Another(小説・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『Another』とは、綾辻行人による日本のホラー小説、およびそれを原作とした漫画やアニメ作品である。小説は『野性時代』(角川書店)にて2006年より連載を開始した。
物語は1998年に夜見山北中学校3年3組で起こる不気味な出来事を中心に展開する。転校生の榊原恒一は、謎めいたクラスメイトの見崎鳴とともに、クラスにかかる「呪い」の真相を探ることになる。読者の予想を裏切る展開や独特の雰囲気が魅力のミステリー・怪奇作品である。

『Another』の概要

『Another』とは、角川書店の『野性時代』にて2006年8月号から2009年5月号にかけて連載された綾辻行人によるホラー小説、およびそれを原作とした漫画やアニメ作品である。単行本は2009年10月29日に刊行され、角川文庫版は上下巻に分かれて2011年11月25日に、また角川スニーカー文庫版は上下巻で2012年3月1日に発売された。この作品には続編として『Another エピソードS』があり、単行本は2013年7月31日に、軽装版は2014年12月22日に、角川文庫版は2016年6月18日に刊行されている。
また、『Another エピソードS』の続編として『野性時代』にて2014年11月号から2020年2月号まで『Another 2001』が連載された。単行本は2020年9月30日に、角川文庫版は上下巻に分かれて2023年6月13日に発売されている。
テレビアニメはP.A.WORKS制作により、2012年1月から3月まで放送された。監督は水島努。作者の綾辻行人はALI PROJECTに魅了され、その世界観が本作にも強く反映されている。そのため、映像化の際には主題歌をALI PROJECTに依頼することが唯一のリクエストであった。
漫画版は、清原紘によって角川書店の『ヤングエース』にて2010年5月号(2010年4月4日発売)から2012年1月号(2011年12月4日発売)まで連載された。全4巻である。2010年に発表された「このミステリーがすごい!」の国内編で第3位にランクインし、第10回本格ミステリ大賞の最終候補にも選ばれた。

本作は、見崎鳴(みさき めい)という謎めいた少女とともに、主人公榊原恒一(さかきばら こういち)が転校したクラスで起こる不気味な現象や怪奇現象に巻き込まれていく姿を描いている。物語の舞台は、山間の街にある夜見山北中学校の3年3組である。このクラスには、26年前に死亡した生徒が「存在する」とされる呪いがあり、そのため毎年1人の生徒や関係者が不自然な死を遂げる。この現象を止めるために、クラスは「存在しない者」を1人設定し、彼または彼女を無視するという対策を取っている。恒一は、見崎鳴という少女がその「存在しない者」ではないかと疑うが、次第にクラスメイトや周囲の人々が次々と悲劇的な死を遂げていく。やがて恒一は、見崎と協力しながらこの呪いの真相を探り、クラスに襲いかかる恐怖の連鎖を断ち切ろうとする。

『Another』のあらすじ・ストーリー

新たな転校生と謎めいたクラス

背後にいた鳴(左)に驚く恒一(右)

物語は1998年の春、東京から夜見山市に引っ越してきた中学3年生の少年、榊原恒一(さかきばら こういち)の視点で始まる。母親を亡くしたばかりの彼は、父親の仕事の都合で祖母と一緒に暮らすことになる。新たな生活に期待と不安を抱えつつ、彼は夜見山北中学校に転校する。しかし、転校先の3年3組に足を踏み入れた瞬間から、彼は異様な雰囲気を感じ取る。クラスメイトたちは、暗黙の了解のもと、ある一人の生徒を無視し続けている。その生徒は見崎鳴(みさき めい)という美少女で、彼女は常に眼帯をしており、クラスの他の生徒とはどこか隔絶された存在のように見える。榊原は次第に彼女に興味を持ち、接触を試みるものの、クラス全体に漂う不吉な空気に違和感を抱き始める。

明かされるクラスの呪い

榊原はクラスメイトたちが見崎鳴を「いない者」として扱っている理由を探るうちに、クラスにまつわる不吉な噂を耳にする。それは、毎年このクラスで不可解な事故や突然死が続くというものであった。その背景には、26年前に起きた「3年3組の呪い」と呼ばれる事件がある。その事件以来、クラスには「死者」が紛れ込み、災厄を引き起こすとされている。そして、その「死者」を見つけ出し、再び「いない者」にすることでしか呪いは終わらないというのだ。榊原はこの話を聞き、クラスの異様さと見崎鳴がその中心にいる理由に恐怖と興味を抱きつつ、真相を探る決意を固める。彼女との交流を深める中で、次第にクラスメイトたちが直面する恐怖と悲劇の現実が浮かび上がってくる。

迫りくる死の影と衝撃の真実

クラスに紛れ込んだ「死者」を見つけ出すために、榊原と見崎鳴は力を合わせて真相を探り始める。しかし、その間にも不気味な事故が次々と発生し、クラスメイトたちが次々と命を落としていく。事故の背後に潜む何か得体の知れない力の存在を感じ取った二人は、絶望感と焦燥感に苛まれながらも手がかりを求め続ける。物語のクライマックスでは、榊原が「死者」の正体に気づき、真実を明らかにしようとする瞬間が訪れる。しかし、その真実は想像を絶するものであり、彼らの運命を大きく揺るがすことになる。最終的に榊原が下す決断は、彼自身とクラス全体の未来を左右するものとなる。

