラヴォスのつくりだした巨大な時空の渦にのみこまれて消滅してしまい、ガッシュははるかな未来A.D.2300年に飛ばされてしまった。
そこでガッシュは、未来の科学を学び、自分の魔法の知識と合わせ、「時」に関しての研究を進めた。
その時代に「凍てついた炎」が発見され、それを利用して研究センターが作られ、後の「クロノポリス」となった。
その後、A.D.2400年、クロノポリスは実験中にタイム・クラッシュを引き起こし、古代の世界B.C.10000年へと飛ばされてしまった。
この時、別の次元世界のA.D.2400年で繁栄していた龍人たちの都「ディノポリス」も同様にタイム・クラッシュの影響により、クロノポリスと同じ時間軸のB.C.10000年の古代世界へと飛ばされてきた。
龍人たちの都ディノポリスとクロノポリスはその存亡をかけて古代世界で戦争となり、クロノポリスが勝利した。
クロノポリスのマザー・コンピューター「フェイト」により、ディノポリスは封印されて星の塔となった。

「フェイト」は、タイムパラドックスが起こらぬよう、繁栄していた未来へと誘導していくことを決める。
そのためにクロノポリスを外界から隔離し、「運命の書」を作ってエルニド諸島の人々に暗示をかけ記憶や行動をコントロールし始めた。
「運命の書」とは、直接人間の脳に働きかけ、行動の暗示をすりこみ、感情や性格までをも支配する「フェイト」の端末である。
そうやって人々を正しい選択へ導くための管理社会を構築したのである。

元はセルジュの生まれ育ったこのエルニド諸島があった場所こそが、「神の庭」と呼ばれる、龍神たちの住処だった。
「フェイト」が龍神の力を封じこめ、新たな神となったため、「フェイト」の存在する海域が「神の庭」と呼ばれるようになった。

そしてガッシュは言う。
セルジュたちは「フェイト」を排除するため龍神に利用されたのだと。

龍神は、本来はプラズマ生命体で、星のエネルギーの集合体であり、龍の姿はこの次元での仮の姿にすぎなかった。
星とともに生きる龍神たちは、星を文明によって汚す人間を敵とみなしていた。
龍人との戦いに勝利した「フェイト」は自然を司る龍神をコントロールすることにより、自然界のバランスをとることにした。
そのために「フェイト」は6体の龍神を、各地にバラバラに封じ込めた。
力を失った龍神は六龍となった。

龍神とは元は、原始の昔、人間に勝った恐竜人が進化して龍人となった未来の、自然制御用の生体マシンだった。
龍神はこの星の自然そのものであり、この星から、星を文明によって汚す人間を一掃するための存在なのである。
ガッシュは「凍てついた炎」を使って龍神たちを封じていた「フェイト」こそが人間の守護者だったのだと言う。
A.D.2300年にいたガッシュは小型のタイムマシン、ネオ・シルバードを完成させ、セルジュたちのいるこの時代にやって来て、クロノポリスと「フェイト」の計画を知り、「プロジェクト・キッド」という計画を発案し、A.D.2300年へ戻って実行することにした。
そして現代のセルジュたちの様子を見守ることにしたと言う。

人間の未来、この星の運命はすべてセルジュたちの戦いにかかっていると言い、いつの時代にかまたあえるかもしれん、と言い残し、ガッシュは去って行った。

セルジュたちは星の塔の最上階で「凍てついた炎」を見つける。
キッドが「凍てついた炎」と会話をすると、急に「俺は俺だ!」と怒り出す。
やがて姿を現した、龍神たちとツクヨミが合体した姿である「時を喰らうもの」と戦闘し、これを破る。
だが「時を喰らうもの」は、真に目覚めた、と言い残して消え去った。同時に「凍てついた炎」も消えてしまう。

そこに現れたガッシュは、「時を喰らうもの」の本体は別の時空にある、と教えてくれた。
そして、「凍てついた炎」の正体は、ラヴォスの一部なのだという。
その「凍てついた炎」と「時を喰らうもの」が一体となったものが「時喰い」だという。
「時喰い」とは時の闇の彼方に巣くう、ラヴォスが進化した新たな生命体で、時空を喰らい、遠い未来で時間を止めてしまい、やがて全てを無に帰す存在だった。

