宇宙兄弟の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『宇宙兄弟』とは小山宙哉によって執筆された、夢を諦めた兄が宇宙飛行士の弟と「兄弟で月に立つ」という夢をもう一度実現するべく宇宙飛行士目指して奮闘する、宇宙を題材にした漫画作品である。夢を叶えた弟に劣等感を抱く兄六太(ムッタ)や、ともに宇宙を目指す仲間達、弟の日々人(ヒビト)などが発した名言・名セリフの数々は「もう一度立ち上がろう」という小さなきっかけをくれる原動力を、多くの人々に与えている。『宇宙兄弟』の心にしみる名言・名セリフ、印象深いシーンなどをご紹介する。

PD(パニック障害)を乗り越え、ロシアの宇宙飛行士としてムッタの待つ月へ向かう事となったヒビトは、打ち上げ前のインタビューでとある記者に質問攻めにされていた。「パニック障害は実はたいしたことはなく、別の理由で戦力外にされていたのではないですか?」「かつての仲間とトラブルがあったためロシアに移ったのではないかと皆さん心配されているのですが」などぶしつけな内容にヒビトも困惑する。
吾妻はそんなヒビトの様子を見て「ロシアの英雄イヴァン・トルストイからかつて聞かされた小話をしても?」と助け舟を入れた。

その話とは二人の男がキャッチボールをしていると、暴投した相手の球を見事キャッチしたが足元も水たまりに気付かずびしょ濡れになったというものだった。男たちの様子を見ていた周囲の人間は「わざと受けにくいボールを投げて水たまりに入るよう狙ったんじゃないか」、「キャッチした男が足元を見ていなかったから不注意だ」など好き勝手に噂話をする。しかし真相は、ただボールを投げた男がミスをし、水にぬれただけのことで二人は何事もなくキャッチボールを楽しんだのであった。

話終えた吾妻は「遠くでボソボソ言っている意見なんていつでもそんなもんです」ときっぱりと告げ、記者の質問を終わらせる。「何も知らない周囲の噂話など当てにならない。気にする必要はない」と暗にヒビトに伝えた、吾妻なりの優しさが見えるセリフだ。

ブライアン・Jの名言・名セリフ/名シーン・名場面

地球帰還時の事故シーン

数秒後の死という現実を感じさせないブライアン(下)の表情

二週間に及ぶ長期間の閉鎖環境訓練に挑む前、受験者たちは「ここが自由に飲食できる最後のチャンスです。またここが引き返す最後のチャンスです」と説明され、一本の極秘映像を見せられる。それは帰還時の事故によって死亡したブライアン・Jを含む三人の宇宙飛行士の、最期の瞬間までが写された内部カメラの映像だった。
モニターの様子からパラシュートが開かない状況を確認した三人は、時速600キロメートル以上の速度でぐんぐん地上へと墜落していく。絶望的状況に一人の飛行士が取り乱し始めたが、ブライアンは「それより最期の瞬間まで今できることをしよう。今後の事故調査に役に立つ」と落ち着くよう呼びかけた。
仲間が「やり残したことがいっぱいあった。まだ見ていないドラマの続きが気になる」と呟くと、ブライアンは「そいつはいいとこで見終わったな。6話以降は超つまんないぜ」と笑顔で答える。その数秒後轟音が響き渡り、カメラはブラックアウトして途絶えた。

受験者に映像を見せる理由を、「飛行士にとって安全は百パーセントではないことを認識してもらうためです。どうしようもない状況のように立たされても死を受け入れ、更に行動を続けることができる精神力が必要なのです」とJAXAは説明する。ブライアンは最期の瞬間までできることを考え、仲間を励ますことができる優秀な飛行士であることが分かる、衝撃的かつ印象的なシーンだ。

吾妻の繊細を見抜いていたブライアン

憧れの存在だったブライアン(中段右)に認められ、驚きを隠せない吾妻(中段左)

真面目で沈着冷静、仕事も早く一見完璧な人間に見える吾妻滝男だが、周囲の環境の変化にはとても弱い繊細な人物だった。「八年間の間で最も長期間ISSに滞在した日本人」としてマスコミに取り上げられた吾妻は、続くミッションで「初めて月周回軌道を回った日本人」として称賛を浴びる。
しかし地球に戻ってきた自分を持て囃し、家族にまで無理やりマイクを向けるマスコミの態度に嫌気がさした吾妻は「これだけ大勢の人がいるのに、誰一人自分のことを分かってくれない」と悩んでいた。そんな吾妻の性格を見抜いていたブライアンは、一人壁当てをしていた吾妻に「アズマ、お前はパワフルだが人一倍繊細な男だ。日本の歴史に名が残るとか、そんな重圧お前が背負う必要はないぞ。気になって宇宙で楽しめないだろ。俺に任しとけ。日本人初のムーンウォーカーにはヒビトを推薦しておく」と話しかける。自分のことを理解してくれたブライアンに対して吾妻は、悩んだときに答えをくれる兄の様に感じるのだった。
いつも大雑把な性格のブライアンだが、人のことをきちんと観察し適切に声を掛けられる優秀な人物であることが分かる名シーンだ。

