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ジョーカーは私たちだ
この作品を一言で表すと、社会から爪弾きにされた敗北者の復讐劇です。
ジョーカーは生来、消して悪人ではなく、むしろ気が弱く社会的な地位も低く、それでも善くあろうとした人間です。
ジョーカーが1人目を殺すシーンまでには、かなり長い、それまでのジョーカーの辛い生活が描かれています。懸命に働き、逆境にも耐え、それでも周りに踏みにじられ、誰にも評価してもらえない。映画を観る過程でどんどんジョーカーに感情移入していきます。1人目を殺したシーンではよくやった!!とガッツポーズしたくなるほどです。階段でのダンスシーンは特に印象的で、それまでは苦しそうに明日の生活を考えながらせっせと階段を上っていたジョーカーが人を殺してしまい階段を踊りながら降りていくシーンはある種の妖艶さを感じさせられました。
バッドマンが親の資産を使い、比較的容易にのし上がったのに対して、ジョーカーは初めから持っている物が何一つありませんでした。ジョーカーがしたことはけして擁護できることではありませんが、この映画を見た後にバッドマンを見ると弱者の立場など何も分かっていないくせに、とバッドマンに対して怒りを感じてしまうのが、この映画の最も恐ろしい点であると思います。