セルジュたちは、ガッシュから「時の卵」を手に入れる。
「時の卵」を使って時空を超え、「時喰い」の元へ行けるようになる。

隠された真実、そして最終決戦へ

「時を喰らうもの」を倒した後、セルジュたちが星の塔から脱出すると、星の塔は海へと落下し、制止した。
セルジュたちがホームワールドのオパーサの浜に行くと、クロノ・ルッカ・マールが子供の姿で現れる。
ルッカはセルジュたちに語る。

前作『クロノ・トリガー』の古代の魔法王国ジールにおいて、女王ジールの娘サラは暴走したラヴォスによって時空の狭間に飛ばされてしまった。
そして時空の狭間を彷徨っていたサラは、ヒョウ鬼に負わされた傷にうなされて泣くセルジュの泣き声に惹かれ、セルジュたちのいる時間軸に干渉してしまう。
その結果、ワヅキやセルジュたちが巻き込まれた嵐を起こし、彼らをクロノポリスへと誘い、「凍てついた炎」へとセルジュを導いてしまった。
またこの時、無為に次元を彷徨うサラは絶望しており、自らを消し去ろうとしていたが、セルジュの泣き声に惹かれてこの時間軸に干渉した際に自らの分身を生み出し、自分のペンダントを託した。
その分身こそがキッドである。
キッドの持っていた星色のお守り袋の中身はサラの持っていた、不思議なペンダントだった。
このサラのペンダントはキッドが生死に関わる危険にさらされた時、時間を少しだけ巻き戻して過去へと飛ばす力があった。
そのため、古龍の砦でセルジュの姿のヤマネコにキッドが刺された時も、時間の巻き戻りが彼女自身の身に起こり、ケガもせず、刺された記憶もなくなっていたのだ。
しかしその後はヤマネコによって洗脳されてしまった。

赤ん坊のキッドを拾ったのは前作でクロノの仲間だったルッカだった。
彼女は発明の傍ら孤児を引き取って孤児院を開いていた。
ルッカは赤ん坊のキッドに添えられていたペンダントを見て、キッドがサラである可能性に気付いていた。
しかしキッド自身には自分がサラだという自覚はなかった。
「凍てついた炎」にはサラの意識が入り込むようで、たびたびキッドに語り掛けていたようである。
「凍てついた炎」と会話した時、キッドが怒ったのは、キッドがサラの分身であると語り掛けたからであろう。

また、ガッシュが発案した「プロジェクト・キッド」は時間制御のプロジェクトであり、回避された滅びの未来が「時喰い」によって再び起ころうとしている可能性から世界を守るためのものである。
クロノポリス設立も、タイム・クラッシュも、龍神と「フェイト」との戦いも、これらはすべて、今ここに「プロジェクト・キッド」の実行者であるセルジュが「クロノ・クロス」を手にして立っている瞬間のためだけに起こされたことだと言う。
しかし、ここからはすべてがセルジュの意志に託されることとなる。
そしてすべてが終わったら、キッドが10年前に飛んでセルジュを助け、その後オパーサの浜でセルジュをアナザーワールドへ呼ぶことになる。
それで「プロジェクト・キッド」は完了するのだ。

ルッカは、キッドに悲しませてごめん、と謝るが、自分たちはもうこの時間軸にはいないと語る。

クロノは語る。
セルジュは10年前、溺れさせられて死んだはずだった。
セルジュが生きている今のホームワールドの方がイレギュラーだという。
10年前、セルジュを殺そうとしたのはヤマネコである。
プロメテウスに邪魔をされていた「フェイト」はセルジュを邪魔者として排除しようとしたのだ。
ヤマネコはプロメテウスのロック解除のためにルッカを捕えたが、失敗に終わり、セルジュがアナザーワールドへ来るのを待った。
いずれセルジュが次元を超えて現れることはコンピューターの「フェイト」にはわかっていたからだ。
そして、ヤマネコの正体がセルジュの父ワヅキだと明かす。
セルジュこそが未来を切り開く新たな「クロノ・トリガー」だという。

