虚構推理(小説・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『虚構推理』とは、作家・城平京による怪奇系ミステリー小説、およびそれを原作とした漫画・アニメ作品である。漫画家の片瀬茶柴による同作品のコミカライズが、『少年マガジンR』にて2015年4月から連載。怪異たちの知恵を司る神となった少女・岩永 琴子が恋人である不死身の男性・桜川 九郎と共に、怪異から寄せられる助けに応えて事件を解決していく。作品のテーマは「虚構」であり、真実を解き明かしていくことではなく、「いかに人々を納得させる虚構を作り出し、事をうまく収めるか」を目的としている。
『虚構推理』の概要
『虚構推理』とは、作家・城平京による怪奇系ミステリー小説、およびそれを原作とした漫画・アニメ作品である。漫画家の片瀬茶柴による同作品のコミカライズが、『少年マガジンR』にて2015年4月から連載。片瀬茶柴にとっては、本作がデビュー作となる。原作小説は2012年に第12回本格ミステリ大賞、本格ミステリ・ベスト10第4位を受賞。2016年に第6回 NEXTブレイク漫画RANKING BEST50第7位を受賞。コミカライズ版の方は、2021年12月時点で5巻が刊行。2018年、第42回講談社漫画賞少年部門にノミネートした。2020年1月から3月にかけてアニメ第一期が放映され、第二期の制作も決定している。
怪異たちの知恵を司る神となった「一足一眼」の少女・岩永 琴子(いわなが ことこ)が、恋人である不死身の男性・桜川 九郎(さくらがわ くろう)と共に、怪異から寄せられる助けに応えて事件を解決していく。琴子の目的は怪異と人間の仲立ちとなって世界の秩序を守ることであるため、真実を解き明かすだけでは解決にならない。真実をある程度察したうえで、「いかに人々を納得させる虚構を作り出し、事をうまく収めるか」が物語の主題となる。
『虚構推理』のあらすじ・ストーリー
琴子と九郎の出会い
主人公の少女・岩永 琴子(いわなが ことこ)は、桜川 九郎(さくらがわ くろう)に一目ぼれする。だが彼には長く付き合っている弓原 紗季(ゆみはら さき)という彼女がいた。それから二年、諦めず虎視眈々と機会を狙っていた琴子は、九郎が紗季と別れたと聞きアプローチを開始する。
しかし九郎は旅行中に河童に出会い、一目散に逃げたことで紗季に振られた、そんな情けない男だと琴子に告げる。
だが琴子は九郎があえて主語を曖昧にしたことに気付き、「主語をはっきりさせてください。サキさんを置いて逃げたのはどちらです?」と問うた。琴子の指摘は的を射たものだった。実は逃げたのは河童だったのである。河童が九郎のことを見て「気持ち悪い、恐ろしい、おぞましい」と言ったのを見て、紗季は恐ろしくなり九郎を振ったのである。
「河童なんているわけないだろう」と言う九郎に、琴子は自分が幼い頃に怪異に攫われ、一眼一足を奪われ怪異たちの「神」となった者だと告げる。それを信じない九郎だったが、喋る狸が琴子に助けを求めてきたことで信じざるを得なくなる。
九郎と琴子は現場に向かい、暴れる牛の怪異と戦うことになる。戦いの中で、九郎は琴子を庇って腕を食われてしまう。だが食われた腕は即座に生え、九郎の肉を食べた怪異はもだえ苦しんで消滅した。九郎は十一歳の頃、祖母に人魚の肉を食べさせられたことで、不老不死となっていたのだ。また同時に食べさせられたくだんの肉により、死の際に起き得る範囲の未来を決定づける能力も得ていた。
二つの怪異の力を同時に発揮する九郎の姿は、怪異たちの目には非常に恐ろしく、おぞましいものに見えていたのだ。そんな九郎の存在は、怪異たちのもめごとを解決しなければならないという宿命を背負った琴子にとっては手放し難い存在だった。恋愛的な意味でも傍にいてほしいという琴子の願いを受け、2人は付き合うことになる。
鋼人七瀬
九郎と琴子が付き合い出して二年半が経過した。舞台は二人の住む市から遠く離れた真倉坂市に移る。真倉坂市では三メートルほどの鉄骨を携え、赤と黒のミニスカートのドレスを纏った顔のない女性がしばしば目撃されるという怪事件が起きていたのだ。
