十二国記(ラノベ・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

丕緒(ひしょ)

アニメ未登場。
悧王の時代から始まり、5人の王に仕える。十二国世界に存在する射儀(弓矢を使った儀式)で使う陶鵲(※)を作る羅氏(※)。師匠ともいえる祖賢から、「陶鵲は民を表す」との考えを受け継ぎ、予王即位の際は、予王に民の想いを知ってもらおうと自分が作った陶鵲の中に赤い玻璃を入れて、割れた時まるで血が飛び散ったように見える細工を施した。予王が国政から離れて引きこもるようになったのには、一つにはこの陶鵲が遠因であった。

※「とうしゃく」と読む。王の即位式などの射儀に使う鳥を模した的。かつては本物の鳥を使っていたが、いつからか陶製のものが使われるようになった。陶の鵲を使うのは、一つには麒麟が殺生を嫌うとの理由がある(麒麟は現在この儀式に参加しない)。今では陶鵲と同じ数の鳥を庭に放すことになっている。
※「らし」と読む。陶鵲の製作を発注したり指揮をする役職。国政には関わらない。射儀を取り仕切る射鳥氏(せきちょうし)もいるが、羅氏が射儀を仕切ることもある。

祖賢(そけん)

アニメ未登場。射鳥師(陶鵲を作る職人)の一人。温厚で、どこか無邪気な印象を与える老人。射鳥師として名高く、丕緒をはじめ多くの弟子を抱えていた。悧王の豹変の後、突如逮捕される。

蕭蘭(しょうらん)

アニメ未登場。
丕緒の幼馴染みで、陶鵲を作る女職人。予王の女性追放令に対しては悠長にとらえていたが、結局は捕らえられそのまま行方不明となる。凌雲山から梨を投げ込む蕭蘭の姿を見て、丕緒は「蕭蘭がこの国のことを考えていない」と思っていたが、実際には、蕭蘭は目の前にある自分たちの仕事をこなすことに力を注いでいたのだった。蕭蘭が投げた梨からは花が咲き、蕭蘭のしたことが無駄ではなかったことを丕緒に知らしめることとなった。梨を投げ込むことは民が日々行う仕事のようなもので、目の前の仕事に打ち込むことは無駄ではないとの意味である。丕緒は、内に込められた蕭蘭の意図に気付こうともしなかったのだ。

青江(せいこう)

アニメ未登場。蕭蘭の弟子。蕭蘭が現実を見ていなかったとする丕緒に対し、「現実を真正面から見なかったけれど、現実を拒んでいたわけではない」と告げた。蕭蘭が持っていた陶鵲に関する陶鵲のアイデアを丕緒に伝える。

悧王(りおう)

アニメ未登場。
陽子から数えて4代前の景王。治世が60年を過ぎた頃、突如暴君となり、官吏につらく当たったり他者を陥れる言葉にしか耳を貸さなくなったりしたとされる。到底、無理としか思えぬ難題を官吏に拭掛けることも増え、異常に忠誠の印を求めたという。一説によると、太子を暗殺されて豹変したと噂される。

薄王(はくおう)

アニメ未登場。
陽子から数えて3代前の慶国女王。王政に興味を持たず、贅沢にふけったとされる。

比王(ひおう)

アニメ未登場。
先々代(予王の一代前)の慶国女王。薄王のように贅沢はしなかったが、自分の命令どおりに官吏が動くことを楽しみ、権威を弄んでいた。

蓮花(れんか)

アニメ未登場。
予王による女性追放令で故郷を焼かれ家族を失う。雁国に向かうため、街の生き残りと共に、航路である麦州に向かう途中で幼馴染みの明珠が自殺。麦州への道中で予王の崩御を聞く。皆故郷に戻ろうとする中、蓮花はこれ以上周囲に流されるのは嫌だとし、摂養なる街にとどまった。現地の人々に槐園という観測所で下働きの職を得る。
槐園の人々の浮世離れしたような生活に戸惑いながらもそれに慣れて言った頃、偽王と噂される舒栄の軍勢に襲われる。蓮花は、嘉慶ら槐園の人々が街を焼かれても何もしないと罵るが、嘉慶から「自分たちは暦を作ることしかできないし、それをしないといけない」とした。街は焼かれたが大した抵抗をしなかったことで他所よりも被害は少なくて済んだ。自分の役目に従事するとの摂養の考えにならい、今は嘉慶の配下の手伝いをする。

嘉慶(かけい)

アニメ未登場。
摂養郡の保章氏(暦の調整などを行う職)。槐園という園林で、農家や下働きの者たちと暦を作る。研究や職務に没頭するあまり、蓮花や部下を絶句させることもしばしばあった。自分たちが世間に対してできるのは、暦を作るくらいだが、それが市井にとって重要であることを理解している。

雁州国(えんしゅうこく)

