Another(小説・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『Another』とは、綾辻行人による日本のホラー小説、およびそれを原作とした漫画やアニメ作品である。小説は『野性時代』(角川書店)にて2006年より連載を開始した。
物語は1998年に夜見山北中学校3年3組で起こる不気味な出来事を中心に展開する。転校生の榊原恒一は、謎めいたクラスメイトの見崎鳴とともに、クラスにかかる「呪い」の真相を探ることになる。読者の予想を裏切る展開や独特の雰囲気が魅力のミステリー・怪奇作品である。

山田 優(やまだ すぐる/演:岡山天音)

男子生徒。アフロヘア。
望月と共に夜見山市から自転車で逃走しようとするが、途中で自動車にはねられて死亡した。

和久井 桜子(わくい さくらこ/演:今野真菜)

女子生徒。赤沢の友人。
〈いないもの〉を決めるくじ引きで当たりを引いた。彼女が強硬に拒否した姿を見て、鳴が代わりを名乗り出た。合宿では赤沢に襲撃されるも生き延びた。

『Another』の用語

〈現象〉と〈災厄〉

夜見山北中学校の3年3組では、数年に一度怪現象が発生する。この怪現象が発生した年を〈ある年〉、発生しなかった年を〈ない年〉と呼んでいる。この現象が発生すると、災厄によって死亡した人間がクラスの一員として紛れ込み、4月から翌年の3月までの間、毎月3年3組に関係する者が死亡する。この現象の原理は不明であるが、経験則に基づいていくつかの規則性が解明されている。

対象となるのは、主に3年3組に在籍する生徒と教師、及びその二親等以内の血縁者であり、夜見山市内に在住している者に限られる。死亡の形態は、事件死・事故死・病死・狂死など様々であるが、いずれも不可解な死に方ではなく、明確な死因が特定される形で発生する。

また、〈現象〉の発生と終息に伴い、〈災厄〉に関する記録や記憶が改竄・改変されることがある。この現象により、〈もう一人〉が違和感なく3年3組に紛れ込んでいるとされている。

〈もう一人〉 / 〈死者〉

〈現象〉の発生と共に現れる存在、いわゆる幽霊。これは3年3組に在籍する生徒や教師という形で紛れ込むことがある。主に直近のある年に〈災厄〉で死亡した人物が蘇って現れるが、本人には幽霊であるという自覚もなく、さらに〈災厄〉を引き起こす自覚もない。卒業式を迎えると〈死者〉は姿を消し、それまで〈死者〉と関わっていた人々の記憶と記録は、数日から1か月程度で改竄前の正しい状態に戻る。そのため、最終的には机や椅子の状況などから「今年は〈死者〉がいた」という事実を推測することができるだけである。

ただし、千曳が関係者からの聞き取りなどにより書き起こしたこれまでの〈死者〉の名前リストは、何らかの要因で「見過ごされている」状態になっており、消えることはない。〈死者〉が現れるだけで〈災厄〉が発生し、もし卒業式前に〈死者〉が死亡した場合、その時点でその年の〈災厄〉は止まる。

〈死者〉が死亡した場合には、卒業式を迎えた場合よりも急速に記憶や記録が修正され、〈死者〉の痕跡が消える。しかし、〈死者〉の殺害に深く関わった人間だけは、しばらくの間、記憶を保持することができるようである。松永克巳は、自身の記憶からもやがて〈死者〉に関する記憶が失われると予想し、〈災厄〉を止めるための「死者を殺す」という方法をカセットテープに収め、旧校舎の3年3組の教室に隠した。しかし、〈現象〉の発生による改竄は記憶以外にも及び、カセットテープで松永が言及した〈死者〉の名前はノイズでかき消されてしまっていた。

〈いないもの〉

〈現象〉が起きた年に行われるおまじないであり、クラスの一人を一年間存在しないものとして扱うものである。この方法は、1988年度の〈ある年〉に試された際、一度も〈災厄〉が起きないまま卒業式を迎えたため、以降も行われるようになった。

『Another』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

見崎鳴「一人が見捨てられた時、全てが始まる。」

ある日、恒一は思い切って鳴に話しかける。彼女の静かな、しかしどこか謎めいた態度に惹かれながらも、彼は彼女の言動に不安を感じていた。鳴は、夜見山北中学校の「3年3組」に隠された秘密を知っているかのように振る舞っていた。
「どうして君だけ、皆に無視されているんだ?」恒一は直接尋ねた。すると、鳴は少しの沈黙の後、低い声で答えた。
「一人が見捨てられた時、全てが始まる。」
その言葉に、恒一は思わず息を呑んだ。彼女の瞳には、深い孤独と哀しみが宿っていた。鳴の言う「始まり」が何を意味するのか、彼にはまだ理解できなかったが、直感的にそれがこのクラスにおける重要な鍵であることを感じたのである。
この場面では、鳴の言葉はただの警告ではなく、物語全体の核心に迫るものであり、「見捨てられる」という概念が、物語の恐ろしい展開を予感させる瞬間でもある。

