ペンギン・ハイウェイ(小説・アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ペンギン・ハイウェイ』とは、突如街に現れたペンギンの謎を突き止めようとする少年の恋と成長を描いた、森見登美彦のSF小説。2018年にアニメ映画化され、Netflixで公開された。
小学生のアオヤマの暮らす町に、突如大量のペンギンが現れる。淡い思いを寄せるお姉さんから「この謎を解いてごらん」と焚きつけられたアオヤマは、ペンギンについて独自に調査を開始する。アオヤマの研究は、やがて町の奥に眠っていた壮大な秘密と、お姉さん自身がその謎と深く結びついていることを明らかにしていく。

『ペンギン・ハイウェイ』の概要

『ペンギン・ハイウェイ』とは、突如街に現れたペンギンの謎を突き止めようとする少年の恋と成長を描いた、森見登美彦のSF小説。2010年に第31回日本SF大賞を受賞し、2018年にはアニメ映画化されNetflixで公開された。

小学生のアオヤマの暮らす町に、突如大量のペンギンが現れる。淡い思いを寄せる歯科助手のお姉さんから「この謎を解いてごらん」と焚きつけられたアオヤマは、ペンギンについて独自に調査を開始する。
友人のウチダやクラスメイトのハマモトもそこに参加する中、アオヤマの研究は町の奥に眠っていた壮大な秘密と、お姉さん自身がその謎と深く結びついていることを明らかにしていく。

『ペンギン・ハイウェイ』のあらすじ・ストーリー

街に溢れるペンギン

突然街に現れるようになったペンギンを見つめるアオヤマ(右)

小学4年生のアオヤマは、持ち前の研究者気質で様々な事柄を詳しく分析して調べることを趣味にする、女性のおっぱいに興味津々の少年である。クラスメイトで友人のウチダと探検隊を組織して町を流れる川の源流を探り、クラスで一番チェスの強いハマモトに勝とうと努力し、ガキ大将気質の同級生スズキからは目の敵にされつつ、通っている歯科医の助手のお姉さんに憧れる。そんな少し変わった、しかしどこにでもいる子供だった。
ある時、アオヤマたちの暮らす街に、どこからか大量のペンギンが現れるという事件が発生する。大いに好奇心を刺激されたアオヤマは、ウチダと一緒にペンギンの正体を突き止めようと調査を開始する。

お姉さんの秘密

ペンギンは車に轢かれても動き回るほど頑丈で、町から遠く離れると消えてしまう不思議な性質を持ち、見た目がペンギンなだけのまったく別の存在であるように思われた。ペンギンたちはまったく食事をせずとも生きていくことが可能らしく、アオヤマは彼らが町のどこかからなんらかのエネルギーを摂取していると判断し、これを「ペンギン・エネルギー」と名付ける。
さらに調査を進めていく中、アオヤマはお姉さんがペンギンを作り出していることを知る。しかしどうしてペンギンを作れるのか、このペンギンがなんなのかは、彼女自身にも分からないということだった。
アオヤマはお姉さんと様々な実験を行い、彼女がペンギン以外にも様々なものを生み出せることを突き止める。そんな中でお姉さんと交流する機会が増えたアオヤマは、「自分はどうしてこうまで彼女に惹かれるのか」という初恋の謎に戸惑うのだった。

“海”の共同研究

お姉さんからチェスについてのレクチャーを受けたアオヤマは、夏休み直前についにハマモトから一勝をもぎ取る。ハマモトは素直に敗北を認めてアオヤマを称賛し、彼に力を貸してほしい旨を伝える。彼女は小学校の近くにある森の中に巨大な水の塊が浮いているのを発見し、これに“海”と名付けて今までずっと1人で調べていたのだが、限界を感じて協力者を探していたのだった。ペンギンの調査で多忙だったアオヤマだったが、“海”を見て研究者気質を刺激され、ウチダと共にハマモトに協力することにする。
“海”は日によって拡大と縮小を続けており、一見水の塊にしか見えないが、調査のために潜り込ませたオモチャの探査艇を完全に飲み込んで消滅させてしまうなど通常の物質ではないようにも思われた。研究拠点となるキャンプを立てたり、3人でトランプで遊んだりしながら、アオヤマとウチダは今まであまり話したことのなかったハマモトとも次第に親しくなっていく。

ある日、森の中に向かうアオヤマたちを追ってきたお姉さんもまた“海”の存在を知ることとなり、彼女が作り出すペンギンが“海”と深い関係にあることが明らかとなる。ペンギン・エネルギーはどうやら“海”から発せられているらしく、さらにペンギンは“海”を破壊することができたのだ。
アオヤマに好意を抱くハマモトは、彼がお姉さんに恋をしていることを察して彼女を警戒。一方のアオヤマは、研究の中で“海”から分離した水の塊に襲われかけたことをきっかけに、「これは自分たちの手に負える存在ではないのではないか」と考え始める。

