十二国記(ラノベ・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

声:阪口大助/野田順子(幼少期)

要の弟。素行不良で最低ランクの高校に通う。「祟る」と噂される兄を嫌いつつ、そんな感情を持つ自分にも嫌悪を抱く。神隠しにあった要について調べている優香に、淡い恋心を持つようになる。優香が兄を目的に自分に近づいたと悟り、またも兄を憎む気持ちが生じて苛立っていた。
要が雪の夜に外に出される原因となった「コップを落とした」張本人だが、祖母を怖れて兄に責任を押し付ける形になった。尚、コップを落とした理由は兄を招く白い手を見たのが原因であり、ほんの少しだが十二国世界に触れている。

原型となる小説『魔性の子』では祖母の教育の下、人の顔色をうかがう性格となった。そのストレスを発散するかのごとく不良少年として補導された経験も少なくない。要が神隠しに遭った事件が元でいじめられていた過去を持つ。アニメでは生き延びたが、原作では両親と共に、傲濫、辿子に殺された。

要の祖母

声:京田尚子

『風の海 迷宮の岸』に登場。故人。高里要、卓の祖母。幼い要の頭を撫で、手を払いのけられたことや、お辞儀をしないとの理由で要を厳しくしつけ、ことあるごとにつらく当たった(※)。要がコップを落とした(実際に落としたのは要の弟の卓)晩、雪の降る中10歳の要を外に出していた。そのまま神隠しに遭った要と再会することなく、一年後に死亡。要が帰って来たのは祖母の葬式の日であった。
原作に当たる『魔性の子』では高里美喜(たかさと みき)との名がついている。

※頭をなでられることを厭う、お辞儀をしない(できない)のはいずれも麒麟の特性。

中嶋正志(なかじま まさし)

声:渡部猛

蓬莱での陽子の父。時代遅れの男尊女卑の思想を持ち、娘に「女らしさ」を強いて、陽子がズボンをはきたがった時には「女の子らしい格好をしろ」と言った。人の顔色をうかがい、自分の意見が言えない陽子の人格形成の一因となった人物の一人。
原作では陽子は死んだものと見て、中々帰らない娘を案ずる妻と衝突した。「陽子が金髪の男(景麒)と一緒だった」との目撃情報から娘が不良化したと決めつけている。

中嶋律子(なかじま りつこ)

声:紗ゆり

蓬莱での陽子の母。陽子に人の顔色をうかがう人格形成の一因になった人物の一人。いくらか陽子に理解を示していたものの夫には逆らえずにいた。陽子の失踪の際担任に相談をするが、この時陽子が無理をしていたのではないかと担任から突き付けられる。
優香から陽子がもう戻ってこないことを聞き、「あの子はやっと自由になれたのかもしれない」と自分に言い聞かせるように呟く。優香から「中嶋さんは帰りたかったと思います」と言われて、陽子が帰らない理由が自分たちが追い詰めたせいだとの気持ちから救われた模様。

『十二国記』の用語

十二国世界の世界観・地理

出典: ja.wikipedia.org

十二国世界の地図。

十二国世界は異次元に存在する、十二の国や数種の海から成り立つ世界である。正式名称は不明。かつては十三の州から成り、今とはまるで異なる世界であったとされる。人々が道に外れた振る舞いを続けたため、天帝は一度世界を滅ぼし5人の神、12の人以外を卵にまで戻した。これが十二国世界の創世神話である。

現在、十二国世界には神仙なる神に近い存在や、人畜に害をなす妖魔なる怪物がいる。大まかな世界観は古代中国に似る。使用文字は漢字に似ているが、少し形状が違う。文章は漢文に似るが、これもまた、古代中国語の知識を持つ東大生でも習得に時間を要するものであった。楽俊、玉葉といった名前は字(あざな)という呼び名であり、本来の名前は戸籍に本来の名前が記された姓、名から成る。子供時代だけの名前もあり、平民であっても一人の人物の呼称が複数存在するのが普通である。

十二の国には一人の王と、それを選ぶ一頭の麒麟が存在する。王の政治が正しければ国は栄えるが、間違った政治をしたり王が死んだりした場合は国は荒れていく。これは単に統率者がいなくなって人心が荒れるというのではなく、豊作が望めなくなるといった気候にも影響する為である(王がいれば儀式などを行い、天災が減る)。王のいない国には妖魔なる怪物が現れるので、王を選ぶ麒麟は大事にされる。時には「早く王を選んでほしい」と直談判する者もいる。王は神と同じ存在であり、麒麟と契約した瞬間から年を取ることも病になることもない。

