PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

オズワルト(左下)の生み出した鎖に囚われるレイシー(中央)

バスカヴィルに選ばれる者は周りに歪みをもたらしやすい者であり、その当主であるグレンともなれば当然のことその力も強くなる。そのため、グレンとなる者の周りに禍罪の子が存在するとその子はグレンが作り出した歪みの一部だとされ、危険な存在としてアヴィスに堕とされることになっていた。それだけでなく、自分が作った歪みは自分で対処するべきだという考えのもと、グレンの傍に存在する禍罪の子は、グレン自身が自らの手でアヴィスに堕とすことが義務付けられていた。次期グレンであるオズワルトの妹として生まれたレイシーはオズワルトが生み出した歪みと見なされる。だからこそレイシーは、オズワルトが自身の手でアヴィスに堕とすため、彼がグレンの力のすべてを引き継ぐ日まで生かされていたのであった。そして、オズワルトがグレンとなり、レイシーがアヴィスに堕とされる時がやってくる。オズワルトは躊躇しながらもレイシーの頭に手を当てて、「レイシー=バスカヴィル、我が断罪の鎖を以てして、汝に裁きをくだそう。」「汝の罪…それは…アヴィスの平穏を脅かし、その禍罪の瞳を持って生まれ落ちたことである」と告げた。その瞬間、突如現れた大きな鎖がレイシーの躰を拘束し、レイシーはアヴィスへと堕ちていったのであった。

「それ以上、私の前で奴の名を口にするな」

リーオの躰を支配してパンドラの人間を殺したオズワルト

襲い掛かったパンドラの人間の命を絶ったときのオズワルトの言葉である。オズワルトの魂を封じていたすべての封印の石が壊されたことでその魂が目覚め、リーオの躰はオズワルトに明け渡された。パンドラの屋敷で話していたオズワルトとルーファスを、異変に気付いたパンドラの人間たちが取り囲み、次々に「ジャックは英雄だ」「『鎖』を破壊したのはバスカヴィルに決まっている」と言い放った。それを聞いたオズワルトは「知らぬ間に信じ込まされている」と薄く笑い、彼らのことを「愚かで無様だ」と言った。その言葉を聞いたパンドラの人間は激昂してオズワルトに襲い掛かるが、オズワルトはジャバウォックの力を行使していとも簡単に薙ぎ払う。血に塗れて倒れこみ、かろうじて息があった者がジャックの名を呼んだのを目にとめたオズワルトは、「それ以上、私の前で奴の名を口にするな」との言葉とともにその口に剣を突き刺し、息の根を止めた。その冷酷無慈悲な様子は、グレンに心酔しているロッティでさえも慄くほどであった。かつては友と信じていたジャックに裏切られた悲しみは、異様なまでの彼への怒りと嫌悪に形を変えていたのである。

「…ここまでだ。私にレイシーは殺せない」

幼いレイシー(左下)を前に膝をついたオズワルト(中央)

目指した過去に渡って幼いレイシーを前にしたオズワルトの言葉である。アヴィスの核の力に巻き込まれたオズワルトは、オズ達とともに本来目指した過去、自分とレイシーがバスカヴィルとして目覚める前の時点へと行き着いた。雪の中で幼いレイシーに出会ったオズワルトはようやく、悲劇の元凶となったレイシーを殺すという目的を叶えるチャンスを得ることとなる。しかし、レイシーを前にしていざ殺そうとしたとき、オズワルトは剣を振り下ろすことができず、「…ここまでだ。私にレイシーは殺せない」と言ってその場に崩れ落ちた。そして、「にいさま」と言って振り返ったレイシーの目線の先に幼いオズワルトが現れ、二人は手を繋いでその場を後にする。心から妹を大事に思う自らの姿と、去り際に笑顔で手を振ったレイシーの笑顔を見たオズワルトは、悲しげでありながらもどこか安心したような笑顔で彼らを見送ったのだった。

レイシーの名言・名セリフ/名シーン・名場面

レイシーの概要

レイシー

レイシーは、100年前の時代に生きたオズワルトの妹であり、二人のアリスの母である。紅い瞳をもつ禍罪の子であったために、アヴィスの奥底に自由に潜り、アヴィスの核と接触することができた。核に双子の黒うさぎの人形を送り、オズの始まりを作った人物である。気まぐれで自由奔放な性格であり、常識の外から物事を見つめる独自の視点をもつ。この世のすべてに絶望していたジャックを路地裏で見つけたことをきっかけに、彼にとっての生きる希望になった。実の兄であるオズワルトが次期グレンの器であったために彼女の存在は歪みと見なされ、グレンを受け継いだ後にオズワルト自身の手でアヴィスへと堕とされ、身も魂も完全に消滅した。

