『アナベル 死霊館の人形』とは2014年に公開されたアメリカのホラー映画である。監督はジョン・R・レオネッティ。出産を控えたミア・フォームに夫のジョン・フォームから人形が贈られた日の晩、隣家の夫婦が惨殺された。犯人は夫婦の娘、アナベル・ヒギンズとその恋人である。2人はフォーム宅にも侵入し、ミアは腹部を刺され病院に搬送。男は射殺され、アナベルは人形を抱えたまま自殺。この事件を皮切りに様々な怪奇現象がミアたちを襲っていく。実話を基に制作された悪霊の取り憑く人形がもたらすサスペンスホラー。
フラー(演:クリストファー・ショー)
デビーとメアリーがアナベル人形に関する出来事の話をしている最中、同じソファの奥に座りじっと話を聞いていた青年。彼は無言のまま苦悶の表情を浮かべていた、
バーグアー医師(演:イヴァル・ブロガー)
ミアがアナベルの恋人に腹部を刺され、病院に搬送された際に彼女の担当をした医師。眼鏡をかけている。バーグアーが言うには、傷が羊膜まで届いていなかったため破裂はしていなかったが、精神的ショックから子宮頸部に張りが見られていた。トイレに行く時以外は横になっているようベッドでの療養を促されるが、その後も不可思議な現象がミアを襲う。ガスコンロにひとりでに火が付き火災に巻き込まれ、再び病院に運ばれたミアはそのまま出産に至った。
『アナベル 死霊館の人形』の用語
死霊館ユニバース
実在する超常現象研究家のエド・ウォーレンとロレイン・ウォーレン夫妻の身に実際に起きた事件を基に映像されたシリーズ。超常現象をテーマにしたホラー映画により、1つの世界観が共有されているシェアード・ユニバース作品。本編では悪魔によってもたらされた恐怖から人々を助けようとするウォーレン夫妻のストーリーが描かれ、スピンオフ作品ではウォーレン夫妻が遭遇した事件が描かれている。死霊館ユニバースの創作者はジェームズ・ワン。作品は『死霊館』(2013年)、『アナベル 死霊館の人形』(2014年)、『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)、『死霊館のシスター』(2018年)、『アナベル 死霊博物館』(2019年)、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2019年)、『死霊館のシスター 呪いの秘密』(2023年)、『死霊館 最後の儀式』(2025年)で構成されている。
チャールズ・マンソン
ミアとジョンがリビングにいる際に、テレビではチャールズ・マンソンの率いるカルト教団の話題が取り上げられていた。西部劇の背景にも使用されたことのあるスパン牧場を拠点に活動していた教団。マンソンは仲間をファミリーと呼ぶ。メディアでは暴力的カルトと指定され、メンバーのほとんどが麻薬常習犯で犯罪歴がある。映画内ではそのうちの数名が女優のシャロン・テートを惨殺した容疑者として拘留中であることが報じられている。
ヘルター・スケルター
ミアが観ていたテレビではマンソンが最終戦争(ハルマゲドン)を予言し「ヘルター・スケルター」と命名したと報じられていた。マンソンはキリスト教的な終末思想の持ち主である。また1968年11月25日にビートルズが発売した10作目のアルバム『ザ・ビートルズ』(別名「ホワイトアルバム」)に収録されている「ヘルター・スケルター」はマンソンの思想に影響を与えた楽曲と言われている。この曲からマンソンは自身の思想を育んだとされているが、本来の歌詞からは大きく捻じ曲げられた解釈がされている。
『アナベル 死霊館の人形』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
ペレズ「恐れを抱くのは目を背けているから。自分の不安に立ち向かいましょう。恐怖を創りだすのは自分自身だからです。」
ミアとジョンが出席した礼拝でペレズは「恐れを抱くのは目を背けているから。自分の不安に立ち向かいましょう。恐怖を創りだすのは自分自身だからです。」と説いた。アナベル人形がもたらしたミアを襲う恐怖。彼女はリアを守るために、悪魔といった彼女にとって未知の領域にある恐怖に立ち向かわなければならない。実際に彼女が体験した恐怖ではあるが、教えに当てはめるならばそれらを創り出したのは彼女自身ということになる。ミアはこの後、知ろうとしてこなかったカルト教団の調査にあたる。以前にクラーキンが教団のことを調べてミアに知らせようとした際、彼女はその提案を断っていた。しかしミアは礼拝を機に、自ら教団のことを調べるため書店に赴く。その結果、悪魔のことも親身になり相談に乗ってくれる友人のエブリンと出会うこととなる。ミアが恐れと向き合い、乗り越えようとしなければ、深く関わることのなかった2人。エブリンはミアのために命を捨てた人物であった。
エブリン「あなたにも務めがある。家族を守ること。バカげてなんかいない。自分を信じなさい。務めを果たすの。」
ミアが書店でカルト教団に関する書籍を探していた際に出会ったエブリン。出会って間もない2人であるが、彼女はミアの非現実的な話にも真剣に耳を傾けた。その際、エブリンの手首にリストカットの痕を見つけてしまう。それを察したエブリンは娘のルビーを失い、自殺を図ったことを打ち明ける。自殺を思いとどまった理由は、まだエブリンには務めがあるのだとルビーの声がしたため。そこまで説明したエブリンは最後に「あなたにも務めがある。家族を守ること。バカげてなんかいない。自分を信じなさい。務めを果たすの。」と言い、ミアを力付けた。どんな人にもそれぞれのいる場所で果たすべき役割を担っていることに気付かされるセリフである。人生に意味を見出せないのであれば、それはまだ自覚していないだけである可能性が示されていた。そしてミアが恐怖と向き合おうとした際にエブリンと出会ったように、すべては自分次第であることが描かれている。
ペレズ「神が全霊を傾けた傑作。それは母の愛です。」
