屍鬼(小説・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『屍鬼』とは、小野不由美作のホラー小説およびそれを原作とした漫画、アニメ作品。藤崎竜によるコミック版が『ジャンプスクエア』にて連載された。アニメは2010年7月より12月まで全22話が放送された。人口1300人の小さな集落である「外場村」は、周囲から隔絶されたような地であり、いまだに土葬の習慣が残っている。ある日、山入地区で3人の死体が発見されたが、村人達の判断で事件性は無いとされ、通常の死として扱われた。しかし、その後も村人が次々と死んでいき、異変は加速していく。

『屍鬼』の概要

『屍鬼』とは、小野不由美作のホラー小説およびそれを原作とした漫画、アニメ作品。藤崎竜によるコミック版が『ジャンプスクエア』にて2008年1月号から2011年7月号まで連載された。
作者である小野不由美の意向により、原作と漫画では展開が異なるように製作された。原作は上下2巻、文庫版は5巻。漫画版はコミックスが11巻、文庫版が全4巻。スティーヴン・キングの『呪われた町』のオマージュ作品であり、小説は第52回日本推理作家協会賞長編部門候補作に選出され、ベストセラーとなった。
アニメは2010年7月より12月までノイタミナ枠他にて全22話が放送された。DVD・Blu-ray版では未放送の2話が収録されている。

人口1300人の小さな集落である「外場村」は、周囲から隔絶されたような地であり、三方を樅の林に囲まれている。昔から変わることのないこの村では、今でも土葬の習慣が根強く残っている。ある日、山入地区で3人の死体が発見されたが、村人達の判断で事件性は無いとされ、通常の死として扱われた。事件後、どこからか移築された古い洋館が村外の高台に建てられる。だが、その洋館には住人がなかなか引っ越して来ず、何者かに壊された村中の神像や、次々と増える死因不明の死者といった幾つもの異変が積み重なり、村は恐怖に支配されていく。

『屍鬼』のあらすじ・ストーリー

謎の変死事件

山の中で倒れているところを発見された清水恵

人口1300人の小さな村、「外場村」。外部からは1本の国道しか繋がっておらず、周囲から隔離され、土葬の習慣も未だ残っている。
ある日、山入地区で3人の村人の死体が発見された。村で唯一の医者の尾崎 敏夫(おざき としお)は、このことに不信感を持つが、村人達の判断で事件性は無いとされ、通常の死として扱われた。
外場村の住人で都会に憧れている清水 恵(しみず めぐみ)は、この何もかも田舎臭い村が大嫌いだった。そんな恵の関心事は最近都会から引っ越してきた結城 夏野(ゆうき なつの)と、兼正の山の斜面に建てられた洋館だった。都会から来た夏野に一方的な好意を寄せていたが、夏野には相手にしてもらえないでいた。しばらくして兼正の洋館に村の外からやって来た桐敷家が住み始めた。その洋館から視線を感じた恵は、洋館へと向かうがそのまま行方不明となってしまう。村人たちは恵を探し、山の中で貧血状態で倒れている恵を発見した。恵は貧血と無気力な状態が続き、3日も持たずに突然死してしまった。
恵の死から村人が連続で10人以上も死に、敏夫は疫病の発生を疑い始める。だが、どういう経緯で感染するのか、何故死亡するのかが全くわからず、解明できないままその後も村人が次々と死んでいき、異変は加速していく。
一方、兼正の洋館に引っ越して来た桐敷家は、屋敷に引きこもり村人とは顔を合わせることが殆どなかった。
ある日の夜、寺院の息子の室井 静信(むろい せいしん)は、桐敷家の娘の桐敷 沙子(きりしき すなこ)と出会う。沙子は静信の書いている小説のファンであり、小説を通して静信自身にも興味を持ち、夜にたびたび静信の元を訪れるようになる。

