異世界料理道(ラノベ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『異世界料理道』とは作者EDAによる日本のオンライン小説、ライトノベル作品。2015年ホビー・ジャパンより書籍化。こちもが書籍版のイラストと2018年に発売されたコミカライズ版『異世界料理道』の作画も担当している。高校2年生津留見明日太が火事が原因で異世界へ来て、森辺の民アイ=ファと出会う。彼女たちはただ生きるために食事を食べていた。見たことがない食材の上、調理道具がまともにない中で明日太は様々な料理を作っていく。料理で森辺の集落や町の人々の運命を変えていく異世界料理ファンタジー作品である。

『異世界料理道』の概要

『異世界料理道』とは2014年よりEDA(エダ)がオンライン小説『小説家になろう』に掲載している小説である。2015年よりホビージャパンより書籍化。2018年より作画をこちもが担当したコミカライズ版『異世界料理道』がホビージャパンより発売しておりまた、書籍版のイラストも担当している。
父親が経営している「つるみ屋」の見習い料理人、津留見明日太(つるみあすた)は父親の命ともいえる三徳包丁を取りに火の中へ飛び込んだ。そして、目覚めた時、森の中にいた。イノシシのような見た目のギバに襲われた明日太は落とし穴の中に落ちてしまう。森辺の民の狩人アイ=ファに助けられた明日太はここが日本ではないことを知る。森辺の民達はギバの肉を食べて暮らしていて、まともに血抜きもされていないギバ肉は臭くて固くて食べることが辛いものだった。そして、森辺の民たちはそれを当たり前に受け入れていて、食べることに喜びを見出していなかった。半人前ながらも料理人として「それは違う」と感じていた明日太は、満足な調味料も調理道具もない中、試行錯誤しながらギバ肉の料理を作っていく。この物語は見習い料理人の明日太が森辺の民やジェノスの街の人々、そして城下町に住む貴族たちと料理を通して関わり合い様々な人の運命や思想を変えていく料理ファンタジーである。

『世界料理道』のあらすじ・ストーリー

アイ=ファとの出会い

主人公は津留見明日太(つるみあすた)は高校2年生の17歳。父親が経営している大衆食堂「つるみ屋」の手伝いをしている見習い料理人である。しかし、つるみ屋の土地を売って欲しいと交渉され、父親がそれを断ると店は陰湿な嫌がらせを受けることとなった。父親は気にしていなかったが、食材の仕入れのために出かけていた時、軽トラにひき逃げされ病院に搬送されてしまう。数ヶ月の入院が必要な状態になってしまった上、追い打ちをかけるように幼馴染の玲奈(れいな)から店が火事になっていると知らせを受ける。父親の命よりも大切な三徳包丁を救い出すため玲奈の静止を振り切り、明日太は燃え盛る炎の中へ飛び込んでいった。
気づいた時、明日太は森で倒れていた。手に三徳包丁を持っていて最後に覚えているのは包丁を持った後、天井が崩れ落ちた記憶だった。ここが死後の世界かと考えていた時、茂みから巨大なイノシシに似た生き物が襲いかかってくる。明日太は逃げたが、落とし穴に落ちてしまった。自力で上がれないほどの深さだったため、明日太が助けを求めれば金褐色の髪で褐色の肌をした端正な顔立ちをしている少女アイ=ファに助けられた。詳しく事情を聞くためにアイ=ファとともに森辺の民の集落へ行くこととなった。
アイ=ファの家に到着した。明日太が空腹だったため、先に食事を作ることとなった。ギバと呼ばれる肉が煮えるまでの間、明日太は別の世界から来たと説明をする。アイ=ファは彼は嘘を付いていないと結論を出した。そして明日太が知らない内に禁忌を犯し、その責任を自分が問われる可能性があるからという理由で、彼はしばらく滞在を許されることとなる。そして、アイ=ファが作ったギバ肉のスープはあまりにも不味かった。次の日、アイ=ファに明日太は自分が料理を作りたいと言ったのだった。アイ=ファは行水をするため川へ行ったが、本来なら山間部にしか生息しないマダラマの大蛇に襲われたり、まだ活動していないはずのギバに襲われたりと立て続けに事件が起きる。そして、明日太はギバの血抜きと解体を時間をかけて行い、ギバ肉と玉ねぎに似たアリア塩と胡椒のようなピコの葉を使用して「ギバ・スープ」を完成させる。アイ=ファは「食事は生きるための手段でしかないが、美味いというのはこういうものなのだな」と穏やかな表情で言う姿を見て、明日太の胸は熱くなっていったのだった。