アナベル人形による事件が収束し、平穏な暮らしを取り戻したフォーム夫妻。一家はペレズのいる教会を訪れた。悪魔の一件以来のペレズとの対面。リアを腕に抱くミアの様子に微笑みながらペレズは「神が全霊を傾けた傑作。それは母の愛です。」と言って聞かせた。腹部を刺され、予測不能で対処のしようがない怪奇現象に襲われては精神を疲弊させながらもリアを出産したミア。出産に伴う身体的な消耗も激しい中、リアがお腹に入っている時からミアは狙われ続けていた。始めはリアの魂が悪魔の狙いであることにも気付いていなかったミア。悪魔に対処できる知識や経験がない彼女にとって、それらに立ち向かおうとするのは尋常でない恐怖を伴う。彼女の話をジョンですら当事者になるまでは悪魔によるものとは考えていなかった。ウォーレン夫妻のように対抗する術も武器も何も持っていなかったミアだが、彼女には娘を守ろうとする母の覚悟があった。本作における最も尊い愛は友のために命を捨てることとされている。それはエブリンがミアのために自ら犠牲になったことを表しているが、子供のために死を厭わないミアの行いも同じように尊いものとして映し出されている。
『アナベル 死霊館の人形』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
映画の撮影用の窓にできた3本の指跡
レオネッティは、映画の撮影中に複数の怪奇現象が実際に起きていたかもしれないことを明かしている。撮影の準備中に起きた出来事である。満月の夜に撮影を行うため撮影用の窓が設置してあるアパートの一室へ向かった時のこと。リビングルームの窓の上に設置された撮影用の窓に沿って3本の指跡が描かれ、月明かりに照らされていたという。悪魔は指が3本と鋭い爪が3本と彼は述べており、ヤバいと思ったと打ち明けている。
優れた人材で構成された集団を目指す死霊館ユニバースの制作チーム
本作の脚本を手がけているゲイリー・ドーベルマンは2週間で脚本を書き上げている。死霊館ユニバースの製作チームは、内側からの成長を促すように努め、優れた人材によって構成された集団をつくり上げていた。また本作の『アナベル 死霊館の人形』で撮影を務めたマイケル・バージェスであるが、『死霊館 エンフィールド事件』では彼の父であるドン・バージェスが撮影を務めている。次の世代には『M3GAN/ミーガン』(2023年)『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)『死霊館のシスター 呪いの秘密』のアケラ・クーバーや、『死霊館のシスター 呪いの秘密』『死霊館 最後の儀式』『ジェーン・ドウの解剖』のリチャード・ナインとイアン・ゴールドバーグ、『死霊館 エンフィールド事件』『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』「アクアマンシリーズ」(2018年〜)『死霊館 最後の儀式』のデイビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックなどの脚本家がいる。
アナベル人形にまつわる実話と創作内容の違い
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目次 - Contents
- 『アナベル 死霊館の人形』の概要
- 『アナベル 死霊館の人形』のあらすじ・ストーリー
- アナベル・ヒギンズとその恋人による襲撃
- アナベル人形に取り憑いた悪魔によって蝕まれていくミアの精神
- 絶望の中で体現された最も尊い愛
- 『アナベル 死霊館の人形』の登場人物・キャラクター
- フォーム家
- ミア・フォーム(演:アナベル・ウォーリス)
- ジョン・フォーム(演:ウォード・ホートン)
- 事件関係者
- ペレズ神父(演:トニー・アメンドーラ)
- エブリン(演:アルフレ・ウッダード)
- クラーキン刑事(演:エリック・ラディン)
- ヒギンズ家
- シャロン・ヒギンズ(演:ケリー・オマリー)
- ピート・ヒギンズ(演:ブライアン・ホウ)
- アナベル・ヒギンズ(演:ツリー・オトゥール)
- 幼き頃のアナベル・ヒギンズ(演:ケイラ・ダニエルズ)
- アパートの住民
- ロバート(演:ガブリエル・ベイトマン)
- ナンシー(演:シャイロ・ネルソン)
- 医療関係者
- デビー(演:モルガンナ・メイ)
- メアリー(演:ミシェル・ロマノ)
- フラー(演:クリストファー・ショー)
- バーグアー医師(演:イヴァル・ブロガー)
- 『アナベル 死霊館の人形』の用語
- 死霊館ユニバース
- チャールズ・マンソン
- ヘルター・スケルター
- 『アナベル 死霊館の人形』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ペレズ「恐れを抱くのは目を背けているから。自分の不安に立ち向かいましょう。恐怖を創りだすのは自分自身だからです。」
- エブリン「あなたにも務めがある。家族を守ること。バカげてなんかいない。自分を信じなさい。務めを果たすの。」
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- 『アナベル 死霊館の人形』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 映画の撮影用の窓にできた3本の指跡
- 優れた人材で構成された集団を目指す死霊館ユニバースの制作チーム
- アナベル人形にまつわる実話と創作内容の違い
- 『アナベル 死霊館の人形』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):Joseph Bishara「Annabelle Opening」
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