謎の死の元凶は屍鬼によるもの

死んだ恵の気配を感じ怯えていた夏野は、友人の武藤 徹(むとう とおる)の家に泊まることにする。その夜、夏野は死んだはずの恵が徹の首筋から血を吸うところを目撃する。それから徹の体調は悪くなり、やがて彼も命を落としてしまう。
恵は吸血鬼であるという仮説を胸に秘め、ビデオや書物を調べ始める。そして、死者が蘇って祟りを起こすという「起き上がり」にたどり着いた。夏野は村人の死の真相をはっきりさせるため、恵の墓を掘り起こすことを決める。恵の幼なじみの田中 かおり(たなか かおり)と、かおりの弟の田中 昭(たなか あきら)にも協力してもらい、恵の墓を掘り起こすとそこに恵の死体はなかった。夏野は恵が吸血鬼となって起き上がったことを確信する。

村で増え続ける死に手詰まりの敏夫の元にやって来た夏野は、村人の死には吸血鬼が関係しているのではないかという説を話した。敏夫は血液の検査からも謎の病は吸血鬼に関するものだと考え始める。そんなある日、妻の尾崎 恭子(おざき きょうこ)が貧血状態になり、その数日後に死んだ。敏夫は起き上がりの真相を突き止めるため、恭子が起き上がらないか病院の回復室で観察し始める。毎日寝ずに観察するが、変化はなく途方に暮れていた。死後5日目、起き上がった恭子に起き上がりの実態を探るため人体実験を繰り返した結果、心臓に杭を打つ、大動脈の破壊・切断、首を切り落とす、脳味噌を叩き潰す、といった方法で死ぬことが解明された。敏夫とともに連続死の調査をしていた静信だったが、敏夫の起き上がりの対抗策に静信は背を向けた。静信は沙子と交流を重ねるうちに彼女が起き上がりであることに気づき始めていたが、彼女に情が沸き生きるために人間を殺してきたとしても起き上がりを否定することができなかった。

起き上がりという超常的な力を得た「屍鬼」という存在に辿り着いた夏野は、起き上がった徹に命を狙われる。だが、友人である徹になら殺されてもいいと、徹に血を吸わせ死を覚悟した。しかし、夏野は死亡せず「人狼」として目覚めた。人狼は身体能力が屍鬼以上であり、日中も出歩けることができ、吸血以外の食事も出来るなど屍鬼よりも能力が高い存在である。その後、夏野は屍鬼の真相を突き止めた敏夫と共に起き上がりへの復讐を決意し、敏夫が屍鬼に狙われる前に吸血した。夏野は人狼となっても屍鬼に敵対する意思は変わらずにいた。

屍鬼狩り

祈祷師の伊藤 郁美(いとう いくみ)は、村にあまり姿を現さない桐敷家を怪しんでいた。桐敷家が引越してきてから死人が増えたことから、桐敷家が起き上がりの元凶だと考え、村人たちを連れて桐敷家へと乗り込む。桐敷の当主である桐敷 正志郎(きりしき せいしろう)だけが屋敷から出て来た。妻の桐敷 千鶴(きりしき ちづる)と、全身性エリテマトーデスを患っている沙子は姿を見せなかった。起き上がりであるものは脈がないため、郁美は正志郎の脈を確認するが正志郎には脈があり、起き上がりと証明することができなかった。だが、桐敷家こそ屍鬼の親玉であり、襲われた者の一部が起き上がり人を襲っていた。全身性エリテマトーデスを理由に姿を現さなかった千鶴と沙子も屍鬼である。正志郎は人間であるが、過去に自分を虐げていた両親を千鶴と沙子が殺害し、自分を救ってくれた2人を援助していた。実は、沙子は屍鬼のリーダーであり、彼女の目的は村を屍鬼の楽園にすることだった。
屍鬼を村人たちに証明する方法は、村人たちの前に屍鬼を晒すことだった。その策略を考えていた敏夫を千鶴が襲い、吸血された敏夫は千鶴の支配下となる。だが、その前に敏夫は人狼となった夏野に吸血されていたため、支配下となったふりをしていた。そんな中、村では祭りが行われ、「祭りに行きたい」と言う千鶴を敏夫が連れて行く。屍鬼を証明するチャンスだと、敏夫は千鶴を神社に引きずり込み、彼女に脈がないことを村人たちに知らしめ、屍鬼の存在を証明し公開処刑した。敏夫は村人たちを焚きつけ、屍鬼狩りを始める。
起き上がりに復讐を決意した夏野は、敏夫を狙撃しようとしていた正志郎を吸血し、自分の配下にさせ狙撃を妨害したり、起き上がりに捕らえられていた昭を救出したりと暗躍していた。屍鬼に抵抗する夏野を潰そうと現れた人狼の辰巳(たつみ)の圧倒的な戦闘力に苦戦を強いられるが、最後は山でダイナマイトを放ち辰巳を巻き込んで自爆した。
屍鬼の存在を知る前から交流を重ねていた沙子に対し、哀れみを感じていた静信は彼女の下に身を寄せていた。家族を殺された恨みと恐怖で暴徒と化した村人たちは屍鬼を虐殺していき、やがて屍鬼は沙子を残して全滅する。桐敷家に乗り込んできた村人から逃げるため、静信と沙子は神社へ向かうが、静信が村人に襲われ負傷してしまう。沙子を守るため山中に逃げ込むが力尽きてしまう。沙子は生き延びるため静信の血を吸い、教会に逃げ込むが村人に見つかり襲われてしまう。そこへ沙子に吸血された後人狼として起き上がった静信が現れ、村人を殺害し沙子と共に村を脱出し姿を消した。
屍鬼狩りをしていた村人が山入に火を放ったことで大規模な山火事になり、敏夫と生き残った村人たちも村を脱出した。こうして屍鬼による惨劇は幕を閉じた。