彼女は真倉坂市で自殺したとされるアイドル、七瀬 かりん(ななせ かりん)によく似ていた。彼女は鉄骨に顔を潰され死んだことから「鋼人七瀬(こうじんななせ)」と呼ばれて噂になっていた。
そしてある日、紗季が鋼人七瀬に襲われるという事件が起きる。琴子の助けで難を逃れた紗季は、鋼人七瀬、そして七瀬 かりんについての調査を開始した。調査の結果、グラビアやテレビドラマに出演したことで人気を博していた七瀬 かりんだが、ある日父親が自殺したことで表舞台から姿を消したという事実が判明する。自殺した父親の遺した「かりんのせいで死ぬ」という手記がマスコミに公開されたことが原因だ。
それから数日、紗季は怪異に呼び出される。現場では九郎と鋼人七瀬が戦っていた。互角の戦いを繰り広げているように見えていた2人だが、鋼人七瀬を消滅させるには至らない。それを見ていた琴子は「鋼人七瀬を力づくで退治するのは無理だ」と結論付ける。鋼人七瀬は人々の想像を具現化した「想像力の怪物」であり、九郎の力だけでは消滅させることが出来ないのだ。
鋼人七瀬を消滅させるには「鋼人七瀬という亡霊がいる」という現実を、「鋼人七瀬という亡霊はいない」という虚構で上書きしなければならない。鋼人七瀬を消滅させるため3人は協力することにした。
鋼人七瀬に関する情報収集を開始した3人だったが、ある夜、鋼人七瀬の手によって紗季の同僚・寺田 徳之助(てらだ とくのすけ)が殺害されてしまう。ニュースは全国区になり、鋼人七瀬のまとめサイトは大きく盛り上がった。
琴子はまとめサイトの異様な盛り上がりは九郎の従姉、桜川 六花(さくらがわ りっか)が仕組んだものだと気付く。六花は九郎と同じく人魚とくだんの肉を食べた能力者だ。
その夜、九郎は再び鋼人七瀬との戦いに身を投じる。
九郎と鋼人七瀬が戦っている中、琴子は四つの虚構の物語を作り出して掲示板に書き込み始めた。それらの物語は鋼人七瀬を消滅させるために必要なものだった。琴子の書き込んだ物語を信じる者が増えるにつれ、鋼人七瀬は力を失っていく。
琴子の働きかけにより鋼人七瀬は虚構であると断じられ、九郎と戦っていた鋼人七瀬は消滅する。直後、六花から琴子に「今回はあなたたちの勝ち。またね」とメールが送られてきた。事件は無事解決し、紗季は九郎に改めて別れを告げる。
電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを
琴子と九郎は怪異に関する依頼を受けて、B県渡々水町(ととみずちょう)という海辺の町を訪れていた。近年、ドラマの影響で観光客が大幅に増えたその町では、指先から電撃を発する人形のせいで魚が謎の大量死を遂げるという事件が起きていた。
人間ほどの大きさをしたその木製の人形は、戸平 善太(とひら ぜんた)という老人が作ったものだった。彼は孫がわき見運転をしていた観光客の車にはねられて死んでから突然その人形を作り始め、完成からほどなくして病死した。それ以降、人形が1人で街を徘徊している姿が目撃されるようになる。
街の人々は、その人形こそ善太から町や観光客への復讐だと噂していた。そして、渡々水町に住む怪異たちも指先から電撃を放つ人形に困り果てていたこともあり、琴子に助けを求めたのである。琴子と九郎、そして化け猫と、町の重鎮である老女の嶋井 多恵(しまい たえ)は手を組んで人形退治に取り掛かる。
人形の破壊自体は九郎がいれば難しくない。九郎は人形を捕えることに成功するが、人形の中には善太の孫を轢き殺した四人の大学生の名前が刻まれていることに気が付く。人形は呪詛人形だったのだ。何も考えずに破壊していれば、名を書かれた大学生が死んでいたかもしれない。
加えて、人形には多恵の名前も刻まれていた。多恵は昔、交通事故で二人の子を失ったことで山のような賠償金を得てしまっていた。多額の資産を得た多恵を周囲は妬み「身内の死体で儲けた魔女」と呼んだのだ。
「家族を失ったならば不幸にならねばならない」と信じていた善太も、身内の不幸で幸せに生きているように見える多恵が許せなかったのだろう。九郎は人形から五人の名を削り取ったが何の変化も起こらない。善太の呪詛は、人形を動かしたことで精一杯だったのだ。