ジャバウォックの出現

ペンギンと“海”に関連性があることに気付いたアオヤマは、お姉さんが最近何も食べていないという話を聞いて、「ペンギン・エネルギーは“海”から放たれていて、お姉さんもその影響を受けている」と推測。“海”を壊してしまったらお姉さんも無事では済まないのではないかと考え、彼女にもうペンギンを作らないよう伝える。
同じ頃、大学で気象の研究をしているハマモトの父が、「町の森の中にある何かが異常な気象現象を発生させている」と気付く。森の中の探索を進める一方で、ハマモトの父は偶然娘の研究ノートを見てしまい、“海”の存在とアオヤマたちの調査内容、そしてお姉さんがそこに深く関わっていることを知る。

大人たちが本格的に調査を始めようとしていることを知ったアオヤマは、「“海”の調査は凍結すべきだ」と仲間たちに提案。これはスズキたちのグループに“海”の存在を知られたこと、大人たちに知られるのも時間の問題だということに加えて、調査の手がお姉さんにも及ぶのを恐れたのも理由の1つだった。ハマモトは自分の研究が奪われることにも、アオヤマがお姉さんを庇っていることにも傷つき、口論の末に3人の研究グループは瓦解する。
その頃、カバの頭に手足を付けたような怪物が町で目撃されるようになる。お姉さん曰くこの怪物はジャバウォックという名で、彼女が作り出すペンギンを襲って食べてしまうという。ジャバウォックの出現を機に、“海”はさらに活性化する。

“海”の消滅とお姉さんとの別れ

アオヤマ、ウチダ、ハマモトの共同研究が事実上打ち切られたある日、スズキが小型のジャバウォックを捕まえて学校に持ち込む。これがハマモトの父の研究グループの耳にも入り、詳しい話を教えるよう乞われたスズキは、“海”のことまでもしゃべってしまう。しかしこの頃には“海”は見上げるようなサイズにまで巨大化しており、調査に向かったハマモトの父たちを飲み込んでしまう。
これを知って半狂乱になるハマモトを見て、アオヤマは「“海”のことを一番知っているのは自分たちなのだから、自分たちでハマモトの父を助けよう」と決意。そのためにはお姉さんに会う必要があるとハマモトを説き伏せ、ウチダと、“海”のことを大人に話してしまったことを後悔するスズキにも手伝ってもらって学校を抜け出す。仲間たちが大人たちに次々取り押さえられる中、彼らに送り出されたアオヤマは、なんとかお姉さんの下まで辿り着く。

“海”とは世界に空いた「穴」のようなものであり、これが大きくなりすぎると世界そのものに悪い影響がある。お姉さんはペンギンを生み出してそれを修復するための存在で、ジャバウォックはそれを阻害するために誕生した。それがこれまでの分析と推測からアオヤマが到達した仮説だった。お姉さんは「故郷の記憶も、両親との思い出もあるのに、私は人間じゃなかったのか」と苦笑しつつ、漠然と感じていた真実がアオヤマの仮説と同じであることを告げる。役目を果たし終えたら彼女もまた存在する意味を失うだろうことを互いに感じつつ、アオヤマとお姉さんはハマモトの父と世界を救うために大量のペンギンと共に“海”の中へと突入する。
ハマモトの父を始めとする研究者たちと合流した後、お姉さんはアオヤマに別れの言葉を告げて“海”を消滅させる。アオヤマもハマモトの父たちも無事に帰還するが、お姉さんだけはそのまま姿を消す。

ハマモトと仲直りし、彼女の父を一緒に助けようとしたスズキともなんとなく親しくなり、相変わらずウチダと友人として過ごしつつ、「君が“海”の謎を全て解いたら、きっとまた会える」というお姉さんの最後の言葉を胸に、アオヤマは今日もおっぱいのことを考えながら様々な研究と勉強に打ち込んでいくのだった。

『ペンギン・ハイウェイ』の登場人物・キャラクター

アオヤマ

CV:北香那

小学4年生の少年。歳の割には冷静で論理的な思考をする人物で、筋金入りの研究者気質。女性のおっぱいに興味津々。通っている歯科の助手のお姉さんに淡い想いを寄せている。

お姉さん

CV:蒼井優

アオヤマが通う歯科医で働いている女性。アオヤマの憧れの女性で、週に一度近所の喫茶店で彼にチェスについてレクチャーしている。
特定の条件下でペンギンを生み出す能力を持つが、本人もどうしてこんなことができるのか分かっていない。出身は海辺の町で、両親や地元の友人たちと過ごした記憶もあるが、これが本物かどうかは定かではない。

ウチダ

CV:釘宮理恵

アオヤマのクラスメイトで友人。2人で探検隊を組織し、町を流れる川の源流を探している。
気が弱く、緊急時には硬直して動かなくなったりアオヤマを見捨てて逃げ出したこともあるが、変わらぬ友情を築いている。

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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