赤沢泉美「このクラスに入ったら、もう運命は決まっているのよ。」

物語の中盤、榊原恒一は「3年3組」に隠された「災厄」と呼ばれる不幸の連鎖について徐々に理解し始める。しかし、何をどうすればこの連鎖を止められるのか、まだ掴めずにいた。クラスメートたちはこの恐怖に怯えながらも日常を送ろうと努めていたが、次々と悲劇が起こる中で、緊張感は日々高まっていった。そんなある日、赤沢泉美が恒一に話しかける場面が訪れる。彼女はクラスのリーダー的存在であり、表向きは冷静を装っているが、心の中では誰よりも恐怖と不安に苛まれていた。クラスの安全を守るために行動しているが、その責任が彼女の重荷となっていたのである。
恒一と赤沢は、クラスメイトたちがいない場所で会話をしていた。赤沢はため息をつき、何か決意を固めたような表情で恒一に向き合った。
「恒一くん、あなたももう気づいていると思うけど、このクラスに入ったら、もう運命は決まっているのよ。」
彼女の声には、諦めとも取れる冷静さが漂っていた。しかしその裏には、避けられない悲劇に対する深い恐怖が潜んでいた。このセリフは、赤沢が自分自身を含む「3年3組」の生徒全員が、何か不可避の運命に縛られていると感じていることを表している。
彼女の言う「運命」とは、災厄が始まると誰もが逃れられない死の連鎖である。このクラスに所属することが、すでにその運命に組み込まれていることを示唆しているのだ。赤沢は、その運命を変えるために奔走してきたが、徐々に無力感に苛まれている様子が、このシーンで描かれている。
赤沢の言葉に、恒一は反論できず、ただ黙ってその場を立ち尽くす。彼もまた、運命から逃れられないという恐怖を抱えながら、次の一手を考えるしかなかったのである。このシーンは、物語の緊迫感を一層高め、登場人物たちが抱える運命への無力感を強調する重要な瞬間である。

千曳辰治「死者を探すな。」

物語が終盤に差し掛かる中、榊原恒一とクラスメートたちは、ついに「3年3組」の災厄の真実に近づきつつあった。彼らは、クラスの中に「死者」が混ざり込んでいるという謎に気づき、その死者を見つけ出すことで災厄を止められると信じていた。
恒一たちは、夜見山北中学校の管理人である千曳辰治に助けを求める。千曳はこの学校の歴史や、かつて起こった出来事について詳しく知っている人物だった。彼らが千曳に「死者」を探し出す方法を尋ねた際、千曳は厳しい表情を浮かべ、彼らに忠告を与える。
「死者を探すな。」千曳は重々しい声で言い放った。
このセリフの背後には、千曳自身が過去に災厄に関与し、恐ろしい経験をしたことが暗示されている。彼は「死者」を探すことが、さらなる悲劇を招く結果になることを知っていたのだ。この忠告は、恒一たちが「真実を知ること」そのものが危険であるという重要な警告である。
千曳の言葉を聞いた恒一たちは、一瞬困惑する。死者を見つけることで災厄を止められると信じていた彼らにとって、その言葉はまるで希望を打ち砕くように響いた。しかし、彼らはそれでも先に進む決意を固め、災厄を終わらせるための手段を模索し続ける。
千曳の「死者を探すな」というセリフは、物語のテーマである運命や過去との向き合い方を象徴するものである。このシーンは、真実を知ることのリスクや、過去に対する無力感を表現しており、同時に物語のクライマックスへ向けた緊張感を高める役割を果たしている。
千曳は、その経験から災厄に対する恐れを知っていたためにこの警告を発したが、登場人物たちの中でその意味を完全に理解できた者はまだいなかった。この瞬間から、物語はさらに急展開を迎えることとなる。

榊原恒一「見えてしまったんだ…もう見えないふりはできない…」

物語のクライマックスに差し掛かる頃、榊原恒一とクラスメートたちは「3年3組」の呪いを解明しようと奔走していた。災厄を引き起こしている「死者」がクラスの中に潜んでいることを知り、その正体を突き止めることが彼らの最大の目的となっていた。次々とクラスメートが悲劇に見舞われる中、時間は刻々と過ぎていく。
恒一は、次第に自分の中で疑念と不安が膨らんでいくのを感じながらも、真相を見極めるために情報を集めていた。そしてある時、ふとした瞬間に「それ」が見えてしまった。クラスの中で、存在しないはずの人物、つまり「死者」が誰なのかを彼は理解してしまったのだ。
その瞬間、恒一は心の中で決定的な何かが崩れ落ちるのを感じた。全てが繋がり、今まで曖昧にしか感じられなかった違和感が確信に変わった。しかし、その事実を受け入れることは容易ではなく、目の前に広がる悲劇の連鎖を思うと、現実を直視することが恐ろしくなった。
そんな中、見崎鳴が静かに恒一に問いかける。「どうするつもり?」と。その問いに、恒一は小さな声で答えた。
「見えてしまったんだ…もう見えないふりはできない…」
このセリフは、恒一が「死者」の正体に気づき、その事実を否定することができないという心境を表している。彼は、真実を見た瞬間から自らの役割を理解し、それを受け入れる覚悟を決めなければならないという状況に追い込まれていた。見崎鳴がそっと彼を見つめ、何も言わないまま頷く。その沈黙の中で、恒一は一人でその事実と向き合う決意を固める。
この場面は、物語全体を通して続いてきた謎解きの集大成であり、主人公が真実に直面する瞬間の重みを描いている。恒一の「もう見えないふりはできない」という言葉は、彼がいよいよ物語の核心に向かって進む決断をしたことを示し、物語の緊張感を一気に高める場面である。逃れられない運命に対して、彼は自らの役割を果たそうと覚悟を決めたのである。

