四畳半神話大系(小説・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『四畳半神話大系』とは、森見登美彦による日本小説、及びそれを原作として制作、放送されたアニメ作品。
小説は単行本では2005年に太田出版から、文庫本では2008年に角川書店から刊行されている。
アニメは2010年に放送された。
そして森見登美彦原作の「夜は短し歩けよ乙女」の映画化を受け、2017年1月から特別放送が開始された。

1つのサークルにしぼるリスクを避け、3つのサークルに同時加入した「私」。
その1つであるヒーローショー同好会での活動中、「私」は、ある男からボディカードの依頼を受ける。

その男が連れてきたのは、「私」の理想を絵に描いたような黒髪の乙女、香織さんだった。
彼女の正体は人間ではなく、ラブドールである。
だが、そんな香織さんとの生活を続けていく内に、「私」は香織さんに確かな愛情を抱く。
そしてそれと同時、香織さんも自分のことを愛しているのだと言う錯覚すら抱くようになってしまう。

しかし「私」はその時、同時に2人の女性からもアプローチを受けていた。

生身の人間との愛を選ぶか。
それとも、命のない香織さんとの愛を選ぶか。

ボディガードを依頼した男がやってくるその日。
「私」は香織さんと駆け落ちすることを決心する。

だが、ボディガードを依頼した男―香織さんに狂信的なまでの愛を捧げる城ケ崎先輩から蹴りを食らい、「私」はようやく、目を覚ましたのだった。
そして自らの選択に対し、強い、強い後悔を抱くのだった。

八話『読書サークル・「SEA」』

3つのサークルに同時加入すると言う選択肢をとった「私」。
その1つである読書サークルで、「私」は、ただただ不毛な日々を送っていた。

そんな中、小津から1冊の本を受け取る。
小津が古本屋で購入したと言うその本には、元の持ち主であろうと思われる女性の名前が書かれていた。
そしてこれがきっかけとなり、樋口恵子と言うその名前の女性と「私」は文通を始めることになる。

自分を良く見せるため、手紙の中で「私」は嘘を積み重ねていく。
その内、現実の「私」と手紙の中の「私」の境界線があいまいになっていくような感覚を、「私」は感じるようになる。

そんな折、樋口恵子から、実際に会ってみたいと言う手紙が来る。
その待ち合わせの日は、くしくも他の2人の女性とも約束がある日だった。

どうすべきか迷った挙句、「私」は樋口恵子と面会することに心を決める。
しかし、待ち合わせの場所で待っていたのは小津だった。

そう、樋口恵子の正体は小津だったのだ。

その現実に打ちのめされた「私」は、自らの選択が過ち以外の何ものでもなかったことを思い知り、そのことにも打ちのめされるのだった。

九話『秘密機関・「福猫飯店」』

数々のサークルがある中、その怪しさゆえ避け続けてきた秘密機関「福猫飯店」を選択した「私」。
そこは様々な組織の配下にして、情報を収集する機関だった。

「私」は情報収集のために様々な組織へと配属されるが、ことごとく失敗を積み重ねていく。
加えて忌々しいことに、天性の悪巧み能力によって、小津には先を越されてしまう始末。
しかもその、見た目も性格も妖怪の如き小津に彼女がいたことを知った瞬間、「私」の中で何かが崩れ去っていく。

強く、強く夢見てきた薔薇色の学生生活。
それを手に入れるためにあらゆる選択をとってきたが、その末路がこれである。

もしかしたら自分は、どのような選択をしたとしても、薔薇色の学生生活を手に入れることは不可能な存在なのではないか。
そんな思いに駆られた「私」は、これまでとは違う思いを抱くのだった。

どうあがいても、何かを選んでも、こんな結末しか待ち受けていないなら、何もしないのが一番だ、と。

十話『四畳半主義者』

どのサークルも選ばない、どのサークルにも加入しないと言う選択肢をとった「私」。
薔薇色の学生生活など、夢、幻。
そんな夢、幻よりも、自分が住んでいるボロアパートの四畳半、この世界こそが己が支配することができる確かな世界である。
そんな思いから、四畳半主義者として、妄想世界に楽しみを求めつつ、ほとんど引きこもりのような生活を送り続けていた。

そんな生活が2年、続いたある日。
ひょんなことから部屋から出ようとドアを開けると、そこには同じような四畳半の部屋が広がっていた。
ドアを開けても、開けても、そこにあるのは四畳半の空間である。

どうやら四畳半の世界に閉じ込められたようだと、「私」は思い至る。
最初はそれでも良いとタカをくくっていた「私」だが、その内、強い孤独感に苛まれていく。

十一話『四畳半記の終わり』

四畳半の世界に閉じ込められてしまった「私」。
その前に広がる四畳半の部屋は、同じような部屋でありながら、どこか異なり、そして少しずつ違う「私」が存在しているようだと言うことに気が付く。

延々と続くような四畳半の世界。
その中で「私」は、「私」と関係があった人物たちの推移に興味を抱いていく。
城ケ崎先輩、羽貫さん、樋口師匠、相島、明石さん。

そして、小津。妖怪の如き、小津。
つまらないちょっかいに全力を尽くし、無意義なことを嬉々として行う男。
こんな男に出会い、こんな男と学生生活を送っていたら、それはさぞかし楽しい学生生活になっていただろう、と「私」は思う。
そして気が付くのだった。
「私」にとって、小津はたった一人の親友であったようだ、と。
そんな小津に振り回されはしたものの、これまで選んできた選択肢の結果も、じゅうぶんに薔薇色の学生生活であったではないか、と。

そのことに気が付いた私は、無事、四畳半の世界から脱出することに成功する。
その流れで、第一話のラスト、「黒いキューピット」の行為のために、賀茂大橋の欄干に追い詰められた小津を発見した「私」は、その身を挺して小津を命の危機から救う。
更に同じく、第一話で果たすことができなかった明石さんとの約束を、再度、交わすことにも成功したのだった。

後日。
命は助かったものの、小津は骨折で入院していた。
そこにお見舞いに来た「私」の一人称は「俺」へと変わっている。
そしてそんな「俺」が、まるで小津のような笑み浮かべたところで、物語は終了する。

『四畳半神話大系』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):ASIAN KUNG-FU GENERATION『迷子犬と雨のビート』

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『迷子犬と雨のビート』。

2010年の放送時には、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが担当。楽曲は『迷子犬と雨のビート』。
2017年の特別放送時には、シナリオアートが担当。
ただし楽曲についてはカバーと言う形で、『迷子犬と雨のビート』が使用されている。

ED(エンディング):いしわたり淳治&砂原良徳+やくしまるえつこ『神様のいうとおり』

2010年、放送時のエンディング。

2010年時には、いしわたり淳浩&砂原良徳+やくしまるえつこが歌う『神様のいうとおり』が使用されていた。
2017年、特別放送時には、オープニング同様、シナリオアートが担当。楽曲は『ラブマゲドン』が使用されている。

『四畳半神話大系』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

小津との出会いのシーン

各話では、毎回、小津との出会いが描かれている。
そして毎回、小津を徹底的にこきおろす「私」の思いが語られる。

たとえば第一話においては、「私」は小津をこのようにこきおろしている。

『夜道であえば10人中8人が妖怪と間違え、2人は妖怪と納得する。
他人の不幸をおかずにして飯が食える、およそほめるべきところが1つもない男だ』

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