PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

オズの躰を借りてパンドラの人間に命令を下すジャック

100年前の事実と今世界が陥っている危機を語ったジャックが最後に発した言葉である。オズの身体をジャックが支配したとたん、周りの人間は全てを見透かされたような気持ちになって抗えなくなっていた。そしてジャックは語り出す。バスカヴィルの目的はアヴィスの意志を手に入れることであり、100年前、彼らはアヴィスに捧げる生贄とするためにサブリエで大虐殺を行った。世界をアヴィスへと堕とそうとするバスカヴィルの目論見は四大公によって阻止され、バスカヴィルの当主であるグレン=バスカヴィルを失ったバスカヴィルは姿を消した。しかしジャックは、「グレンは死んではいない」と言い、「そして彼らは再び巻き起こす、サブリエの悲劇をこの大地に!…だが私の魂は常にこの少年と共にある。彼は君達を導き、やがてバスカヴィルを倒すための柱となるだろう。オズ=ベザリウスを護り抜け。それこそが四大公に仕えし気高き騎士達の…使命だ!!」と皆に命じた。その言葉を聞いたパンドラの人間たちは思わず跪き、その命を受けたのであった。

「ただ私にとってあいつは、お互いの価値観で刺激し合える尊き存在…。そう…つまりは――親友なんだよ」

オズワルトを友だと言うジャック

ロッティにグレンとの関係を問われたジャックの答えである。100年前のサブリエの悲劇が起こる前、ロッティはすでにジャックと知り合っていた。当時のベザリウス家はただの三流貴族であり、その家の三男坊であるジャックは、自らを「しがないオルゴール職人」と名乗る。周囲からの期待が薄いせいかあまりに自由奔放にふるまうジャックを疎ましく思うロッティだが、敬愛する当主であるオズワルトとジャックが親しい間柄であるように見え、気になるあまり彼らの関係性を尋ねた。それに対するジャックの答えは、「ただ私にとってあいつは、お互いの価値観で刺激し合える尊き存在…。そう…つまりは――親友なんだよ」である。日頃から独りでいることを好むオズワルトを見ていたロッティはその答えを聞いて驚くが、彼がジャックに笑顔を見せているのを見て嬉しく思っていた。しかし、その穏やかな時間は長くは続かず、相対する彼らが元となってサブリエの悲劇が起こるのである。

サブリエに残る記憶の中でギルバートがジャックの魂のカケラと出会った場面

笑ってギルバート(左)に手を差し伸べるジャック(右)

サブリエを訪れて大穴の奥へと進んだオズ、ギルバート、アリスは、アヴィスの力が見せる幻影によってはぐれ、それぞれの記憶の世界へと誘われる。オズはサブリエの悲劇の中でオズワルトと遭遇し、アリスは誰かの墓を訪れるジャックの記憶の残滓を目にし、そしてギルバートが出会ったのは、幻影の中に魂のカケラとなって残っていたジャックその人であった。「魂のカケラとなった私を見つけるのはいつもオズでもアリスでもない。君だ、ギルバート」と言い、まるで今ここにいるかのように話すジャックに、ギルバートは自分がかつて仕えた主人はジャックではないのかと問いかけた。これまでに思い出した記憶からかつて主人を護れなかったことを知ったギルバートは、自責の念に駆られていた。しかしジャックは「君はちゃんと護ってくれた」と言い、オズワルトから自分を護ろうとしてギルバートが刃を受けたというそのときの出来事を話した。彼はギルバートが再び自分を見つけてくれたことを嬉しいと言い、優しく笑いながら感謝の言葉を告げたのであった。しかし、実際には、ギルバートがかつて仕えていたのはオズワルトであり、このときジャックが話したのは真の黒幕であったジャックが故意に告げた偽りの過去であったことが明らかになるのである。

オズの躰を支配したジャックがユラの命を絶った場面

オズの躰を使ってユラ(右下)を手に欠けたジャック(左)

儀式が行われるはずだった時刻が過ぎ、ユラの目論んだサブリエの悲劇の再来は防がれたかに見えた。しかしオズが安心したのもつかの間、その場での時間の基準が他の場所とは違っていたために儀式はまだ続いていたことが判明する。そして、ユラの手によって封印の石が壊されようとしたとき、オズの放った鎖がユラの胸を貫いた。オズがユラを手にかけてしまったのかと焦るアリスだったが、その直後、オズは彼女に「大丈夫だよ、アリス。やったのは私だから」という言葉をかけた。ユラが再び悲劇を起こそうとした瞬間、オズの魂は意識の奥に追いやられ、代わりに躰を支配したジャックがユラを制したのである。崇拝するジャックの魂を目にして歓喜の表情を見せるユラを冷淡な表情で見下ろしたジャックは、「…貴方のその魂が、百の巡りの後、再びこの地に導かれんことを―――さようなら」という言葉とともに、躊躇なく剣を振り下ろしてその命を絶ったのであった。

「グレンの力は強大で危険で、とても…とても、邪魔なんだよ」

オズ(右上)の意識を封じるように語り掛けるジャック(下)