「来てやったぞヒビト。この大先輩ブライアン・Jがわざわざ来てやったぞ」

軽い言葉ながら絶対の安心感を与えてくれるブライアンの存在

月面バギーで走行中に横転して深い峡谷に落ち込んだヒビトとダミアンは、何とか谷から脱出に成功するものの、それぞれ深刻な問題を抱えていた。ダミアンは宇宙服の体温調整機能が破損し、かつ骨折も見られた為動くことができず、ヒビトはメインタンクの破損により酸素が持たない状況に陥る。通信機能が復活したころNASAとJAXAはようやく二人の位置情報を確認するが、ヒビトが動き回ったため月面の仲間が向かっていたポイントとは外れていた。
ヒビトの酸素がいよいよ底をつき意識が朦朧としたヒビトは倒れこんでしまうが、霞む視界の中に現れたブライアンが「オーッス、ヒビト。来てやったぞ。この大先輩ブライアン・Jがわざわざ来てやったぞ」とにこやかに話しかけてくる。それはブライアンの名にちなんで付けられた移動可能な酸素補給機で、ヒビトの行動の癖を読んでいたムッタが場所を予測し、吾妻の指示によって送られたものだった。
ヒビトは気力を振り絞って「ブライアン」から酸素を受け取って窮地を脱する。死してなおヒビトを救った偉大なブライアンのセリフだ。

エディ・Jの名言・名セリフ/名シーン・名場面

バラバラのチームを穏やかにまとめ上げるエディ

バラバラだったチームが初めてまとまりを見せた

ムッタともに月を目指すことになったメンバーは、宇宙飛行士の中でも特に問題児を集めて作られたバラバラなチームだった。恵まれた体躯で常に無口なため怖がられるアンディや、他者を寄せ付けないため強いバリアを張っている強気な女性ベティ。キザな言動と本当か嘘かわからない態度が信用ならないカルロ、そして陽気な人柄だが人の話をいまいち聞いていないフィリップ。
彼らは日課のランニングですらペースが合わず、ムッタは「本当にこれで大丈夫なんだろうか。チームにはリーダーが必要だ」と内心焦りを覚える。そこへやって来たのがかの有名なブライアン・Jの兄で、ISSでの活動経験が豊富なエディ・Jだった。
エディは一日かけてチームの様子を観察すると、「ランニングの仕方を変えよう」と提案する。夜、何も目印が無い場所にメンバーを連れ出すと「目的地まで、決められた時間ちょうどに戻る。簡単だろ?ただし時計を持っていいのは俺だけ」とにこやかに微笑んだ。
こうしてバラバラに走っていたメンバーはエディにペースをあわせて走り出し、徐々にチームはまとまりを見せていく。それぞれの癖を見抜き穏やかにチームをまとめ上げた、エディのリーダーシップ能力の高さがうかがえるシーンだ。

月で待つブライアン人形を発見したエディ

感慨深げに人形を見つめるエディ

ムッタたち「ジョーカーズ」が月面望遠鏡の設置作業を続けていたころ、超強力な太陽フレアが発生するというトラブルが持ち上がった。太陽フレアは強い磁気を帯びている為、基地の外に置いてあった天文台建設の要たるコンピューター「シャロン」が使い物にならなくなってしまう。太陽フレアの影響が届く前に「シャロン」を移動させる決断をしたエディは、ムッタを連れて「シャロン」の回収に向かった。
無事「シャロン」を取りに行くことに成功するが、今度は月面カーの電力不足の問題が生じる。「シャロン」を積んでいる分重量が増えて電力消費量が激しくなったため、途中のスポットに立ち寄って充電を開始した。しかし太陽フレアの影響によって充電スポットにも影響が出ており、過電圧の為バッテリーが破損してしまう。
最後の手段としてムッタとエディは、かつてヒビトが転落した峡谷の底に取り残されたバギーからバッテリーを回収することを決断した。途中エディが怪我をしその影響で倒れてしまうトラブルがあったが、ムッタがバッテリーを回収しエディもじき意識を取り戻す。
エディは基地へ帰る前にほんの少しだけ寄り道したいと言い出して一人地球が見える丘の方へ行くと、子供の頃いつか二人で月に行ったら並べてくると約束したブライアン人形が置いてあるのを発見した。エディは約束の人形を隣に置き「待たせたな」と心の中でつぶやくと、すべての通信機能をオフにする。そして「こちらエディ&ブライアン。ここから地球が見えます。オレたちの目のように青いです」と、子供時代二人で楽しんだ「宇宙ごっこ」の約束を果たしたのだった。ブライアンの死によっていったんは途切れた約束が再び紡がれた感動のシーンである。

「我々は孤独だ。だが一人ではない」

悩むフィリップ(右)を救ったエディ(左)

出自が複雑なフィリップは子供の頃から各地を転々としており、明るい性格ながらも「俺は何人なんだろう」と子供心に複雑な感情を抱いていた。アイデンティティに自信が持てずにいたころ、ふとフィリップはISSが停電し孤立している場面の特集番組を見る。
そこに移っていた若き日のエディは「こちらでは皆が少々不安に陥っている。だが大丈夫だ、みんな分かっている。我々は一人だ。だが孤独ではない」と通信機能がダウンしている中で冷静に訴えていた。
エディの言葉をきっかけに「自分は何なんだろう」と悩んでいたフィリップは救われ、エディが見ている景色を体験するために宇宙飛行士を目指したのである。人一人の人生を大きく変えた深いセリフだ。

ビンセント・ボールド(ビンス)の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「人生は短いんだ」

親友の死から立ち上がった瞬間のビンス

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