不思議とすっきりする作品
「バットマン」に出てくる悪役ジョーカーの物語。ジョーカーと言えば映画「ダークナイト」に登場する「頭がいいが非常に残虐でサイコパス」というイメージがあるかと思います。しかし、このジョーカーはそういった様子はまったくなく、むしろ弱々しい印象でした。
主人公のアーサーは「突然笑いが止まらなくなる」という精神疾患を抱えた男性でした。
「精神疾患」「低賃金・貧困」「世間からの非難」「孤独感」そして「不幸の積み重なり」。現代社会では誰もが遭遇する、遭遇してもおかしくない問題が、ジョーカーという1人の怪物を生み出してしまった様は「私たちのだれがジョーカーになってもおかしくない」という気持ちにさせます。
劇中で特に印象的なのが、雨上がりの階段の踊り場で、ピエロのメイクをしたアーサーが踊るシーン。よく告知動画などでも目にするシーンですが、、アーサーがジョーカーとなる瞬間であり、ここからラストシーンまでアーサーの凶行が続いていくのです。
しかし、このシーンから終盤まで、不思議とスカッとした気持ちになります。もちろんアーサーの行いは許されるものではありません。しかし、ラストの「俺が歩道で死にかけても踏みつけて歩くくせに。俺は毎日あんたたちとすれ違ってる。でも誰も俺に気づかない」「心を病んだ、打ち捨てられて孤独な男を、ゴミのように扱うと何を受け取ったか教えてやるよ!報いを受けるんだ」というアーサーの心からの叫びにはぐっとくるものがありました。