PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

息子のように大事な存在であるオズに対するオスカーの心の声である。今でこそ明るく陽気な人柄で皆の盛り立て役となっているオスカーだが、彼には、身籠った妻と産まれるはずだった我が子を同時に亡くした悲しい過去があった。オスカーはあたかも本当の息子であるかのように惜しみない愛情をオズに注ぎ、オズもまたオスカーのことを本当の父親のように慕っていた。しかし、それでもオスカーはときに「なぜここにいるのが自分の子供ではないのか」と考えてしまうこともあり、そのような黒い感情を持ってしまう自分を嫌悪していた。そのときの思いを、オスカーは「オズ、おまえは知らないだろうな。おまえのその小さな手に縋られることが、オレにとってどんなに…どんなに『拷問』であったかを」と描写している。そんな折、オスカーのカメラを勝手に持ち出そうと部屋に忍び込んだオズが、逃げ出そうとして誤って窓から落ちるという事件が起こる。危うく死ぬところだったオズにこれまでなかったほどの怒りを見せたオスカーは、その気持ちを原因となったカメラに向けて投げ捨てようとした。しかし、オズは泣きながら、懸命にオスカーを止めようとする。実はそのカメラは、かつて妻の出産を間近に控えたオスカーが、産まれた子供の写真を撮ることを楽しみに用意していたものだった。そのことを知っていたオズは、オスカーがカメラを処分しようとしていることを知り、いてもたってもいられずにカメラを持ち出そうとしたのであった。「思いが詰まっているから捨ててはだめなのだ」と涙ながらに訴えるオズを目にしたオスカーは、その場を離れ、改めて自分にとってのオズの存在について考える。オズが側にいることは失われた子供を感じさせる「拷問」であると同時に、その存在の重さが、大事な妻と子供を失ってどこかに行ってしまいそうだったオスカー自身を繋ぎとめる「重石」になってくれていた。そのことに思い当たったオスカーは「軽いわけねーじゃんかなぁ…」と呟き、余計なことに悩むのはやめてただ家族であるオズを愛すると決めたのであった。

「”幸せ”になってくれ、オズ。それがオレの、心からの願いだ」「オズ、ギルバート、エイダ。おまえ達のことを心の底から愛している。愛しているよ」

オズ達に想いを告げたオスカー(上)

オスカーがオズ達に告げた心からの願いである。躰をジャックに支配されたオズは、意識の中で懸命に彼を止めようとするも叶わず、ジャックからの激しい攻撃を受けるオスカーは、絶体絶命の危機にあった。自分の無力さに打ちひしがれながらも苦しむオズを救いたいと願うオスカーがとった行動、それは、自身の願いを言葉にして伝えることだった。「”幸せ”になってくれ、オズ。それがオレの、心からの願いだ」「オズ、ギルバート、エイダ。おまえ達のことを心の底から愛している。愛しているよ」という、オズという存在への愛情があふれるほどに詰まったオスカーの言葉を耳にし、オズは、自分には何もなくとも自分を愛する周りの皆がその存在の証を持ってくれているのだと知って嬉しさの涙を流す。その瞬間、意識の中でオズを封じていたジャックの魂が崩れ落ち、その躰は再びオズのものとなった。そして、意識の中で彼に呼ばれたアリスもまた、再び現実世界に戻ることができたのだった。

サラの名言・名セリフ/名シーン・名場面

サラの概要

サラ(右)とオスカー(左)

サラはオスカー=ベザリウスの妻である。元は平民であり、町に遊びに出たオスカーと恋に落ち、結婚するに至った。身籠ったサラは病弱なわが身を厭わず出産を望むが、その願いはかなわず、子供を産む前に亡くなった。

「ねぇオスカー、愛してるわ」

オスカーに微笑みかけるサラ(下)

オズ達を護って命を落としたオスカーに再会したサラの言葉である。サラはオスカー=ベザリウスの妻である。身籠ったサラは病弱なわが身を厭わず出産を望むが、その願いはかなわず、子供を産む前に亡くなった。パンドラから脱出しようとするオズ達を助けたオスカーは、ノイズのだまし討ちによって致命傷を負った後、実兄のザイにとどめをさされて命を落とす。その後、オスカーは光の中で、亡き妻、そして産まれなかった子供に巡り合った。一番初めに自分達の写真を撮ると言っていたにも関わらずオズ達との記念写真を嬉しそうに眺めるオスカーを優しく詰ったサラは、笑顔で「ねぇオスカー、愛してるわ」と告げる。そしてオスカーもまた、笑顔で「オレもだよ」と返した。常に陽気にふるまって皆の拠り所となりながらも、妻と子を失くした悲しみを内に秘めてきたオスカーは、オズ達に後をたくして命果てた後、ようやく愛する者との幸せを取り戻したのであった。