呪いの終焉と残された余韻

物語は、榊原がついに「死者」と対峙し、クラスの呪いを終わらせるための決定的な行動を起こすことでクライマックスを迎える。その結果、クラスの呪いは解かれ、これ以上の悲劇が起こることはなくなるが、すべてが元通りになるわけではない。生き残った生徒たちは悲劇の記憶を背負いながらも、新たな生活へと踏み出すことを余儀なくされる。榊原と見崎鳴もまた、すべてを解決したとは言えない複雑な感情を抱えながら、物語は静かに幕を下ろす。しかし、呪いの真実を知ってしまった彼らの心には、決して消えることのない余韻が残り続けるのである。

『Another』の登場人物・キャラクター

夜見山北中学校 3年3組の生徒

榊原 恒一(さかきばら こういち/演:山﨑賢人)

CV:阿部敦
主人公の榊原翔太は、15歳の榊原家の一人息子である。母親は彼を産んですぐに亡くなり、父親は東京の大学で研究をしているため家を空けることが多い。そのため、翔太は祖父母の家で生活している。中学3年の5月に父親の仕事の都合で夜見山北中学の3年3組に転入したが、持病の自然気胸のため最初の1ヶ月は病院で過ごした。彼の趣味はホラー小説を読むことであり、成績も優秀である。

転入後、3年3組の“災厄”について何も知らないまま、クラスで〈いないもの〉として扱われている見崎鳴に接触したことで、次々とクラスメイトが死亡する事件が発生する。クラスメイトから災厄の原因と見なされ、彼も〈いないもの〉にされる。しかし、翔太は鳴と打ち解け、共に災厄を止める方法を探し始める。

担任の自殺後、翔太と鳴は〈いないもの〉から解除され、クラスに紛れ込んだ『死者』を特定することが災厄を止める鍵だと知る。翔太は真面目な性格の好青年であり、毒舌な一面もあるが、運動神経も良い。アニメ版ではナイフ攻撃を避けるシーンも描かれている。

見崎 鳴(みさき めい/演:橋本愛)

CV:高森奈津美
本作のもう一人の主人公でありメインヒロインである見崎鳴は、夜見山北中学3年3組に在籍するミステリアスな少女である。彼女は左目に眼帯をしており、美術部に所属しているが、ほとんど部活動には参加していない。榊原恒一が引っ越してきた直後に入院していた病院のエレベーターで恒一と出会い、その後偶然にも彼と同じクラスになる。

鳴はクラスで〈いないもの〉として扱われており、恒一を除くクラスメイトたちは彼女を無視している。これは3年3組の「呪われた秘密」に関連していると鳴は説明する。実際、災厄を避けるために鳴は5月から〈いないもの〉として扱われていた。

物語が進む中で、鳴と恒一は打ち解け、鳴は恒一に自分の家の事情や左目の秘密を明かす。彼女は見崎家の養女であり、本来の母は叔母である見崎由貴代の双子の妹、藤岡未咲の母・美都代である。鳴は双子の妹である未咲と仲が良かったが、未咲は4月に災厄によって亡くなった。このため、鳴は未咲との関係を従姉妹として扱っていた。

恒一が鳴に接触した後、クラスメイトの桜木ゆかりが死亡し、これを機に恒一も〈いないもの〉にされる。鳴は内面的には面倒見が良く優しい性格であり、普通の女子中学生としての一面も持っている。

赤沢 泉美(あかざわ いずみ/演:秋月三佳)

CV:米澤円
赤沢泉美は榊原恒一のクラスメイトであり、桜木ゆかりや杉浦多佳子の友人である。物怖じせずに物事をはっきり言う性格で、3年3組のリーダー的存在だ。彼女は恒一を意識しており、密かな弱点としてくすぐりに非常に弱い一面がある。

泉美は3組の『災厄』の対策係を務め、桜木の死後は女子のクラス委員長も兼任する。災厄を止めるために恒一を二人目の『いないもの』にすることを提案し、アニメ版では実行前に恒一に謝罪した。

泉美は小説版、漫画版、アニメ版、実写映画版それぞれで異なる扱いを受けており、特にアニメ版ではもう一人のヒロインとして描かれ、恒一に好意を持つ設定が追加されている。漫画版では勅使河原と良い雰囲気になる描写もある。原作では容姿の記述はないが、漫画・アニメ版では赤髪のツインテールが特徴の美少女として描かれている。

アニメ版では水着回(第8話)で中学生離れしたスタイルを披露し、恒一とは1年半前に出会ったことがあると主張する。そのため、鳴と仲良くする恒一に嫉妬を抱くようになる。

泉美の最期は原作の三神怜子を思わせるものであり、対立していた鳴との再会や協力が描かれる。彼女は物語の重要な存在であり、恒一にとっての三神怜子のように、想にとっても成長を促す心の支えとして描かれている。

勅使河原 直哉(てしがわら なおや/演:宇治清高)

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