事件が終わり、琴子と九郎は渡々水町を後にする。
ギロチン三四郎
招き猫と「不吉な何か」の組み合わせで描いたイラストで知られるイラストレーター、森野 小夜子(もりの さよこ)は、電車の中で九郎と琴子と出会い、先日起きたある事件についての話をしていた。
それは、D県Y村に住む宮井川 甲次郎(みやいがわ こうじろう)という資産家の老人が、資産トラブルにより殺害した弟の首を、所有していたギロチンで切断するという事件だった。
「逮捕される前に一度ギロチンを使ってみたかった」との供述が世間では話題になっているが、それは偽りだと九郎は小夜子に告げる。九郎と琴子は件のギロチンから依頼を受けてY村を訪れ、小夜子を探していたのである。
ギロチンが言うには、それは過去に一度使われていたらしい。そのため甲次郎の言う「一度使ってみたかった」というのは筋が通らない、とギロチンは不思議がっていた。曰く、ギロチンを使ったのは十年前、小夜子の父親を殺害した時の事だった。
小夜子はY村の出身で、甲次郎と意気投合し親しくしていた。だがある日、父親に襲われかけた小夜子は誤って父親を死なせてしまい、助けを求めた甲次郎の提案で父親の遺体をギロチンでバラバラにして埋めたのだ。甲次郎の資金援助を受けた小夜子は村を離れて、以来2人は連絡を取り合ってはいなかった。
だが甲次郎は今でも小夜子を大切な友人と思っていた。そのため、弟を殺害した際「もしもギロチンを細かく調べられれば、小夜子の父親の遺体を切り落としたことがばれるかもしれない」と考え、弟の首を切ったのだ。
真相を知ったギロチンは琴子にもう一つの頼みごとをしていた。それは、小夜子にギロチンと招き猫の絵を描いてほしいというものだった。父親の遺体は怪異たちの手で更に人目に付かないところに移動させるし、ギロチンの刃の形も父親の遺体とは合わないように変えるとギロチン自身が言っている。
目覚めた琴子に事件の真相とギロチンの頼みを聞かされた小夜子は、混乱しながらもその頼みを了承するのだった。
スリーピング・マーダー
琴子はホテルや不動産業、観光業に力を入れている音無グループの会長、音無 剛一(おとなし ごういち)から奇妙な依頼を受ける。
依頼の内容はこうだ。
「二十三年前、自分はグループの総帥であった妻の音無 澄(おとなし すみ)を、妖狐に依頼して殺害した。澄は夕方、マッサージ店からの帰宅途中、ナイフで刺されて殺害されている。事件は通り魔の強盗の仕業とみられ、アリバイがあった自分や三人の子供たちが疑われることはなかった。結果としてグループの無理な拡張路線は止まり、妻が支配しようとしていた子供たちにもいい未来が開けたが、殺人は罪である。自分は癌で余命半年、最後は苦しんで死ぬことが償いだろうと考えているが、子供たちに『母の死によって未来が開けた』という意識が残ったままなのはよくない。なので子供たちに、『自分は妻を殺したから、こういう報いを受けて死ぬのだ』という意識を植え付けたい。だが妖狐に依頼して殺害したというのは信じがたいと思うので、当時アリバイがあって犯行不可能と思われた自分に殺害が可能だったのだ、という嘘の推理を組み立てるのに手を貸してほしい」
琴子は剛一の依頼を受けることにする。依頼を達成するための方法として、子供たちには「剛一が澄を二十三年前に殺害した。それが真実であると説明せよ」と課題が出された。その課題に最もうまく応じたものに優先して相続するというのだ。
九月三日。ホテルには剛一の次男・音無 晋(おとなし すすむ)と、剛一の長女・藤沼 薫子(ふじぬま かおるこ)の夫である藤沼 耕也(ふじぬま こうや)、長男の音無 亮馬(おとなし りょうま)の娘である音無 莉音(おとなし りおん)。そして剛一、琴子、九郎の六人が集まっていた。
課題を再提示して剛一が立ち去った後、琴子は彼らに「裁定の結果、誰に恨まれるのもごめんである」として談合を持ち掛ける。談合は実にスムーズにまとまったが、当事者の薫子と亮馬を欠いた状態ですんなりと話が進む不自然さを琴子は指摘する。