かつてラヴォスはクロノたちによって倒された。
それにより、ラヴォスによって滅ぼされるA.D.1999年以降の未来はないものとなった。
だが、クロノたちに倒されたラヴォスは、とある次元軸で生き延びており自分と同じように歴史改ざんによりなかったことにされてしまった歴史に住まう者たちの無念と怨念を吸収し、新たなる種へと進化した。
それが、時空をさまよっていたサラを取り込み、さらに龍神たちをも取り込んで、「時喰い」として目覚めたのだ。

マールは語る。
「時喰い」を真に倒すためには「クロノ・クロス」を使わなければならない、と。
「クロノ・クロス」は「調停者」だけが使用できる、愛や憎しみなどの想いや怨念を浄化できるものである。

セルジュたちはオパーサの海岸から「時の卵」を使い、「時の闇の彼方」へ乗り込む。
セルジュたちは「クロノ・クロス」を使って「時喰い」を浄化し、囚われていたサラを解放する。

サラが「時喰い」ともども浄化されたことで、ホームワールドとアナザーワールドの2つの世界は、完全に切り離され、それぞれが独立したパラレルワールドとなり、次元の揺らぎは無くなった。
「フェイト」が破壊されたことによって、人々を操る者もいなくなり、人類は自らの手でその運命を紡ぎ始めた。

エピローグ

セルジュや仲間たちもそれぞれ元いた世界へ戻り、それまでの旅の記憶はリセットされた。
セルジュは元いたホームワールドのオパーサの海岸で目覚める。
セルジュに声をかけるのは幼馴染のレナであった。
セルジュは最初にアナザーワールドへ移動する前の時間に戻っていて、セルジュはその後の旅の記憶をすべて失くしていた。

しかし唯一記憶を失わない人物がいた。
キッドである。
生きることに絶望していたサラは、セルジュに惹かれてこの時間軸に干渉し、セルジュを生かしたいと思ったと同時に、自らも生きてみたいと望み、その結果、自由で強く生きるキッドという分身をこの世界に生み出すことになったのかもしれない。

サラの分身である彼女は、サラ本体が消えてもなお自らの使命を果たすため行動する。
それはA.D.1010に飛び、海で溺れて死にかけている7歳のセルジュを救うこと。
キッドはサラから受け継いだペンダントによって時空を超えたのだ。
セルジュの命を救い、その後、アナザーワールドへとキッドを導くことでキッドの使命は完了する。

キッドのペンダントは時空を超えられるが、使命を終えた後は好きな時空へ行けるわけではなかった。

それに、会えたとしても一緒に冒険をした仲間はもう誰もキッドのことを覚えていないだろう。
自分のことを覚えていなくても、キッドはもう一度共に旅をしたセルジュに会いたいと願う。
キッドはセルジュに会うために時間世界の旅に出る。

ラストには、サラとキッドのモノローグが流れ、キッドのフルネームが明らかになる。
サラ・キッド・ジール。
それがキッドの名前である。

『クロノ・クロス』の登場人物・キャラクター

主要メンバー

セルジュ(Serge)

本作の主人公。17歳。
エルニド諸島にあるアルニ村で生まれ育つ。
本来の時間軸であるアナザーワールドでは10年前に海で溺死し故人となっている。
だが、ホームワールドでは生存している。
この生死の分岐により、ホームとアナザー、2つの世界が誕生する原因となった。
前作の主人公と同様にセリフはしゃべらない。

キッド (Kid)

セルジュがアナザーワールドで出会った、16歳の男勝りな少女。実際は14年前にこの時間軸に誕生した。
盗賊「ラジカル・ドリーマーズ」として暗躍し、恐れられている。
幼い頃はルッカの孤児院で育ち、ルッカを姉のように慕っていた。孤児院を襲撃しルッカを連れ去ったヤマネコを仇と付け狙う。
彼女の正体は、ジール王国の王女サラの分身。
しかしキッドにはその記憶も自覚もなく、「オレはオレだ」と言い放つ。
キッドはサラと同じペンダントを持っており、彼女の身に危険が及ぶと時間を巻き戻すという力を発揮する。そのため、作中でキッドがヤマネコに刺された時もこの力が作用し、キッドは無事だったがその時の記憶をキッドは失っている。
10年前、海でおぼれて死ぬはずだったセルジュの命を救ったのはエンディング後、時空を超えたキッドである。

ヤマネコ (Yamaneco / Lynx)

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