ジャックとレイシーが出会った場面

ジャックの前に現れたレイシー

ベザリウス家の子ではありながらも母親が妾であったことから蔑まれながら生きてきたジャックは、母親と死別し、すべてを憎みながら路上生活を送っていた。絶望の淵にいた彼を救ったのは、突如現れた不思議な少女・レイシーである。レイシーは「私の名前はレイシーっていうのよ。ねぇ、あなたのお名前は?」と尋ね、ジャックは「…オレは…ジャック。ただの…ジャックだ…」と答えた。レイシーの気まぐれでしかなかったこの出会いが、ジャックの一生を大きく変えることになる。何事にもとらわれずに自由奔放にふるまうレイシーにジャックはいつしか魅了され、彼女の存在そのものがジャックの生きる意味になっていった。しかし、恐ろしく純粋で歪なジャックの想いは、後にサブリエの悲劇を引き起こすこととなる。偽りに満ちたジャックの新たな人生の始まりとなった場面である。

「ジャック、用意された答えをそのまま受け入れているだけじゃ、思考する力が弱ってしまうわよ?同じ答えにいき着くことがわかっていても、”なぜ?”というフィルターを通すことが大事だと私は思うわ」 「常識なんていう言葉は嫌いよ。あらゆる角度から世界を眺めてみて。残酷で滑稽で、美しいこの世界を―――」

ジャック(左)の前で歌うレイシー(右)

ジャックと共に過ごす間にレイシーが彼にかけた言葉である。妾のまま捨てられた母を見ていたジャックは、両親だけでなく周りの人間全てを憎み、自分にはもう何もないからどうでもいいのだと言う。しかしレイシーは、何もないのではなくただ生きる覚悟がないだけだ言って、すべてを諦めようとするジャックの考えを否定した。そして彼女は、「ジャック、用意された答えをそのまま受け入れているだけじゃ、思考する力が弱ってしまうわよ?同じ答えにいき着くことがわかっていても、”なぜ?”というフィルターを通すことが大事だと私は思うわ」 「常識なんていう言葉は嫌いよ。あらゆる角度から世界を眺めてみて。残酷で滑稽で、美しいこの世界を―――」と話し、華やかに歌い出す。何事にも縛らずに常識の外から物事も見つめるレイシーの人生観は、ジャックに生きる希望を与えたのである。

血の雨の中でレイシーが踊る場面

血の雨の中で笑うレイシー

偶然出会ったジャックとレイシーはつかの間のひと時を共に過ごし、誰のことも気にせず自由にふるまうレイシーに、ジャックは次第に惹かれていく。しかし、赤い瞳をもつ禍罪の子供であるレイシーが町の男の目をとまり、町の外に出た二人は、レイシーを売り払おうと目論んだ男達に襲われた。男達に傷つけられて地面に倒れこんだジャックを見たレイシーは、静かな暗い表情で「私のジャックを傷つけるなんていい度胸ね」と呟く。その瞬間、男達の肢体は無残に切り裂かれ、顔を挙げたジャックが見たのは、血の雨が降る中で笑うレイシーと背後に浮かぶ大きなうさぎの影だった。男達の血にまみれたレイシーは「見て、ジャック。真っ赤な雨よ!」と言って大声で笑い、歌を口ずさみながら踊り狂う。残酷ながら美しい彼女の姿は、ジャックをこのうえなく魅了したのであった。

「この眼のおかげで、私は人間の残酷さと醜さを知ることができたもの。それって、つまりは美しさを知ることと同じよ。ほんの少しだけ味方を工夫すればいいだけ。当たり前だと思っていたものが奇跡の産物だと知った時、あらゆる事象が美しく、儚く、尊いものだと感じられる。私は、この世界を愛しているわ」

オズワルト(上)に語り掛けるレイシー(下)

アヴィスに堕とされる直前にレイシーがオズワルトに告げた言葉である。グレンとなるオズワルトの妹として産まれた禍罪の子であるレイシーは、オズワルトがグレンの役目を引き継いだとき、自らの兄の手によってアヴィスの闇に堕とされることが運命づけられていた。その日が迫り、レイシーが望むのであれば彼女を逃がすことも厭わない様子を見せるオズワルトに、レイシーは「この眼のおかげで、私は人間の残酷さと醜さを知ることができたもの。それって、つまりは美しさを知ることと同じよ。ほんの少しだけ味方を工夫すればいいだけ。当たり前だと思っていたものが奇跡の産物だと知った時、あらゆる事象が美しく、儚く、尊いものだと感じられる。私は、この世界を愛しているわ」と告げる。禍罪の子としての悲しい運命を背負ったおかげで人間の醜さや残酷さを知ったレイシーは、逆説的にその儚さ、尊さを知る人でもあったのだった。

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