三人の騎士（ディズニー映画）のネタバレ解説・考察まとめ

ディズニー映画『三人の騎士』の概要

『三人の騎士』（原題：The Three Caballeros）とは、1943年に公開された『ラテンアメリカの旅』の続編にあたる映画作品である。1944年12月21日にメキシコで先行公開し、その後アメリカで1945年2月3日に公開された。日本での公開は第二次世界大戦後の1959年3月18日となっている。“Caballero”とはスペイン語で「紳士、騎士」を意味する単語。本作ではドナルドダック、ホセ・キャリオカ、パンチートの3人を指す。作品は前作と同様にオムニバス形式となっており、中南米を題材に作られた5つのアニメーションから成る。またアメリカ政府の要請により製作されている点も前作と変わらず、親善プロパガンダ作品という位置づけになっている。本作では3人を通してアメリカ・ブラジル・メキシコ3国の仲の良さを表現している。
物語の主人公はドナルドダック。ある日ドナルドダックの元にバースデープレゼントが届く。中身は映写機、ブラジルからの本、そしてメキシコからの箱であった。ドナルドは1つずつプレゼントを開けながら中南米諸国の魅力を体験していくストーリー。
作品の前半では前作のように中南米地域の魅力を伝える目的としての特色が強いが、中～後半では印象が変わり、色彩豊かで奇抜な映像が続く。特にラストシーン『ドナルドの白昼夢』ではキャラクターのセリフや具体的なストーリーが無く、ラテンミュージックに合わせて目まぐるしく映像が変わり幻覚を思わせるような描写となっている。しかし、本格的に実写映像とアニメーションを融合させた作品は本作が世界初と言われており、高い評価を受けている。アメリカで公開された1945年には第18回（1945年度）アカデミー賞の作曲賞（ミュージカル部門）と音響賞にノミネートされた。
本作に登場する三人の騎士（ドナルドダック、ホセ・キャリオカ、パンチート）は映画公開以降ディズニーの人気キャラクターとなっている。日本では東京ディズニーシーにある南米をテーマにしたエリア「ロストリバーデルタ」でホセ・キャリオカとパンチートに出会うことができ、東京ディズニーランドにある人気アトラクション「イッツアスモールワールド」の中南米エリアにも三人の騎士が登場している。そしてアメリカにあるウォルトディズニーワールドではボートライド型のアトラクション「三人の騎士のグラン・フィエスタ・ツアー」があり、本作の世界観に入り込めるような体験ができる。公開から80年近くたっても3人の新しいグッズが発売されるなど、国内外共に愛され続けている。

ディズニー映画『三人の騎士』あらすじ・ストーリー

ドナルドへのバースデープレゼント

ある日、ドナルドダックの元に大きな荷物が届く。メッセージカードには「ドナルドへのバースデープレゼント ラテンアメリカの友達より」と書かれていた。ドナルドが喜んで包みを解くと、箱の中には更に3つの包みが入っている。目隠しをしながら最初の包みを選ぶと、中から出てきたのは映写機だった。

映写機

映写機が入っていた包みにはフィルムも一緒に入っており、覗くと中からペンギンもこちらを覗いている。ドナルドは夢中になって映写機の組み立てを始め、フィルムを再生した。
フィルムのタイトルは「AVES RARAS （珍しい鳥たち）」。南米大陸に生息する珍しい鳥たちを紹介してくれる。まずは南米大陸の最南端にある南極から始まった。そこでフィルムのナレーターは南極の紹介をホロウェイ教授に託す。