ザイ=ベザリウスの名言・名セリフ/名シーン・名場面

ザイ=ベザリウスの概要

ザイ=ベザリウス

ザイ=ベザリウスはオズとエイダの父親であり、オスカーの兄である。ベザリウス家の所有する黒翼のチェイン・鷹獅子と契約している。10年前のオズの成人の儀の事件以降消息を絶っていたが、後にバスカヴィルと行動を共にしていることが判明する。息子であるはずのオズを疎んで滅多に会うことがなく、実は、成人の儀の中でオズをアヴィスに堕とした張本人である。
自らが息子として育てているオズ=ベザリウスという存在が、巻き戻りを繰り返すジャックの躰に黒うさぎのオズの魂が宿った者であることを、魂が消える前のジャック本人から聞いて当初から知っていた。ジャックから頼まれ、その事実を知ったうえでオズをベザリウス家に迎え入れたが、ジャックが自身の器であるオズを受け入れさせるために自分の妻、そして産まれるはずだった子供を殺したことを知り、ジャックとオズを憎悪するようになった。オズのその存在を頑なに受け入れようともしなかったのは、このためである。

「おまえの罪、それは――おまえの存在そのものだ―――」

オズをアヴィスに堕としたザイ

成人の儀でオズをアヴィスに堕としたときにザイが彼に告げた言葉である。ザイが自分の子供であるはずのオズのことを忌み嫌っていたのは、オズの躰が百の巡りから外されたジャックの躰が巻き戻ったものであることを当初から知っており、さらに自分の妻を殺したのがジャックだと確信していたからであった。オズの存在そのものが罪だと考えるザイはバスカヴィルと手を結び、オズをアヴィスの闇に葬ろうと画策する。そして迎えたオズの成人の儀、ザイは鷹獅子の力を使い、「おまえの罪、それは――おまえの存在そのものだ―――」と告げたうえで、自分の手でオズをアヴィスへと落としたのであった。アヴィスへ落ちる前、最後に耳にしたザイのこの言葉は、オズに自らの存在の意味を問わせ、真実へと歩み始めるきっかけとなった。
なお、作中のこの場面において、ザイは赤いローブを着てフードで顔が隠された謎の人物として登場している。この人物がザイであることが明かされるのは、物語中盤の彼とギルバートの会話によってである。

「あんな子供、生まれてこなければよかったのだ」

オズ(右奥)とギルバート(左手前)の目の前でオズの贈った花を捨てたザイ

オズが渡そうとしていた花を代わりに届けたギルバートにザイが放った言葉である。幼いオズは父親であるザイに認めてもらおうと、日々勉学に励んでいた。しかしザイは、家に帰ったときでさえもオズの元に会いに来ることはなく、ザイが自分を嫌っているという使用人たちの噂を耳にしたオズはひどく落ち込む。それを目にしたギルバートは、自分が本人に真実を聞いてくると言い、オズが父親に渡そうと用意していた花を片手にザイの元へと走った。しかし、オズに会いに行ってやってほしいと頼むギルバートにザイが告げたのは、「あんな子供、生まれてこなければよかったのだ」というオズの存在そのものを否定する言葉であった。そして、ギルバートの後を追ってきていたオズもまたこの一言を聞いてしまう。さらに、使用人としての立場をわきまえない態度をとったギルバートをやめさせようとしたザイにオズが駆け寄ったとき、ザイは「穢らわしい」と吐き捨ててその手を振り払った。ザイの残酷な言葉と行動はオズの心に深い傷を残すとともに、すべてを受け入れようとするオズの歪な人格を生み出したのであった。

「この命が尽きるその瞬間まで貴様達のことを呪い続けてやる―――!」

身を呈してエイダ(左奥)を護ったザイ(右)

オズとの最後の会話でザイが放った言葉である。ノイズに人質として囚われたエイダは、サブリエに連れてこられ、チェインにあふれた危険な幻影の中を彷徨うことになる。ノイズが彼女に襲い掛かろうとしたとき、ぎりぎりのところで間に合ったオズがその攻撃を止めた。しかし、ノイズがドルディの力を使ってエイダを操り人形にしたために形勢は逆転する。オズとエイダが窮地に陥ったとき、ノイズを撃ち倒したのは、彼女とともにサブリエに来ていたザイであった。再び立ち上がったノイズとの戦闘の中、その頭上から別のチェインが現れ、ドルディの糸が切れて倒れこんでいたエイダに狙いを定めて攻撃の手を振り下ろそうとする。駆け寄ってきたザイがエイダに覆いかぶさって攻撃を阻んだために、エイダの命が奪われるという最悪の事態は免れるも、攻撃を受けていたザイはこの場で命を落とすことになった。その最期のとき、「貴方と最期までわかり合えなかったことが悲しい」というオズにザイは「この命が尽きるその瞬間まで貴様達のことを呪い続けてやる―――!」と言い放つ。しかし、周りの者達の力で自らの存在を認めることができるようになったオズは、「それでもオレは今ここにいます」と言い、「さようなら、父さん」と告げてエイダとともに去って行った。彼らの姿を見届けたザイは、力を失ったようにその場に崩れ落ちて命果てる。そして、父親と別れたオズは、ザイは自分のことは愛さなくとも、その命と引き換えにするほどにエイダのことを愛していたことを嬉しく思うのだった。

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