PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

オズの始まり。それは、アヴィスの奥深くに存在するアヴィスの核の元にレイシーが連れてきた、双子の黒うさぎの人形であった。レイシーはそのうちの1つをアヴィスの核に贈って「おそろいだ」と言って笑い、その瞬間、人形の目に光が灯る。アヴィスの奥と現実世界、ふたつの躰にひとつの意志を宿した人形は、レイシーとアヴィスの核をつなぐかのように、目の前のものを見つめ続けていた。時を経て、レイシーはアヴィスの闇へと堕ちてその存在は消えた。そして、レイシーのものだった人形の片割れは、アヴィスで産まれ落ちて現実世界に戻ってきた彼女の娘・アリスのものとなる。人形と同じく双子であったアリスは、一人はアヴィスの意志を宿した「白いアリス」としてアヴィスの奥に留まり、もう一人は現実世界へと戻っていたのであった。見た目はレイシーとそっくりでも内面は似ても似つかないアリスだが、人形は不思議と、アリスが笑うことがとても好きであった。人形を非常に気に入って宝物にしていたアリスは人形に「オズ」という名前を付け、自分自身の名前を得た黒うさぎの人形・オズは、ますます自我と思考を発達させていく。
一方で、かつて金色の光に包まれていたアヴィスはその美しさを失っていた。そこに縛られた白いアリスはほとんど笑わなくなり、アヴィスに残された側の躰からその姿を見ていたオズはひどく悲しんでいた。しかし、現実世界のアリスの前にジャックが現れたとき、事態は一変する。アリスの躰を通じてジャックの声を聞いた白いアリスは勢いよく顔を上げ、「オズ…!これをあの人に届けて…!闇の中から…唯一これだけ拾い上げてこれた。レイシーの記憶のカケラ…レイシーの想い…きっとあの人に届けたかったと思う。」と、アヴィスの側にいたオズの躰に懇願したのだ。アヴィスの闇がレイシーの記憶を消そうとまとわりつくなか、はじまりを与えてくれたレイシーに恩返しをしたかったオズは、「消えるな、この人に届けるまで。少しの間でいいから、引き受ける、闇を、この躯に」と、その身を犠牲にしてジャックに記憶を届けようとする。そして、ジャックがレイシーの記憶を目にした瞬間、「アリス…駄目だよ。そんな悲しそうな顔は嫌だ。だから…ねぇ、笑って。オレの大切なアリス」との想いを残し、現実世界のオズの身体は崩れ落ちたのであった。しかし、レイシーの想いをはき違えたジャックは、世界をレイシーに届けるためにアヴィスに堕とすことを決めてしまう。アヴィスの意志、そして黒うさぎのオズの願いとは裏腹に、レイシーの記憶を届けたことは最悪の結果をもたらし、オズは後悔に苛まれることとなるのであった。

「…アリス…君はもう、オレの側にいちゃいけないんだ…」

アリス(左)に別れを告げるオズ(右)

自分の誕生の真実を知ったオズがアリスにかけた言葉である。オズの魂は、元々はジャックが世界を崩壊させるために手に入れたチェイン、黒うさぎのオズのものだった。そして、破壊行動を強制されて苦しむオズを救うため、人間だったアリスは自らの命を絶ったのである。自分のせいでアリスが悲しい死に追いやられたことを知ったオズは、これ以上アリスを傷つけることを避けるため、「…アリス…君はもう、オレの側にいちゃいけないんだ…」とアリスに告げた。契約者であるオズに否定されたかたちになったアリスは現実世界にはいられなくなり、その魂は白いアリスの待つアヴィスの部屋へと還って行ったのであった。

「そんな小さな光が繋がって、重なって、たしかな希望となって、今絶望を照らしている―――」「オレは…その光に手を伸ばし続けると決めたんだ!!!」

オズワルト(左下)と対峙するオズ(左上)

オズワルトとの最終対決でオズが放った言葉である。100年前の過去、ジャックの手によって世界を支える鎖が壊され、サブリエの悲劇が起こった。そして今、復活したジャックが再び鎖を壊し、世界は崩壊へと向かおうとしている。世界を救うため、オズワルトはジャックの狂気の元凶となったレイシーを殺して過去を変えるつもりであった。しかしオズは過去を変えずに世界を救う方法を提案し、オズワルトに協力を求める。オズの考える方法とは、黒うさぎの力でアヴィスの核の器となっている白いアリスの躰を壊し、際限なく使えるようになったアヴィスの核の力で鎖の崩壊を止めることだった。しかし、器という肉体を得たことでアヴィスの意志は存在を保っており、その器を破壊することは、ともすれば世界そのものが失われる事態を招きかねない。過去を変えずに済むわずかな可能性に縋ろうとするオズ達の考えを否定したオズワルトは、部下であるロッティが諫める声にも耳を傾けず、ただ「己の過ちを正さなければならないのだ」と叫んだ。そしてオズワルトは、オズの計画で一足先に白いアリスの元に向かったアリスを止めるため、塔の上へと向かおうとする。それでもなお諦めずに追いすがったオズは、自分の力になってくれた周りの者達のことを想い、「そんな小さな光が繋がって、重なって、たしかな希望となって、今絶望を照らしている―――」「オレは…その光に手を伸ばし続けると決めたんだ!!!」と言い放った。多くの人間の思いと未来を背負ったオズの決意が現れた言葉である。

「みんなと出会えて、辛いことも悲しいことも一杯あったけど、一緒に過ごして、大切なものがどんどん増えて、今、こうして泣くことができる。それをね、”幸せ”だなって思うんだ」

