高校教師(1993年のドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『高校教師』とは、1993年1月からTBSで放送されたテレビドラマである。脚本は野島伸司で、主演は真田広之と桜井幸子。その他、赤井英和や京本政樹などが出演する。日向女子高校に赴任してきた教師の羽村隆夫に、女子生徒の二宮繭が好意を持つ。羽村も繭と過ごしていくうちに彼女に惹かれていき、2人は禁断の恋に落ちていく。生徒と教師の恋愛や近親相姦、同性愛、強姦など社会的タブーを取り扱った作品である。登場人物の背景や最終回の結末などサスペンス要素を含んだことも反響を呼び、最終回では視聴率33%を記録した。

羽村の下駄箱に、「助けて」と書かれた差出人不明の手紙が定期的に入れてあった。それは後に、繭が入れたものだと判明する。そして羽村は繭が助けを求めているのは耕介が原因であると感じ、彼女を家から連れ出した。

猫のイラスト

繭が書いた羽村と自分を表した猫のイラスト。羽村の足の甲や2ショット写真の裏、電車の窓など様々なシーンで繭が書いていた。

『高校教師』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

号泣する羽村に繭が同情する場面

第4話、号泣する羽村隆夫/演:真田広之(右)を見て涙を流す二宮繭/演:桜井幸子(左)

羽村は婚約者と婚約破棄し、研究室からも追い出されて全てを失い、絶望してしまう。そんな中で繭が羽村の元へやってきて、動物園デートをする。彼女のおかげで笑顔を取り戻した羽村だが、デートの最中に辛い気持ちがあふれ出し、「僕にはもう何もない」と号泣してしまう。そんな彼を見て、繭も無言で涙を流した。羽村は自分のために涙を流してくれる繭を愛おしく思い、グッと距離が縮まるきっかけともなった名場面だった。

羽村と繭が旅館に泊まる場面

第5話、寂しそうな二宮繭/演:桜井幸子(左)に寄り添う羽村隆夫/演:真田広之(右)

羽村は繭と共にデートに行ったが、その帰りに彼女が「帰りたくない。先生とずっと一緒にいたい」と駄々をこね始める。言うことを聞かない繭に対し、羽村は「いい加減にしろ」と怒って彼女を置いて帰宅しようとする。だが結局心配になって繭の元へ戻った羽村は、彼女と近くの旅館に泊まることにした。そこで繭は羽村の手を握りながら、「人間には2つの顔がある。他人が知ってる自分と、自分が知ってる自分。本当の私を知っても嫌いにならないでね」と伝える。初めて繭の寂しそうな顔を見た羽村は、彼女への思いが溢れ出し、ついに体を重ねてしまった。これまで明るい顔しか見せなかった繭が弱い面を見せる姿や、そんな繭に優しく寄り添う羽村の姿が印象的な名場面だった。

羽村隆夫「僕は彼女を愛しています」

第9話のラストシーンで、耕介(右)の前に立ちはだかる羽村(左)

羽村は繭が父から近親相姦されていることを知ってしまう。繭を守らなければと感じた羽村は彼女の家に向かう。そこで羽村は、耕介に向かって「あなたに父親の資格はない。僕が連れていく。僕は彼女を愛しています」と告げる。そして繭を守るように耕介の前に立ちはだかった羽村は、殴りかかって来る彼を突き飛ばし、強引に彼女を家から連れ出した。これまでは繭への思いをあまり言わなかった羽村だが、初めてハッキリと繭を愛していることを言葉にした姿に、彼女への強い思いが伝わる名セリフだった。

『高校教師』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

当初は観月ありさの予定だった二宮繭役

本作は社会的タブーを扱うドラマのため、配役に苦労していた。当初ヒロインの二宮繭役は、当時人気のあった観月ありさを予定していたが、過激な内容のため本人が直接プロデューサーの元を訪れて丁重に断ったという。そのためテレビの露出が少なく、透明感や神秘性を感じる桜井幸子と、映画をメインに活躍していた真田広之を主人公として起用することとなった。また繭の親友である相沢直子役は、教師に強姦される役柄だったため、出演オファーしていた複数人の女優から断られてしまったという。そのため、新人女優で当時実際の女子高生だった持田真樹が担当することになった。ちなみに持田は撮影直前まで、学園ものであるということ以外、どんなドラマなのか聞かされていなかったようだ。

京本政樹がトラウマとなった持田真樹

藤村役の京本政樹は直子を襲うシーンの撮影前、緊張していた持田に「撮影では本気で押し倒すから君も本気で逃げて」と伝えた。これにより持田は全力で抵抗し、迫真のシーンが完成したようだ。しかしドラマの内容を知らず、心の準備ができていなかった持田は、このシーンで本気で泣いてしまったという。そしてこの撮影以降、持田は京本がトラウマとなって共演NGにしてしまい、2015年にバラエティ番組で再会して避けてしまったことを謝ったようだ。藤村が新庄に殴られるシーンでは、撮影前に真田と京本と赤井でアクションの構図を考えて予習していた。しかし本番になると赤井は気持ちが入って予定と違う動きになってしまい、数発の拳が京本の顔に当たって撮影後は両顎が腫れたそうだ。また繭の父親である耕介が焼身自殺するシーンは、演出の吉田が迫力を出そうと考え、実際に家を燃やした。しかし撮影中、吉田は火を放った後もなかなかカットを出さず、耕介役の峰岸徹も役者魂からベッドに横たわったまま動かなかった。そのため火の手が回って大惨事になりかけていたが、スタント担当が「本当に焼け死ぬぞ!カットだ!」と叫んだことで、事なきを得たのだった。

最終回の結末は視聴者の判断に委ねると語った野島伸司

最終話のラストシーンで、羽村と繭は列車の座席に座って繭が互いの小指を赤い糸で結んだ後、2人で寄り添って目をつむっている。そして車掌が声をかけたものの、2人は全く起きる気配がなく、繭の腕が死んだようにダラリとぶら下がっていた。このように様々な謎を残して終わったことから、視聴者の議論が白熱し、TBSにも視聴者から「2人の生死」についての問い合わせが殺到したようだ。しかしサブタイトルが「永遠の眠りの中で」だったことから、2人が死んだ可能性が高い。最も一般的な解釈は列車の中で心中した説だが、羽村のみが自殺して走馬灯を見ているという説や、居眠りしていて心中しに行く途中だという説もある。脚本家の野島伸司は2人の生死について、「視聴者の判断に委ねたい」と語っている。

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