三神怜子「恐れるな。恐れるとそれはお前の一部になる。」

物語が佳境に差し掛かる中、榊原恒一とクラスメートたちは、次々と訪れる悲劇に追い詰められていた。「3年3組」に潜む「死者」を探し出すために、彼らは必死になって行動していたが、不安と恐怖は日に日に増していく。その恐怖が、災厄をさらに呼び込むかのように、クラスメートたちの心を蝕んでいった。
そんな中、榊原恒一はある日、三神怜子と2人で話す機会を得る。彼女はクラスの副担任であり、恒一にとっても頼れる存在であった。怜子は、災厄に対する恐れとどう向き合うかを常に冷静に見つめていた人物であり、恒一にとっては重要なアドバイザーでもあった。
恒一が「もうどうすればいいかわからない…怖いんです。何もできなくなりそうで…」と、彼の内にある恐怖と不安を吐露したとき、怜子は静かに彼を見つめ、優しくも厳しい口調でこう言った。
「恐れるな。恐れるとそれはお前の一部になる。」
このセリフは、三神怜子が単なる励ましではなく、もっと深い洞察を持って語っていることを示している。恐怖そのものを感じることは人間として自然なことだが、それに飲み込まれることで、恐怖が心や行動の一部として組み込まれてしまうという警告である。怜子は、恐れが心を支配し始めると、正常な判断力や冷静さを失い、さらに災厄を引き寄せることになると感じていた。
この場面では、怜子の言葉が恒一に対する重要なアドバイスであり、同時に物語の核心に触れるメッセージでもある。彼女の「恐れるとそれはお前の一部になる」という言葉は、災厄の本質が単なる外部からの脅威だけではなく、恐怖が内面に侵入してしまうことでさらなる破滅を招くという真理を示唆している。
怜子の言葉に、恒一は少しずつ冷静さを取り戻す。自分の恐れに向き合い、それに飲み込まれないようにすることが、災厄を乗り越えるための一歩であることを彼は理解し始めたのである。このシーンは、物語全体のテーマである「恐怖との向き合い方」を象徴する重要な場面であり、怜子の洞察が恒一の心に深く響く瞬間である。

榊原恒一「僕たちの中に、死者がいる。」

物語の終盤、榊原恒一とクラスメートたちは「3年3組」の呪いの真相に徐々に近づいていた。彼らは、クラスの中に「死者」が紛れ込んでいるという話を信じざるを得ない状況に追い込まれていた。次々と起こる不幸や事故に、クラス全体がパニックと恐怖に支配されていた。しかし、誰がその「死者」なのかは依然として謎のままだった。
恒一は見崎鳴と協力し、様々な手がかりを探していたが、決定的な証拠がつかめないまま時間が過ぎていった。そして、彼らが手に入れた過去の資料や証言を元に、一つの結論に辿り着く。それは、今この教室にいる誰かが「死者」であり、その正体が明らかになることで、災厄が止まる可能性があるというものだった。
ある日、緊迫した空気の中でクラスメートたちが集まり、事態の解決策を話し合っていた。しかし、恐怖に駆られた生徒たちは互いを疑い始め、教室内は混乱に陥っていた。そんな中、恒一は静かに立ち上がり、皆に向かって重い口を開いた。
「僕たちの中に、死者がいる。」
このセリフは、恒一がクラス全員に対して真実を突きつける瞬間であり、物語の緊張感が最高潮に達するシーンである。この一言は、クラスメート全員が抱えていた恐怖と不安を一気に表面化させる。誰がその「死者」であるのかという疑念が、全員の心に広がり、さらなる混乱と絶望を引き起こすのだ。
このシーンは、「死者」がただの謎の存在ではなく、彼らの現実の中で確実に存在し、日常を破壊していく力を持っていることを示している。恒一のセリフによって、クラスメートたちは避けられない対決の場に引き込まれ、逃げ場のない状況に陥ることになる。このセリフは物語の核心をつく重要なものであり、災厄の正体に近づいたことを示すと同時に、彼らの苦悩と恐怖がピークに達する瞬間である。
恒一の言葉を受けて、教室内の空気は一変し、誰が「死者」なのかを探し出すための緊張感に包まれる。このシーンは物語の転機を象徴し、クラス全員が無力感と絶望感に囚われながらも、運命に立ち向かうための最後の決断を迫られる重要な瞬間である。

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