雁州国はまたの名を雁国、もしくは雁という。先王たる梟王時代の末期には政治が乱れて国が荒れていた。現在の王、並びに麒麟は共に蓬莱で育った胎果である。難民の受け入れ制度が他国よりもしっかりとしており、海客であっても仕事を見つけて一定期間働けば戸籍を得られる。海客に対する差別意識が比較的低く、受け入れ態勢が盤石な為、楽俊は陽子を雁国に連れて行った。戸籍を得るまでは補助を受けることもできる。役所では海客相手に日本語を話せる職員を置き、電話番号や郵便番号を聞く。海客の受付の情報はやや古いもので、優香が自身の郵便番号を告げた際「何故郵便番号が7桁なのか。海客のふりをして保護を受けるつもりか」と食って掛かられた。
名君が治める国として奏国と並び称される。楽俊曰く「奏国は安穏とし、雁国は活気がある」。実際、街は巧国よりもにぎわっていた。

延王・尚隆(えんおう しょうりゅう)

出典: heart-to-heart.jp

声:相沢正輝

雁国の王。初登場は『月の影 影の海』。戦国時代の蓬莱に流され延麒と共に戻ってきた胎果である。蓬莱での名は小松三郎尚隆(なおたか)。十二国世界では「しょうりゅう」と名乗る。治世500年の名君として知られる。陽子を保護したり楽俊を大学に行かせるなどして見守る役割が多い。延麒曰く、「胎果の王が増えてほしいと思っている」とのこと。これは延王を頼ることに関して、陽子に気負いをさせないための延麒の気遣いと思われる。
普段から簡素な服を着ているが、この服装を家臣に認めさせるのに300年かかったという。市政の様子を見る為にお忍びで街に下りては、賭場などで(賭けに負けるなどして)働かされているのを家臣に見つかり、連れ帰られる。こういった問題行動も多いが、国のことを真剣に考えており、陽子に国を治めることについていくらかの助言を与えることもある。ちなみにお忍びの際に使う名は風漢(ふうかん)。王が蓬莱に向かうことは許されていない為、蓬莱へのお忍びは延麒に任せている。
難民や海客の保護にも力を入れており、日本語を話せる受付を置いたり、3年の間に仕事を見つければ戸籍を与えるといった措置も取っている。陽子はこうした体制を見て先に流れ着いた巧国との差、王の度量の差を痛感した。楽俊曰く、延王は様々な改革を成した辣腕家。雁国を活気ある国として知らしめることとなった。

『月の海 迷宮の岸』において泰麒が天に背いて王を選んでしまった(王ではないと認識した人物にひざまずいた)と思い込んでいた時には、延麒らと共に芝居を打って自ら他国の麒麟に土下座を強要する役を買って出た。泰麒が延王に土下座をできないことで、泰王として選ばれた驍宗が麒麟に偽りの制約ができないと教えるためだが、悪乗りをし過ぎて、泰麒の頭をつかんで下げさせようとした為延麒並びに景麒から「やりすぎ」とたしなめられている。剣の名手であり、軍職にあった驍宗との試合では、三本中二本を取って勝利している。

蓬莱にいた頃は領土の民たちと仲が良かった。民と親しくしていたのは、皆がいずれ国を治める自分を立ててくれていた為であった。民の願いや期待を背負っていることを自覚して「民があってこその国」との信条を持っていたのである。小松の領地を狙っていた村上水軍(実在の海賊)とにらみ合い状態にあり、その最中で蓬莱に戻った延麒を拾った。
村上水軍との戦の際、自分も含めた軍勢が囮になり、民を逃がそうとした。家臣からは逃げるように言われるが、民を見捨てるわけにはいかないと海上での決戦を行う。しかし逃がしたはずの民は自分たちから尚隆の力になる為に戦場に舞い戻り、皆倒されてしまった。
延麒の使令により生き永らえた尚隆は、「国と民が欲しいか」と言われ「欲しい。国のない殿様などお笑い草だからな」と答える。そして「もう蓬莱に戻れない」と言われながらも延麒と誓約を結び、雁国へと渡る。雁国は荒れたままだったが、「これだけ何もなければいっそやりやすいかもな」と延麒に語り掛け、蓬山にて即位した。
今でこそ名君の呼び声高いが、即位して20年ほどは、王としての器を疑われ守るべき民に反旗を翻されそうになったこともある。延麒からも国を滅ぼす存在と見なされ今ひとつ信用されていなかった。王としての覚悟や決意を語り、延麒からの信頼を得るに至った経緯は『東の海神 西の滄海』で語られる。

原作では小松家は村上一族同様に水軍であり、尚隆は三男であった。嫁を娶ったが、一度も会っていない間に子供が生まれていた(恐らくは尚隆の父と妻の子)。兄が二人いたが、若くして亡くなっており、自身が跡取りとなっていた。

延麒六太/馬鹿(えんきろくた/ばか)

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