琴子の疑問を受けた晋は、自分が亮馬と手を組んで母の殺害計画を立てていたことを自白する。それだけでなく、薫子と耕也も澄の殺害計画を立てていたことを耕也は白状した。しかし結局、彼らの計画が実行に移されることはなかった。計画を実行する当日、澄の訃報が届いたからだ。晋も耕也も殺害計画の露呈を恐れ、談合を早くまとめようとしていたのだ。
だがその告白にも琴子は動じず「剛一の課題は『いかに剛一が澄を殺害したか』」であるとして、話し合いを続けさせる。
話し合いの中、亮馬の娘・莉音は「この事件は澄の自殺ではないか」と琴子に告げる。「剛一が殺害した」というのは、「子供たちが澄の殺害計画を立てている」と澄に告げることで澄の自殺を後押ししたと言う意味だ、という推測だ。莉音の回答は、琴子の口から翌日剛一に告げられた。
彼はこの回答を是としたが、彼は子供たちが澄の殺害計画を立てていたのは知らなかったことと、自分が癌であることを子供たちに伝える。そして、苦しみながら死にゆく姿こそが人を殺した罰であると知れ、と子供たちに言い放つのだった。
けれど、琴子はそこで話を終わらせない。剛一が怪異の力を借りて澄を殺害した、それは人の世と怪異の世のバランスを崩すものである。裁定者としてそれは見逃せなかった琴子は、真犯人を指摘する。妖狐はたしかに依頼通り、澄を事故に見せかけて殺害しようとしていた。だが妖狐が殺害する前に、澄は予定通り薫子にナイフで殺害されていたのだ。
澄が強盗に殺害されたというのは、妖狐による偽装だったのだ。
妖狐は、報酬である敵対妖狐が住む山の開発権を勝ち取るためにそのような偽装を働いたのである。それによって薫子は容疑から外れていたのだが、琴子はその妖狐の叫びを「母が娘を思って発した最後の偽りである」として、真犯人を薫子だと告げる。
事件後、薫子は自殺未遂を起こし、剛一も心労で入院した。琴子と九郎を呼び出した剛一は、今回の裁定を琴子に依頼したのは六花に勧められたからだと告げた。
雪女のジレンマ
十一年前、当時大学生だった室井 昌行(むろい まさゆき)は、雪山登山の途中で痴情のもつれにより親友に山から突き落とされた。死にかけた昌行は、金銭を対価に支払うことで雪女に救われる。
帰還した昌行は親友の自白により、彼の両親から多額の慰謝料を受け取った。昌行は慰謝料をもとに起業し二十九歳で結婚。順風満帆な人生を送っているかのように見えたが、愛人を作った妻に殺されかけたり、仲間に裏切られて会社を失うことになったりとここ最近は不運が続く。
それにより人間不信に陥っていた昌行は、雪女と出会った山の近くに一人引っ越してきた。昌行はそこで再び雪女と出会う。昌行と雪女は意気投合し、2人はしばしば行動を共にするようになっていた。だがそんな平和な暮らしの中、昌行の元に警察が訪れる。昌行の元妻である原田 美晴(はらだ みはる)が、手に「マサユキ」と書き残した状態で撲殺されているのが発見されたのだ。
美晴は、いつか昌行が自分を殺しに来ると思い込んでいた。そして「自分が死ぬならそれは昌行が殺したに違いない」という文書を家に残していたのである。美晴の殺害当時、昌行は雪女と共にいた。なのでアリバイはあるのだが、雪女では証人にならない。また雪女と美晴の容姿が似ていたこともあり、事件当時は美晴と一緒にいたのだと誤解されてしまう。
雪女の助言を受けた昌行は、琴子に助けを求めた。だが2人と対面した琴子は、本当は昌行が美晴を殺害したのではないかと疑問を口にする。雪女を使って自分を裏切った仲間たちを殺害する気だろうと告げる琴子に、昌行は激昂しかける。だが雪女は「昌行はそんなことができる人間ではない」と言って昌行を庇った。
その必死な姿に昌行が胸を打たれる中、「今のはまるきり嘘だから」と琴子は笑った。そして琴子は事件の真相を昌行に語る。
そもそも美晴が告発文を残しているなら、それを盾に昌行の犯行を止められるはずである。つまり犯人は昌行のアリバイがない時間に美晴を殺害し、わざと美晴の手にマサユキと書き残したということだ。そして犯人は、昌行の会社に勤めていた飯塚 渚(いいづか なぎさ)という人物だった。退社前も退社後も味方しよくしてくれた渚に恨まれる理由がわからず混乱する昌行だったが、雪女に励まされて気を取り直す。