さむがりやのペンギン パブロ （The Cold-Blooded Penguin）

南極には数多くのペンギンたちが暮らしており、皆それぞれスキーやスケート、そり遊びなど雪の世界を満喫している。ところがパブロは違った。ひどく寒がりで、いつも友人であるストーブの“スモーキー・ジョン”と一緒に家の中で温まっていた。室内にいても帽子に手袋、マフラーを付けている。パブロの家にはブラジルのリオデジャネイロやメキシコのアカプルコなど熱帯の暖かい場所の写真が貼られており、熱帯の海岸で一生を送りたいと考えていた。
そしてある日、パブロは熱帯に向けて旅に出ることを決める。他のペンギンたちは大勢でパブロを見送ったが、家を出てストーブから離れた途端にパブロの体は凍り付き、大きな雪玉となって坂を転げ落ちてしまった。2度目はストーブのスモーキー・ジョンを背負って出発した。しかしスモーキー・ジョンが重すぎてバランスを崩し、パブロはまたも坂を滑り落ちてしまう。3度目の挑戦では体中に湯たんぽをつけている。今回は見送るペンギンたちも呆れて、たったの2羽しか来なかった。パブロは初め順調に歩みを進めていたが、地図を見るために立ち止まった瞬間、湯たんぽの熱で地面の雪が解けてしまい南極の冷たい海に落下してしまった。氷漬けになってしまったパブロは自分が解凍されるまでの間に船で行く方法を思いつく。そして4度目の挑戦。パブロは自分の家の周りの地面を船の形に切り、家を丸ごと船にした。この時見送りに来たペンギンは1羽だけになっていた。彼に進水式を頼み、パブロはようやく出発に成功する。
分厚い霧や小さな雨雲に出会いながら、パブロは順調に熱帯へ向かっていた。チリやエクアドルを通過し、海の神様の力を借りて赤道を超えた。そしてガラパゴス諸島へ向かう。温かい日差しが降り注ぎ、パブロは存分に日光浴を楽しんでいる。パブロがふと顔を上げると雪でできた家が解け始めている。同じく雪でできた船の床も熱帯の暑さには耐えきれずあっという間に溶けてしまった。パブロはバスタブに逃げ込み、シャワーから出る水をエンジンにして、ついに夢見ていた熱帯の島を見つけた。パブロはハンモックに乗り、日焼けをしながらジュースを飲んで幸せそうに暮らしている。世界一幸せなペンギンになった。しかし時々故郷の南極を懐かしんでいる。

アマゾンの鳥たち

パブロの話が終わると、鳥たちの紹介はナレーターに戻った。はさみのような尾を持つハサミオタイランチョウや大きなくちばしを持つオオハシなどを紹介していると変わった鳥が姿を現す。その鳥は赤い髪をして黄色と黄緑色のストライプ模様の服を着ている。鳥の名前は「アラクアン」と言い、ナレーターは今までで一番変わった鳥だと説明する。アラクアンはスクリーンを飛び出してドナルドに握手をすると、再びスクリーンの中に戻り、高い雄たけびと共に不思議な歌を歌い始めた。歌が終わるとアラクアンは他の鳥の巣作りを邪魔しはじめた。舞台は湿原に変わり、ドナルドはフラミンゴと一緒に体を伸ばしたり縮めたりして遊んでいる。ドナルドの遊びがひと段落するとナレーターはウルグアイの年を取ったガウチョから聞いた、信じられないような鳥の話をドナルドに勧めた。

空飛ぶロバ （The Flying Gauchito）

ここから語りはガウチョへと変わる。物語はガウチョが幼い子供の頃が舞台となっている。ガウチョは1人で狩りに出かけようと試みて早起きをしたが、服を上手に着替えることができず初めからやり直していた。無事にきちんと服が着られたら、ガウチョはコンドルを捕まえるために高い岩山へ向かう。しばらく歩いているとすぐにコンドルの巣を見つけて様子を伺った。しかし巣から姿を現したのはコンドルではなく、翼の生えたロバだった。しかもこのロバは小鳥のような鳴き声を出す。ガウチョはこのロバを値打ちものだと思い、苦戦しながらも捕まえることに成功した。そして誰にも見つからないようにロバを手名付け、レースに出すために訓練をした。レースで勝って大金を手に入れようと企んでいる。その一方でロバはガウチョに懐き始め、2人は友達にもなっていった。
レース当日、ガウチョは祭りのゲームに目もくれず真っ先に競馬の会場に向かう。競馬の優勝者には1000ペソの賞金が贈られる。競馬に出るのは大人や通常の大きさの馬ばかりで、小さなガウチョと小さなロバが参加すると知り、皆は大笑いしてバカにした。しかしガウチョは全く気にせず、自分と翼を持ったロバが優勝すると信じている。レースが始まると皆一斉に走り抜けていった。一方ロバはちょこちょこと歩いており、このままでは到底優勝できない。観客たちも大笑いしている。そこでガウチョはロバにつけていた鞍を外し、翼を出してあげた。そして2人はものすごいスピードで他の馬たちを追い抜いてあっという間にゴールする。
2人は無事に優勝でき、いよいよ念願の賞金を貰う時が来た。賞金の入った袋がガウチョの手に渡ろうとした瞬間、ロバが飛び始め、手首を縄でつないでいたガウチョも一緒に遠くへ飛び去ってしまった。