ルウの一族

明日太はポイタンというじゃがいもに似た食材の扱いに頭を悩ませていたが、ポイタンは野菜ではなく穀物だと分析して、お好み焼きのような焼きポイタンとギバ・バーグを作り出した。アイ=ファとともにギバ・バーグを食べていたが、美味しそうな香りに惹かれてルウ家の末妹リミ=ルウがやって来る。彼女はギバ・バーグを試食してルウ家の最長老ジバ・ルウに食べさせてほしいとお願いする。アイ=ファがジバ=ルウの世話になっていたと聞いた明日太は、リミ=ルウの依頼を引き受けることにした。明日太は彼女からルウ家とは嫁入りを申し込まれた過去があるが、アイ=ファは狩人として生きる道を選んだため気まずい関係にあると説明を受けた。ルウの集落へ移動し、明日太は先代家長の妻ティト・ミン=ルウとルウ家本家長姉ヴィナ=ルウそして、ルウ家本家次姉レイナ=ルウの3人と出会う。明日太はかまどの間に案内され、ギバ・バーグと焼きポイタンを作り始める。ギバ・バーグと焼きポイタンが完成し、やせ細った枯れ木のようなジバ=ルウがレイナ=ルウの介助で食べる。ルウ家家長ドンダ=ルウは「こんなぐちゃぐちゃした肉は食べれない」と言い放ったが、ジバ=ルウは反論し、明日太に「食べる喜びを思い出させてくれてありがとう」と言い笑顔を見せた。しかし、ドンダ=ルウはギバ・バーグを「毒」だと言い切ったのだった。

婚儀の前祝い

明日太はドンダ=ルウが言い放った「毒」の意味について一晩考えていたが結論は出なかった。自分の作った料理を誰かが喜んでくれる瞬間が好きで、誰もが好む料理を作るのは無理だと分かっているが、「毒」とまで言われたら納得できなかった。気を取り直して明日太はアイ=ファに何を食べたいか聞くと、彼女は「ハンバーグを食べたい」と即答した。柔らかくて甘いのが気に入ったと彼女が言った時、明日太はドンダ=ルウが「毒」と言った意味を理解する。明日太はドンダ=ルウにもう一度ルウ家へ料理をふるまいたいと話し、彼は3日後にルウ家眷属のルティム家の婚儀の前祝いで料理を作るように言ったのだった。婚儀の前祝いを行う前、明日太とアイ=ファはルティム家家長ダン=ルティムに挨拶をする。ダン=ルティムは料理を作ることを許可してくれたが、息子の祝宴を汚すことはするなと警告したのだった。
ルティム家長子のガズラン=ルティムとその嫁になるアマ=ミンの婚儀の前祝いが始まった。明日太はギバ肉のステーキを用意していたが、ダン=ルティムは本来なら捨てる胴体の肉だったことに激怒する。しかし、一度食べればギバ・ステーキを気に入り、おかわりが欲しいとまで言った。そして、ドンダ=ルウはこれは狩人としての体を損なわない料理だと認めてくれた。

婚儀の宴

明日太が新しい食材を調達したいと希望をだしたため、ジェノスの宿場町へ買い足しに行くことにした。買い足しを終えて残った銅貨でキミュスの肉まんじゅうを食べていた時、アイ=ファと因縁があるスン家長子ディガ=スンが町の少女に絡んでいるのを見つけてしまう。アイ=ファは止めに入ったが、騒ぎを聞きつけてやって来た衛兵にディガ=スンは、アイ=ファが暴力を振るってきたと虚言を言い、彼女は捕まりかけた。しかし、金褐色の髪の男がアイ=ファの無実を証言をしてくれたことで事なきを得る。
森辺に戻った2人にガズラン=ルティムとアマ=ミンが待ち構えていた。彼らは婚儀の宴で100名分の料理を作ってほしいと依頼をする。祝いの宴で使用する新しい食材を知るため明日太たちはルウ家を尋ねた。ルウ本家の三姉妹におすすめの食材を聞いていた時、ギバ狩りに行っていた男衆達が戻ってきたが負傷している狩人たちがいた。ルウ本家末弟のルド=ルウと、ルウ分家家長リャダ=ルウが負傷していた。家族のために命をかけて狩りをする狩人たちを見て、明日太は婚儀の宴のためのギバ30頭用意して欲しいと頭を下げて頼み込む。ドンダ=ルウは用意することを約束したのだった。
ルティム家婚儀の宴の日がやってきた。準備の途中、ディガ=スンとスン家本家末弟のミダ=スンの妨害はあったものの、無事に準備を終える。宴のために用意したタパラというトマトのような野菜が入ったギバ・スープは好評で、婚儀の宴は無事行うことができたのだった。