2人には黙っていたが、琴子は渚が昌行を愛していたことに気付いていた。誰もが昌行を疑う状況で、渚一人だけが昌行を信じる姿を見せることで、彼の愛を得たかったのだと知っていたのだ。
岩永琴子の逆襲と敗北
Z県の山中に入って夜を明かそうとしていた男女五人のグループのうち、三人が死亡、生き残った二人のうち一人は重傷を負うという事件が発生した。その山にはキリンの亡霊がいるという。キリンの死後不吉な事故が多発したことから、動物園はキリンを山奥の社に祭っていたのだが、最近土砂崩れで社が崩れた。それにより社に閉じ込められていたキリンの魂が解放されたのである。
山の怪異たちの知らせを受け、琴子はキリンの亡霊と死亡事件の関連を調査し始める。その矢先、九郎は警察から事件で生き残った一人が六花だと連絡を受けた。
六花は登山の途中で死亡した男性たちと出会っただけだった。崖から転落した四人を六花が発見し、生き残っていた一人、丘町 冬司(おかまち とうじ)を救助して下山したのである。丘町は一時的な記憶喪失であり、現場で何が起きたかは分からないと語っていた。しかし、実際のところ、六花と丘町は話し合って事実を一部伏せて警察に報告していた。
丘町と大学時代のサークル仲間であった三人は、山中でキリンに襲われて崖から転落、偶然六花を下敷きに生存した丘町だけが助かったというのが真相だ。鋼人七瀬の件で人が死んだことに胸を痛めていた六花は、人助けとしてキリンを追い払い、丘町を助けて下山した。ただし六花は彼らが崖から転落する数時間前に、一度丘町に殺害されていた。六花は、丘町が何か事情があって山に入ったのだろうと予想していた。
翌日になって警察に呼び出された琴子たちは、死亡者の一人、長塚 彰(ながつか あきら)の鞄から小瓶に詰められた手記が出てきたことを教えられる。
手記には「長塚の恋人であった大和田 柊(おおわだ ひいらぎ)を見殺しにした罪で、長塚は他の三人を殺害して自殺する。キリンの祟りは本当だったのかもしれないが、どう破滅するかは自分で選びたい」という内容が記されていた。
警察は長塚が他の三人を崖から転落させた後に自殺したのだと予想する。
四人が柊を見殺しにしたのには理由がある。柊の曾祖父はキリンを輸入した動物園の職員であり、キリンの死後、彼女の家には不幸が多発していた。だから山奥にあるというキリンの社を祀り直そうと考えていたのだ。柊に惹かれていた四人は、彼女が社に行くための準備を手伝い始めた。だがそのうち四人の身にも不幸が起き始め、不吉に思っていた矢先に柊が車に轢かれ死亡してしまった、というのが見殺しの真相である。
しかし、柊の死後も四人には不幸が続いたため、「キリンの社を祀り直そう」と山に登ることにしたのであった。
そこで琴子は、六花に対して疑念を抱く。今回の事件は、琴子の信用を失わせようという目的で企てられたものではないかということだ。事件解決の過程で琴子が致命的なミスを犯し、かつ修正できるのが六花だけとなれば、琴子は彼女の要求を飲まざるを得なくなる。
その状況を回避するため、琴子は怪異たちに証拠の捏造を指示した。また丘町にも「長岡はキリンの亡霊を見たと言って三人の前から逃亡し、追いかけてきたところを崖から突き落としたのだ」という推理を伝えていた。
そうすることで事件は問題なく長塚犯人説で収まると考えた琴子だったが、予想に反して警察は犯人が丘町であると断言した。丘町がそう自白し、自殺したからだ。丘町が「柊のために殺人を犯したのは自分である」との栄誉を手にして命を断つことを望んだからだ。丘町が六花を殺害したのは、事件の真相を知る者をこの世から消すためだった。
初めから丘町は死ぬつもりであった。六花は「私が助けた人を貴方は見殺しにしたのだ」と琴子をなじる。
六花は琴子と二人きりでの対話を望む。六花は、琴子がこのまま知恵の神として秩序を重んじ続けるのであれば、いずれ秩序を乱す存在でしかない六花と九郎を殺すことになると断言する。
琴子が九郎の存在を許容していたのは、秩序を明確に乱すことを目的にしている六花という敵がいるからだ。だから六花が対立をやめる、または死んだ先、九郎の存在は許されない。九郎を死なせる未来が嫌なら「自分と九郎を人間に戻す手段を一緒に探せ」と持ち掛ける。