『屍鬼』の登場人物・キャラクター

主要人物

尾崎 敏夫(おざき としお)

CV:大川透

村で唯一の病院の院長。静信とは幼馴染み。
ぶっきらぼうで不用意な憎まれ口を叩くことが多いが、医師としての責任感は強く、スタッフからの信頼も厚い。村人からは「若先生」と呼ばれている。
医者という立場から、次々と起こる村人たちの死が病によるものではなく、未知の何者かが意図的に起こしているものだと気づき、村を守るために起き上がりたちへの抵抗を試みる。その過程で起き上がりを狩ることに反対する静信と対立し、後に決別することとなる。
当初は起き上がりの存在を受け入れられない村人たちの中で孤立していたが、自分を殺すために近づいてきた千鶴を利用して起き上がりの存在を公にすることができた後は、屍鬼狩り集団の中心格として指揮をとった。

室井 静信(むろい せいしん)

CV:興津和幸

寺院の息子。村の人々からは「若御院」と呼ばれている。本業は僧侶で、住職である父の信明が寝たきりになっているため、代行して寺全体を取り仕切っている。
住職の傍ら小説を執筆し、教冊の著者を発表する小説家でもある。沙子は静信の小説を非常に気に入っており、静信のファンである。
敏夫とは幼なじみであるが、敏夫とは真逆の温厚で優しい性格をしている。

桐敷 沙子(きりしき すなこ)

CV:悠木碧

桐敷家の一人娘。
読書が趣味で、静信の小説のファンである。
幼少期に西洋人の人狼に襲われ、蘇生した起き上がり。全身性エリテマトーデスを装い、日中は外へ出歩かない。
村の全ての屍鬼、人狼を統べる存在でもあり、本作の黒幕。
外部から遮断された外場村に目を付け、村に起き上がりの社会を作る計画を企てていたが、夏野や敏夫に気づかれ、最終的には全村人に知れ渡ることとなる。暴徒化した村人に殺害されかけるが、人狼となった静信に救われ、彼と共に村を脱出する。

結城 夏野(ゆうき なつの)

CV:内山昂輝

山で創作活動を行いたいという芸術家の両親に連れられ、都会から外場村に越してきた高校1年生。
ドライかつ冷静な性格で、恵の好意には気づいてはいるが、その好意を疎ましく思っている。
両親は入籍しておらず、「結城」は父親の姓であり、戸籍は母親の姓である「小出」である。
村での唯一の親友である徹が屍鬼となり、徹に吸血され人狼として蘇る。

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