屋台の出店

明日太とアイ=ファは宿場町に行く道中、吊り橋の真ん中に、金褐色の髪の男性がいることに気づいた。この場所にいた理由を聞くと、男は満面の笑顔で森辺を見学にきたと言う。アイ=ファと明日太は、家に戻ることにしたがなぜか男も付いてきた。金褐色の髪の男はカミュア=ヨシュと名乗り、要人の移動を守る「守護人」の仕事をしていると説明した。カミュア=ヨシュはギバ肉に関心を示し、それを食べることにした。余りの美味しさにカミュア=ヨシュは明日太に宿場町で屋台を開かないか提案したのだった。
次の日、明日太とアイ=ファは詳しく話しを聞くため、宿場町のカミュア=ヨシュが宿泊している「キミュスの尻尾亭」に行く。カミュア=ヨシュの弟子レイトが2人を出迎え、明日太たちはカミュア=ヨシュと商談することになる。森辺の民たちは屋台を開くことに賛成したため、明日太は屋台のメニューを考えギバ・バーガーを作り出した。接客兼補助にヴィナ=ルウと、護衛にルウ本家末弟ルド=ルウを連れて宿場町で屋台を開く。初日はなんとか完売したが2日目は大雨で早めに切り上げることにする。森辺の集落に帰る途中、不自然に途切れている足跡を見つけ、ルド=ルウが確認するとアイ=ファが崖から落ちて右肩を脱臼していた。しばらくギバ狩りができないため彼女も護衛として宿場町に行くことになった。3日目は以前、アイ=ファが助けた少女ターラと、その父親で野菜職人のドーラが客としてやってきた。ドーラからおすすめの野菜を持ってきてもらい、明日太は蕪に似たミャームーを試食する。独特な香りと刺激に新しいギバ料理の可能性を閃き、新商品ギバ肉のミャームー焼きを即席で作り上げたのだった。

滅びの日

ある日いつも通り屋台を開いていた時、ミダ=スンがやって来る。彼は屋台の料理を食べ尽くしてしまった。スン家の長姉ヤミル=スンもやって来て、家長会議が開かれるためその準備を頼みたいと依頼をしてきた。ドンダ=ルウやガズラン=ルティムたちに相談し、彼らが力を貸してくれることとなる。
家長会議の日、スン家のかまど小屋で調理をしていたが、手伝いをしていたスン家の少女が、鍋をひっくり返してしまい食材がたりなくなってしまう。そのタイミングでミダ=スンがかまど小屋にやってきた。明日太は足りない食材を補充するため、ミダ=スンに食糧庫に案内してもらうことにする。しかし、食糧庫には鍵が掛かっていた。明日太の様子を見に来たルド=ルウに追加の食材を宿場町まで買ってきてもらい無事、晩餐を作り終えることができた。
家長会議が始まった後、ヤミル=スンが対価を用意するから小屋で待っていて欲しいと声をかけてきた。明日太が待っていたら、ヤミル=スンは全裸で入ってくる。「未婚の女性の裸を見たら婚姻するか片目を差し出さなければならない」という森辺の掟を逆手に取ったヤミル=スンの策略であった。しかし、明日太は嫌な予感がしていたため顔を隠して彼女の裸を見ることを回避していた。ヤミル=スンは興が削がれたと言い残し部屋を出ていき、明日太はアイ=ファたちと合流する。明日太は食糧庫に違和感を持っていて、確かめることにした。食糧庫をこじ開けようとしたら、病床に伏せていたはずのザッツ=スンが止めに来た。食糧庫を強引に開けたら中にギバ肉が1つも置いてない代わりに、モルガの森の果実が入った箱があった。スン家はモルガの森の恵みを荒らしてはいけないという禁忌を破っていたことが判明したのであった。
家長会議から数日経ちアイ=ファは狩りに行き、明日太は屋台を開く日常が戻ってきた。レイトからカミュア=ヨシュに会いに来て欲しいと言われたため、キミュスの尻尾亭に訪れれば、カミュア=ヨシュは東に行く商団の護送をする予定だったが、森辺の道を通る計画を立てていたのにその案内人として交渉していたスン家がなくなってしまったことに困り果てていた。明日太は見捨てることはできずドンダ=ルウに相談し、ルティム家とサウティ家が協力してくれることになった。数日後、カミュア=ヨシュと商団たちは宿場町に戻ってきた。彼らとともに、捕まっていたはずのザッツ=スンもいた。ザッツ=スンは少し前に脱走していたらしい。カミュア=ヨシュが護衛していた商団は元々偽物であった。10年前レイトの両親を襲撃して殺したスン家に罪を明確なものにするため、カミュア=ヨシュが立てた作戦だったのだ。ザッツ=スンは衛兵に連れて行かれることとなった。