六花の提案を、琴子は断ろうとした。だが九郎を失う未来を恐れ、結局琴子は六花の提案を受け入れた。
そして九郎も、琴子の決断を受け入れる。こうして三人は手を組み、九郎と六花を人間に戻す手段を探すことになったのだった。
『虚構推理』の登場人物・キャラクター
主要人物
岩永 琴子(いわなが ことこ)
CV:鬼頭 明里
本シリーズの主人公。名家の一人娘で、九郎と出会った際には十五歳。本編の大半はそれから四年半後のため、二十歳になっている。11歳の時に怪異たちに攫われ、知恵の神になるという契約を交わし、それ以降秩序を守るため怪異に関する様々なトラブルの解決に尽力している。怪異が関係した事件や事故を、人間社会で受け入れられるよう体裁を整える必要があり、また人と価値観が違う怪異たちにとって納得できる答えを用意しなければならないことも多々あるため、頭の回転が速く詭弁に長けている。人形のような愛らしい容貌をしているが小柄で、よく中学生に間違われている。知恵の神となった際に片目と片足を失っており、右目は義眼、左足は義足である。普通の人間には見えない怪異たちを見、言葉を交わすことができる。怪異たちには主に「おひいさま」と呼ばれ、「可憐にして苛烈」と称されている。容貌にそぐわない下ネタを言うことが多く、複数の人物によく「品がない」と突っ込まれているが、改める気はない模様。
桜川 九郎(さくらがわ くろう)
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目次 - Contents
- 『虚構推理』の概要
- 『虚構推理』のあらすじ・ストーリー
- 琴子と九郎の出会い
- 鋼人七瀬
- 電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを
- ギロチン三四郎
- スリーピング・マーダー
- 雪女のジレンマ
- 岩永琴子の逆襲と敗北
- 『虚構推理』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 岩永 琴子(いわなが ことこ)
- 桜川 九郎(さくらがわ くろう)
- 桜川 六花(さくらがわ りっか)
- 警察関係者
- 弓原 紗季(ゆみはら さき)
- 寺田 徳之助(てらだ とくのすけ)
- 怪異の関係者
- 七瀬 かりん(ななせ かりん)
- 戸平 善太(とひら ぜんた)
- 嶋井 多恵(しまい たえ)
- 森野 小夜子(もりの さよこ)
- 宮井川 甲次郎(みやいがわ こうじろう)
- 音無 剛一(おとなし ごういち)
- 音無 澄(おとなし すみ)
- 音無 晋(おとなし すすむ)
- 藤沼 薫子(ふじぬま かおるこ)
- 藤沼 耕也(ふじぬま こうや)
- 音無 亮馬(おとなし りょうま)
- 音無 莉音(おとなし りおん)
- 室井 昌行(むろい まさゆき)
- 雪女
- 丘町 冬司(おかまち とうじ)
- 長塚 彰(ながつか あきら)
- 大和田 柊(おおわだ ひいらぎ)
- 『虚構推理』の用語
- 知恵の神
- くだん
- 人魚
- イワナガヒメ
- 鋼人七瀬(こうじんななせ)
- 『虚構推理』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 桜川 九郎「でもお前は花より綺麗だから 僕はどこにも返していないだろう?」
- 桜川 九郎「なら不死身ではなくなれば イワナガヒメとは離れたことを意味するだろうなあ」
- 『虚構推理』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「鋼人七瀬まとめサイト」及び七瀬かりんの公式twitterアカウントが作成された
- 琴子のキャラクターは漫画向きにチューニングされている
- 『虚構推理』の主題歌・挿入歌
- OP:噓とカメレオン「モノノケ・イン・ザ・フィクション」
- ED:宮野 真守「LAST DANCE」
- 挿入歌:七瀬 かりん(上坂 すみれ)「火炎放射器とわたし」