悲しみながらも喜ぶオズ

消えゆくオズが別れを惜しむギルバートに告げた言葉である。もとの「黒うさぎのオズ」というチェインとしての存在に戻ったオズは、アヴィスの意志を宿す白いアリスと契約を交わす。そしてオズは、契約によって生まれるアリスとの繋がりを通じて白いアリスの躰を破壊し、器が壊れたことで解き放たれたアヴィスの核が力を行使したことにより、世界の崩壊は防がれた。しかし、躰が破壊された白いアリス、白いアリスと魂のつながりを持つアリス、そして、契約者を手にかけたオズの魂は、そのまま消えることを余儀なくされる。覚悟のうえで計画を実行したオズとアリスだったが、やはり消えて無くなる悲しさに耐え切れず、名残を惜しんで涙を流す。しかし彼は、かろうじて最後の会話を交わすことができたギルバートに、「みんなと出会えて、辛いことも悲しいことも一杯あったけど、一緒に過ごして、大切なものがどんどん増えて、今、こうして泣くことができる。それをね、”幸せ”だなって思うんだ」と言った。そして訪れた別れのとき、ギルバートは「おまえ達がまた世界に戻ってくる奇跡をいつまでも待ち続ける」と告げる。それを聞いた二人は満面の笑みを浮かべ、「またな」と再会を約束する言葉を残して光の中へと消えたのであった。

アリスの名言・名セリフ/名シーン・名場面

アリスの概要

アリス

アリスは本作のヒロインであり、オズと契約を交わした「血染めの黒うさぎ(ビーラビット)」と呼ばれるチェインである。チェインとしてはかなりの強さを誇るが、通常のチェインとは性質を異にし、確立した人格を持つ上に人を食らう必要がない。アヴィスに堕ちて他のチェインに襲われていたオズを窮地から救い、違法契約を結んで彼とともに現実世界へと降り立った。アヴィスから抜け出したのは失われた自分の記憶を取り戻すためであり、その後、オズ達の力を借りながら散らばった記憶を探すこととなる。
本来の姿は大鎌と鎖を武器とする巨大な黒うさぎである。しかし、その力があまりに強大であることから、オズの体に負担をかけるのを防ぐために普段はギルバートのチェイン・鴉に力を制御され、黒髪の少女の姿をしている。可愛らしい容姿とは裏腹に狂暴かつ男勝りで、尊大で好戦的な面が多々見られる。一方でオズに構ってもらえないときには拗ねてしまうなどの寂しがり屋で純粋な面もあり、いわゆるツンデレな性格をしている。
もともとは100年前に存在した人間の少女であり、アヴィスで生まれ落ちた後に現実世界へとやってきた。黒うさぎの人形を「オズ」と名付けて大切にしており、この人形が後にチェイン・黒うさぎのオズの元になる。サブリエの悲劇の中、ジャックとの契約によって虐殺を強いられるオズを救うため、自ら命を絶った。直後に魂だけとなったアリスがオズの力を奪い取り、自身が新たなチェイン・黒うさぎのアリスとなった。しかしその後、アヴィスの核が行使した力の影響で記憶を失い、黒うさぎのアリスとしての間違った自覚をもつこととなった。
なお、アリスは双子の姉妹であり、その片割れはアヴィスの意志としてアヴィスの深淵に存在している。片割れの少女もまたアリスと瓜二つの外見をしてるが、髪や瞳、服装などすべてが真っ白である。この「白いアリス」については、後の「白いアリス/アヴィスの意志の名言・名セリフ/名シーン・名場面」の項で詳しく記載する。

アリスが初めて現実世界でオズの前に現れた場面

オズ(左下)の背後に現れた血染めの黒うさぎ姿のアリス(左上)

少女の形に姿を変えたアリス

成人の儀の最中、突如現れたバスカヴィルたちの手により、オズはアヴィスへと落とされようとしていた。窮地に陥ったオズの前に「全く…無様なものだな小僧――」との言葉のともに現れたのは、巨大な黒うさぎのチェイン、その名も「血染めの黒うさぎ(ビーラビット)」であった。少女に姿を変えた黒うさぎは、オズのことを「私の所有物」だと言う。そして、オズがこれからアヴィスに落とされると知った彼女は喜び、狂ったように笑いながら暴れまわった。バスカヴィルの攻撃を受けた黒うさぎは、「お前がこちらにやって来るのを待っている」とオズを抱きしめて姿を消した。その言葉の通り、この直後にアヴィスへと堕ちていったオズは、再び彼女と相まみえることとなるのである。

アリスが最初の記憶の欠片を手に入れた場面

オズ(下)の前で涙を流すアリス(上)

アリスがオズと契約してアヴィスを出ようとしていたのは、現実世界に散らばって失われた自分の記憶を探すためであった。アヴィスから抜け出したアリスは、アヴィスに堕とされる前に屋敷の中にあった墓で見つけて以降オズが持ち続けていた懐中時計の中に、最初の記憶を見つけ出す。初めて記憶の片鱗を取り戻したアリスは「わからないんだ…オズ…胸があつくて…涙が…とまらない…」と言って大粒の涙を流し、ずっと待ち続けていた記憶にようやく出会えたことを心から喜ぶのであった。

「もういい、自分で奪ってくる」

鴉(左)に業を煮やして肉を盗もうとするアリス(右)

肉を買ってほしいとねだってギルバートに却下されたときのアリスの言葉である。小さな一コマではあるが、「もういい、自分で奪ってくる」との豪快な言葉に、かわいらしい少女の見た目に真っ向から反するアリスの男勝りな一面がよく現れている。

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