リアルすぎる「ジョーカー」
この映画は、アメコミのバットマンに出てくる、最強の悪役「ジョーカー」がどのようにして誕生したのかを描いた作品です。
主演はジョーカー演じるホアキン・フェニックス。
そして第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品、DCコミックスの映画化作品としては史上初めてとなる、最高賞の金獅子賞を受賞した程の話題作です。
まず、冒頭でジョーカーが、自分でピエロのメイクをしながら指をグッと口の端に入れ、無理やり笑顔を作るシーンがあるのですが、そこから引き込まれます。泣いている顔を無理やり笑顔にしたような、痛々しく悲しい笑顔なのです。
この後に「ジョーカー」と呼ばれる主人公は「アーサー・フレック」という1人の大道芸をしていた男性でした。
アーサーは脳の障害で、突然笑い出してしまう病気を持っており、それがネックで周りから不気味がられ、常に1人でした。
それでも、献身的に衰弱した母親の介護をし、病んでしまった心をカウンセリングや薬を服用しながら保ち、なんとか生活をしている日々。
いつかは誰かが認めてくれるはず、と健気に毎日頑張って生活していたのですが、アーサーの暮らしている街は崩壊寸前。貧富の差は開くばかりで、誰も弱者のことは見ようとしませんでした。
ある事件がきっかけで、どんどん考え方が変わっていくアーサー。
そして、隠された真実を知った時、アーサーは自分の人生は「悲劇」ではなく「喜劇」だと思えるようになるのです。
ずっと、救われない主人公を観ているのもとても辛かったですが、この映画の時代背景も現代に通じるところもあり、とてもリアルでゾクゾクしていました。
「ジョーカー」みたいな人は、アメコミの中だけでなく、現代にも存在しているのかもしれません。
そのくらいリアルでした。
賛否分かれる作品だと思いますが、今、この瞬間に観ておかなくてはいけないような気がする、そんな名作です。