互いの国を侵略することは天によって禁じられており、十二国世界では国家間での戦争というものがないが、謀反や内乱という形での争いは存在する。戦争のみならず他国への援助もまた覿面(てきめん)の罪とされる。かつて援助の為に範国に軍を送った才国の王は、麒麟もろとも覿面の罪により死ぬはめになった。これにより、才国の王、並びに麒麟が名乗る国氏の字が変わった。王や麒麟は基本的に隣国でも特別な事情がない限りは会うことはなく、招待されるなどしない限り新王の即位式に顔を出すわけでもない。貿易は行われており、自国の生産物が元で潤った国もある。

特筆すべきは生物の誕生方法である。十二国世界では、人も獣も皆実として木に実り、卵果と呼ばれる実から生まれる。
十二国世界と日本、中国は蝕と呼ばれる凄まじい力を持った現象によって繋がり、そこから十二国世界に人が流されてくることがある。十二国世界の住民は日本を蓬莱、中国を崑崙と呼んで認知しているが、蝕で流されてきた者たちを歓迎することはない。むしろ本来なら繋がっていない世界から来たとして蓬莱の者を海客(かいきゃく)、崑崙の者を山客(さんきゃく)と呼び差別することが多い。母親の腹から生まれるという誕生方法も、気味悪がられる理由の一つである。蓬莱は世界の果て、崑崙は世界の陰にあるとされる。

十二国世界は古代中国語に似た独自の言語を使用しており、海客や胎果は言葉が通じずに辛酸をなめる。仙籍という、人ではない仙になる為の籍があり、ここに籍を入れられた者は不老不死(完全な不死ではない)となり、海客であっても言葉で苦労をすることがない。陽子は景麒と誓約を済ませてから十二国世界に渡った為仙籍に入れられており、言葉での不自由はなかった(会話が可能というだけで、漢文に似た文を読むのには難儀する)。
十二国世界から蓬莱や崑崙に流されることはない(姿を保てないらしい)が、時折卵果の状態で蝕に巻き込まれ蓬莱や崑崙に流されることがある。流された卵果は、適当な既婚女性の腹に入り、妊娠、出産という段階を踏んで誕生する。こうして生まれた人物を胎果(たいか)と呼ぶ。胎果は十二国世界の住民だが、「女の腹から生まれた」という十二国世界の住民からすれば異質で不気味な誕生方法から海客、山客と同じく差別される。
全ての国は王が中心となって政を進めるが、王が不在でも優秀な官吏が代わりに政治を行うこともある。新しい王が立った場合でも「自分たちが国を守ってきた」との自負があり、王が胎果場合には、「この世界のことを何も分からない王だ」と高をくくることもある。

雲海(うんかい)

十二国世界にて、王たちが暮らす天上界と、一般人が暮らす下界を分ける海。天に水が浮いているように見える。海とされる通り潮の香りがし、波もある。天上から見ると透明でうっすら青みを帯びており、下界からは陰鬱な灰色に見える。通常、雲海は下界からは海というより雲にしか見えない。

虚海(きょかい)

八つの国の外側にある海。果てしなく広がっているとされており、虚海の果てを見るために船を出して、帰って来た者は一人としていないとされる。他の世界との境界線との認識もされており、蓬莱、崑崙と繋がる。位の高い仙や麒麟、王などは任意で虚海から蓬莱、崑崙へ行けるという。雁国の延麒は「麒麟の特権」と称してしばしば蓬莱などに渡っており、泰麒の発見に一役買っている。

凌雲山(りょううんざん)

柱のように雲海を突き抜ける山。雲海の上からはこの山の頂が、まるで小島のように見えるとされる。

五山(ござん)

黄海の中央にある崇山を中心とした蓬山、崋山、霍山、恒山から成る。西王母(女神の長)が治める天界に属するとされる。黄海には妖魔がいるが、五山には入れない(理由は不明)。麒麟が幼少期を過ごす蓬山は崇山から見て東側に位置する。五山を飛び越える者はいない。これは西王母や神仙を憚ってのことである。

蓬盧宮(ほうろぐう)

蓬山にある一帯。王を選んでいない麒麟はここで過ごす。地形はなだらかで、麒麟が生まれる捨身木がある。女仙をまとめる碧霞玄君が住み、麒麟が住まうこともあって天界と地上を繋ぐ橋渡しとも言える。建物が多く、麒麟は好みの建物に住むこととなる。『月の影 迷宮の岸』において泰麒は女仙の蓉可から「好きな建物に引っ越してよい」と言われた。東には切り立った崖、北は絶壁という地形だが、これは侵入者を防ぎ、麒麟や女仙の安全を守る為の地形である。
王は選ばれた直後、この地で最も大きな建物・丹桂宮(たんけいきゅう)で吉日を待ち、天勅を賜るのが習わしとされる。天勅を受けて、初めて正式な即位が決まる。

黄海(こうかい)

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