新しい家人

明日太は醤油に似たタウ油を使った新作のギバの角煮をナウディスが経営する「大樹亭」に卸しているが1品だけだと不安に感じていたため、ドーラからキムチのようなチット漬けとギャマのチーズを紹介してもらった。それを使用しチーズハンバーグを作ったが冷めたら味が落ちるため屋台に適していなかった。人員も不足していたため、レイナ=ルウも手伝うこととなる。しかし人員を補充しても、大量の荷物があったため明日太が困っていた時、屋台に来ていたカミュア=ヨシュが、商団で荷物を引いていたトトスと呼ばれる大きな鳥を逃がしたことを教えた。印がないので野生のトトスになると説明して去っていく。屋台が終わった帰りにトトスが明日太達の前に現れる。印もなかったトトスはギルルと名付けられファ家の家人となった。
ギルルに荷車を引かせたらあっという間に宿場町に到着する。明日太は新作のチット漬けのメニューを考えようとした時、屋台の常連のシュミラルがチット漬けに詳しかったため彼に美味しいチット漬けを購入できる店を教えて貰い、明日太はそこで豚キムチを参考にギバチット漬け炒めとキムチ鍋を参考にしたチット鍋を作り出す。シュミラルと宿の主人ネイルと一緒に試食し、この宿屋でもギバ肉の料理を取り扱うこととなった。そして、次の日シュミラルと彼が率いる「銀の壺」の商隊はジェノスを去っていった。

収穫の祝祭

ある日、ガズラン=ルティムが明日太に今度行われる収穫の祝祭で料理を作って欲しいと依頼をした。収穫の祝祭では狩人の力比べが行われる。組み合って先に体が地面についたら負けになるというルールで行われている。アイ=ファは明日太に男衆は力比べに女衆はかまど番をするため、この日は自分に出番がないと語った。しかし、男衆の狩人に挑発されたアイ=ファは闘争心を掻き立てられて力比べに参加する。明日太は自分の仕事を行うためかまどに行き、ローストギバを作ることを決める。作りながらアイ=ファが勝ち続けているという審判役のナレーションが聞こえてきた。アイ=ファの試合を観に行きたい気持ちを抑え、明日太は料理を作り終え、後は盛り付けだけになった時、アイ=ファがダン=ルティムに負けたと聞こえてしまう。試合に負けたアイ=ファは明日太のところに戻ってきて、不甲斐ない姿をみせてしまったと謝った。明日太は今度はかまど番がファ家の代表として頑張ると言い、作った料理を持っていった。優勝はドンダ=ルウだった。ある意味予想通りの結果だったため、明日太は驚くともしなかった。準優勝のダン=ルティムが料理に興味を示し、優勝したドンダ=ルウがロースト・ギバを食べて「美味い!」と笑顔になる。あまりの美味しさにドンダ=ルウは前の料理は手抜きだったのか?と尋ねるほどであった。

異世界料理人

ある日、明日太はルウ家に協力をお願いして、料理を学びたい女衆達に料理を教えることになった。女衆たちが集まっている中、一際、挙動不審な少女がいて明日太は心配になり彼女に声をかけた。彼女はトゥール=ディンと名乗る。明日太は料理教室でギバ・バーガーを教えることにした。まず、ギバ肉をひき肉にする作業から始まった。明日太はトゥール=ディンの手さばきに惹きつけられた。パテを形成する作業になり他の女衆が苦戦している中、トゥール=ディンは初めて作ったにも関わらず綺麗に形成できていた。焼きの作業を行う時、トゥール=ディンは笑顔を浮かべていた。トゥール=ディンの作るハンバーグは非常に美味しいものだった。料理を楽しいと言い、料理を食べる人たちを考えて作る彼女は料理人だと明日太は感じたのであった。

『異世界料理道』の登場人物・キャラクター

森辺の民

ファ家

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