オズの躰を乗っ取る直前にジャックがオズにかけた言葉である。オズの躰を使ってジャックがリーオを攻撃した後、沈みゆくオズの意識の中に現れたジャックは、グレンの魂をもつリーオにとどめを刺さなければならないと告げた。それを拒絶しようとするオズに、ジャックは、「グレンの力は強大で危険で、とても…とても、邪魔なんだよ」と言う。この静かな「邪魔である」という言葉からは、これまでただ英雄として皆に崇められていたジャックの身勝手さ、そこはかとない恐ろしさがうかがい知れる。実際に事件の黒幕はジャックであり、このときの彼の言葉は、これから明かされる真実の序章的な役割を担っている。

ジャックがレイシーを取り戻す希望を手にした場面

レイシーを迎えに行こうとオズワルト(上)を誘うジャック(下)

グレンとして覚醒したオズワルトによってレイシーがアヴィスに堕とされ、ジャックは唯一の希望を失った。しかし、生きる屍と化していたジャックの元に先代グレン・レヴィが訪れたことで、ジャックの運命は変わっていく。レヴィはジャックに、レイシーがアヴィスに堕とされた理由、そして、レイシーがアヴィスで生み落とした子供であるアリスの存在と、その出生の秘密を明かす。変化を求めたレヴィは、レイシーがアヴィスに堕ちる前、彼女にある実験を持ちかけていた。それは、今は形がない存在であるアヴィスの核に器を与えればその器を通じて人間がアヴィスの力を行使できるようになるのか、というものであり、レイシーが子供を身籠ったままアヴィスに堕ちてそこで出産すれば、その子供が器となり得るのではないかというのであった。器という自由な躯を手に入れてアヴィスが孤独から解放されることを望んだレイシーはその実験に協力することを受け入れる。そして、レヴィの思惑通りに子供は産まれていた。さらに子供は双子であり、片方はアヴィスの意志の器としてアヴィスの深淵に残り、もう片方は現実の世界に戻されてきたのだという。外に放り出されてきたレイシーの子供の片割れ、それがアリスだったのだ。一連の経緯をジャックに話したレヴィだが、グレンとしての役目を終えたその身体はボロボロになっていた。死を目前にしたレヴィは、ジャックに後を託すといい、「君の望みのために好きに使え」と告げて闇の中に姿を消す。ジャックの望み、それは、レイシーを取り戻すことに他ならなかった。
再びグレンとなったオズワルドの前に現れたジャックは、「希望をなくしてしまえば、絶望だってどこにもありやしないんだよ。だから私は取り戻したい、希望を。もう一度彼女に会いたい…!」と告げ、「だから一緒に、レイシーを迎えに行こう」と誘う。しかし、すでにレイシーの兄の「オズワルト」ではなくバスカヴィルの当主「グレン」としてふるまうようになっていた彼は、ジャックの言葉を拒絶したのであった。オズワルトの協力を望めないと知ったジャックは、自分がレヴィからすべてを聞いていること、本気でレイシーを取り戻そうとしていることを隠し、無害な存在を装い続けることを決意する。そしてジャックは一人、レイシーを救うための方法を追い求めるのであった。

「この躯がオズ=ベザリウスのものなんて、そんなのは嘘だ。君という存在は決して何も得られない。為し得ない。君の望む何者にも成ることはできない。できない!できない!なぜなら君は虚無だからだ。君が全てを壊すからだ!」

オズ(下)の発言を否定したジャック(上)

オズの意識の中で、ジャックがオズに放った言葉である。ジャックに躰を乗っ取られたオズは、意識の底に堕ちていくなかで、ジャックの記憶を覗き見る。一方、オズの躰を支配したジャックは、自らにとっての脅威であるグレンの魂を引き継ぐリーオを殺そうとしていた。ジャックがまさにリーオに鎌を振り下ろそうとしたとき、すんでのところでオズの意識がそれを防ぐ。かろうじて意識を保ちながら、オズは自分の躰をジャックの好きにはさせないと言う。しかしそんな彼にジャックが告げたのは、「この躯がオズ=ベザリウスのものなんて、そんなのは嘘だ。君という存在は決して何も得られない。為し得ない。君の望む何者にも成ることはできない。できない!できない!なぜなら君は虚無だからだ。君が全てを壊すからだ!」という無慈悲な言葉だった。その言葉とともに、オズの意識は再びジャックの記憶に飲まれていく。そしてこの後オズは、自らの存在についての残酷な事実を知ることとなるのであった。

「私はこの世界を…レイシーが愛した世界を、アヴィスに還す。アヴィスの一部となったレイシーが、もう寂しい思いをしなくて済むように」

自らのやろうとすることを告げたジャック

ジャックがオズに自らの真の目的を明かした場面である。ジャックの記憶を見たオズは、自らの魂が、人間だったアリスが大切にしていた黒うさぎの人形に宿っていた魂だと知る。黒うさぎの人形だったオズは、自らの躰を犠牲にしてアヴィスに残されていたレイシーの記憶をジャックに伝えた。「世界を愛している」「消えていくのが寂しい」というレイシーの想いを知ったジャックは、「私はこの世界を…レイシーが愛した世界を、アヴィスに還す。アヴィスの一部となったレイシーが、もう寂しい思いをしなくて済むように」との考えのもと、世界をアヴィスへと堕とすことを決意する。その目的を叶えるため、躰を失ったオズの魂を材料にジャックがアヴィスの意志に作らせたチェイン、それが、「血染めの黒うさぎのオズ」であった。実はジャックの考えたことはレイシーの本当の思いとはまったく逆行するものなのであるが、それが明らかになるのは物語の最終局面になってからである。

ジャックが世界をアヴィスに堕とすために鎖を断ち切った場面

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