ブラジルの本

空飛ぶロバの話が終わると、そこでフィルムも終わりになった。ドナルドが足元に散らかったフィルムにイライラしていると、プレゼントの包みから音楽が聞こえてきた。ドナルドはまだ2つのプレゼントがあったことを思い出し、ワクワクしながら音楽が鳴っている包みを解く。中身は「BLASIL」と書かれた本だった。本を開くと中には小さなホセ・キャリオカが音楽に合わせて楽器に見立てた傘で演奏している。ホセはドナルドに気付くと元気に話しかける。2人は久々の再開に喜び合った。
そしてホセはドナルドに「バイーアへ行ったことある？」と質問する。行ったことが無いと答えるドナルドを置いて、ホセは物思いにふけ始めてしまう。すると、どこからかアラクアンが現れ、歌いながらホセの周りを動き回ったり、タバコを奪ったりして暴れだす。ホセはアラクアンのせいで自分の世界に入り込めず、思わず怒る。しかしすぐ冷静になり、再びドナルドにバイーアへ行った事があるかと聞き返す。そしてドナルドが変わらず無いと答えると、ホセは「じゃあ行こう！」と提案する。
小さなホセは4人に分身し、縦に積みあがるとドナルドの背の高さまで届くようになった。そしてハンマーでドナルドを叩くと、ドナルドもホセと同じサイズに縮んだ。本のページをめくるとバイーア行きの汽車が通過しようとしていた。2人は急いで乗り込む。汽車は大きく揺れながら美しい草木の道を進んでいく。暫くすると線路の先にアラクアンが寝転んでおり、いくつもの分かれ道になるように線路を描き足してしまった。その結果、汽車は車両ごとにそれぞれ違う線路を走ってしまうが、最終的には元の状態に戻り、疲れ果ててボロボロな姿でバイーアへ到着する。

バイーア （Baia）

ホセが本のページをめくるとバイーアの街並みが現れ、どこからか歌声が聞こえてくる。歌声の主が美しい女性、ヤヤーだと分かり、ホセはドナルドの手を引いて張り切って走り出す。ヤヤーが近づいてくると2人は身なりを整え、行儀よく挨拶をした。するとヤヤーも笑顔でお菓子を買わないかと勧めてきた。ドナルドは美しいヤヤーの姿にすっかり心を奪われてしまう。
2人は夢中になって彼女の気を引こうとする。ヤヤーを追いかけながら街を進むとストリートミュージシャンやダンサーも集まり始め、人だかりが大きくなっていく。ヤヤー1人に対し多くの男性が相手をしており、ドナルドは満足にヤヤーに近付けず時々不満そうにしている。ところがそこにギタリストが連れて来た沢山の女性たちが合流し、ヤヤー1人を置いて皆でどこかへ行ってしまった。取り残されたヤヤーは不満そうにしていたが、ドナルドが花束を差し出すと喜んでキスをし、他の皆の元へ向かった。一方ドナルドはヤヤーにキスをされたことによりすっかり舞い上がってしまう。
場面が変わり、ヤヤーをはじめとする人間たちが音楽に合わせて楽しく踊っている。そしてバイーアの街並みへと移り、音楽とダンスに合わせて家や街灯も踊りだしていった。

元の大きさに戻る方法

本が閉じられた後もリズミカルな音楽は鳴りやまず、ドナルドもバイーアの気分が抜けきれずに夢見心地でいる。ホセに正気に戻され、3つ目のプレゼントの元へ行こうとするが、バイーアへ行く際に体を小さくしたせいで箱に手が届かない。悲しむドナルドにホセはマジックを見せる。魔法の言葉を唱えるとホセの人差し指が光り、指から息を吹くとホセの体が風船のように膨らみ、たちまち元の大きさに戻っていった。ドナルドも見様見真似で自分の体を膨らますが上手くいかず、バルーンアートのように様々な形に膨らんでから結局元の体の大きさに戻れず終わってしまう。ホセにもう一度正しい指の吹き方を教えてもらい、ドナルドはようやく元の大きさに戻れた。

メキシコからの箱

3つ目のプレゼントは「Mexico」と書かれた丸い形の箱だった。ドナルドとホセが2人でリボンを引っ張ると軽快なラテンミュージックが流れ始め、2人は不思議な模様の中に巻き込まれる。曲が終わろうとした時、模様が爆発して中から高い雄たけびと共にパンチートが登場する。パンチートは銃を乱射しながら最後にお辞儀をして曲の終わりと共に落ち着く。そしてびっくりして固まっているドナルドとホセを見つけると、そのままハイテンションで熱烈な挨拶をした。

ラス・ポサーダス （Las Posadas）

パンチートはドナルドのためにメキシコからピニャータを持ってきていた。ドナルドとホセにピニャータやピニャータが良く使われるメキシコのクリスマス「ラス・ポサーダス」について教えてくれる。パンチートの話が終わると、いよいよドナルドがピニャータを叩く時になった。
ドナルドは目隠しをされて体を回される。そして叩こうとした時、ホセとパンチートによってピニャータは吊るし上げられ、ドナルドは大きく外してしまう。その後もドナルドはピニャータをたたき割れず、2人はその様子を見て大笑いしている。ドナルドはいらだち始めて闇雲に棒を振り続けているとついにピニャータに当たり、割ることに成功した。ピニャータの中からはメキシコの伝統的な仮面や陶器、おもちゃなどが出てきた。

空飛ぶサラベの旅